第59回全日本学生女子王座決定戦 6月15・16日 静岡・つま恋リゾート彩の郷
アーチェリーの大学日本一を決定する全日本学生女子王座決定戦(王座)が、聖地・つま恋リゾートで開催された。アーチェリー部女子は15日の予選を9位での通過となったが、16日の決勝ラウンドでは初戦で予選8位の東京国際大を下し、勢いに乗る。準々決勝では前回王者・日体大と熱戦を繰り広げ、見事勝利した。準決勝も勝利し、2年ぶり3度目となる決勝の舞台へ。強豪・近大と対戦するが惜しくも敗戦。目標である初の王座優勝にはあと一歩届かなかった。
決勝ラウンドで、1番手で行射する髙橋
予選ラウンドでは4人が72射を射ち、上位3人の合計点で順位が決まる。それによって、決勝ラウンドのトーナメントの組み合わせが決定される。早大は塚本美冴(スポ4=東京女学館)、渋谷樹里(スポ3=エリートアカデミー)、髙橋梨杏(スポ2=神奈川・横浜)、三村遥(先理2=東京・国際基督教大高)の4人で予選ラウンドに臨んだ。風が強く吹いたこの日、早大はなかなか点数を伸ばすことができず、9位で予選を終えた。
決勝ラウンドは1チーム3人で行われ、5ポイント先取のセット戦となる。決勝は塚本、渋谷、髙橋の3人が出場した。予選での反省を生かし、巻き返しに臨む。初戦の相手は東京国際大。予選では1つ順位が上の相手だったが、6-2で快勝した。
得点源として、チームに貢献した渋谷
準々決勝で対するは日体大。昨年の王者であり、今年も予選ラウンドを1位で通過した強豪である。「挑戦者の気持ちで挑んだ」という早大。第1セットを先取されるが、ここから早大の猛攻が始まる。第2セットで56点、第3セットで57点と高得点を連発し、この2セットを奪った。しかし対する日体大も、すべてのセットで50点超えを安定して出し続けてその強さを見せ、早大は第4セットを奪われる。同点となり、勝負はシュートオフにより決することに。3人が1射ずつ射ち、その合計点で勝敗を決めるシュートオフ。両校への応援の声がさらに高まるなか、早大は変わらず攻めの姿勢で高得点を射ち、28-26で見事勝利した。続く準決勝もその勢いのまま、龍谷大から3セットを勝ち取り、2年ぶり、史上3度目となる決勝の舞台へと駒を進めた。
最上級生として王座を迎えた塚本
決勝で対戦したのは、2年前の決勝、昨年の3位決定戦で惜敗を喫した因縁の相手・近大。初の王座制覇へ、王手のかかる1戦。第1セットで髙橋が9点を決め良い流れを作り、第2セットで渋谷が10点を射抜くが、近大は9点、10点を連発し、2セットを終えて0-4となる。後がない早大だが、第3セットで塚本が9点、10点を叩き出し、このセットを奪い返す。風が難しい中迎えた、負けられない第4セット。塚本が2射とも9点にまとめたものの、高得点を射抜く近大に追いつけず、2-6で決勝を終えた。
準優勝に輝いた早大のメンバー
今回は、パリ五輪世界最終予選に出場していた園田稚女子主将(スポ4=エリートアカデミー)がいない中での王座となった。今回出場した塚本は大学からアーチェリーを始めた選手であり、予選に出場した三村も、今大会が初の全国の舞台であった。2度目の王座であった渋谷、髙橋も今後さらなる活躍が期待される。このメンバーで準優勝を成し遂げたことは、選手たちの自信につながったはずだ。「強いのは稚さんだけじゃないぞというところを見せることができた」という髙橋の言葉通り、選手それぞれが自分たちの成果を発揮し、早大の強さを見せつけた。そして後方からの部員たちの熱い応援も常に選手たちを励まし、どんな場面でも一致団結して前向きに立ち向かっていく、早稲田らしさを作り上げた。悲願達成とはならなかったが、次への期待が高まる実りあるものとなった今大会。来年こそは王座制覇を成し遂げるべく、次期主将の渋谷を中心に早大アーチェリー部の戦いが再び始まる。
(記事 神田夏希、写真 星野有哉、神田夏希)
結果
▽予選ラウンド
渋谷 614点
塚本 598点
髙橋 555点
三村 477点
9位 早大 1767点
▽決勝ラウンド
2位 早大
コメント
塚本美冴(スポ4=東京女学館)
--初めての王座の決勝ラウンドで、3番手でしたが、どんな気持ちで臨みましたか
特に緊張とかよりも、当てるしかないので、1本1本当てることだけを考えて挑みました。
--あまり緊張はされなかったですか
最初はやっぱり会場の空気とかで、王座の決勝だなって思うところはあったんですけど、実際に始まるともう当てることしか頭になかったので、そこまで緊張はしていなかったです。
