【連載】早慶女子クラシコ特集 第5回 対談:廣澤真穂×髙橋雛×吉野真央

ア式蹴球女子

 ゴールというサッカーにおいて最も重大な役割をア女で担うのがFW廣澤真穂(スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)、FW髙橋雛(社4=兵庫・日ノ本学園)、FW吉野真央(スポ4=宮城・聖和学園)。今季はア女の得点の8割近くを、通称『4年生FWトリオ』の3選手で稼いできた。大学トップクラスの実力を持つ3人の、ピッチでは見せない素顔に迫る。

※この取材は11月1日に行われたものです。

 

廣澤

 

「でもこの22歳はそういう配慮がない(笑)。だからこそ人を笑顔にできる、そういう良さがある」(吉野)

――では、まず他己紹介をお願いします

吉野  去年やったよね(笑)。同じこと言わないようにしなきゃ。(順番を)じゃんけんで決めよ。(じゃんけん)

廣澤  じゃあまず雛から。

吉野  去年人の話を聞かないって言ったよね。今年の雛?(笑)。基本変わんない(笑)

廣澤  結構意見を言うようになった。今までは言わないか、どちらかといったらみんなと賛同するタイプっていうか。「雛もそう思ってた」みたいな感じのイメージだった。自分の考えも本当にそうだったんだと思うけど。そんなに「ここはこうだと思う」とか言わなかったけど、今年は主張が試合中とかも言うようになったし、普段も4年生としての姿じゃないけど、そういうことを自分は感じました。

髙橋  ありがとうございます(笑)

吉野  雛は人の懐に入るのがうまいなと思って。

髙橋  本当?

吉野  うれしそううれしそう(笑)。それこそ去年とかは先輩がいたから先輩の懐に入るのがうまかったし、今年は上っていう立場だけど後輩の懐にも入ってる気がして。近い距離間で話している気がして「いーなー」って。自分とかは「、、、真央さん」とかなるけど、「雛さ~ん」みたいな感じだからいーなとは思いますね。生まれつきそうなってるのか分からないけど、そういうコミュニケーション能力を持っている、雛のすごいいいところだなって思いますね。

――2人の他己紹介を聞いていかがですか

髙橋  自分では全然そんなふうに思わないんで、びっくりです。

吉野  何がびっくりだよ。

廣澤・吉野  (ずっと可笑しがっている)

――今年に入ってから主張のところは変わったりしましたか

髙橋  やっぱり4年生っていうのは自分の中でもあったから、意識してるわけじゃないけど自然になってたのかなって。でも全然、みんなよりは言うとかじゃないんですけど、前の自分よりはって感じですね。

――では次に吉野さんの紹介をお願いします

髙橋  何でもいいんだよね?真央はしっかり自分の意思があってそれをその時に伝えるとか、思っていることをその時に言うとか、そういう芯とか軸っていうのはすごいあると、今年改めて感じて。それはサッカー中もそうだし、ミーティングしてるときにも感じます。あとは自分を奮い立たせる、何て言うんだろう。自分で燃えてるっていうか、それを全面的に出しているのが伝わるからこっちまでやってやるぞって伝染させてくれる、みたいな。それが真央のよさだと思ってます。

吉野  あざす。すいませんなんか。ありがとうございました(笑)

廣澤  真央は誰からも嫌われない素質を持ってるなって。結構それ言っちゃいけないでしょってことを人にズカズカと全部言っちゃうから、普通だったら嫌な思いをされたり嫌われたりするかもしれないんだけど、真央だから許される。本音を全部言っちゃうことが真央のよさであり、それでも誰からも好かれるっていうか。真央の持ってる能力かなって。

髙橋  なんかうまいよね、いじるのが。

廣澤  そうそうそう。なんかね、ちょっとね、あるんだよね多分。言い方なのかな、分かんないけど。言ってることは酷いんだけど、真央が言ってるから笑いに変わるっていうか。

髙橋  真央の存在感ってすごくて。練習にいない時とか絶対「なんか静かだなぁ」みたいな。うるさいから真央がいない時に静かになるみたいなことはありますね。真穂もそうだけど(笑)

