夢物語が現実に 4年ぶりの総合1位を獲得!

少林寺拳法

 この日、武道の聖地である日本武道館にて全日本学生大会(全日本)が開催された。2019年以来総合1位から遠ざかっている早大は、新体制発足当初からこの全日本に照準を定めて練習に励んできた。演武では女子初段の部で関音葉(文構4=東京・西)、徳永文奈(人科1=千葉・市立稲毛)組が1位に輝くなど、複数組が上位に食い込む活躍を見せると、全大学最多の8人が本選へ進んだ立合評価法でも、藤井陸(社4=東京・早実)が男子重量級で1位を獲得するなど大健闘。ついに4年ぶりの総合1位をつかみ取り、悲願を達成した。

総合1位に輝いた早大拳士たち

 今大会では演武、立合評価法ともに各種目1位から6位まで、それぞれ6点から1点が与えられ、その合計点によって順位が決まる。4年ぶりの総合1位を目指す早大は、演武でも立合評価法でも、一人ひとりの拳士が結果を出してポイントを積み重ねることが重要となる。演武では早大からは14組が予選に出場し、そのうち13組が本選へ進んだ。「一組一組が1位を獲得した上で、総合で1位になる」(宇田樹主将、教育4=東京・早実)ことを目標に臨んだ早大拳士たちは、各コートで気迫のある演武を披露した。中でも女子初段の部では最後の全日本となる関と、「一番自主練習が多かった」(宇田)という徳永が息の合った演武を見せ、強豪を差し置いて1位の座をもぎ取った。その他にも男子初段の部では江川小次郎(商4=東京・保善)、小川泰平(法3=石川・金沢大附)組が第2位、男女初段の部では橋本あかり(法4=福岡雙葉)、原綜侑(商2=東京・早実)組が第2位、男女白帯緑帯の部では東知優(社2=埼玉・早大本庄)、今村千砂(文1=埼玉・早大本庄)組が第2位、単独段外の部で吉田 桃子(文構2=早稲田佐賀)が第3位と複数の組が上位に食い込み、ポイントを積み重ねた。結果的に1位を獲得できたのは関、徳永組の一組となったが、「早稲田のために1ポイントで多く稼いでやるぞという気持ちが感じられて、主将としてすごくうれしかった」(宇田)と、一人ひとりの拳士がチームのために熱い演武を披露した。 

女子初段で1位に輝いた関、徳永組

 団体演武では男子団体、女子団体ともに6人が息の合った演武を披露した。日体大や明大といった強豪が高い技術力を見せつける中、「僕たちは見ていて感動する演武を届けたいというか、上手いとかすごいとか技術的なところではなくて、何か響くな、本当に今日にすごくかけているんだなという情熱が伝わってほしいということを意識している」(宇田)と一つひとつの動きや声に魂を込めた演武を披露した。結果、男子は4位、女子は2位を獲得した。

団体の部で息の合った演武を披露する拳士たち

 立合評価法は事前に予選が行われ、早大からは全大学で最多の8人が本選に進んだ。男子重量級では4年生の藤井が圧倒的な力を見せつけ、1位を獲得。最後の全日本で有終の美を飾った。女子では中量級で秋山果凛(教1=千葉・志学館)が1年生ながら3位に輝く大健闘を見せる。他の拳士も奮闘し、上位には届かなかったもののチーム一丸となってポイントを積み重ねた。その結果、女子は立合評価法の中で総合1位、男子も総合2位を獲得し、早大の全体総合1位を大きく後押しした。

男子重量級で技を決める藤井

 全部門が終わり、強豪がひしめく中で総合1位の座に輝いたのは早大だった。早大が最後に総合1位を獲得したのは2019年。当時は今の4年生もまだ入学していない。「今回4年ぶりに1位を獲得したのは全員が見たことのない夢というか、これまで誰が言っても夢物語というか。そういうところから語った夢というものが叶って、みんなでつかんだ初めての成功体験になったと考えたら大きな財産となったんじゃないかなと思います。」(宇田)と、夢物語だった「4年ぶりの総合1位」を現実のものにし、早大拳士たちは全員で喜びをかみしめた。