--他のメンバーとはどんな声掛けをされましたか
特にこれといった声かけではないですけど、明るく笑顔で射つということを。王座初めてで緊張している空気もたまに感じたので、笑顔で楽しんで集中して射ってこうというところを一貫して声掛けしていたかなと思います。
--後ろからの皆さんの応援は
射ってるときはそれに集中してて、そこまで聞こえてないときもあったんですけど、矢取りから的の方へ帰ってくる時にみんなの応援が見えて。そのとき盛り上がって応援してくれてすごい心強い感じがしました。
--初戦を振り返って
トーナメントの空気に若干慣れてなかったかなと。緊張してたわけではないけどいまいち決め切れてないところがあって、そこにモヤモヤはしていました。
--日体大戦はどんな気持ちで臨みましたか
相手は予選を1位で通過された強い大学なので、1ポイントでもとれたら、少しでも良い点数を取ろうという気持ちでやっていました。2ラウンドめからは最初の2人がすごい当ててくれて、もうこれは外せないと思ってました(笑)。
--高得点を取れた要因は
1点でも多く当てるしかないということしか頭になかったと思います。負けたらどうしようというよりは、挑戦者の気持ちで挑めたことが、とりあえず当てるというところに繋がったのかなと思います。
--初戦はいまいち決め切れなかったとおっしゃっていましたが、そのあとどのように持ち直しましたか
朝から射つ本数を重ねていく中で、今日の自分のコンディションとか、風でどのくらい矢が流されるかとかをつかめてきて、徐々に立て直していけたと思います。
--決勝は後半点数が伸びている印象でした。振り返っていかがですか
最初はいまいちサイトがあってなくて、自分が狙ったところに射てなかったんです。どうしたら当たるかなと思った時に、これ以上迷うなら一回思い切りサイトを動かしてみようと思って、動かしてみて真ん中を狙って射ったら、真ん中に飛んでいって。あとはそれを継続するだけだと思って射ってました。
--決勝も緊張されなかったですか
緊張というより、どこまでいけるんだろうという気持ちだったので、負けてはしまったけど 2ポイントとれて、悔しい気持ちもあるけど、自分のなかでは後悔はなく射てたと思います。
--最上級生として臨む王座でした、いかがでしたか
最上級生としてしっかりしなきゃという気持ちできたんですけど、自分が思い描いてるほどはやっぱりまとめられなかったし、しっかりした後輩に支えられた王座だったと思います!(笑)
--早稲田らしい試合はできましたか
できたと思います。当たった時にしっかり盛り上がって一致団結して、明るい早稲田になれたかなと思います。
--王座を終えた今の気持ちは
王座制覇が目標ではあるけど、チームが絶対王座制覇できるほどの状態ではなかったので、その中で準優勝という結果まで来れたのは良かったと思います。やっぱり制覇はしたかったですけど。
--後輩の皆さんにメッセージはありますか
来年こそ本当に王座制覇してほしいです。
渋谷樹里(スポ3=エリートアカデミー)
--王座を終えた今の気持ちは
満足しきれる結果ではないですけど、自分たちにやれることはやり尽くしたかなという感じだったので、今は嬉しいと思います。
--今日のご自身の調子は
特に日体大戦のときとかは、気持ちよく射って10点に決めることができることが多かったので、ここ最近の中ではだいぶ良い射ち方ができたというか、自分の中で納得のいく1日になったと思います。
--日体大との対戦はハイレベルだったと思いますが、振り返って
日体大は強豪なので、始まる前にみんなでチャレンジャーの気持ちで強気で射っていこうと声掛けしていたんですけど、まさか自分たちが56、57点を射てるなんて思ってもいなかったです。でもそこにびっくりしてびびっちゃうわけでもなく、そこからガンガンに攻めて射ててたので、結構良い雰囲気で戦えていたかなと思います。
--日体大戦で高得点を射てた要因は
個人個人の感覚が良かったというそれぞれの要因もあると思うんですけど、後ろの応援も含めて早稲田の応援がすごく良かったのでそこも大きかったと思います。
--東京国際大との初戦を振り返って
初戦は最初の流れをつくる大事な試合なので、みんなで守りにいくのではなくて、絶対勝つぞという強い気持ちで行こうとそれぞれで声かけあって、ポジティブな声かけもあったので、楽しく試合できてたかなと思います。