――その辺感じることはありますか

吉野  自分はそんな感じないですけどねー。自分は静かな方だと皆思ってるんですけど。真穂は真穂でうるさいなぁとか思うんですけど。

一同  (笑)

吉野  でもうれしいですね。そうやって言ってくれると。

――強く言ってもあまりってところは味を占めてる感じですか

吉野  そうですね。言ったらウケるんで(笑)。本当に申し訳ないんですけど、これからもみんなをいじり続けていきたいなとは思ってます。

――廣澤さんについてはいかがですか

吉野  雛が自分に言ったみたいに、真穂もいないと静か。なんか今日静かだなと思ったら「真穂いないんだ」って感じの存在で。自分ではネガティブとか言ってるけど、自分からしたら絶対ポジティブだなって思ってて。すごく明るい人だと思うんですよ。しかもその明るさを人の顔色窺がわずにどんどんみんなの空気にズカズカ入って行くから。普通みんなは顔色見て「この人今日話しかけない方がいいかも」とかいうふうにするんですけど、大学生とか20歳以上になったら。でもこの22歳はそういう配慮がないっていうか(笑)。だからこそ人を笑顔にできる、そういう良さがあるなぁって。自分はすごいなと思っていて、素晴らしい能力だと思います。

髙橋  それに加えて誰とでも話してるイメージがあって。すごいコミュニケーション能力だなって、いつも思うんですけど改めて感じてます。誰でも「真穂さんはすごい誰でもしゃべってる」って言うと思うんですけど、チーム(のみんな)が真穂に自然と話せるので、それはいいなって思います。

吉野  1年生の時とか4年生に話しかけづらかったり顔色とか窺うじゃないですか。でも彼女は違って、どんなに怖そうな4年生でも普通に話していくし、その4年生が不機嫌そうでも「おはようございます!!!」って話しかけるとか(笑)。今ダメだろって思っても、話しかけて飲み込むみたいな。

――威厳ある人にもガツガツ行けるもんなんですか

廣澤  本当に自分では自覚ないんですけど、それこそ仙台(マイナビ仙台レディース)に行っても言われるんですよ。前の中学とか高校とかの仲間にも同じこと言われるんで、きっと自分のこの性格は変えられないっていう。親からの遺伝っていうのもあるんですけど、それの影響でこういう人が育ってしまったという感じですかね(笑)

「真央は本当に日本で一番体が強いんじゃないかな。女では出せない力を持っているというか(笑)」(廣澤)

吉野

 

――次に選手としての他己紹介を、同じ順でまず髙橋さんからお願いします

吉野  雛ってめっちゃ速いよね?最近思ってて、初速かな。ギュいって。

髙橋  そう思うじゃん?でも別にフィジカルの数値はあんまりなんだよね。

吉野  そそそ。フィジカルの測定だと順位が高いってわけじゃないのに、試合中にギュいーって伸びるじゃん。

廣澤  分かる分かる。

吉野  めっちゃ速いなって。あと去年から雛の強みであるシュートの威力とか精度とか、それこそ皇后杯予選の東京国際戦で決めたやつみたいな感じで、「それ決めるか」みたいな。自分にはないシュート能力とスピード感。ア女の誰にも真似できないから、素直にすごいなって近くで見てて思うし。しかもその上ですっごい走るから。ア女の中でも上手いうえでハードワークするから、だからこそア女は回ってるなってつくづく、4年生になってから感じます。

廣澤  自分も基本感じることは同じで、1試合を通して全力でやらない部分がないっていう。チームが苦しい状況で、ここで止めて欲しい奪ってほしい時にしっかり奪ってくれる、で攻撃につなげてくれるっていう。攻撃のスイッチの入るところ、雛が持ったら自分もボールが来るって思うし攻撃のスタートが始まるっている感じがするから。自分は雛が空いてたら、空いてなくても「雛にボール入れてくれ」ってずっと思ってるような信頼感はあります。

