3位決定戦を制す! 残りの『冠』に向けて気持ち新たに

ア式蹴球女子
皇后杯関東予選 3位決定戦
早大 1-0
2-1
ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18
【得点】
(早大)36分 廣澤真穂、46分 笠原綺乃、77分 廣澤真穂
(ジェフU18)47分 山﨑綾乃

 秋雨が降りしきる前日のコンディションとは打って変わって、夏日となった皇后杯関東予選3位決定戦。準決勝で『四冠』を阻まれたア式蹴球部女子(ア女)は、失意に沈む暇もなくジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18と対戦した。前半は膠着(こうちゃく)した展開となり、1ー0で折り返すが、後半は流れを引き寄せて2点追加。FW黒柳美裕(スポ4=宮城・聖和学園)が「絶対勝とうという気持ちはみんな持っていた」と語るように大学生の貫録を見せつけ、皇后杯関東予選を白星で締めくくった。

 

得点した笠原(19番)に駆け寄る選手たち

 

 開始早々にファーストシュートを放ったのはFW髙橋雛(社3=兵庫・日ノ本学園)。勢いのままに得点につなげたいところだったが、しばらくは互いに主導権を握り切れない展開となる。均衡が破れたのは36分。MF築地育(スポ1=静岡・常葉大橘)がゴール前の髙橋にクロスを供給する。髙橋が触れる前に相手GKが跳ね返したボールを、走り込んできたFW廣澤真穂(ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)が押し込んだ。ようやく先制点を奪ったア女は一気にリズムをつかむ。シュートで終わる攻撃を何度も見せ、いい流れで前半を終えた。

 迎えた後半は、完全にア女ペースに。46分にはFKを獲得し、キッカーはMF笠原綺乃(スポ2=横須賀シーガルズJOY)。「直接狙ったというよりかは、(ア女の選手が)触れば入る、もしくは触らなくても直接入る速いボールを狙って蹴った」と、ボールはファーめがけて巻き込むような弾道を描き、ゴールネットを揺らす。これは笠原にとって、公式戦では5月以来の得点となった。しかし喜んだのもつかの間、直後に1点を返され、2-1にされてしまう。それでも声を出してチームを鼓舞し、相手に猛攻を仕掛け続けるア女。ついに77分、最終ラインのDF後藤若葉(スポ2=日テレ・メニーナ)が最前線まで上がり、チャンスが生まれる。最後は後藤からのパスを受けた廣澤が、相手GKとの1対1を冷静に制した。3点目を獲得したア女は前日の屈辱を乗り越え、勝利で皇后杯関東予選を終えた。

 

3得点目を喜ぶ廣澤(右)と築地

 

 試合後に「1つ目の冠が取れなかった事実はしっかり受け止めたい」と黒柳は語った。しかし、その表情から後悔の念は感じられない。「(ピッチに立つ)一人一人が責任を持ってプレーしていた(黒柳)」からだろう。どんなに太刀打ちできないと感じても声を絶やさない姿勢が、反省を生かして修正しようとする向上心が、チームを強くする。「気持ちを切り替えて、また一から頑張っていきたい(笠原)」。残り3つの『冠』(関東大学女子リーグ、関東女子リーグ、全日本大学女子選手権)に向けて、ア女が立ち止まることはない。

(記事 手代木慶、写真 杉﨑智哉、手代木慶)

 

スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ◎1 近澤澪菜 スポ3 JFAアカデミー福島
DF 2 船木和夏 スポ3 日テレ・メニーナ
DF 5 後藤若葉 スポ2 日テレ・メニーナ
DF 20 浦部美月 スポ2 スフィーダ世田谷FCユース
→80+2分 29 田頭花菜 スポ1 東京・十文字
DF 22 夏目歩実 スポ2 宮城・聖和学園
MF 6 ブラフ・シャーン スポ3 スフィーダ世田谷FCユース
MF 18 三谷和華奈 スポ2 東京・十文字
→80分 12 黒柳美裕 スポ4 宮城・聖和学園
MF 19 笠原綺乃 スポ2 横須賀シーガルズJOY
→60分 28 白井美羽 スポ1 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
MF 30 築地育 スポ1 静岡・常葉大橘
FW 9 廣澤真穂 スポ3 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
FW 11 髙橋雛 社3 兵庫・日ノ本学園
◎=ゲームキャプテン
監督:福田あや(平20スポ卒=神奈川・湘南白百合学園)

 

FW黒柳美裕(スポ4=宮城・聖和学園)

