第36回関東大学女子サッカーリーグ 後期第3節 | ||||
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早大 | 1 | 0-0 1-1 |
1 | 東京国際大 |
【得点】 (早大)90+2分:木南花菜 (東京国際大)52分:小林砂璃 |
3週間ぶりの公式戦は、雨の中東京国際大グラウンドでの開催となった。なかなかシュートまで行けない展開が続く中で17分、中盤の要MF宗形みなみ(スポ1=マイナビ仙台レディースユース)が負傷しDF木南花菜(スポ2=ちふれASエルフェン埼玉マリ)へ交代を余儀なくされる。さらに52分にはビルドアップのミスから失点し、状況はさらに厳しいものに。攻めあぐねるア式蹴球部女子(ア女)だったが、途中交代の木南の上げたクロスがそのままゴールに吸い込まれ1-1。このゴールと同時にホイッスルが吹かれ、激戦は劇的ドローで幕を閉じた。
ラストプレーでの同点弾に会場は無観客ながら大きく湧いた。木南は劇的弾も「ミスキックなので悔しい」と複雑な感情を抱いていた
関東大学女子リーグ(関カレ)でア女は、試合前の時点で3位。優勝に向けては絶対に落とせない一戦だったが、体調などの事情で多くの主力選手を欠く難しい台所事情で臨むことになった。開始直後の3分、相手CKの折り返しを合わせられるがポストに助けられる。こぼれ球もシュートにつなげられたが、DF堀内璃子(スポ3=宮城・常盤木学園)が体を張ってブロックした。しかし17分、1年生ながらチームの中心であるMF宗形が相手選手との接触後倒れこみ負傷。木南が左サイドに投入された。29分には縦パスを受けたMF白井美羽(スポ2=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)がループパスでFW吉野真央(スポ4=宮城・聖和学園)へ。シュートまではいけなかったが独特なセンスでチャンスを演出した。
敵陣には入り込むもシュートまで辿り着く場面が少なかった今節。シュート本数は東京国際大の8に対してア女は7と珍しく下回った(写真は吉野)
後半に入ると木南を右に、FW生田七彩(スポ1=岡山・作陽)を左に入れ替えた。しかし52分、ビルドアップの場面でパスを受けたDF井上萌(スポ4=東京・十文字)がボールを奪われる。シンプルにゴール前に入ったクロスを冷静に決められ0-1。痛いビハインドを負うことになった。なんとか同点に追いつきたいア女は、右サイドのパス回しから得点を狙うが、なかなかシュートまでいけない。61分には吉野が絶妙なタイミングで飛び出したが、オフサイドの判定となり堅い守備を崩せない。関カレでは今季2度目の敗北も見えてきたアディショナルタイム。チームを救ったのは途中交代の木南だった。右サイドでパスを受けると素早くクロス。木南が「意図してはいなかった」と話す高く舞い上がったボールは、相手GKの手をすり抜けてゴールに吸い込まれた。半ば悲鳴のような歓声が起こると同時にホイッスルが鳴り、ラストプレーの劇的展開で試合は幕を閉じた。
昨季の後期も今節のようにチームを救う活躍を数多く見せていた木南。今季もそのヒロインっぷりは健在だ
リーグ内でも圧倒的に失点数の少ない鉄壁の守備を誇るア女にとっては、難しい試合になった今節。「先制点でしたし、ア女にとっても自分の精神的にも重い1点」とセンターバックで好プレーを連発したDF夏目歩実(スポ3=宮城・聖和学園)が語るように、ミスから献上した1点は目の覚める一撃だった。それでも勝ち点をもぎ取れるところに、今季のア女の強さが表れている。「後期の一発目がこれで、良い教訓を得られた試合だった」と指揮官。この経験と教訓がきっと、ア女を強くしてくれるだろう。
(記事 大幡拓登、写真 前田篤宏、渡辺詩乃)
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 近澤澪菜 | スポ4 | JFAアカデミー福島 |
DF | 2 | 夏目歩実 | スポ3 | 宮城・聖和学園 |
DF | 4 | 堀内璃子 | スポ3 | 宮城・常盤木学園 |
DF | ◎5 | 船木和夏 | スポ4 | 日テレ・メニーナ |
DF | 8 | 井上萌 | スポ4 | 東京・十文字 |