--一昨年は決勝で悔しい思いをされたと思いますが、今回の決勝を振り返っていかがでしたか
一昨年は本当に惜しくて。絶対王座制覇できるって突き進んできたからこそ悔しかったんですけど、今年は予選が上手くいかなくて9位という結果で。だから決勝に行けた時点で自分たちの中で今までやってきたことを全部出し切れてるなって感じがあって。決勝で負けてしまったけどやり切ったという感じがしています。
--園田さんの不在についてはどうでしたか
やっぱり直前まで稚さんいないのは大きいねって話をみんなでしていて。実際点数的に大きな支えにもなるし、稚さんの明るい性格というか、いるだけで雰囲気も上がるので、いて欲しかったとは思います。でもそうじゃない、稚さんがいないメンバーでもいい雰囲気で試合を運べて、稚さんにも良い結果が報告できましたし、本当に良かったと思います。
--次期主将として、これからの意気込みは
来年の王座は絶対獲るつもりでいるので、それに向けて1年間、チームを引っ張っていくというより、みんなで作っていけるように頑張っていきたいと思います。
--これから個人戦のシーズンになると思いますが、それについてはいかがですか
まずはインカレ(全日本学生個人選手権)の予選があって、秋にインカレや全日本(全日本選手権)があるので、そこに向けてちゃんと調整して、今年こそしっかり成績を残していけるように頑張りたいと思います。
髙橋梨杏(スポ2=神奈川・横浜)
--昨年に引き続きの王座出場となりましたが、昨年と比べていかがでしたか
昨年の前回の王座は自分の中で無双していたというか、自信があった時期だったので、自信を持って準備ができていました。今年は去年の王座以降、怪我もあって調子が悪くて、自信がない状態でした。王座練習会や直前の練習も特別当たっていたわけではなかったので、不安が残っていました。やるしかないのはわかっていたのですが、ずっと心の中で「外したらどうしよう」という不安が残っていて、自信を持って射てない、攻め切れない部分があったので、また後悔が残る王座になったかなと思います。
--昨年は2番手での行射でしたが、今年は1番手でした。気持ちの違いはありましたか
高校の時は1番か3番しか射っていなかったので、むしろ慣れているという感じでした。(髙橋自身が)射つのが早い方で、後ろの二人に時間を残すという意味でも貢献できるかなと思っていたので、特に緊張とかもなく、いつも通り行こうという気持ちで射てました。特別「1番手だから頑張ろう」みたいなものはありませんでした。
--予選ラウンドを振り返っていかがですか
前半に比べて後半は3,40点上がったのですが、前半は最近意識していることをやり切れませんでした。公式練習の時に最近意識していることをやってみたら思ったより外れてしまって。「そんなに外れるんだ」と思ってやらない方がいいのかなと守りに入ってしまいました。それで前半は大きく外してしまうことも多く、2本もMって(的を外してしまうこと)しまいました(笑)。「これじゃダメだ」と思い、後半はこれまで練習でやってきたことを外してもいいからやり切ろうと攻めることができて、点数を上げることができました。合計の点数は満足いく結果ではありませんでしたが「こうしたら当たる」というものが見つかったので、実りのある72射だったと思います。
--予選ラウンドは風が強かったですが、影響はありましたか
思ったより私は(矢が)流れなくて。むしろ風向きとは逆に外してしまうことが多かったです。先輩方や遥(三村遥、先理2=東京・国際基督教大高)が「思ったより流れた」という話をしていたので、自分の中では強く射つことができていたのかなと思います。
--決勝ラウンドでは日体大を準々決勝で撃破しました。大きなターニングポイントだったと思いますが、振り返っていかがですか
去年の対談でライバル選手として勝見麗(日体大2年)を挙げていたり、仲良くしてくださる先輩もいたりして意識はしていました。関東の中でもすごく強い相手ですが、その分良いライバルだと思っているので、そんな日体大と早い段階で当たってしまったのはちょっと悔しかったです。自分たちが思っていた以上に出せるものを出せたし、前の試合から良い雰囲気で、強い気持ちで射つことができました。最初のエンドで2本とも10点に入れることができたのですが、10点とも確信があって入れられたわけではなく、その中で10点に入れられたということで流れを作ることができました。