チームを率いた宇田主将

 試合後、宇田主将の目には光るものがあった。当日は3種目に出場したが、大会直前まで体調不良で出場が危ぶまれていたという宇田。今大会の自身の成績には満足はしていないが、「最後みんなと戦うことができたということだけですごくうれしかったし、感謝しています。」と感謝の気持ちを言葉にした。「4年ぶりの総合1位」というチーム誰もが経験したことのない夢を目標に掲げ、現実のものとした早大。「今大会の1位は自分たちが引っ張ったという気持ちは全くなくて、みんなでつかんだ」(宇田)と語るが、主将の宇田が1年間チームを導いてきた結果であることは間違いない。このチームで臨む大会は12月初旬に行われる早慶戦だけとなったが、この全日本よりもさらに鍛錬された演武を披露し、有終の美を飾ってほしい。

大会後喜びをかみしめる早大拳士たち

(記事 玉置理沙子、写真 部提供、玉置理沙子)

※掲載が遅くなり、大変申し訳ありません

結果

▽演武

【男子二段】

藤井・大野 出場

【男子初段】

江川・小川 第2位

【女子二段以上】

遠藤・秋山 第4位

【女子初段】

関・徳永 第1位

【女子白帯・緑帯】

澁谷・山河 第4位

【男女二段以上】

三森・高橋 本選出場

【男女初段】

橋本・原 第2位

【男女白帯・緑帯】

東・今村 第2位

【単独有段】

久保田 本選出場

【単独段外】

吉田 第3位

渡邉 本選出場

【三人掛け】

宇田・門田・福島 第4位

【男子団体】

宇田・江川・藤井・門田・小川・高橋・福島・原 第4位

【女子団体】

遠藤・関・橋本・三森・久保田・秋山 第2位

▽立合評価法

【運用法男子軽量級】

門田 第4位

【運用法男子中量級】

宇田 本選出場

【運用法男子重量級】

藤井 第1位

江川 第5位

【運用法女子軽量級】

関 本選出場

三森 本選出場

【運用法女子中量級】

秋山 第3位

橋本 本選出場

コメント

宇田樹主将(教4=東京・早実)

――今大会は総合1位を取ることを目標に臨まれましたよね

 そうですね。今年度は全日本で総合1位になることを目標に1年間やってきました。今年のスローガンが「早稲田に入って幸せだ」という言葉だったので、この部活に入ってよかったと思ってもらうためにはその条件として日本一になるのが一番の結果として大きなことだと思っていました。

――日体大や明大、追手門学院大など強豪がそろっていましたが、どのように考えていましたか

  去年と今年は日体大にかなり負けているのが現状で。去年の全日本では総合1位だったのが日体大で総合2位だったが早稲田で、今年度の関東学生大会でも日体大に相当の点差を付けられて2位になってしまいました。なので一番のライバルとしては日体大と考えていたので、そこは超えていきたいというのと、明治大学や追手門学院大学、あとは同志社大学なども本当に強かったので、そこは自分たちを超えさせないようにと思っていました。

――演武はほとんどの組が本選出場を果たし、関、徳永組は1位に輝きました。チーム全体として振り返るといかがでしょうか

  全体の演武の結果としては、完全に目標としていたものに届いたかと言われたらそういうわけではなくて。もちろん一組一組が1位を獲得した上で、総合で1位になるというのが一番気持ちいい形だったので、個人の結果としては課題の残るペアがほとんどだったかなと思いました。ただ1年生の徳永と4年生の関のペアは、4年の関は集大成として有終の美を飾れたなと思いますし、徳永は本当に一番自主練習が多かったんじゃないかなと思うので結果が出て本当に良かったなと思います。1位になれなかったんですが、みんながそれぞれの組で早稲田のために1ポイントでも多く稼いでやるぞという気持ちが感じられて、主将としてすごくうれしかったです。