MF | 6 | ブラフ・シャーン | スポ4 | スフィーダ世田谷FCユース |
MF | 18 | 白井美羽 | スポ2 | ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ |
MF | 26 | 宗形みなみ | スポ1 | マイナビ仙台レディースユース |
→17分 | 17 | 木南花菜 | スポ2 | ちふれASエルフェン埼玉マリ |
FW | 10 | 髙橋雛 | 社4 | 兵庫・日ノ本学園 |
FW | 11 | 吉野真央 | スポ4 | 宮城・聖和学園 |
FW | 27 | 生田七彩 | スポ1 | 岡山・作陽 |
◎=ゲームキャプテン |
スターティングフォーメーション
後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)
――劇的な同点弾を決めた木南選手はどのように評価していますか
今シーズンここまで出場機会が少ない中で、自分なりに何が足りないのかということを自主練や練習でコツコツと積み上げているのを見ていました。もちろんまだ課題はありますが、今までだったらクロスを上げる前にグッと行けなかったところで前を向いて行けるようになったからこそ、今日のようなゴールが生まれたんだと思います。彼女自身の努力の結果がよくわかる内容でした。
――押される時間もあったと思いますが、試合全体としてこのような展開を予想していましたか
東京国際大のスタイルとして、攻撃では早いタイミングで蹴ってくるというのは予想していたんですが、失点シーンに関しては2対1の場面でもっといかないといけませんでした。そこはディフェンスラインで試合中、試合後にしっかり話し合っていたので、修正してくれると思います。もっと高い位置で先に触られない、運ばせないという守備にしていければいいですね。
――今日も含め苦戦した試合の多くは中盤を締められて、縦パスを入れた後につなげないという展開が多いと思いますが
前半は「縦は無理だな」と思った時に横に動かすことができていて、相手も横に伸びてくれたんですが、どうしても失点後は中盤のバランスがくずれることも多かったですね。ベンチからも「(ボールサイドに)寄るな」ということは伝えたんですが、精神的に焦ってしまった部分もあったと思うのでそれも含めて成長しなければならないと思います。絶対に先制点を取られない、ということは無いですし取られた時にも自分達がやるべきことをやれるように、私自身もしっかりオーガナイズしなければならないと感じました。
――終盤にかけて安易なパスミスが増えるシーンも多かったと思いますが、戦術というよりメンタル的な物が原因なのでしょうか
試合が終わった後にも選手たちに話したのですが、それは日々の練習の結果だと思っています。技術の高い4年生が特別指定や練習参加で抜けていってしまう中で、例えばパスコントロールひとつをとっても
ずれてしまった時に「あ、ごめん」で終わらせてしまっていた一週間だったというのが、私自身も選手たちにとっても反省すべきことだと思います。(今日の試合は)この一週間の結果です。
――精神的にブレても技術的に問題ないところを目標にしなければならないということでしょうか
どちらかと言うと、日々の練習でパスをずらさないことに対してどれだけこだわれるか、ということですね。パスがずれた時に「ごめん」ではなくて「ずらすな!」と言えていたかどうか。その当たり前の基準がこの一週間どこに置かれていたのかというのが今日出たんじゃないかと思います。
――ディフェンスラインはポジションの入れ替えもありましたがそこに関してはいかがですか
夏目をセンターバックに置いた理由としては、最終ラインからミドルゾーンのところまでビルドアップでしっかり運びたい、その目的に夏目の能力が適しているので今日はセンターバックに置きました。あとはカウンターの時に、あの子は喋れるので。そこにも期待しました。
――攻めあぐねた時にクロスが多くなることに対してはどのように考えていますか
