皇后杯第42回全日本女子選手権 | ||||
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早大 | 5 | 2-0 3-0 |
0 | 岡山湯郷Belle |
【得点者】(早大)9‘高橋 16’阪本 50‘村上 67’松本 69‘廣澤 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で例年より4週間程度遅れたものの、皇后杯全日本女子選手権(皇后杯)が開幕した。『なでしこリーグ1部チーム撃破』を目標に掲げるア式蹴球部女子(ア女)の初戦の対戦相手は岡山湯郷Belle。現在はプレナスチャレンジリーグWEST(3部相当)に属するが、日本女子代表(なでしこジャパン)の主将を務めた宮間あや氏(2016年に現役引退)を擁し、2014年になでしこリーグレギュラーシリーズで優勝を果たすなど華々しい実績を持つチームだ。しかし試合は早々にFW高橋雛(社2=兵庫・日ノ本学園)のゴールでア女が先制すると、16分には阪本未周(スポ4=大阪・大商学園)が追加点を奪う。後半も攻撃の手は緩めず、さらに3点を追加。守備陣も最後まで集中を切らさず、5-0と相手を圧倒し皇后杯初戦を快勝で飾った。
高橋をトップ下に置く4-2-3-1の陣形で試合に入ったア女。「最初から、前から(守備に)行くという共通認識を持っていた」(高橋)との言葉通り、MF加藤希(スポ3=アンジュヴィオレ広島)が右サイド高い位置でボールを奪うと、中央の高橋へ送る。これを高橋が右足で冷静に流し込み、わずか9分で先制に成功した。16分には、FW廣澤真穂(スポ2=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)が前線でボールを奪取し、相手DFを引きつけながら運ぶ。横パスをもらった阪本が右足で落ち着いてネットを揺らし、追加点を獲得。試合の主導権を握った。守備では、「声を掛け合ってラインを整えられた」とDF後藤若葉(スポ1=日テレ・メニーナ)が話すように、前半で4つのオフサイドを取るなど1年生3人、2年生1人という若いDFラインがいい連携を見せ、好機をほとんどつくらせなかった。
果敢にゴールを狙う廣澤
2点リードで迎えた後半も、試合は終始ア女のペースで進む。50分、MF村上真帆(スポ4=東京・十文字)が敵陣でボールを奪うと、廣澤の落としを再び村上が受ける。エリア内狭いところで受けた村上は相手GKの動きをしっかり見て冷静に流し込み、追加点。67分にはこの日途中出場となったMF松本茉奈加(スポ4=東京・十文字)がドリブルから左足を振りぬき、4点目を挙げる。そのわずか2分後にはこの日ここまでゴールがなかった廣澤にも得点が生まれ、さらに突き放した。終盤は後がない岡山湯郷の猛攻にあったが、DF船木和夏(スポ2=日テレ・メニーナ)のゴールライン上でのクリアなど守備陣は最後までゴールを許さず。クリーンシートで試合を締めた。
随所で存在感を発揮した村上
一発勝負のトーナメント戦で初戦を突破したア女。鈴木佐和子主将(スポ4=浦和レッズレディースユース)は、「カテゴリーが上の相手に勝てたので、まず一歩(前進)」と語る一方で、「もう少し良い準備ができたのでは」とベストの状態ではないことを強調した。攻撃では5得点がそれぞれ別の選手によるものであること、守備ではピンチはあったが無失点でしのぎ切ったことからも、理想の高さがうかがえる。次戦はなでしこリーグ2部のチームとの対戦となるだけに、より良い準備をし、迎え撃つ。
(記事 山崎航平 写真 稲葉侑也、手代木慶)
スターティングメンバー
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | ◎1 | 鈴木佐和子 | スポ4 | 浦和レッズレディースユース |
DF | 4 | 船木和夏 | スポ2 | 日テレ・東京ヴェルディメニーナ |
DF | 24 | 夏目歩実 | スポ1 | 宮城・聖和学園 |
DF | 25 | 後藤若葉 | スポ1 | 日テレ・東京ヴェルディメニーナ |
DF | 29 | 堀内璃子 | スポ1 | 宮城・常盤木学園 |
→ | 19 | 井上萌 | スポ2 | 東京・十文字 | MF | 5 | 阪本未周 | スポ4 | 大阪・大商学園 |
MF | 10 | 村上真帆 | スポ4 | 東京・十文字 |
→ | 26 | 笠原綺乃 | スポ1 | 横須賀シーガルズJOY |
MF | 14 | 加藤希 | スポ3 | アンジュヴィオレ広島 |
→ | 6 | 並木千夏 | スポ3 | 静岡・藤枝順心 |
MF | 27 | 三谷和華奈 | スポ1 | 東京・十文字 |
→ | 11 | 松本茉奈加 | スポ4 | 東京・十文字 |
FW | 7 | 髙橋雛 | 社2 | 兵庫・日ノ本学園 |