--龍谷大戦では1点を射つなど波に乗り切れない場面もありましたが、振り返っていかがですか
昨年の(準決勝の)同志社戦で同じように1本外してしまったことがあって、その時のことが頭によぎってしまいました。狙っている時にそれを思ったことで集中が一瞬切れてしまいました。その後はすぐに切り替えることができたのはよかったのかなと思います。
--昨年同様最後は近大との戦いになりました。3位決定戦だった昨年と決勝だった今年との違いはありましたか
昨年は負けたら4位で、表彰台ではない、メダルがもらえないというプレッシャーが大きかったです。今年は勝っても負けてもメダルはもらえるということで、決勝だから特別緊張するというのはありませんでした。
--優勝した近大との差はどういった所に感じましたか
私自身最後決め切れなかったり、ここという場面で当て切れなかったりというのがあったので、そういったところでのコントロール力や場数には差があるのかなという風に感じました。あとはチーム力ですね。近大はずっと強いイメージがあって、(その強さを維持できるだけの)チーム力や部活動としての練度の差があったのかなということは感じました。
--事前対談で「稚さん(園田稚女子主将、スポ4=エリートアカデミー)がいないから負けたと言われないように」と話されていましたが、今回の結果はどのように捉えていますか
優勝できたら万々歳でしたが、準優勝だったということで、最後決め切れなかったとはいえ、日体大戦は今までの練習試合を含めて一番いい試合でしたし、自信を持って射つことができていたので、有言実行できたのではないかなと思います。強いのは稚さんだけじゃないぞというところを見せることができたと思うので、そこはよかったのではないかなと思います。
--昨年の王座メンバーで同期は髙橋選手だけでしたが、今年は三村選手も加わりました。その点に関してはどのように考えていますか
遥は高校の時に半年くらいアーチェリーをやっていたというところから(昨年の)10月に入ってくれたので、場数としてはこれからというところだったのですが、(入部してからの上達の)伸びがすごくて、「負けたらどうしよう」と焦らせてくれるいい同期が入ってくれてよかったと思います。いいライバルになる同期だと思います。
--明日からまた来年の王座に向けての1年が始まると思います。次の1年に向けての意気込みをお願いします
怪我の調子もよくなってきていますし、今回の王座で準優勝という去年よりもいい結果を得ることができて自信にもつながりました。自分の中で「こう射てば当たる」というポイントを見つけることもできたので、そこを徹底的に1年間練習して、もっともっと自分自身の競技レベルを上げて、来年の王座では優勝したいと思います。(昨年の)4位、(今年の)2位、(来年以降は)優勝、優勝で(大学生活を)終われるように頑張りたいと思います。
三村遥(先理2=東京・国際基督教大高)
--初めての王座の感想をお願いします
緊張して自分の思う通りに全く射てなかったというのが感想です。王座選考があって王座が決まって、今まで色々準備してきたつもりだったんですけど、それでもいざ本番となると全く自分の思い通りにはいかなくて、課題の残る試合だったなと思ってます。
--事前対談では大きく真っ直ぐ射ちたいとおっしゃっていましたが、昨日の試合はどうでしたか
全く大きく真っ直ぐ射てなかったです。重心がずっとふらついてましたし、踏ん張れなくて、大きく真っ直ぐも射てなかったので、気持ちよく射てた射はほぼなかったですね。
--風は難しかったですか
まだ風を読む力が自分にはまだないので、野村コーチのアドバイスをいただきながらだったんですけど、それでもやっぱり負けてしまったかなというのはあります。
--初めての王座で緊張されましたか
そうですね。今まで感じたことのない緊張を感じました。
--今日はスコーパーとして、選手の皆さんの近くで応援されていましたが、今日はどんな気持ちで臨みましたか
目標を笑顔と言ってたんですけど、昨日は全く笑顔のない1日だったので、今日は笑顔でチームに貢献できるように、盛り上げられるように、応援したいなと思って精一杯頑張ってました。
--今後の意気込みは
このあとインカレやインドアのシーズンが続くと思うんですけど、やっぱり1番は来年の王座で、今度は胸を張って王座選手ですって言えるように、たくさん練習して良い射が射てるように1年間、もう1回頑張ってみようと思いました。