日本一目指すも初戦敗退 ア女はなぜ負けたのか

ア式蹴球女子
全日本大学女子選手権
早大 0-0
0-1
大東文化大
【得点者】(早大)なし  

 「まだ(負けたという)実感がない」(MF村上真帆、スポ4=東京・十文字)、「まだ整理がついていない」(MF阪本未周、スポ4=大阪・大商学園)。試合後の選手たちのコメントが、ショックの大きさを物語っていた。『頂』をひたすら追い求めた1年間。その結末は、残酷かつ無情なものだった。

 26日、全日本大学女子選手権(インカレ)2回戦が行われ、この試合が初戦となるア式蹴球部女子部は1回戦を大量得点で突破し勢いに乗る大東文化大と対戦した。目標の日本一奪還に向け勝利を収めたいア女だったが、トーナメント初戦の緊張からか思うようなサッカーをすることが出来ず、無得点で前半を終える。すると、後半立ち上がりにセットプレーから失点。ビハインドを背負う展開となってしまった。その後は引いて守る相手に対して猛攻を仕掛けたが、最後までゴールネットを揺らすことはできず試合終了。2回戦敗退となった。

中盤で攻撃の起点となった村上

 GK鈴木佐和子主将(スポ4=浦和レッズレディースユース)をアクシデントで欠き、また今シーズン不動のスタメンだったMF加藤希(スポ3=アンジュヴィオレ広島)がベンチスタートになるなど、戦前の予想からメンバーを入れ替えて試合に臨んだア女。1回戦から中1日でこの試合に臨む相手に対して序盤から優位に進めたいところであったが、相手の圧力、1回戦突破の勢いに押され、主導権を握ることができない。要所で好プレーは見られたものの決定的なシーンにはつながらず、わずかシュート1本で前半を終える。後半に入り攻勢を強めたいア女だったが、49分にCKを献上。このCKをファーで折り返されると、そのこぼれ球を混戦から押し込まれ失点。絶対に与えたくなかった先制点を奪われてしまった。その後は福田あや監督(平20卒)の予想通り、「先制したら絶対固めてくる」相手に対して、ア女が選手交代などで愚直にゴールを目指すという構図に。しかしゴール前を固める相手に対しシュートまで進むことができず、時計の針だけが進んでいった。試合終了間際にはDF佐々木呼子(スポ4=宮城・常盤木学園)のクロスに阪本が反応すると、こぼれ球に加藤が抜け出しキーパーと1対1に。しかしDFの素早い寄せやキーパーの飛び出しによりコースを限定され、放ったシュートはブロックされてしまう。結局、90分を通して得点を奪うことが出来ず試合終了。ア女のインカレは2回戦で幕を閉じた。

このチームでの戦いは、あっけなく終わってしまった

 日本一を目指し、関東第一代表としてインカレに臨んだが、初戦敗退という結果に終わったア女。彼女たちには何が足りなかったのだろうか。今年のア女は、攻守にタレントが揃い、巧みかつ安定したチームであった。一方で、重要な試合で勝てない、逆境を跳ね返す力が足りないチームでもあった。全20試合の公式戦のうち、先制を許した5試合全てで敗戦。その中には関東女子リーグの1位・2位決定戦(対日テレ・東京ヴェルディメニーナ、●0-1)や皇后杯関東予選決勝(対群馬FCホワイトスター、●0-1)、そして皇后杯2回戦(対ASハリマアルビオン、●1-2)など重要な試合が多くあった。そのような重要な試合で序盤から主導権を握り、先制点を奪いきることが出来ない弱さ。先制を許してもピッチの中で修正し同点・逆転へと持っていくことが出来ない弱さ。これらの弱さが、負ければ終わり、一発勝負のインカレの舞台でも出てしまったのかもしれない。

 世界中が未知のウイルスに混乱し、今までの当たり前が当たり前ではなくなった2020年。ア女にとっても大きな変化が起こった1年であった。皇后杯関東予選の連覇は3で途絶え、11年間守り続けてきた関東女子リーグのタイトルもメニーナに明け渡した。そして、過去5年連続で決勝に進出し続けていたインカレでは6年ぶりの初戦敗退。5年ぶりに優勝を果たした関東大学女子リーグを除き、“結果”を出すことができないシーズンであった。