FW | 9 | 廣澤真穂 | スポ2 | ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ |
◎はゲームキャプテン 監督は福田あや(平20卒) |
コメント
GK鈴木佐和子主将(スポ4=浦和レッズレディースユース)
――試合を終えて
とりあえず一安心ですね。カテゴリーが上の相手に勝てたので、まず一歩という感じです。
――スカウティングについて
前に勢いがあるチームというのはスカウティングで分かっていて、その分後ろに隙があって、そこでチャンスが作れるというのは分かっていたので、それは試合の中で生かすことができたと思います。
――どのような戦術で
風があったのでまずはシンプルにやろうと思っていたのですが、途中で風もやんだので、そこからは臨機応変にショートパスをつないで、逆に展開というのをピッチの中でみんなが意識していたかなと思います。
――早い時間の先制点もあり、終始ペースを握る展開になりました
攻撃のリズムが良くて、後ろから見ていて安心できました。ただ、その分ディフェンスの部分で切り替えが遅かったり、相手のリズムになってしまった時間帯もあったので、そこは改善点かなと思います。
――後半は数度、危険なシーンがありました
自分たちのミスからというのもあったので、90分の最後のほう、終盤にどれだけ自分たちのプレーの質を上げられるかという部分とか、最後の守り切るという部分はもう少し突き詰めていかないといけないと思います。
――初めてのスタジアム、そして風の強い中での試合でした
アップの時に風があるし、グラウンドのぼこぼこしている部分も把握できていたので、心配はなかったです。
――皇后杯初戦でしたが
初戦ということもあり、まずは勝たなくてはいけない状況の中で(勝ち切れたことは)よかったと思います。ただ 、次はなでしこ2部相手なのでそこが肝かなと思います。
――すでに2回戦のスカウティングはしているのですか
もう始めています。まだそこまで明確なものは言えませんが、多分蹴ってくるのではないかと思います。今日の試合も蹴られるシーンがあったので、そこはもっと改善していかなくてはいけない部分だと思います。
――チームの雰囲気は
試合は雰囲気良くできたのですが、1週間の練習の中であまり雰囲気が良くなかったので、今週はもっと練習から雰囲気を良くしていかないと勝てないかなと思います。
――その原因は
明確な原因があったというよりは、先述の部分に考えが行き過ぎてしまって、もう少しベースの部分を意識するべきだったと思います。そこができていなかったので、やろうとしてもできなかったり、合わなかったりしていたので、変えていきたいですね。
――あまり納得はしてないのでしょうか
納得というよりは、もう少し良い準備ができたのかなと思います
――次戦への意気込みをお願いします
今日の後半の部分も改善しますし、できたことも多かったので継続して、次もチームで頑張っていきたいと思います。
MF阪本未周(スポ4=大阪・大商学園)
――本日の試合を振り返って
負けられないトーナメント戦というのはずっと頭にあったので、ひとまず勝ててよかったと思います。
――ご自身のゴールシーンを振り返ってください
ひろがけっこう相手をひきつけてくれて、完全にフリーな状態だったので、落ち着いて決めることができて良かったです
――試合を通じてボールに絡むシーンが多かったように思います
相手が密集しているチームだったので、真ん中でスペースがあって受けることができ、展開したり自分のところで時間をつくったりというのを意識して実行できたかなと思います。
――守備面ではクリーンシートを達成し、安定しているように見えました。チームで意識したことなどはありますか
相手が事前のスカウティングと少し違って、球際に人数をかけてくる感じだったので、自分たちの中でFW、MF、DFの間を空けすぎないように隙間を埋めながらというのを試合の中で修正していった感じです。
――皇后杯好スタートを切ったと思います。次戦以降への意気込みをお願いします
次の試合も絶対負けられないと思うので、しっかり勝ち切りたいなと思います。
FW髙橋雛(社2=兵庫・日ノ本学園)
――初戦は好発進といえるのではないでしょうか
前半のうちに点が入って良い入りができて、流れが良いまま後半も沢山いろんな人が点を取ることができました。最終的には勝てて良かったです。
――得点者が全員違うことはチームにとってもプラスかと思います
いろいろな攻撃のパターンがあるからいろんな人がゴールできるというのもあると思うので、それはア女の強みだと思います。
――先週は公式戦がありませんでしたが、どのような準備をしていましたか