――やっぱり測定と試合では感覚は違うものですか

髙橋  やっぱり相手がいるから、相手に負けたくないっていう思いはあるんだと思います。

廣澤  多分負けず嫌いだよね。

髙橋  やっぱ気持ちは全然違いますね。詳しくはわかんなですけど。

一同  (笑)

――では吉野さんの紹介をお願いします。

髙橋  真央は常に燃えてて。それこそゴール決めるのも、全部気持ちで押し込むみたいなプレーが多いと思うので。そこは真央らしさが、自分いはないもので、見習う部分だし、それこそ苦しい時に決めてくれる試合も多かったし、チームとして助かってるとは感じています。

廣澤  真央は本当に日本で一番体が強いんじゃないかなと、私は思っています。相手に友達とかがいても「ぶつかられるといや」「あの人なに」みたいな。まぁ、たぶん、女では出せないような力を持っているというか(笑)

髙橋  負けてるの見たことがない。

廣澤  そうだね、本当にどの試合もぶつかって負けてるのを見たことがないからそこへの安心感もあるし。キープ力じゃないけど2、3人来ても手だけで抑えちゃうから。

髙橋  男のフォルツァ(ア女がよく練習試合をする男子中学生のクラブチーム)にも負けてませんでした(笑)

廣澤  その強さっていうのは、日ごろからトレーニングしてないとなかなか作り出せないものだと思うから。自分は結構筋トレとか苦手な方だから、真央はとことん筋トレとかしてたし、それは積み重ねってところで真央が積み上げた部分だと思います。そういうところでの頑張り屋というところもあるし。負けず嫌いさ。2人とも共通してるところだけど、それが前面に出てるからこそ周りにも影響を与えられるし、そういう気持ちにさせられるっていう所があるかなって思います。

――マイナビ仙台に白人選手がいたりしますけど、そういう選手とやってても吉野さんの力の強さって感じますか

廣澤  もう、絶対負けないと思いますよ。ぶつかったらもう・・・。あっ、でも唯一近澤さん(澪菜副将、スポ4=JFAアカデミー福島)といい勝負するかも。

一同  (笑)

吉野  あの人には勝てない(笑)。規格外すぎる(笑)。あれは無理だ(笑)

廣澤  あそこは比べちゃいけない領域かもしれないけど(笑)

――筋トレでどこを鍛えるのが好きとかありますか

吉野  からだの調子とかキレとかを見ながらメニューは考えているんですけど。自分自身、真穂みたいにテクニックがあるわけでもないし、雛みたいにシュートタッチがいいわけでもなくて、FWの能力的にはそこまで高くない選手だと思っていて。2年生で切り替わったタイミングで何で勝負していくかって考えた時に、自分の体の強さとかで勝負しないと生きていけないなとは感じていたから、その強みを生かせるようにトレーニングしてきましたし、だからこそ自信はあるし。筋トレというか身体操作とかウェイトとか、そういうのはめちゃくちゃ大切にしてます。

――では廣澤さんの紹介をお願いします

吉野  さっきも言ったけど、真穂は本当にうまいですね。足元とかは卓越している、すっごいうまくて。自分は手とか体でキープするけど真穂は足でピュッピュッピュってしながら2、3人に囲まれても奪われないし、自分と違う方法でキープ力があって。羨ましいと思う限りであります(笑)。それプラスアルファ、本当に「ストライカー」みたいな性格をしていて。「私にすべてボールをよこせ!」くらいの勢いでいるんで。そして何よりもゴールに対して貪欲だから、真穂がゴール前にいると入るかもって思うし、だからこそチームメイトは安心して配球してると思うし。だから真穂はチームに欠かせない存在だなって、4年生になってつくづく感じてます。

髙橋  自分も似てるんですけど、決めるところで決めてくれるし、安心感はそういう面であるし、個人ではがす能力がすごいなって思ってて。真穂に預けても奪われないから、そういう面でも真穂に託すっていうのも思ってやっているし、ストライカーって感じの真穂が一番魅力的で、すごい見習う部分があって。

吉野  確か筑波戦で真穂がクロス上げて自分が決めたんですけど、そのHTに「そっちもクロス上げて」って(笑)。やっぱり点が欲しかったから、すごい要求はしてきますね(笑)