 一時代の終焉。過去数年追われる立場であったア女だが、これからは追う立場、チャレンジャーとして戦うことになるであろう。しかし幸いにも、ア女には挑戦し続けることができる環境が整っている。誰よりも熱く、サッカーを知り尽くした監督、整備された練習施設、選手より熱く選手を支える学生スタッフ、そして同じ志を持った選手たち。彼女たちが一丸となって戦えば、日本一奪還も決して不可能ではないだろう。ここから始まる新たなア女の挑戦に期待がかかる。

 2021年。日本女子サッカーの歴史が動き出す年。ここからア女の新たな歴史が始まるのかもしれない。

(記事 稲葉侑也 写真 手代木慶、山崎航平)

スターティングメンバー

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 21 近澤澪菜 スポ2 JFAアカデミー福島
DF 船木和夏 スポ2 日テレ・東京ヴェルディメニーナ
DF 佐々木呼子 スポ4 宮城・常盤木学園
DF 25 後藤若葉 スポ1 日テレ・東京ヴェルディメニーナ
DF 29 堀内璃子 スポ1 宮城・常盤木学園
MF 阪本未周 スポ4 大阪・大商学園
MF 蔵田あかり スポ3 東京・十文字
11 松本茉奈加 スポ4 東京・十文字
MF 10 村上真帆 スポ4 東京・十文字
MF 並木千夏 スポ3 静岡・藤枝順心
FW 髙橋雛 社2 兵庫・日ノ本学園
FW 廣澤真穂 スポ2 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
14 加藤希 スポ3 アンジュヴィオレ広島
◎はゲームキャプテン
監督は福田あや(平20卒)
コメント

福田あや監督(平20卒)

――試合を振り返っていかがでしたか

ちょっとまだ整理ができていないですけど……ゲームの流れは自分たちの想定していたものから大きく違いはなかったので……ちょっとまだ整理ができていないですね。

――どのような試合展開を想定していましたか

相手のストロングポイントを把握したうえで、前半はよりシンプルに自分たちの武器も生かしながら背後をついて、そこから得点のチャンスを生み出すということでした。今回選手たちが積極的に言ってくれていたと思いますし、その中で後半スペースも生まれできていたので、より自分たちの得意とする方向というのができる想定ではいました。

――近澤選手の起用意図はどんなところにあったのでしょうか

ちょっと鈴木にアクシデントが起こったので(出場・ベンチ入りできませんでした)。ただ、近澤もずっといい準備をしてくれていましたし、相手のストロングの部分は近澤にとってもストロングの部分でした。彼女は十分すぎるくらい役目を果たしてくれました。

――前半は拮抗した展開が続きましたが、いかがでしたか

一つは焦れないことと、あとは矢印を前に持っていくこと。ゴールを目指すということですね。矢印は絶やさずに、その中で焦れずにしようという声掛けはしていました。

――先制点をとられた時の気持ちを聞かせてください

時間は十分にあったので、まだまだ十分チャンスはあると思っていました。ピッチ上の選手の掛け声とかも前向きなものが出ていたので、誰一人気持ちが折れることなくやっていました。だからそういう時に前向きな声掛けだけじゃなくて、もう少し相手と闘う中で自分たちにきっと何か足りないところがあったのかな。だから追いつくことが出来なかったのかなと、自分の反省ですね。

――後半は加藤選手や松本選手を起用されました

ゴールに向かう矢印を強く出せる選手たちなので、個での打開力もですし、そういったところを期待して起用しました。大東さんも非常に堅かったので、やっぱり先制したら絶対固めてくるというのは想定内だったので、そこをもっとしっかり突き詰めたところまでもっていってあげれば良かったなと思いますね。

――試合が終わって、4年生を中心に泣き崩れる姿がありました

今日もそうだし、この1年監督が変わった中で、それでも信じてやってきてくれたので、本当に自分の責任以外の何物でもないと思うので、それは本当に申し訳なさ過ぎて言葉が出ないですね。

――まだ前を向ける状態ではないかと思いますが、4年生との最後の試合が来年残っています。早慶戦についてはいかがですか

インカレとは全く別のものなので、早慶戦でインカレの借りを返すということはちょっと違うかもしれないですけど、今年の4年生の集大成の試合なので、全員が思い切ったプレーをしてくれればいいかなと思います。

DF佐々木呼子(スポ4=宮城・常盤木学園)

――試合を振り返っていかがでしたか

自分的には持ってるものは全部出したので、悔いはないです。チーム全体としては、今シーズンイレギュラーな中でできたものがあって、ピッチ上で全員が全力なのは見えていたので、チームとしても後悔は残っていないんじゃないですかね。個人的には悔いはないし、楽しかったです。

