廣澤・髙橋・吉野の『4年生FWトリオ』がそろって得点! 珍しく失点も連勝絶やさず7月全勝!!

ア式蹴球女子
第36回関東大学女子リーグ戦後期2節
早大 1-0
3-1
日大
【得点】
(早大)13分:廣澤真穂、63分:髙橋雛、86・89分:吉野真央
(日大)54分渡邊莉沙子

 ア式蹴球部女子(ア女)は31日、関東大学女子サッカーリーグ(関カレ)後期2節を戦った。日大を本拠地・東伏見に迎えての一戦は7月最終戦。幸先よくFW廣澤真穂(スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)が先制すると、34分にはGK近澤澪菜副将(スポ4=JFAアカデミー福島)のPKストップでリードを守る。しかし54分に4試合ぶりの失点を喫する。久しぶりの失点で同点に追いつかれるも精神的に落ち着いていたア女はその後、FW髙橋雛(社4=兵庫・日ノ本学園)の勝ち越しゴールとFW吉野真央(スポ4=宮城・聖和学園)の2得点で勝負を決定づけた。ア女は『4年生FWトリオ』のゴールで関カレの連勝を5に伸ばし平均勝ち点首位をキープ。さらに公式戦6戦全勝で7月を終えた。

 

トリオ揃ってのゴールは今季初(左から廣澤、髙橋、吉野)。関カレ23得点中15点がこのトリオから生まれている

 多くの観衆が押し寄せた会場は酷暑に見舞われ難しいコンディションの中のゲームとなった。猛暑のなか激しい攻防繰り広げられ、ア女は前線での守備でリズムを掴むいつものサッカーで徐々に日大ゴールに迫った。特に裏への抜け出しが目立った今節。13分の先制シーンでも裏のスペースを巧みに利用した。髙橋と廣澤の縦の動きで生まれたDF間のスペースへ入り込んだ廣澤に、DF夏目歩実(スポ3=宮城・聖和学園)から針の穴を通すようなパスが通る。「相手と並んだ瞬間に行けると思った」(廣澤)と、力とスピードでマーカーをはがし前に出てきたGKも抜き去ると無人のゴールに流し込んだ。前節を終えて9試合2失点という堅守を誇るア女にとって生命線でもある先制点を奪ったところで流れに乗っていきたいところだ。しかし「守備のところで緩さが出てしまった」(髙橋)と、相手の中盤の勢いと前線のスピードに苦しみ始めた。すると34分にPKを献上してしまう。相手FWのスピードについていけず必死のスライディングがボールではなく相手の足に入ってしまった。しかしここは近澤が完璧な読みと反応でキャッチ。これにはベンチや客席から歓声が湧いた。前半ATにもカウンターから際どいシュートを放たれるも、守護神は失点を許さなかった。

 

先制点と決勝点を決めた廣澤(写真右)と髙橋(写真左)

 拮抗した試合展開はハーフタイムを明けてからも続いた。ア女は日大の守備に攻めあぐねる中、54分に見事なパスワークを許し失点。シュートは好セーブを続けていた近澤の手とポストの間をすり抜けた。その後も勢いをつけた日大に好機を許す場面もあり、慣れない失点が精神的にこたえているのでは、焦りが生まれているのでは、と思ってしまうが大学女王にそのような雰囲気は一切なかった。「廣澤はサイドの方が生きる。(吉野)真央を入れれば追加点(を狙える)と思っていた」(後藤監督)と、ポストプレーが得意な吉野を投入し廣澤をサイドに配置。ア女は新布陣で得点を狙いに行く。この采配はすぐに功を奏した。63分、DF井上萌(スポ4=東京・十文字)のパスを吉野が相手を背負いながらでスルー。その先にいた髙橋がDFを交わし前に飛び出したGKの股を右アウトサイドで冷静に通し勝ち越しゴールを決めた。終盤には吉野がさらに躍動する。86分、廣澤のパスを華麗に反転しながら足元にトラップしGKの股を抜く強烈なシュートでネットを揺らすゴラッソ。吉野は雄叫びとガッツポーズで喜びを爆発させた。その3分後には相手のタックルを強靭なフィジカルではじき返し、またもやGKの股を抜くシュート。今度はゆっくりゴールラインを超えていく形でネットを揺らしてみせた。勝利を決定づけたア女は無難に試合を締め勝利。7月最終戦を無事勝利で終えた。

 