結局クロスを入れるとしても、今のア女のフォワードはサイズがそんなにないので難しいと思うんです。クロスを入れるならもっとごちゃごちゃしないと、という感じでしたね。飲水タイムの時にも選手が話している声は聞こえてきましたが、和夏(船木)はそこの判断ができる選手なので。クロスを上げるということ自体は悪くないのですが、そこの質を高めたいですね。そして私としてはクロスを入れるにしろ入れないにしろ、中盤のバランスを整える方がより大事だと思っていました。
――それこそアンカーの井上選手にはかなり声をかけていましたが
ア女はアンカーを置くシステムで、相手が4-4-2で中のスペースが空いてくるので、そこで彼女が(ボールサイドに)寄りすぎずに展開ができるともっと横の動きが出てくると思いますし。受ける時にあまりプレッシャーのない時にも返してしまっているシーンも多かったので、何度も「首振れ」と言う指示をしました。技術がある選手なので、首を振って相手がどこから来るか分かっていればしっかりとターンすることもできると思います。うちはもっと小さいスペースでパス回し(練習)をやっていますし。
――最終的にはなんとか勝ち点を手にしました
奇跡的でしたが(笑)、花菜って去年からそういうゴールが多いんですよね。山梨学院大戦でも同じようなゴールを決めていると思いますし。
――リーグ内でも優勝争いが熾烈になってきていますが、終盤戦に向けて意気込みを聞かせてください
今日は勝ち点1をなんとか拾えたというか、ほぼ勝ち点0の試合だったというのはここにいた全員が理解していると思います。ルールが変わらない以上、メンバーがなかなか揃わない状態も仕方ないと思いますし、今日の内容、結果をそれぞれが次に活かせるようにしていきたいです。後期の一発目がこれで、良い教訓を得られた試合だったと思います。
DF夏目歩実(スポ3=宮城・聖和学園)
――劇的な幕切れとなりましたが、今日の試合を振り返ってください
まずは安心しているというのが一番大きいです。リーグの順位的にはこちらが上で、勝って勢いをつけるつもりで来ていたので勝ち点3を取ることができなかったのは痛いという気持ちもあります。ただ今まで関カレにあまり関わっていなかった花菜(木南)のゴールで勝ち点1を取ることができたのは、チームにとっても大きな成果になったと思いました。
――3週間ぶりの公式戦となりましたが、試合の入りはいかがでしたか
3週間公式戦がなく、メンバーも変わり11対11の練習もあまりできなかったので、想定外のことは起こるかもしれないと思っていました。前半に宗ちゃん(宗形)が怪我をしてしまったのもあり難しい部分はありましたが、それでもみんなが共通認識を持っている部分、ア女として積み上げてきた部分を出すことはできたかなと思います。
――攻められる時間も多かったと思いますが、守備面はどのように振り返りますか
もちろんどんな試合でも耐える時間帯はありますし、今日も相手が強みにしているセットプレーでいくつかピンチを迎えるシーンがあり、もっと自分たちの危機感を持ってやらなくてはいけないと思いました。シュートは遠目から何本か打たれましたが、コースも限定できていたのでそこまで焦ることはなかったです。ただリーグ戦ここまで失点数はかなり抑えられている中で、これ以上取られたくないというのは澪菜さん(近澤)とも話していたので、あの失点はかなり悔しかったです。先制点でしたし、ア女にとっても自分の精神的にも重い1点でした。
――マッチアップした相手選手はパワーのある選手だったと思いますが、そういった相手との対戦で普段から考えていることはありますか
自分は身長の高い選手ではないので、自分より大きい選手とやることがほとんどです。今日の相手選手もフィジカルでは間違いなく自分より上ですが、去年からマッチアップしている選手で特徴も分かっていますし、ア女にもタイプのよく似た真央さん(吉野)がいて色々想定はできていました。足の速さには自信がありますが、フィジカルで勝負するディフェンダーではないので、相手がボールから離れたところを狙って取ることを意識しています。自分だけでなく前線の選手に声をかけて動かして、予測しながらボールを取れるようにしています。
――中盤以降なかなか前に行けないシーンもあったと思いますが、ビルドアップ時に縦パスを入れる時に考えていることはありましたか