――昨日の敗戦からチーム内でどのような話し合いをされて今日の試合に臨みましたか

チーム内では明日から絶対勝とうという気持ちはみんな持っていましたが、やっぱり悔しい部分はありました。それでもちゃんと切り替えようという話をして臨みました。

――今日の試合を振り返っていかがですか

一人一人勝ちたい気持ちが球際の強さだったり、声かけだったりで出ていました。失点してしまいましたが、「次に行こう」というプラスな声が見えたところも含めて、自分たちが主体的に守備できたところでチャンスを作れましたし、自分たちがやりたいサッカーをできたかなと思います。

――前半は苦しい印象がありました。ピッチ外から見ていていかがでしたか

やっぱりコンビネーションのところや、昨日の課題だった奪って決めるというところが最初できていなかったところだと思います。セカンドボールをつながったというのもありましたが、後半の方で修正できたり自分たちのボールが増えたので改善できて良かったなと思います。

――最後はピッチに送り出されましたが、どういう意図で送り出されたのですか

最後に点を決めて勝ち切って締めるという意味で投入されました。みんなが最後まで前から守備をするという中で、声かけをして前から行くことを体現することは意識して入りました。

――今試合で出場した唯一の4年生ということで、チームを引っ張るという立場ですごく責任を感じていたと思います

正直、自分が試合に出ることがあまりなかったので、今日も出るか出られないか分からない立場でしたが、試合に出られなくてもできることはありました。準備や声かけだったり、ピッチ外でコミュニケーションを取るとか。そういうところは自分も含めて4年生がやってきたところだったので、いつもとやることは変えずに最後まで責任を持つことは意識していました。後輩たち一人一人の頑張りや強い思いがあり、4年生がいなくても一人一人が責任を持ってプレーしていて、すごく申し訳ない気持ちはあります。一緒に出られるコンディションに戻して、ピッチ内外ともに勝利に貢献できる4年生でありたいなと思います。

――最後に今回1つ目の冠を失ってしまって、チームとして掲げた『四冠』は達成できなくなりましたが、残り3冠に向けてどのように臨んでいきたいですか

1つ目の冠が取れなかったことは、悔やんでも仕方ないという事実はしっかり受け止めたいです。一番取りたいインカレ(全日本大学女子選手権)のタイトルを取るために、「この負けがあったから」というものにして、自分たちの課題の分析を含めてしっかり改善していきたいと思います。

 

MF笠原綺乃(スポ2=横須賀シーガルズJOY)

――今日の試合全体を振り返るといかがでしたか

昨日の試合に負けて、今日の試合こそは絶対に勝つという気持ちを持ってみんなで試合に入ったのですが、少しうまくいかないところがありました。それでも、後半は修正できて、自分たちのサッカーができたかなと思います。

――どのようなプランを持ってゲームに臨まれましたか

昨日の試合よりも相手も流動的ではないというか、自分たちのプレーをしっかりやれれば、(相手を)はめられるという感じはありました。原点回帰というか、自分たちが前でのプレスからはめて、ディフェンスからしっかりやって(ボールを)奪ってという自分たちのサッカーをやるという感じでした。

――前半の30分過ぎまではうまくいっていない印象でしたが、その原因はどこにあったのでしょうか

距離感やパスのずれが結構あって、はめきれるところをはめきれないというか。距離感が悪いとカウンターですぐに奪いにいけないので、そこが原因だったかなと思います。

――その状況を改善するために、どのような声かけが行われていたのでしょうか

声かけるのは継続して、声を切らさないというのと、気がついていたらうまくいっていたというか。

――ハーフタイムではどのような話をされていますか

自分は前半に疑問に思ったことをどうだった、と話し合ってという感じですね。1―0で勝っていましたが、声を切らさずに自分たちのサッカーをやろうという話でした。

――久々の得点だったと思うのですが、いつ振りでしょうか

公式戦だと、関カレ(関東大学女子リーグ)の武蔵丘短期大学との試合(5月15日)ぶりですかね。

――フリーキックからのゴールとなりました

あそこの位置からのキックは得意としているので、直接狙ったというよりかは、(味方選手が)触れば入る、もしくは触らなくても直接入る速いボールを狙って蹴りました。守備としたら、触ればオウンゴールになるし、キーパーも取れない間に速いボールを入れようと思っていました。結果的に入ってよかったです。

――笠原選手のゴールなどで今日は勝つことができましたが、目標としていた『四冠』には届かなくってしまいました。これからチームとしてどのように戦っていきますか

今日も含めてこの大会で出た課題がたくさんあるので、『四冠』は取れませんでしたが、三冠を取るという気持ちをしっかり持って、来週からまた公式戦はあるので、そこに向けて気持ちを切り替えて、また一から頑張っていきたいと思います。