途中交代で流れを変え2得点した吉野。「ほかに改善できる部分がある」と飽くなき向上心を口にした

 7月は6戦全勝だ。さらに言えば6月19日から負けがない。離脱者などで少ない人員と過密日程の中でのこの結果はすさまじい。そして廣澤、髙橋、吉野の『4年FWトリオ』全員にゴールが生まれたことは何よりのハイライト。その立役者と言ってもいい吉野は「体を張って守ってくれてつないでくれている」とDF陣や中盤の守備があっての4得点だと強調した。本来は合宿を挟んでチームの成熟度を高めてから夏場に挑むが、今季は延期が続いたことが影響しオフといったオフがない。今回は「本当に貴重な4日間」(監督)と、次節の8月14日に向けてハードな前半戦を戦い抜いた部員に短い短い夏休みが用意された。元々人数が少ない上に4年生の主力が不在になる試合も増えていくことが予想される後期。皇后杯ベスト8とインカレ連覇を達成するためには、吉野が言うようにより一層の『競創』が求められる。

(記事、写真 前田篤宏)

 

近澤はPKストップだけでなく、CKではいとも簡単にキャッチ。指揮官も「試合ごとにどんどん良くなっている」と興奮気味に絶賛した

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 近澤澪菜 スポ4 JFAアカデミー福島
DF 夏目歩実 スポ3 宮城・聖和学園
DF 堀内璃子 スポ3 宮城・常盤木学園
→HT 15 田頭花菜 スポ2 東京・十文字
DF ◎5 船木和夏 スポ4 日テレ・メニーナ
DF 井上萌 スポ4 東京・十文字
MF ブラフ・シャーン スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
MF 三谷和華奈 スポ3 東京・十文字
→90+1分 27 生田七彩 スポ1 岡山・作陽
MF 14 笠原綺乃 スポ3 横須賀シーガルズJOY
→59分 11 吉野真央 スポ4 宮城・聖和学園
MF 26 宗形みなみ スポ1 マイナビ仙台レディースユース
→90+1分 18 白井美羽 スポ2 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
FW 廣澤真穂 スポ4 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
FW 10 髙橋雛 社4 兵庫・日ノ本学園
◎=ゲームキャプテン

 

スターティングフォーメーション

 

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――今日は暑かったですし、珍しく追い付かれてからの勝利になりましたけど振り返っていかがですか

 そこは精神的な成長で、失点が今日入れると3という失点が少ない中で戦えているので、失点してどうなるのかなとは思いましたけど、しっかり自分たちでやることをやって勝ってくれたなと思います。今日は本当に選手たちの精神的にも身体的にもタフさが素晴らしかったと思います。

――4年生のFWが試合を決定づけましたけど、得点という部分に関してはいかがですか

 前半からGKとの1対1で外してしまうシーンがあったり、でも大事なのはその後だと思っていて、守備もしっかりとしてくれるし、特に今日の入りの守備はよかったです。体力的には奪って(前に)出てドリブルしてシュート、ってフィジカル的に厳しいことをしているので、もちろんできる状態に持って行けるつもりなんですけど。その後で(髙橋)雛がねじ込んだりとか(2点目)、彼女たちの精神的な強さだと思うので素晴らしかったと思います。

――4得点の裏には中盤での守備や近澤選手のセーブなどがあったと思いますけど、守備についてはいかがですか

奪われた後にすぐに奪い返すという部分はしっかりできていたかなと。(戦術的に改善点があったが)後半に選手たちが話し合って改善してくれたので、修正力は素晴らしいと思っています。

 

FW廣澤真穂(スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)

――今日は先制点を決めましたが、90分出場されていかがでしたか

 先制点の大切さは試合を積み重ねていくなかですごく感じていて、自分がそこを取ることで後ろが落ち着くし、ゲームも落ち着くなと思ったので先制点を取れたのは良かったなと思います。

――2人に囲まれながら力のスピードで押し切った形でしたけど、得点はどういうふうに振り返りますか

 相手と並んだ時点で「これは行けるな」と思ったのでそこで抜け出すのは前提として、あとはキーパーとの駆け引きで、前に出てきていたので交わして落ち着いて決められたのが今日の収穫かなと思います。

――今日のGKは前に飛び出すことが多かったですけど、いかがでしたか

 もうちょっと早く分かっていればロングシュートとか、もっといろいろなアイデアが出たかなと思うので、そこはキーパーの特徴を捉えられるようにしたいなと思いました。

――珍しく失点して、そこから焦りみたいな感情はチーム全体で感じたりしましたか

 なかなか失点をしないということは失点したらリズムが崩れちゃう、焦っちゃう部分があると思うので、そこで前線の4年生が決められたのは大きかったかなと思います。

――対戦してみて日大はどう感じましたか

 結構球際とか激しい感じで、去年戦った時も点数的にはとれていなくて苦戦したんですよ。それも踏まえたうえで4点取って勝ったのは良かったです。

――4年生のFW3人で点を取って勝利に導いたことに対して何か思いはありますか

 シュート練習も3人でやってたんですけど、今年入ってから3人で決められるシーンはなかったのでこの試合を機にこれからもこの3人でバンバン点を積み重ねてチームを勝利に導きたいと思います。