今週1週間は福さん(福田あや監督)がいなかったり、4年生が就職活動で抜けていたりしたので、自分たちで(調子を)上げていくという感じでした。その中で、皆でやることを話し合いながらコミュニケーションを沢山とって、少ない時間の中でもいいトレーニングができました。
――相手の情報からどういう対策をして臨みましたか
情報はみんなに共有されていて、これをしようというのはあったので、それをまずやることと、相手が変えてきたときに対応するための想定もできていたので、うまく試合を運べたと思います。
――「これをしよう」ということを具体的に教えてください
最初に勢いをつけるために前から行くことだったり、球際だったり切り替えといった当たり前のことをするというのを皆の共通認識として持っていました。
――ボールを奪取してから前を向くという積極的な姿勢が印象的でしたが、意識されていましたか
ボールを受けるときに周りの状況を確認するというのを自分の課題として持っていたので、それを確認しながら前を向けるときはすぐに前を向いて、まずゴール(を狙う)ということを意識していました。それが表れていたのかなと思います。
――ゴールという言葉が出ましたが、ご自身の先制点を振り返ってください
真穂が最初はボールに寄ったのですが、その後ろのスペースが空いていたのでそこに走り込めばボールが来るかなと思っていて、走り込んだら来たので後は思い切って蹴るだけでした。
――前後半通して主導権を握っていましたが、ハーフタイムではどのようなことを修正点として話し合いましたか
守備の部分で危なくなりそうなシーンがあって、切り替えの部分でもっと準備できるところがあったので、もう一回後半守備から入るということを意識しました。
――試合を通して大切にしていることは何ですか
まずは当たり前のことをするというのがあって、それができているから個人のことだったりチームでやろうとしていることだったりをやれるっていう考えです。まずは当たり前のことを絶対やるという気持ちで試合に臨んでいます。それに慣れてきたら、状況を見ながら判断することを意識していますね。
――次戦への意気込みをお願いします
皇后杯で勝てたことは良かったのですが、まだ目指しているものは上なので、来週に向けて勝つための最善の準備をしていきたいと思います。
DF後藤若葉(スポ1=日テレ・メニーナ)
――今日の試合を振り返っていかがですか
皇后杯初戦ということで、トーナメントですし、お互いに負けられない試合だと思っていました。最初の入りが重要だということは分かっていたのですが、早い時間で1点目と2点目を取ることができて、最終的に無失点でも勝てましたし、全体としては良かったと思います。
――相手チームの対戦前の印象はいかがでしたか
チャレンジリーグで日々やっていて、大人のチームだということで関カレなどで戦っている大学生とは違うということが頭にありました。そこで、球際の部分や切り替えの部分でいつもより速く強くいけるようにhということを試合前には話していました。先輩たちがチャレンジリーグの試合を見てくれて、どんな特徴があるのかということは伝えてくれていたので、その情報は入っていましたね。
――ラインコントロールで意識してたことはありますか
今はバックラインの4人中3人は1年生ですし、右サイドの和夏さん(DF船木和夏、スポ2=日テレ・メニーナ)は中高と一緒にやっていたこともあって、話しやすく、みんなで声を掛け合ってラインを整えられました。あのようにオフサイドを取ることは引き続きやっていきたいと思います。
――攻撃参加されるシーンも多くありましたが、振り返っていかがでしょうか
自分はあのようなチャンスがあれば攻撃に出るということを意識しています。いつかは決めたいなと思っていますね。
――修正したい点はありますか
ボランチが攻撃参加してくれた時のリスク管理のところでいくつか相手に前を向かれて、ピンチになったところがあったので、そこは自分たちバックラインが声を掛け合れば、改善できると思います。次の試合ではそのような1本でやられてしまうので、そこを意識したいとです。
――皇后杯は今回の栃木や次戦の兵庫など移動の多くなる大会ですが、その点について思うことはありますか
このようなウイルス対策が必要である状況で、最初はサッカーができるかもわからない状態でした。その中でこのように大会を開催することができて、皇后杯は観客も入れることもできますし、まずは色々なところでサッカーができるということに感謝しなければいけません。それでも、遠征するためにはメンバーも絞っていきますし、その手配をしてくださる方もいるので、そのことにも感謝の気持ちを忘れずにプレーで恩返しできればいいなと思っています。
――次戦への意気込みをお願いします
次の試合は今日の試合より相手のレベルも上がるので、自分たちがこれまでのサッカーの中で一番良いサッカーをしないと勝てない相手だと思います。まずは、明日しっかり休んで、来週1週間の中で積み上げていって勝ちたいです。