苦しみながらも皇后杯出場権獲得!次戦は真価が問われる一戦に

ア式蹴球女子
皇后杯関東予選準々決勝
早大 0-0
0-0
延長前半0-0
延長後半0-0
PK4-3
神奈川大
【得点者】(早大)なし

 不安定な雨模様のなか行われた皇后杯予選(関東女子選手権)準々決勝。皇后杯出場、そして大会4連覇を目指すア式蹴球部女子部(ア女)は2回戦で山梨学院大を下した神奈川大(神大)と対戦した。前半から主導権を握り攻め続けたア女だったが、リスクを冒さず守備を固める相手を崩すことができず試合はPK戦に突入する。一進一退の攻防が続いたが、GK鈴木佐和子主将(スポ4=浦和レッズレディースユース)のファインセーブなどでア女が勝利。苦しみながらも勝ち切ったア女が皇后杯出場、準々決勝進出を決めた。

 前節からフォーメーションを変更し4-4-2で臨んだア女。ラインを高く設定する神大の裏を積極的に狙うが、人数をかけコンパクトに守備をする神大守備陣に苦戦し、なかなか相手ペナルティエリア内に侵入することができない。しかし、流れの中でチャンスをつくれなくてもセットプレーからチャンスを作り出すのがア女の強み。28分、MF加藤希(スポ3=アンジュヴィオレ広島)のCKにDF船木和夏(スポ2=日テレ・メニーナ)がファーで合わせたがキーパーのファインセーブに阻まれ、再びCKに。今度はMF村上真帆(スポ4=東京・十文字)のCKの折り返しに混戦の中で反応したのはFW廣澤真穂(スポ2=神奈川・東海大相模)。ゴールラインを割ったかのように見えたがノーゴールの判定。ゴールには一歩届かなかったが、精度の高いキックと打点の高いヘディングで決定機を作り出した。前半終盤にかけては廣澤やFW髙橋雛(社2=兵庫・日ノ本学園)が低い位置でボールを受けることで前を向いてプレーする機会が増え、チャンスが増加。得点こそ奪えなかったが徐々にア女らしい攻撃が増えてきた。

精度の高いキックで決定機を演出した加藤

 前半から主導権を握り続けていたア女は後半に入りさらに攻勢を強める。後半開始直後、CKのチャンスから髙橋がバー直撃のシュートを放つと、5分後には髙橋、廣澤、MF松本茉奈加(スポ4=東京・十文字)の3人が絡む見事なコンビネーションで中央を崩し最後は2列目から飛び出した村上がシュート。惜しくも得点とはならなかったが、連動した攻撃で相手ゴールに迫る。さらに58分には船木からのくさびのパスを受けた廣澤が反転し髙橋へ展開すると、ボールは駆け上がった松本のもとへ。松本の放ったシュートは完全にキーパーの逆をついたが、惜しくもサイドネット。ゴールネットを揺らすことができなかった。対する神大は前半からあまり人数をかけずリスクを冒さない攻撃を続けていたが、後半終了が近づくにつれ人数をかけた攻撃を仕掛ける。しかしア女のDF後藤若葉(スポ1=日テレ・メニーナ)、DF堀内璃子(スポ1=宮城・常盤木学園)の両CBを中心とした守備陣が集中を切らさず、流れの中では全くといっていいほど決定機を作らせなかった。唯一、CKからあわや失点のシーンを迎えたが、集中したディフェンスで得点を許さない。迫力ある攻撃と集中した守備で神大を圧倒したア女だったが、最後までゴールネットを揺らすことができずに後半終了。10分ハーフの延長戦でも決着はつかず、100分間を超える死闘の行方はPK戦で決することとなった。

 迎えたPK戦。先行のア女は1人目のキッカーを背番号10に託した。先制し相手にプレッシャーを与えたいところであったが、村上のシュートは相手キーパーにセーブされてしまう。勝利に暗雲が立ち込めたが、この窮地を救ったのは頼れる主将・鈴木だった。直後の神大1人目のシュートをファインセーブ。「負ける気はしなかった」という鈴木の完全に読み切ったこのセーブはチームに大きな安心感をもたらした。その後は互いに決め合う展開となったが、神大の5人目のキッカーの放ったシュートが枠を外れ勝負あり。PK戦までもつれ込む熱戦を制したア女が皇后杯出場を決めた。

PKストップで勝利の立役者となった鈴木

 決定力不足。現在のア女が直面する課題がはっきりと表れた試合であった。特に後半はほとんどの時間を相手陣内で過ごし圧倒的に攻めたが無得点。結果的にPK戦で勝利したものの、チャンスを決めきれていればもっと楽に勝利することができた試合であったことは間違いない。18時間後に次の試合が迫っていることを考えても、延長戦・PK戦を戦ったことは大きな痛手であるだろう。しかし、トーナメントは結果が全て。安定した守備陣の活躍もあり準決勝進出することができた。また、攻撃の内容も決して悪いものではなく、足りないのは「最後の質」だけだ。安定した守備でチームを支える守備陣のためにも、準決勝では攻撃陣の爆発に期待したい。

 そして、ここまでは皇后杯出場権を懸けた戦いであったが、ここからはプライドを懸けた試合が始まる。準決勝の相手は日テレ・メニーナ。関東女子リーグでは神大に4-1で勝利している難敵だ。また、船木や後藤にとっては2種年代で所属した古巣との対戦でもある。1つ目の「頂」まであと2つ。そして目標の「皇后杯なでしこリーグ1部チーム撃破」という目標に向け、準決勝は真価が問われる一戦になりそうだ。

