スーパーゴール連発! 後半3発で逆転快勝!!

ア式蹴球女子
第36回関東女子リーグ戦後期3節
早大 0-1
3-0
大東文化大
【得点】
(早大)47分:宗形みなみ、57分:生田七彩、76分:大森美南
(大東文化大)39分:谷内 柚葉子

 関東大学女子リーグ(関カレ)と同日・同会場開催となった、関東女子サッカーリーグ(関東リーグ)後期3節。前半は相手の落ち着いた守備をなかなかこじ開けられず、逆にカウンターから失点を許してしまう。しかし後半開始から積極的に選手を入れ替えると、みるみるうちにペースを奪取。CKで幸先よく得点すると、57分にはFW生田七彩(スポ1=岡山・作陽)が、76分にはMF大森美南(スポ3=東京・八王子学園八王子)がそれぞれ強烈なミドルシュートを決め3-1。最後まで試合をコントロールし、関東リーグ4試合ぶりの勝利となった。

 

この日は関カレも含め計8つのゴールがア女に生まれたがの中で大森のゴールには群を抜く盛り上がりを見せた

 

 快勝を飾った関カレのゲームからわずか約30分後、ア式蹴球部女子(ア女)は再びグラウンドに立っていた。前月の異常なほどの過密日程に勝らずとも劣らないハードスケジュールだ。序盤からア女はハイラインを維持し、ボールを握る展開に。18分、この日関カレで復帰を果たしたFW吉野真央(スポ4=宮城・聖和学園)が縦パスをフリックし、受けたMF阪本環(スポ1=日体大FIELDS横浜U18)は思い切りよくシュート。ゴールとはならなかったが、果敢にゴールを狙い相手を脅かす。19分には同じく離脱から復帰したDF田頭花菜(スポ2=東京・十文字)が右から鋭く上げたクロスに吉野が合わせたが、キーパー正面。先制点とはならない。すると39分、守備陣の裏をとられ、あっさりと先制を許してしまう。前線からの守備のために維持していたハイラインが、完全に裏目に出た瞬間だった。

 

2週間の離脱を経て復帰した吉野は2試合計90分間プレーした

 1点のビハインドを負ったア女だが、慌てる者はいなかった。「うち(ア女)は後半が強い」と話す後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)の言葉通り、逆転勝利に向けて一段階ギアを上げる。後半開始直後のCKを途中交代のMF宗形みなみ(スポ1=マイナビ仙台レディースユース)が直接決め、試合を振り出しに戻す。57分には同じく後半から投入されたFW生田七彩(スポ1=岡山・作陽)が、相手DF二人を抜き去ると迷いなく右足を振り抜く。強烈なシュートはキーパーの手をすり抜け、ゴールネットに突き刺さった。逆転してもア女は一切手を緩めない。極めつけは76分、MF白井美羽(スポ2=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)の正確なロブパスを中にコントロールしたMF大森美南(スポ3=東京・八王子学園八王子)が、低弾道の強烈なロングシュートを叩き込み3点目。利き足ではない左足でのスーパーゴールに観客もどよめいた。大森の無慈悲な一発で大勢は決し、ア女は危なげなく試合をクローズ。“中30分”の2連戦は、鮮やかな逆転勝利で幕を閉じた。

 

宗形は関東リーグでは別格だった。至る所に顔を出し、ボールを収めて攻撃にリズムをもたらした。

 

 関東リーグでは4試合勝ちがなかった中での勝利に、選手たちは満足げな表情。逆転弾を決めた生田も「南葛戦(6月18日、●0-1)では自分がPKを外して負けてしまった。今日は自分の得点で悪い流れを断ち切ることができた」と振り返った。ただ、「南葛戦がチームにとっては良いターニングポイントになった」と指揮官は話す。負けはしたが、関東リーグメンバーにとっては自信と自覚の芽生えた一戦だったようだ。苦しみつつも積み上げ続けた前期のア女。共に競い合いながら、今後もさらに成長した姿を見せ続けてくれることだろう。

(記事 大幡拓登、写真 前田篤宏)

 

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 21 丸山翔子 スポ2 スフィーダ世田谷FCユース
DF 堀内璃子 スポ3 宮城・常盤木学園
→HT 夏目歩実 スポ3 宮城・聖和学園
DF 15 田頭花菜 スポ2 東京・十文字
→HT 26 宗形みなみ スポ1 マイナビ仙台レディースユース
DF 17 木南花菜 スポ2 ちふれASエルフェン埼玉マリ
DF 22 藤田智里 スポ3 神奈川・大和
DF 28 小林舞美 スポ1 ちふれASエルフェン埼玉マリ
MF 18 白井美羽 スポ2 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF 20 大森美南 スポ3 東京・八王子学園八王子
MF 29 阪本環 スポ1 日体大FIELDS横浜U18
FW ◎11 吉野真央 スポ4 宮城・聖和学園
→HT 27 生田七彩 スポ1 岡山・作陽
FW 23 栗田彩令 スポ2 静岡・藤枝順心
→88分 12 渡邊奈美 スポ4 埼玉・大宮開成
◎=ゲームキャプテン