廣澤  左上げたから右も上げていたいなね(笑)

――やっぱり得点はいくらあっても足りないですか

廣澤  そうですね(笑)。足りないですね。

――知らない人のためにも、一人一人のトークテーマを持ってきていまして。まず吉野さんから行くと、2年生の時にDFからFWにコーンバートされましたけど、その時期について振り返って頂いてもいいですか

吉野  それこそア女のFWなんて、有名な選手ばっかりで。真穂、雛とか、当時は松さん(松本茉奈加、令3スポ卒=現ノジマステラ神奈川相模原)とか優花さん(荻原、令3スポ卒=現南葛SC)とか、ア女のエースたちがいる中で、自分がこっちのポジションに行って出れるんかい、みたいな正直弱い感じの気持ちが浮かんで、戸惑いもあったし違う競技をしているみたいで、これからどうしようという感情ではいましたね。計画立てるタイプなんで、DFでどう行くかみたいな4年間の計画を立てていたのに、一気にそこで全部崩れた感じで。最初は正直嫌でした。

――今FWとして活躍されてますけど、改めてこのコンバートはどうですか

吉野  やっぱりどんな状況、環境にいても結局は自分自身って思ってて。それこそ自分がいきなりGKやってもボランチやっても、もしかしてサッカーじゃなくて違う競技やったとしても結局は自分の努力次第でどうにかできるっていうことは分かってたから、あと2年間で悔いがないように、どうせやるなら置かれた環境でしっかり頑張ろうという気にはなってたので。それに関しては自分自身で何とかなる問題だし、コンバートしたことには感謝しています。

――お二人は自分のポジションに新たに同期が加わる形だったと思いますけど、この時はどういう感情でしたか

髙橋  最初は違和感があったんですよ。真央が同じポジション、近いポジションにいるってことが違和感だったんですけど、一緒にやるにつれて結果を残していたし危機感じゃないけど、自分も頑張らなきゃって自然となって行って、それが一番大きかったですね。

廣澤  めっちゃ複雑だった。それこそ中もよかったし、真央が落ち込んでるときは話は聞いてるけど、例えば出れなくて落ち込んでるときに話を聞いててもそのポジションに今いるの自分だしな、みたいな。すごい複雑で、ライバルでもあり仲間でもある部分は感じてたし、その分自分も負けられないし、というのは思ってました。一緒にピッチに出たいってのはあったから、今一緒にピッチに立てる感じになってよかったなっていうか。

吉野  そのまま一つの枠を取り合ってたら結構ね。カーっとなるしね。お互い頑張りたいけどどっちかは出れたり出れなかったり。3年の最初はさ、真穂が出てたら自分は途中からみたいな感じだから、友達でもあるけどライバルだから複雑ではありましたね。

――では次に、髙橋さんは今一番いい状態でプレーされてますけど、今のプレーにはどういう感覚を持っていますか

髙橋  前まではきれいにやらなきゃとか、ゴールを決めなきゃとか、そういう思いでやってたからこそ空回りしてた部分があって。そうなったときに一番大事なことを思い返して、誰よりもハードワークすることだったり、目の前のプレーに全力を出すとか。戦うことを自分の中でもう一回原点に帰るじゃないですけど、やるって決めてやった先に結果が出てきたりするというのが、自分の中でしっくりきた部分でもあったから。足元を見失っていて、点を決める点を決めるって先のものを見過ぎで、目の間をの相手と戦う部分を失っていたからそれをもう一回思い返すことで、どんどんやることが決まって行って。今はもう1試合1試合戦うことを思ってやってるだけなので、それをずっとやり続けることしか自分は思っていないし、限られた時間の中で1試合も無駄にしたくないから、こう会しなっていう部分でも1試合1試合全力で戦うところをやってる感じです。

――お二人は髙橋さんの活躍についてどう見ていますか

吉野  今言ってたみたいに一つ一つに全力を注ぐみたいな部分はすごい見えるというか。さっき真穂が言ってたように、すべてのプレーに全力で情熱を傾けている、全力でやっている雛はア女にとって必要だし。調子がうまくいかなかったって雛は言ってるけど、自分からしたらそういう時期があったから今の雛の強さがあるってことは感じているから、頼もしい限りです。