横にだけ動かしていても意味がないので、横に動かしながらアンカーの萌さん(井上)やインサイドハーフの雛さん(髙橋)や美羽(白井)を見るようにしているんですけど。足元のスペースさえ空けてくれれば入れることはできるので、ボールをもらう前から要求して当てたりとか、基本はそちらを主にして相手が締めてきたら外に出すように意識しています。真央さんとかも奥まで顔を出してくれますし、みんなと目を合わせながらやるようにしています。
――センターバックでプレーする時とサイドバックでプレーする時、ご自身の中でやりやすい方はありますか
監督を含め色々な人に聞かれるのですが、やりやすさに関してはあまり変わりないです。攻撃に関われる分サイドバックが楽しいというのはありますが、自分はコーチングも強みにしているので全体が把握できるセンターバックも自分には合っていると思います。どちらのポジションに置かれても自分の強みが出せるように、周りと合わせながらというのは意識しています。
――皇后杯予選を含め多くの試合が続くと思いますが、チームとして今後どのように戦っていきたいですか
オフも終わって後期に入っていく中で、トーナメントやリーグ終盤戦と負けられない試合、結果にこだわらなければならない試合が多くなると思います。そういった時に今日の花菜のゴールもそうですが、目に見える結果にこだわりながら、前期から積み上げてきている守備の部分やビルドアップ、攻撃の崩しなどをもっと全員でつきつめてやっていきたいと思います。
DF木南花菜(スポ2=ちふれASエルフェン埼玉マリ)
――率直に今試合を終えていかがですか
クロスしたつもりだったボールがそのままゴールに入って、自分の意図したプレーができなかったので最初に出た感想としては「悔しいな」って思ったけど、自分としては(今季)公式戦初ゴールだしチームとしても勝ち点1ですけど取れたことはよかったなと思います。
――チームメイトから祝福されていかがでしたか
今まで途中出場で出てもなかなか貢献できなかった分、こういった形でチームにちょっとでも貢献できたのはよかったなと思います。
――特に後半は右サイドに入ってチームの攻撃を活性化させていたと思います。内容的にも充実したものになったと思いますけど、ここについてはいかがですか
後半から右に入ってフリーでボールを受けられたシーンが多くて、和夏さん(船木主将)も攻撃参加してくれたのでパスコースもあって、自分から仕掛けたり、選択肢が広がっていたのですごくやりやすくて周りの人に助けられたなって感じています。
――去年もチームを救う活躍が多かった中で、今季はここまで出場数が多くなかったなと思います。その中で結果が出た、ということについてはどうですか
なかなかうまくいかない時期とかがあって、それに対してトレーニングなどをしてきて、そういうことがやっと少しずつで始めたのかなと思います。
――ここから皇后杯予選も入ってきますけど、意気込みだったりはありますか
さっき言ったように自分の今までできなかった部分ももっと伸ばしていきたいですし、こうやっていきなり入った時もチームに合わせたり、自分のプレーもどんどん出してチームのためにプレーできたらなと思います。
――今日は3トップの右で出られましたが、右SBでの出場も多いです。役割の幅広さみたいなものに対してはどう受け取っていますか
個人的には攻撃が好きなんですけど、守備もまだまだ課題があります。サイドバックから見たサイドハーフの動きとか、そういうのを関東リーグとかで感じることはできると思うので、2つのポジションをできることをプラスの方向にもっていきたいなと思います。
――チームとしては格下相手に内容的にも苦しい場面が多かったと思いますけど、ここについてはどういう感想を持っていますか
ひとつはもっとシュートを打てればよかったかなと。サイドの崩し、クロスを上げるところまではできているけど、シュートシーンは少なかったと思うので、最後の質やその前の一つ一つのパスの質をもっと上げていければいいかなと思います。
――先月の31日から4日間のオフと14日の延期を挟んで約3週間のトレーニング期間がありましたけど、どういうことを取り組む期間になっていましたか
フィジカル的にきつい練習とかもあったけど、みんなで鼓舞しあって(コンディションを)上げていったりできたと思います。