 

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――関東リーグでは4試合ぶりの勝利、振り返っていかがですか

 見た通り選手たち皆喜んでいましたし、嬉しかったですね。

――同点に追いついた後は特に、焦らずリラックスしてプレーしているように見えたのですが

 もちろん前半から勝負はかけていましたが、うちは結構後半に強いので、後半により勝負をかけました。前半は1点ビハインドで折り返しましたが、内容がすごく悪かったわけではないので、想定外ということもなく逆転できると思って宗形や生田を送り込みました。

――後半の選手交代がグッと流れを引き寄せたように思うのですが、頼もしさは感じていますか

 宗方や生田は関カレに45分しか出なかった時点で関東リーグに出ることは分かっていたと思いますし、逆に前半に出た吉野や堀内(璃子・スポ3=宮城・常盤木学園 )もしっかり前半頑張るんだと思ってやってくれたと思います。他の関カレメンバーもそれぞれ自分の役割を理解して準備してくれていました。その中で後半入れた選手たちが活躍してくれたのは素晴らしかったと思います。

――今日活躍した選手は1年生が多かったと思いますが、成長を感じていますか

 最初4-4-2で臨んだので、中盤がすごく広くなったと思います。そのスペースを白井と阪本で頑張って埋め続けてくれていましたし、後半4-3-3にした際にはさらに面白い距離感でワンタッチのパスがつながるようになりました。阪本はもともと足元の技術がある選手ですし、小林も最後まで体を張ってくれました。確かに1年生がよく活躍してくれたと思います。

――今日のような試合を逆転できるのはチームの地力が底上げされているからだと思いますが、そこに手応えはありますか

 例えば今日の大森の得点は素晴らしかったですが、彼女も試合だけでなく練習の中でできることがすごく増えてきて自信もついてきていると思います。もっと伸びしろはあると思っていますが、チームの中で成長を感じる選手の1人です。

――チーム全体としても成長できていますか

 南葛戦が大きかったんじゃないかと思います。南葛戦は最終的にはすごく悔しかったと思うのですが、「自分たちがやらなきゃ」という自覚を持ってくれた試合でもあると思うので。それまでもしっかり戦ってはくれていましたが、あの試合はひとつの良いターニングポイントになったと思います。ただ今季うちは関カレの出場を全員が目指せるようにしているので、そういう意味では関東リーグで自信をつけた選手がまた競い合って関カレを目指してくれればいいと思います。

――では過密日程と人員不足というネガティブなことも、ポジティブに捉えることができているのではないでしょうか

 それがうちの今年の強さだと思います。それこそ南葛戦の前には8人で守る練習をしたんですよ(笑)。ただそこで「本当にこれで守らなきゃいけないんだ」という自覚から、今まで受け身だった選手たちが初めて「史(後藤)さんここはこうした方がいいよ」とか「この2人の位置変えてもいいですか」とか言ってきてくれるようになったんです。結果的に11人でできたのですが、あの金曜日の前日練習がその試合以降にも大きく作用したと思います。

 

FW吉野真央(スポ4=宮城・聖和学園)

――久しぶりの試合になりましたが、いかがでしたか

 できたこと、できなかったこと両方ある中で、自分にとっても課題が見つかった試合でした。点を取りたいという気持ちは強かったですし、後半ゼロで終わったのは悔しかったのですが、自分の中では得るものもあったのでプラスに捉えて次の試合にそなえていこうと思います。

――自分の中でチームに貢献できたと思うところはどういったところですか

 和夏(船木・スポ4=日テレ・メニーナ)とかと良い形も作れていましたし、3人目の動きを促す起点にもなれたので、そこは良かったと思います。

――関東リーグはスタメンで、難しい前半にはなりましたがどんなことを考えてプレーしていましたか

 FWとして点を決めるというのはずっと思っていましたが、決められない時こそ自分の中で負のサイクルに入るのではなく時間を作ったり守備で頑張ったりということは意識しました。また4年生は自分1人だったので、声かけもするようにしていました。

――マークもきつく、低い位置まで落ちてくることも多かったと思いますが

 自分が落ちることによって裏のスペースが空くことも分かっていました。CBの選手が食いついてくるのも分かっていた中で、美南(大森)とも話して自分が作ったスペースを使って、というようにも伝えました。そういう意味では自分が落ちてくることもポジティブというか戦術の中のひとつなので、良い関係を築けたと思います。

――その分フィニッシャーの位置に自分を持ってくることができないという面もありますが、後輩選手も多かった中で自分の役割は何だったと思いますか

 もちろん得点を取りたいのは間違いないですが、得点だけでなく守備面や時間の作り方などいろいろな貢献の仕方があると思うので、これからしっかりと自分らしいプレーを出せるようにやっていきたいです。