――左サイドでは、蔵田選手との連携はいかがでしたか

あかりはスピードがあるので、もっと裏にボールを出してそこで連動して崩そうかなと思っていたんですけど、相手が警戒して引いてきていたので、そこをもう少し自分が気を遣って相手を引き寄せるようなワイドなポジショニングを1つ取れれば、もっとあかりを生かせたかなと思います。

――先制点を許したときの気持ちを教えてください

絶対守るって決めてたんですけど。自分とGKの間、足元にボールがきてごたごたってなって失点したのですが、自分の近くにあったからこそ、もう一歩早くボールに触れなかったのか、自分の体勢をもう一歩早く準備しておけなかったのかと、結果論ではありますけど、悔しいですね。

――DF陣の中ではただ一人の4年生ということで意識していたことはありましたか

自分の長所というか、秀でているところは声だなと思っています。今DF陣は体が強かったり足元に技術があったりしてスキルに長けている選手が多くて、その分自分が声を出してまとめるじゃないけど、自分のできることは声なので、そこを意識してやりました。

――後半攻勢を強め、何度かチャンスがあったにもかかわらず敗戦したことについてはいかがですか

皇后杯の時もそうだったのですが、無理なものは無理なので。なんで点が取れなかったんだろう。もちろん大東が素晴らしいチームで、90分通してずっと声出していましたし、みんなでやるぞという思いがあってすごくいいチームだなと思いました。自分たちが点が取れなかったのはタイミングとか、アイデアとか、1本のパスの質とか、本当に些細なことがあがってくるんだろうと思います。

――すぐに前を向くことは難しいかもしれませんが、4年生でできる最後の試合が来年残っています

4年生とできるのも最後だし、自分自身本気でサッカーするのも最後なので、楽しもうと思っています。何かを背負ってやるのはあんまり得意じゃないので、どんな時でも周りの人がいたから続けてこれたサッカーなので、サッカーに最後まで向き合って楽しくプレー出来たらいいと思っています。

MF阪本未周(スポ4=大阪・大商学園)

――試合を終えて、どう感じていらっしゃいますか

まだ正直整理はついていないです。とにかく悔しいの一言です。

――試合の内容に関して、なかなか攻撃のいいかたちをつくれない難しい展開になりました

自分たちが今年1年間やってきた流動的な崩しだとか、そういう中でのダイレクトプレーだとかというのはできたと思っています。ただやっぱり、相手が引いてくる中で打開する力というのがあと一歩届かなかったなと思います。

――ア女での公式戦はこの試合までということになりました

自分にとって最後の大学サッカーだったので、懸ける思いはやっぱりあったし、本当に大事なチームだったので、みんなを日本一まで導けなかったということにすごくふがいないと思います。でも後輩たちには今シーズンこのチームはもう公式戦はないけれど、これを踏み台にして日本一を取ってほしいと思います。

――今季のチームは下級生が多く試合に出ていましたが、4年生から後輩はどう見えていまいしたか

本当に頼もしくて、毎試合毎試合足をつりながら、声を出しながら走ってくれているのがとても印象的で、その姿に自分も助けられている面がたくさんあって、技術ももちろんですけど、そういう姿勢や気持ちが強い子たちなので、これから本当に活躍してほしいと思います

――今年1年を振り返っていかがですか

今年は最初から自粛期間だとか監督交代だとか、関東リーグも全節なくなったりだとか本当にいろいろなことがあって、その中でも4年で話し合ったり、後輩をどう取り込もうだとかどういうチームにしようどんなサッカーをしようだとか、いろいろなことがある度にもう一回ゼロから戻ってチームを作り上げたり建て直したりしてきましたが、やっぱりいろいろそんな中でチームが不安定だったりした時期もありましたが、ちゃんと最後までついてきてくれた後輩たちには感謝しかないし、新しいチームを築こうと力を貸してくれた監督とかコーチとかトレーナーの方とかには感謝しかないし、何よりもやっぱり、一緒にチームを作り上げてくれた同期には本当に感謝してもしきれないです。

――最後に改めて後輩に向けてメッセージをお願いします

勝てなくてごめんという一言しかないです。でもそれ以上に、ありがとうという気持ちもいっぱいあって……後輩たちに、今東伏見で待ってくれてるメンバーもいるんですけど、同じ場所で戦える時間をつくれなくて、いま兵庫に来ているメンバーたちとももっと楽しい時間とか試合の機会をつくれなくて本当に申し訳ない……けど、本当にこの日を踏み台にして日本一を獲ってほしいなと思います

