響いた序盤の失点 関カレ初黒星に意気消沈

ア式蹴球女子
第36回関東大学女子リーグ戦 前期第7節
早大 0-1
0―0
神奈川大
【得点】
(早大)なし
(神奈川大)5分 平井杏幸

 4日、関東大学女子リーグ(関カレ)は前期7節を迎えた。6月の関カレ4試合は全て本拠地・東伏見で開催される。今節はその初戦であり、ア式蹴球部女子(ア女)は神奈川大と対戦した。試合開始早々、ミスも絡み先制を許してしまう。徐々に攻勢を強め前半と終盤にチャンスを多くを作ったものの無得点に終わった。序盤の失点が心理的にも影響したのか、勝負所で十分なパフォーマンスを発揮できず悔いの残る敗戦となった。

 

立ち上がりでペースを崩し、開始5分で失点を許した。3戦目にして今季関カレ初失点となった

 

 「自分たちで悪い状況にしてしまった」。神奈川大のレベルも高かった中で、後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)は試合後あくまでもア女がベストを出せていなかったことが敗因だと強調した。その言葉の通り特に試合の入りはパスミスやセカンドボールの競り負けなど、ア女らしさが感じられないプレーが目立つ。そうなれば必然的に相手にリズムが生まれ開始から5分で失点。これも自陣で許したインターセプトやルーズボールを回収しきれなかったことが起点となった。その後もビルドアップを中心にスムーズに試合を展開できない時間帯が続く。その中でもア女は何とか両サイドから決定機を作り出し、同点、逆転に向けて相手ゴールに襲い掛かった。16分、相手との駆け引きから左サイドで裏を取ると、抜け出したMF三谷和華奈(スポ3=東京・十文字)が高速クロスを入れる。ゴール前に走り込んだFW髙橋雛(社4=兵庫・日ノ本学園)がワンタッチで合わせたがわずか左に逸れた。42分には右サイドバックのDF船木和夏主将(スポ4=日テレ・メニーナ)がMF笠原綺乃(スポ3=横須賀シーガルズJOY)からマイナスクロスを受け、丁寧にゴールを狙ったがまたもやポストの左をかすめた。

 

42分の決定機を外し悔しさをあらわにした船木。本来のポジション、右SBでの出場は久々だったが、攻守で相変わらずの安定したプレーをみせた

 

 チームとして特に課題意識を持っていたのはビルドアップで、「全員でもう一度理解して1点取りに行けるように話した」(DF夏目歩実、スポ3=宮城・聖和学園)と、一人一人の立ち位置やボールの出し入れのタイミングなどをハーフタイムで修正。後半は前半と違って相手のプレスを無効化し、より優位なボール保持を成立させた。この影響もあり徐々に自分たちのサッカーを取り戻し、序盤に多く見受けられたミスも激減。ボールを奪われた直後の守備も安定感を増した。そうなればおのずとチャンスも増える。猛攻があった立ち上がり以降シュートまで辿り着かない時間帯は続いたものの、最後の10分間は再度相手ゴールに襲い掛かかった。83分にはMF宗形みなみ(スポ1=マイナビ仙台レディースユース)がFKからミドルシュート、85分には船木の絶妙なロングボールから髙橋がヘディングシュートをそれぞれ放ったがゴールにはわずか及ばず。無得点のまま試合終了のホイッスルが鳴ってしまった。

 

ハーフタイム明けに途中出場し、右ウィングで躍動したMF築地育(スポ2=静岡・常葉大橘)。関東リーグでの出場が多いが、関カレでのプレーをもっと見たい選手の1人だ

 

 後藤監督は試合後の円陣で部員全員にプレシーズン前の主将・船木の言葉を思い出させたという。「苦しい状況は絶対起こる。その時に下を向かずに今できることを全力でやろう」。関カレ初敗戦ではあるが、常勝軍団のア女にとって1敗の重みはかなり大きい。試合後には落ち込む選手も多く意気消沈としていた。また、攻撃で無得点に終わったことについて背番号10番の髙橋は「練習でやっていくしかない」という言葉を繰り返し使った。今まで90分を通して主導権を握る試合ばかりだったア女にとって、序盤にペースを崩し1点を追いかける展開は珍しい。ただそういった中で逆転しきる力は、今後関カレ優勝、インカレ連覇、皇后杯ベスト8を目指していく中で必要不可欠となる。もちろんベストは90分圧倒し続けることだが、今節のような先制された試合でどのように勝ち点3を奪えるか。今後は機会があれば『先手を取られたア女』にも注目したい。