廣澤  自分も近くでプレーしてたり、近くにいるからこそ悩んでるのとかもめっちゃ分かってたし。けどそれを周りに出さないというか、自分の中で抱えてるものはあったとしても絶対に周りに変に影響を与えることはしないで、自分で向き合って解決したっていう、その強さが自分はすごいなって思うし、だからこその強さだなって思います。

――では次に、廣澤さんは現時点でチーム唯一のWEリーガーです。改めて練習に参加したり試合に出る中でどう捉えていますか

廣澤  確かにレベルは一段階上がるって感じはあるし、大きな差は見られないけど小さなところでの差はすごい感じるからこそ、そこで上に行くためにはもっとやらなきゃいけないなって思うし、楽しみでもあるけどもっとやらなきゃいけないことがいっぱいあるなっていうのを常に日々感じます。

――お二人は東京国際大戦の直後の廣澤さんの試合は見られましたか

髙橋・吉野  見ました見ました。

吉野  バスでみんなで見てました。みんなで「ア女ではもっと言うのにね」とか「ア女だったら絶対ここ要求してるよね」とか「ア女だったらパス出さないよね」とか、みんなで応援しながら笑いながら見てましたね(笑)。でもそれは真穂の人柄があるから後からちゃんと「見たよ」って報告したし、そういうのもみんなで応援してるっていうか。それこそ近くにWEのレベルを知ってる選手がいることでア女にもすごいいい影響になるし、真穂から色々教えていただきたいです。

髙橋  自分も見てたんですけど、すごいなぁって率直に思って、近くにそういう選手がいるのはいい刺激だし、真穂が行ってるからこそ学ぶもの、近くに感じるものもあって。ア女にもいい影響を与えてくれるから、とにかくすごいなっていうふうに思ってます。

 

「後悔はしたくない。最後笑うために前に進んでいきたい」(髙橋)

髙橋

 

――ではここから今季の振り返りをしていただきたいと思います。リーグ戦もあと一戦となって終盤に入りましたけど、ここまでどう振り返っていますか

髙橋  この1年って今までの3年間と全然違って、4年生としてというのが自分の中ではあって。だからこそチームがうまくいかなかった時期が多かったと思うんですけど、そういう時にこそ4年生が一つになって引っ張るじゃないけど、そういうことの大切さとかを身に沁みながらシーズンが進んでいって。今も苦しい時期になっているし、これからトーナメント戦も始まる状況の中で、もう一回チームを奮い立たせるじゃないけど。暗闇の中から抜け出す、そういうのを4年生が残りの試合で示していきたいなって思っているし、トーナメント戦だから自分たちが増やしていくしかない中で、全てが最後だと思ってやらないといけないし、後悔はしたくないから最後笑うために、今の時期も大切だし前に進んでいきたいなと思います。

吉野  雛が言ってたみたいに、正直勝って勝って勝って勝って今に至る感じじゃないですし、最近は勝ってもア女としては納得いかなかった試合だったり同点だったり負ける試合が増えてきて、不安とか大丈夫かなっていう思いを一人一人持ち始めているかも知れないけど、こういう時期があるからこそ勝った時にすごいうれしいですし、チームとしてより強くなるための大切な期間じゃないのかなと感じていて。自分たちが決まってる試合で、早慶戦を合わして関カレと皇后杯とインカレで(最小)4試合という中で。あとは自分たち次第ですし、試合を増やしていく力があると自分は思っているから、あとはもういろんな人の思いを背負って戦い続けるだけかなって思ってるんで、振り返りとしてはあまりうまくいかなかったけど、これからどんどん強くなるア女を見ていってほしいなって思います。