MF村上真帆(スポ4=東京・十文字)

――試合を終えて、率直な感想は

まだ実感がないです。

――ハーフタイムの監督の指示は

前半にできたこととできなかったことをいろいろと踏まえて、このまま続けていこうという指示でした。

――失点のシーンを振り返ってください

コーナーキックから押し込まれたんですけど、やっぱり相手は蹴ってきたボールとかの競り合いは強かったので、セカンドももっと反応を早くしようと言っていたんですけど、ゴール前となるとボールを追って見ちゃう部分が多くて、それで押し込まれたかなという感じです。

――相手の戦い方に対して、なかなか攻撃のかたちが作れなかったという印象です

自分たちがやらないようなサッカーなので、そういうサッカーをしてくるということはスカウティングでわかっていたんですけど、ただただ自分たちの実力不足だったかなと思います

――この試合をもって公式戦は終了となります

ただでさえコロナとかで試合数も減っちゃったうえで、さらにここで終わりというのは本当になんかもう悲しいの域を超えています。

――インカレの優勝は大きな目標だったと思います

1年間を通して積み上げてきたものは、ほかの3年間と比べても1番多かったので、だからこそすごい勝ちたかったし、みんなで優勝して全員で喜びたかったです。

――今季は特に下級生の活躍が目立つチームだったと思いますが、後輩たちに一言お願いします

本当に後輩たちは、凄い頑張ってくれて、堂々と戦ってくれたのに、4年が、チームを引っ張っていけてない自分が何もできなかったというのが本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。でもまだ後輩たちは1年以上リベンジできる機会が残っているので、もう今年を踏み台にするくらいの気持ちで頑張ってほしいなと思います。

MF松本茉奈加(スポ4=東京・十文字)

――このような結果になりましたが、率直にいかがですか

今日の試合で負けてしまったので、インカレはこれで終わってしまうんですけど、まだ整理はできていないというのはありますね

――相手の速い寄せと割り切って裏に蹴ってくる相手のサッカーに苦しんだ印象です

想定はしていたので、それに対して自分たちがどうやっていくのかも練習の中でやっていたので、準備はできていましたし、外から見ていて負けている気は全然しなかったので、こういう結果になったというのは正直…..あまり言葉が出てこないですけど、まだ悔しさというよりは……まだわからない感じです。

――途中から入るときの監督の指示は

もう点を取ることだけを考えてというところで、それは自分が途中出場するときはずっと言われていたので、やることは自分の中で明確になっていましたし、結果を残せなかったというのは自分の実力不足ですし、力のなさをとても痛感しました。

――公式戦は一区切りになります

ア女で4年間やってきましたけど、とてもいい環境でしたし、公式戦は終わってしまいましたがまだ少し続くのでそこに向けてやっていこうと思うんですけど、4年間こうやってア女で過ごして、偉大な先輩たちと一緒にサッカーをして、頼もしい後輩とサッカーができたことは、自分にとって大事な財産になりましたし、多分一生忘れられない自分の中に残るものだと思うし、最終学年ではピッチであまり自分のプレーというものを出す時間は少なかったですけど……楽しかったです。

――松本選手自身は来年次のステップへ進むと思います

ア女で培ってきたものというのは確実にあるので、それを新天地でも積み重ねて、サッカー選手としても人としても一回り大きくなりたいし、ア女でやってきたこと、サッカー以外でもそうですし、日常生活でもチームを代表する選手ということになるので、責任と覚悟をもって挑んでいきたいというのは思っています。

――最後に後輩に向けて一言お願いします

4年生が少ない中で試合をすることが多かったと思うけど、どの試合も頼もしかったし、4年としてあまりうまくチームをまとめられなかったり、試合に4年が出ていないという不安感を持たせてしまったというのは私たちの責任ですし、その中でも結果を残していろいろな試合を戦って、すごい重荷を背負わせてしまったというのは情けなかったし、本当にこんな4年でごめんって思ったけど、1年生も2年生も3年生も、自分たちのことを本当に想ってくれていたし、責任を持ってやってくれてるのも見えていたし、抜いてるなんて思ったことは一度もなかったし、だからこの試合も託せたし、負けたけど来年また次というのを常に見て、今日で切り替えてまた一から積み重ねていってほしいし、本当に感謝しているし、ずっと応援しているし、もっと伸びてほしいし、本当に最高な後輩たちに恵まれて、自分は嬉しかったし楽しかったし、またいつも通りやってほしい。何も考えずにサッカーを純粋に楽しんで欲しいです。