(記事 前田篤宏、写真 前田篤宏、大幡拓登)

 

85分のチャンスシーン。髙橋はキーパーよりも先にボールに触れたが、ポストに嫌われた。相手GKはボールではなく髙橋の顔をキャッチする形となった

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 石田心菜 スポ2 大阪学芸
DF 夏目歩実 スポ3 宮城・聖和学園
DF ◎5 船木和夏 スポ4 日テレ・メニーナ
DF 13 浦部美月 スポ3 スフィーダ世田谷FCユース
→54分 堀内璃子 スポ3 宮城・常盤木学園
MF ブラフ・シャーン スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
MF 三谷和華奈 スポ3 東京・十文字
MF 井上萌 スポ4 東京・十文字
MF 14 笠原綺乃 スポ3 横須賀シーガルズJOY
→HT 19 築地育 スポ2 静岡・常葉大橘
MF 26 宗形みなみ スポ1 マイナビ仙台レディースユース
FW 10 髙橋雛 社4 兵庫・日ノ本学園
FW 11 吉野真央 スポ4 宮城・聖和学園
→61分 18 白井美羽 スポ2 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
◎=ゲームキャプテン

 

スターティングフォーメーション

 

FW髙橋雛(社4=兵庫・日ノ本学園)

――今日は序盤に失点して、そこから1点を追いかける展開になりましたけど、どういう試合になりましたか

最初に点を入れられてしまったのは痛かったんですけど、その後も立て直して改善しながらゴールに迫るシーンも多く作れた中で、最終的に得点することができなくて攻撃陣として責任を感じてますし、決めるべきシーンで決め切れなかったことが本当に悔しいの一言です。

――給水とかハーフタイムでどういったコミュニケーションをとってピッチに入られましたか

後ろからのビルドアップのところでもう少し落ち着いて相手を見ながら立ち位置だったり、テンポだったりというのを話して、後半から改善できたシーンも多くあって、それは良かったかなと思うんですけど。まだまだ課題として残ったことがあるので練習でやっていくしかないですね

――具体的に課題というのはどういったことがあげられますか

全体としてはビルドアップの部分もそうですけど、個人としては決め切るところだけだと思うし、そこの部分を出せなかったことが今日は本当に心残りなので、練習していくしかないなという感じです。

――開幕戦からそうですけど、髙橋選手にボールが入るとマークも厳しくてやりにくい部分があると思いますけど、そこについてはどう捉えていますか

囲まれるシーンも多くあるんですけど、その中でもやれるのが本当にうまい選手、いい選手なので、その壁を自分で工夫しながら壊していかないとこの先何も残らないし、チームに貢献できないと思っているので、失敗もあると思うんですけどたくさんチャレンジをしてそこの部分を打開できていけたらいいなと思っています。

――ここからまた連勝へということで、前期は7月末まで続くことになりましたけど、あと2か月どのように戦っていきたいですか

連戦が多く続くので、休んでる暇もないので、全員で練習からいい準備をしながら、声かけながらやっていけたらなと思いますし、目の前の一戦、目の前の相手にこだわって勝ちに行きたいです。

 

(※)DF夏目歩実(スポ3=宮城・聖和学園)

――給水タイムが2回とハーフ隊も計3回コミュニケーションを取れるタイミングがありますけど、どういったことを話していましたか

給水タイムはそもそも時間が短いので個々の関りの話だったりとか、そこの修正の部分をちょっとずつ加えながらというのもあって給水直後とかはゴールまで直結するいいシーンもあったので、そういった部分ではいい話し合いができたのかなと思います。ハーフタイムだと全体的にゲームの流れだったり全体に関わるビルドアップの事だったりというのを、共通認識で全員でもう一度理解して1点取りに行けるようにということで、攻撃フェーズのことを話していました

――今日は選手の配置が左右をガラっと変わりましたけど、そこの部分のやりにくさみたいなものはあったりしましたか

そこは別にないですね。今週の練習で合わせていたのもありますし、去年から(浦部)美月とやることもありましたし、そこに関しては信頼も置いているのでやりにくさはなく、いいコミュニケーション取ってできたのかなというふうには思っています。