 

FW髙橋雛(社4=兵庫・日ノ本学園)

――今日は珍しく失点して追い付かれた状況から決勝点を決めましたけど、振り返っていかがですか

 最初先制して、そのあと崩れてきて追い付かれてしまったんですけど、そこからまた立て直して自分たちでいいイメージを持ちながらチャンスを多く作れて、その中で流れてきたボールをしっかり決められて良かったです。

――具体的にどういうところで崩れていった感覚を持ちましたか

 自分は前線からの守備もそうだし、守備のところで緩さが出てしまって何回か危ないシーンもあったし、自分自身も含めてきつい中でも早く準備をするところが出なくなってしまった、そういうところが失点につながったのではと思います。

――相手は中盤の競り合いも強かったなと思いますけど、実際に戦ってみてどういう感想を持ちましたか

 中盤でいかにボールを拾えるかというのは大事なポイントだと思うので、自分を超えたボール、セカンドとかに反応できるようにしていくことが課題だし、そういう部分でももっとチームに貢献していけたらいいなというふうには思っています。

――失点自体が少ない中で1点追い付かれてから、チームとして焦りみたいな雰囲気はありましたか

 焦りはあんまりなかったんですけど、自分たちが落ち着いてやることをやれば勝てる自信はあったので、結構冷静に焦ることなくプレーできたので、気持ちの部分とかは全体的にも良かったのかなと思います。

――決勝点を決めた瞬間はどういう感情が湧き上がりましたか

 自分は最近サッカーをするうえで大事な貪欲さとかが欠けているなと思っていたので、そこの部分を出そうと思っていた中での今日の試合だったので、まだまだですけど結果が出たのかなと思っているので、もっともっと基本的な気持ちの部分だったりを見せていくべきだなと思いました。

――今日はベンチからも「ナイス雛」と声が上がってました

 そこは自分自身で上げていかないといけないので、誰よりも走るとかそれを見てチームが勢いづいていくとか、誰が勇気づけられるとか、そういう姿勢を見せていくのも自分が目指している選手なので、その部分を突き詰めていこうと思います。

――そしてなんといっても今日は4年生のFW3人で点を取って勝ちに導いた点についてはいかがですか

 とてもうれしいです。それぞれの良さが出た試合でもあったので、お互いにカバーしあいながらも結果にこだわって、今日みたいにFWが点を取って勝たせられるようにこれからも頑張っていきたいです。

 

FW吉野真央(スポ4=宮城・聖和学園)

――今日は途中出場で2得点しましたけど、試合を振り返っていかがですか

 とちゅうから入っても最初から入っても点を決めるところは変わらないし、入った田移民が1対1という失点直後で、チームの状態も良くなかったから自分が勢いづけられたなと思って入って、しっかりと勢いづけることもできたし結果も出たのでまぁまぁ良いかなという感じです。

――2試合連続でのゴールとなりましたけど、最近の結果についてはいかがですか

 結果も大切にしているけど、結果にこだわるけど他のところにもこだわりたいという部分があるので、もちろんうれしいですけどその他に改善できる部分があるので、今日の試合でも課題は出たので、しっかりと直して行けたらなと思っています。

――その課題は具体的にどういったところですか

 前節と変わっていないですけど、ゲーム体力とかがまだまだなので30分くらい出たんですけど、しんどかったので8月はもっと暑くなるから、もっと体力つけていかないといけないです。自分がボールを持ったら何かできる自信はあるのでもっとボールに関われるようにしていきたいなと思います。

――4年生FWの3人で点を取って勝ち点3に導いたのは今季初ですけど、ここについてはどういうふうに感じていますか

 うれしいです。3人とも私生活でも仲がいいし、いろんなコミュニケーションを取れていますしうれしいですけど、それだけではなくて下級生がしっかり体張って守ってくれたり、つないでくれたりしてくれるから自分たちが生きているので、周りに感謝しつつみんなで4点取れて良かったなと思います。

――自身の1点目の瞬間には雄叫びを上げていましたけど、決まった瞬間はどういう気持ちでしたか

 自分自身あまりうまくいっていない時期が長かったので、今日の試合は得点も決められましたし、だからこそこみあげてきたものがあって。うれしさというよりは安心したみたいな感情が強くて声を上げてしまいました(笑)。

――2週間という期間が明けたら、シーズンが再開して皇后杯も始まっていきますけど、意気込みはありますか

 毎試合毎試合みんな言っていると思いますけど、自分たちは人数が多いわけでもないしチーム力が問われている中で、全員でもっともっとア女のサッカーを創りあげていきたいと思うので、これからみんなで強くなれたらなと思います。