(記事 稲葉侑也 写真 内海日和、手代木慶)

スターティングメンバー

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ◎1 鈴木佐和子 スポ4 浦和レッズレディースユース
DF 船木和夏 スポ2 日テレ・メニーナ
DF 29 堀内璃子 スポ1 宮城・常盤木学園
DF 25 後藤若葉 スポ1 日テレ・メニーナ
DF 28 浦部美月 スポ1 スフィーダ世田谷
MF 10 村上真帆 スポ4 東京・十文字
MF 並木千夏 スポ3 静岡・藤枝順心
→60分 阪本未周 スポ4 大阪・大商学園
MF 14 加藤希 スポ3 アンジュヴィオレ広島
MF 11 松本茉奈加 スポ4 東京・十文字
→74分 27 三谷和可奈 スポ1 東京・十文字
FW 髙橋雛 社2 兵庫・日ノ本学園
FW 廣澤真穂 スポ2 神奈川・東海大相模
◎はゲームキャプテン
監督は福田あや(平20卒)
コメント

GK鈴木佐和子主将(スポ4=浦和レッズレディース)

――PK戦の末の勝利、そして皇后杯出場を決めた今の気持ちを聞かせてください

素直にホッとしています。試合内容にはまだまだ課題が残りましたが、結果が全ての大会でPK戦の末に勝てたことは自信になりました。

――圧倒的に主導権を握りながらも得点を奪うことができない、もどかしい展開でした。プレーしていていかがでしたか

自分たちもなかなか点が入らないことで集中力が保てるかどうか、我慢できるかどうか心配でした。しかし、これまでのア女とは違ってチャンスを多く作ることができているのはポジティブに捉えて良いと思います。

――守備では攻撃時のリスク管理やセットプレー対応など、常に集中した守備を保っていたように思います。手応えはいかがですか

筑波戦の敗戦での課題を改善してきた成果だと思います。今回はDFラインのリスク管理だけでなくもう一列前のリスク管理がとても重要になってくることは共有していました。DF陣は個人の能力が高く、とても信頼しているのでリスク管理の部分では少しでも余裕を持ってディフェンスできるように後ろからのコーチングをこれからも継続していきます。

――PK戦突入が決まったときはどのようなお気持ちでしたか

・負ける気はしませんでしたし、緊張もせず、あの雰囲気を楽しむことができました。練習でも良いプレーができていたので自信はありました。

――PK戦では見事なシュートセーブがありました。振り返ってください

1本目で村上が外したのには少し焦りましたが、そのおかげで止めることができました。

――次戦への意気込みをお願いします

・これからは優勝に向けて戦っていきます。なかなか点が取れない試合が続きますが、次戦は先制点を決めて勝ちにいきます。

FW髙橋雛(社2=兵庫・日ノ本学園)

――PK戦の末の勝利、そして皇后杯出場を決めた今の気持ちを聞かせてください

本当はPKにはしたくなかったのですが、最終的には勝利という結果で終われたので本当に良かったです。

――前節までの4-3-3から4-4-2変更しましたが、どのような意図があったのでしょうか

攻撃でも守備でも、私たちの1番やりやすい形だという意図がありました。

――圧倒的に攻めながらも得点を奪うことができませんでした。プレーしていていかがでしたか

流動的な動きにより、良いリズムでの崩しやチャンスを作ることが出来てきたことは評価できる部分だと思います。ですが、もっとゴール前での質に拘ることや、最後の部分で決めきりたいです。

――ハーフタイムや延長戦突入前など、得点を奪うためにどのようなことを話しましたか

各ポジションでの擦り合わせや、もう一度気を引き締めることなどを話しました。

――次への意気込みをお願いします

明日も厳しい戦いになると思いますが、ここに来れていない人の分まで、絶対勝って次の決勝に繋げたいです。

DF後藤若葉(スポ1=日テレ・メニーナ)

――PK戦の末の勝利、そして皇后杯出場を決めた今の気持ちを聞かせてください

結果が第一に求められる試合で、PK戦までもつれたものの全員で最後まで戦って勝つことができたのでとても嬉しかったです。

――世代別日本代表のトレーニングキャンプに参加したためチームではあまりトレーニングができなかったと思いますが、影響はありましたか

一緒にトレーニングする時間は短かったですが、チームとしていい準備ができていたのであとは一人一人がやるべきことを全力でやるのみでした。

――圧倒的に攻めながらも得点が奪えないもどかしい展開でした。プレーしていていかがでしたか

決定機を何度も作っているにも関わらず決めきれなくて、自分達で苦しい展開にしてしまいました。明日の試合ではゴール前の精度にこだわりしっかりと決め切りたいと思います。

――ご自身の攻め上がりも何回か見られました。どのような意図があったのでしょうか

点がなかなか入らなくてうずうずしていたので上がってしまいました。積極的な攻撃参加というところも私の長所だと思うので明日の試合でもチャンスがあれば上がっていきチャンスメイクができればと思います。

――次の相手は古巣メニーナです。意気込みをお願いします

もちろん後輩には負けたくないですし、何よりも明日の試合を勝って来週に繋げて、今大会を優勝で終えられるように全力で戦いたいと思います。引き続き無観客試合となりますが応援よろしくお願いします。