――団体演武は男女ともに息の合った演武を披露されていました。どのようなことを意識して取り組まれていましたか

 早稲田って個人で1位が多くないというのもありますし、日体大や明大はすごく上手かったなと思って。技術的なところでは上には上がいますし、けれども僕たちは見ていて感動する演武を届けたいというか、上手いとかすごいとか技術的なところではなくて、何か響くな、本当に今日にすごくかけているんだなという情熱が伝わってほしいというのを意識していて。具体的にはコートに入場するときの返事から、魂を込めて意識して全員で合わせるようにしていました。

――立合評価法では男子重量級で藤井拳士が1位になりましたが、立合評価法を振り返ると

 今年は立合評価法で総合1位をとれたといっても過言じゃないなと思っていて。早稲田って全てのバランスがいいというか、運用法(立合評価法)も演武もどちらもある程度強いのは早稲田と日体大くらいで、僕たちは男子も女子それなりに強くて、どの種目でも1位を目指せるというのが魅力かなと思います。あと去年に総合1位をとれなかった敗因として、そもそも全日本の前の予選で10人出場したうち2人しか本選に出られなかったことで、あまりポイントが稼げなかったというのがあって。今回は大学の歴史の中でも結構珍しく10人中8人上がって、これは全大学の中でも一番多い人数で。予選会の時点からもう戦いが始まっているという意識があったと思いますし、それでみんなが頑張ってくれがおかげで全階級で拳士を出すことができたというのも大きいなと思います。藤井が優勝したのも有終の美を飾れたと思いますし、今回8人出た中で6人が4年生だったんですが、そうではない2人のうち1年生の秋山は演武も立合評価法も1年生ながら早稲田に貢献してくれて、本当に感謝しています。

――宇田主将自身の結果を振り返られるといかがでしょうか

 私自身の結果としては自分が満足いくものではなくて、演武はどちらも4位で最後まで全日本でメダルはとれなかったんですけど、運用法も今回は「早稲田のために自分が一番ポイントを稼いてやるぞ」という気持ちで臨んだところが大きくて、それもあったからか力んじゃったのかあまり勝てなくて、「自分が早稲田にポイント稼いでやれないんだ」と思ったらすごく悔しかったです。それと実は1週間前に高熱が出て、病院に行ったら水疱瘡で。お医者さんから最後の大会出られないねって言われていて。それで早稲田に主将として何もできないんだって考えたらすごく悔しくて、文面でみんなを励ましたりすることしかできなくて。それですごく悔しい思いだったんですが、検査をした結果2日前とかにぎりぎりで復帰することができました。なので最後みんなと戦うことができたということだけですごくうれしかったし、感謝しています。

――1位が決まった瞬間の気持ちはいかがでしたか

 僕は最後立合評価法で結果を出せなかったので、もし総合2位だったらみんなにどう言おうと考えていて。僕はこれまで総合1位を取ることだけをずっと言ってきたので、これだけ言ってきたのにまさか最後総合2位で、みんな頑張ったからとか言うのも違うなと思って表彰式に臨んでいました。最後早稲田が呼ばれたときは本当にうれしくて泣いてしまって。今年って4年ぶりで、それにすごく意味があると思ってます。4年ってつまりは4学年誰も総合1位を経験していないんです。なので今回4年ぶりに1位を取ったのは全員が見たことのない夢というか、これまで誰が言っても夢物語というか。そういうところから語った夢というものが叶って、みんなでつかんだ初めての成功体験と考えたら大きな財産となったんじゃないかなと思います。このチームでつかんだ総合1位は本当にうれしいと思います。

――12月に行われる早慶戦に向けた意気込みをお願いします

 早慶戦まで正規練習はあと十数回しかなくて、あとはみんなにどれだけ残していけるかなと思っています。今大会の1位は自分たちが引っ張ったという気持ちは全くなくて、みんなでつかんだという感じなので、あとはこれまでみんなに与えられたものを還元していけたらなと思っています。