――負けたとはいえ、開幕してから3戦で1失点というのは評価していいのかなと思うんですけど、ここまでのチームの守備についてはどういうふうに考えていますか

自分たちは守備ありきの攻撃で守備が成り立たないと攻撃の距離感もできないと思っています。結果だけ見れば3戦で1失点ってまぁまぁな評価だと思うんですけど、自分的には全然納得してなくて。今シーズンはリーグを通して無失点というのを自分の中で掲げていたので、あの1失点は自分も関わっていますし反省点ではあるかなと思います。これから対戦していく相手の中で東洋大や山梨学院大は今季は大量得点で勝つ試合が多くて、それだけ前線に力のあるということなのでそういった相手に向けても、もう1回守備を締めなおして一からやっていかないといけないのかなと感じてます。

 

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――試合終わった後、大きい円陣を組んでましたけど、どういった話をされましたか

キャプテンの船木がプレシーズンのときに「これからシーズン始まっていろんなことが起きるけど、下を向くな」と言ってて。今日結果として負けて、パスミスだったり自分たちでより悪い状況にしてしまった部分って全員が感じていたと思うんですけど、そういう時に下を向くなという話をしました。

――サイドの攻撃を中心にしているア女からすると、特に序盤はサイドへのパスが切られてウィングまでボールが届かないところはありましたけど、ああいうところは痛かったですか

最初引っかかったことに対して、少し慌ててしまった部分がありましたよね。今日は相手サイドバックの裏のスペースへのランニングが少なくなってしまいました。要因としては神大が前からしっかりプレスをかけてきたのに対して、つなぎながら1枚はがせればサイドチェンジが出ましたけど、そのもう一個手前ですよね。ビルドアップの時点で奪われてしまうことが多かったので、裏へのパスが出なかったことでア女らしい攻撃が最初できなくて相手のペースになってしまったというところが反省点でした。

――髙橋選手と夏目選手もビルドアップを課題意識に持っていました。具体的にはどういったところが要因としてあげられますか

ハーフタイムにそこの修正を、彼女たちが話していたんですけど。例えば後半(石田)心菜がすぐにボールを離さずに持ち上がったりしましたよね。そしたら相手は下がらざるを得ないという場面がありましたよね。前半は(井上)萌がよく顔を出していたけど、顔を出し過ぎた分サイドチェンジできなくなってしまって圧をかけられてしまったりしました。確かに(相手に)勢いはありましたけど、どちらかというと気持ち的に奪われてしまうという消極的なところが動き過ぎに出てしまったり、早く離しすぎてしまったり。例えばプレスをかけられたとしても、CBから直接SBに出さなくてもボランチがダイレクトではたけばラインを超えられる。そういうところを普段ポゼッションなりでやっているはずなのに、相手の勢いと最初の失点で慌ててしまってできなくなってしまったというところを、ハーフタイムで一回頭を整理してそれぞれが話し合いました。

――試合が始まって印象的だったのが、左右の配置が逆だったところなんですけど、あそこの意図はどういういったところがありましたか

あれは神大だからとかではなくて、元々浦部って左SBで出ることが多い選手で、元々船木は右SBでやってる選手だったので。船木はどちらでも変わりがないんですけど、浦部が左の方が持ちやすいというか、やりやすそうだったので。縦のペアは連動している部分があるので縦とセットで変えたという感じですね。

――そこに関して今日試合を終えてどういった感触を持たれましたか

そこは右と左が変わっても遜色なくできるだろうなと思っていたので悪くなかったんじゃないかなと思っています。

――終盤はゴールまであと一歩というシーンも多かったですけど、1点取り切れなかったという部分についてはどのように振り返っていますか

今日入らなかったことって、この1週間の練習の中での何かが影響していると私は思っているので。たまたま入らなかったということじゃなくて、紅白戦の時にもっとプレッシャーが掛かってたらあそこで落ち着けたかもしれないですよね。それをたまたまで終わらせてしまってはいけないです。得点もそうですけど私が気になるのは球際で負けている部分だったり、セカンドボールをつなぎきれないという、私たちのサッカーの中で絶対やろうぜと言ってた部分ができてなかったところをしっかり修正したいなと思っています。

――けが人も新たに出て教育実習で主力が何人か抜けたりと、監督としては今一番難しい時期かなと思いますし、来週は水曜日に試合があったりと、毎週毎週やりにくさが上がっていると思いますけどそこら辺についてどう考えていますか

チャンピオンズリーグだよね(笑)。さすがに1週間で3試合というのはなければいいなと願ってましたけど、ある程度想定していた部分では。うちは60人80人といるチームではないので、その上で関カレと関東リーグでメンバーを重複させないということをベースにやるのであれば、そういうやりくりはあることは想定されていたことなので。怪我しないというのは難しい競技なのでできうる限り準備してほしいなと思っています。

(※)録音トラブルのため一部のみ掲載