廣澤  去年日本一獲って、メンバー的にもそんなに変わらないし、さらに今年は最強になれるんじゃないかなって。「ワクワク楽しみ」みたいな感じで入って行ったからこそ、うまくいかない時期はどうしようとも思ったし、試合に出てる以上1~3年生まで責任がなかったわけでもないし、でも4年生になってそれ以上にチームの事を考える時間が多くて。悔しい思いもたくさんあったし、本当に色んなことがあったなって思います。でもそれは去年も一緒で、一番大事な時期に3連敗して、そこから這い上がっての日本一だったから、どんなに途中過程で負けたとしても最後目指しているのは日本一だから、そこだけぶらさなければ、もう一回ア女は強くなれるし一致団結したア女は強いと思うから、そこを目指してやっていきたいなって思います。

――皆さんうまくいかないという印象を持ってると思いますけど、その中で良かった時期とかっていつ頃でしたか

吉野  始めの方かな。

廣澤  皇后杯予選とか一つになった感は一瞬あったけど。

吉野  自分もそれは思う。皇后杯の時とか人がいなかったけど、チーム力で乗り越えたって感じだよね。それこそ優勝できなかった(準優勝)けど、チームっていう感じを実感したかな。

――では今季の個人のプレーについてどういうシーズンになってるかを振り返ってください

髙橋  自分は思い悩むことが多くて、プレーの中でも自分の強みが出せなかったりとか。「どうしたら出せるんだろう」とか「何を求められてるんだろう」とか、プレーの中でも悩みがあった中で、そういう時こそ意識してたのは周りと話すっていうことで、その状況を自分だけでは変えられないと思ってたから、周りの人と会話することで、プレーでもうまくいったりとか。できた試合もあれば、それがうまくいかなかった試合もあるけど、それをやり続けたことに意味があったかなと思うので。今シーズン積み上げてきたものを更に出せるようにこれからが勝負だと思うので、出せたらなって思ってます。

吉野  自分はあまりいいシーズンではなかったなって思ってて。前半はサッカーができない時期が続いたりサッカーが嫌いな時期もあったり、「自分って何なんだ」って自分自身と戦うことが多くて。正直苦しかったなとは思うんですけど、こうしてまだア女にいてピッチの上に立ってるんで、自分には戦わないといけない責任があるから、しけた顔してる場合じゃなくて。戦うのは自分じゃなくて相手なので。支えてくれる仲間とかスタッフ陣がいたからこそ、自分の中で頑張って成長しようとしたし、その中で今シーズン最初に立てた自分の目標はまだまだかなえられなかったけど、後半で点は取れたし、評価していいかなとは思っていて。これからはもっとチームを勝たせられる怖い選手になんなきゃなって最近の試合を通して思うし。チャレンジしていきたいなって思います。

廣澤  自分は最初の方にうまくいきすぎて。この試合は完璧だったって思える試合はないんですけど、それでも自分の中でシーズン通したら最初の方が良くて。内定も決まって特別指定もされてっていう。逆に早くいろんなことが起きて良かった反面、精神的にもつらかったというか。試合もいっぱいあるし、でも両方に行かなきゃいけない、サッカーの質は両方とも違う、とか。それこそ相手にはスカウティングされてマークも厳しくなるとか。良い反面、自分の中でも理想が高くなったし、どんどん心がきつくなったというのもあって。そういう所では、自分自身と向き合う、メンタルを強くする面で後半は学べたというか。チームには形として貢献できなくて悔しかったしつらかったけど、サッカーを通して学べたかなって思います。

 

「ゼロから何かを作り上げるのってすごく大変だし重労働だな」(吉野)

7月31日、関カレ日大戦では『4年生FWトリオ』が揃ってゴールを決めた(左から廣澤、髙橋、吉野)

 

――では最後、メインテーマである早慶戦に移りたいと思います。今年は時間をかけて舞台を作るところから始まってますけど、それぞれどういう役割を担っているんですか

髙橋  私は真央さんの下にいて、SNSの担当をしてたんですけど。真央が結構やってくれて。

吉野  何を作ったか言ってあげてよ(笑)

髙橋  私は(笑)、突撃インタビューを担当してました(笑)