――試合前、監督にはどんな声かけをされましたか

 2週間ほど休みをいただいていたので、まずは体力面を戻してほしいと言われました。

――離脱期間はどのようなことを考えていましたか

 もちろんア女の試合も観て早くプレーしたいなとは思っていましたが、自分の中で色々と向き合えた部分もあったのでそれはそれで良かったのかなと思います。

――自分個人として、今後に向けてどんなプレーしていきたいですか

 とりあえず今はたくさん走りたいです。走れば自分の良さ、自分らしいプレーも出ると思うので、早くベストコンディションに戻してチームに貢献したいと思います。

 

MF大森美南(スポ3=東京・八王子学園八王子

――今日はスーパーゴールが出ました。8点出た中で一番盛り上がっていました

ボールを持った時に周りから行けっていう声が聞こえたし、自分も最近決められていなくて、試合前から決めたいといろんな人と話していたからここで決めようと思って自分で中に入って行きました。結果的に「決めれた」っていう感じです。

――入った瞬間はどうでしたか

「しゃっ!」って感じです(笑)。

――逆足でしたよね

打った時は何も考えていなかったけど必死でした。右で持つ余裕もなかったから打った後に「左だ」みたいな感じでした。無心でした

――会場も盛り上がっていましたけど、聞こえていましたか

元々1年生のときから推薦の人が多い中で、この環境でやってきてそれをみんなが見てきてくれたからこそ、自分が試合で1点決める度に他の人以上に盛り上がってくれるから、同じ状況で入ってきた仲間のためにも自分が活躍しなきゃと思っているし、したいです。

――ここからは関カレ出場も大きな目標になっていくのかなと思いますけど、ここについてはいかがですか

最近やっとギリギリの中でベンチに入れていて、だからこそ出たいという思いは日に日に増していくし、こうやって点決められるとかいいパス出せることも増えてきたからこそ、ベンチに入っているときはもし関カレで出れたら絶対点決めてやる、いいパス通してやるっていう気持ちは常に持っているから、普段の練習も今まで通り、今まで以上に頑張って、今までは夢みたいな場所だったけど関カレに出たいなという気持ちは強くなってるなと思います。

 

FW生田七彩(スポ1=岡山・作陽)

――まずは関東リーグのスーパーゴールを振り返っていかがですか

 最近自分のゴールで試合を決めることができていなかったので、絶対に決めてやると思ってシュートを打ちました。

――あの瞬間は何を考えていましたか

 とりあえず打とうと決めていたので、最初ボールを持った時に一歩目から思い切って打ちに行きました。

――関カレとはポジションが違いましたが、中央とサイドではどちらがやりやすいですか

 ずっと中央でプレーしてきたのですが、サイドでの裏抜けとかも有効になってくるので、両方やっていきたいです。

――関カレの方は後半からの出場でしたが、大差がついている中で自分の役割はどんなことだと思っていましたか

 相手が疲れている時間帯に入ってチームの雰囲気を変えたいと思っていたのですが、チャンスは作れても得点を取ることができなかったのでそこは課題だと思っています。

――逆に関東リーグは1点ビハインドを負っている中での出場でしたが、どんなプレーがしたかったですか

 後半から入るというのは決まっていました。失点した時に、みなみ(宗形)とも「絶対に点を取ろう」という話をしていたので、2人のコンビネーションでゴールに迫ることができたのは大きな成果かなと思います。

――今お話にも出た宗方選手とのピッチ上での関係性はどうですか

 みなみは視野が広く自分を活かしてくれるので、自分が背後に抜けたら引いてスペースを作ってくれて、パスをくれる時も分かるので良いタイミングで抜け出せることが多いです。

――関東リーグ自体はこれで4試合ぶりの勝利となりました

 南葛戦で途中出場してPKを外して負けてしまい、最近は自分の得点で試合を決めることができず、チームも勝てていませんでした。今日のゴールは自分にとってもチームにとっても、悪い流れを断ち切る1点だったと思います。

――個人としての今後の目標を教えてください

 チームを勝たせることもそうですし、自分のゴールへの貪欲さで流れを変えられる選手になりたいです。

――前期終盤ということで、チームの今後の目標を聞かせてください

 冬にあるインカレで日本一を目指しているチームなので、もっと求めることは求めていかなければいけないですし、自分自身も上の人たちに受け身になっているのでもっと自分から発信して活躍したいです。

――受け身になるというのは具体的にどういったことでしょうか

 プレー中にこうして、と言われたことに対して自分が考えていることを言えなかったりすることも多いですし、プレーが途切れても話し出すのは全部先輩たちからで、自分がなかなか積極的に話せていませんでした。そういうところからコミュニケーションをとって、自分がやりたいことともすり合わせていきたいと思います。

――前線の先輩たちから学んでいることはありますか

 雛(髙橋・社4=兵庫・日ノ本学園)さんの前からの守備や、真穂(廣澤・スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ) さんや真央(吉野)さんのゴールへの貪欲さからは、絶対に自分がやる、という気持ちをいつも感じます。皆さんの良いところを少しでも見て学んで、自分のものにして良いプレーをしていきたいです。