吉野  自分の仕事はSNSの部分で早稲田の統括をしてました。

廣澤  私はプレゼント企画とポスターのところで(笑)。まぁ、ちょっと仮リーダーみたいな感じで(笑)。そんな感じでイベント系の仕事をしてました。

――この経験通して得たこととかありますか

吉野  ゼロから何かを作り上げるのってすごく大変だし重労働だなって感じて。何もないところから企画決めたり、どう運営していくかを決めていくって、今までは上に従っていけばよかったけど、今回は自分たちで決めないといけなかったから、結構苦労して。だからゼロイチってすごい大変だなって感じました。

――ここまでの3年間、定期戦ではそれぞれどういう結果でしたか

廣澤  全然いい思い出がないですー(笑)

吉野  私出てないですー(笑)

一同  (笑)

廣澤  ご縁がないと思っております(笑)

吉野  雛は?

髙橋  私は全部出てますね。ありがたく。

――早慶戦ってどういう舞台ですか

髙橋  自分たちで作り上げてきたものを、準備から最後の片づけまで慶応と協力してやって、かつ勝負をするので、早慶戦だからこそか感じる雰囲気とかはある、やっぱり早稲田として慶応に戦えることが夢というか。特別な舞台だと思います。

――今年は有観客でスタジアムで、ということですけど、いつもより多い観客の下、いいスタジアムでやることに対してどう思ってますか

髙橋  有観客でAGFフィールドで行えるのはありがたいことだし、ここ2年そういう中でやてなかった中で、より一層早慶戦という雰囲気はあると思います。

吉野  1年生の時はボールガールをしていまして、萌が隣にいて「悔しいね。一緒にがんばろね」って二人で約束して2、3年生はけがでサッカーすらしてなくて。萌も一緒で。やっとけがせずにここまでやって来れて、ピッチの外から見てた憧れの舞台、早慶戦の時ってみんな輝いてたし、注目されて楽しそうだなって。一緒に作り上げていたのにもかかわらず、外から見てたというか、その時だけは同じチームだけど距離を感じた舞台ではあったので。その舞台に立てるということで、楽しみで仕方がないです。

廣澤  どんな形であれ早慶戦という舞台はみんなで作り上げるものなので、早稲田の勝利のために少しでも貢献できればなと思っています。

――注目選手を上げてください

廣澤  自分は真央にしようかな。初出場の吉野さんで行きたいと思います(笑)

髙橋  自分は菊池さんで!

吉野  萌かな。萌にします。一緒の境遇で、1年生の時にゴール裏で「出ようね」って、マジで半べそかきながらボールガールしてたのを覚えていて、本当に悔しくて。萌と約束した舞台なので見て欲しいですね。

――では、改めて早慶戦への意気込みをお願いします

髙橋  一度も負けたことがないので、次につなげるためにも絶対勝って終わりたいと思います!

廣澤  これから皇后杯、インカレと大事な試合が始まるので、その積み上げにもなるような一戦にしつつ、いろんな人が見てくれるということで、女子サッカーとか早稲田の良さを伝えられるような試合にしたいなと思います。

吉野  伝統の一戦を戦える大学は私たちか慶応さんしかいなくて、その中で自分たちの熱い熱い姿を皆様にお届けできたらなと思います。応援よろしくお願いします!

(取材・編集・写真 前田篤宏、写真 大幡拓登)

早慶女子クラシコに向けた意気込みを書いていただきました!

◆廣澤真穂(ひろさわ・まほ)(※写真左)

2000(平12)年10月18日生まれ。167センチ。ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ出身。卒業後はWEリーガーになることが決まっている。ア女では入学時から存在感を放ち、2、3年時には関カレベストイレブンに選出された。

◆髙橋雛(たかはし・ひな)(※写真右)

2000(平12)年12月26日生まれ。157センチ。日ノ本学園高校出身。社会科学部4年。今季は中盤からトップまでセンターラインでア女の心臓となっている背番号10。2年時には廣澤と共に関カレベストイレブンに輝いた。

◆吉野真央(よしの・まお)

2000(平12)年7月21日生まれ。163センチ。聖和学園高校出身。スポーツ科学部4年。2年生までDFだったとは思えない得点力を発揮するFW。昨季インカレ準決勝では貴重な決勝点をあげた。