第33回関東大学女子リーグ戦 | ||||
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早大 | 2 | 2-0 0-2 |
2 | 武蔵丘短大 |
【得点】 (早大)23’、45+1’小林菜々子 (武蔵丘短大)63’狩野蒼葉、90’後藤亜瑞 |
強い日差しが照りつける中、ア式蹴球部女子(ア女)のもう一つの戦いである関東大学女子リーグ戦(関カレ)がホーム東伏見で幕を開けた。開幕戦の相手は武蔵丘短大。序盤から劣勢に立たされたものの、セットプレーからDF小林菜々子(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)が2ゴールを奪い、前半を終える。しかし後半も試合の風向きが変わることなく、押し込まれる時間が続く。63分に自陣で生まれたミスから1点を返されると、試合終了間際に直接FKを沈められ痛恨のドロー決着。開幕戦を白星で飾ることはできなかった。
立ち上がりに自陣でのパスミスからピンチを招くなど、集中力を欠いたプレーが目立ったア女。長く課題とされているビルドアップの不安定さに付け込まれて各局面で数的不利を強いられ、個人技などでゴール前まで運ばれる場面が目立つ。14分には左サイドでボールを失った直後にFW狩野蒼葉(1年)の単独突破を許し、シュートまで持ち込まれた。しかし武蔵丘短大が再三のチャンスを決め切れないでいると、徐々にア女も攻勢に出始める。18分、MF松本茉奈加(スポ3=東京・十文字)の落としに反応したDF源関清花(スポ4=ちふれASエルフェン埼玉)が、1分後にはDFブラフシャーン(スポ1=スフィーダ世田谷FCユース)がそれぞれミドルシュートを放ち、武蔵丘短大ゴールに迫った。そして22分、試合の均衡が破れる。源関からの縦パスを受けたFW山田仁衣奈(スポ4=大阪・大商学園)が前がかりになったディフェンスラインの裏に抜け出したMF高橋雛(社1=兵庫・日ノ本学園)へスルーパスを通し、GKとの1対1を演出。シュートはGKに防がれたが、これで得たCK。こぼれ球に反応したDF中條結衣副将(スポ4=JFAアカデミー福島)のミドルシュートがバーの下をたたいたところを小林が詰め、待望の先制点を挙げた。しかし得点直後に給水タイムを挟んで試合が再開された後も、守勢に回る時間帯が続く。ビルドアップ時の不安定さに改善は見られず、ショートカウンターを浴びて決定的なピンチを招く場面が目立った。45+1分には再びCKから小林が得点を挙げ2点のリードを奪ったものの、閉塞感の漂う前半となった。
先制ゴールを決め、喜ぶ小林
ア女は後半開始と同時に、先日の早関定期戦(◯18−0)で存在感を放ったDF冨田実侑(スポ3=岡山・作陽)を投入。オーバーラップとインナーラップを巧みに使い分ける動きで右サイドを活性化し、1列前のMF阪本未周(スポ3=大阪・大商学園)と好連係を見せる。しかしこの日は攻撃が左サイドに偏っており、サポートの遅れもあって決定機を生み出せない。すると63分、一瞬の隙を突かれる。自陣深くで狩野にパスをカットされて失点、1点差に詰め寄られる。その後は完全に武蔵丘短大のペースに。クロスボールへの対応やラインコントロールに粗が目立ち、何度も決定的なピンチを招くが、GK川端涼朱(スポ3=東京・十文字)によるビッグセーブなどでリードを守ったまま試合を進めていく。しかし勝利が目前に迫った90分、ゴール前でFKを献上。MF後藤亜瑞(1年)が放ったボールは無情にもネットを揺らし、土壇場で試合を振り出しに戻される。その後も逆転を狙う武蔵丘短大の攻撃に苦しめられるが、なんとかしのいで試合終了。勝ち点1を分け合う結果となった。
試合後、悔しさを見せる山田。この引き分けを無駄にしてはならない
90分を通じてかみ合わないプレーが多く見受けられたこの試合。中盤までボールを運んでも、選手同士が適切な距離感を保ち続けた武蔵丘短大に各局面で後手を踏み、思うように攻め切れない時間帯が続いた。チーム結成時からの課題であるビルドアップの不安定さも露呈。自陣でのミスから決定的なピンチを招く場面も多く見られた。「(ビルドアップは)一人一人の考えではなく、全体として一つの方向性を見つけていきたい」(小林)。2年ぶりの日本一奪還を掲げるならば、チーム内の共通理解を深めることは急務である。関東女子リーグ戦、関カレ、そして全日本大学女子選手権。全てのタイトル獲得を目指すア女に、停滞している時間はない。
(記事 森迫雄介、写真 石井尚紀、永池隼人)
スターティングイレブン
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 16 | 川端 涼朱 | スポ3 | 東京・十文字 |
DF | 36 | ブラフ シャーン | スポ1 | スフィーダ世田谷FCユース |
→HT | 2 | 冨田 実侑 | スポ3 | 岡山・作陽 |
DF | 4 | 小林 菜々子 | スポ4 | ジェフユナイテッド市原・千葉レディース |
DF | 7 | 中條 結衣 | スポ4 | JFAアカデミー福島 |
DF | 5 | 源関 清花 | スポ4 | ちふれASエルフェン埼玉 |
MF | ◎8 | 高瀬 はな | スポ4 | ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18 |
MF | 17 | 阪本 未周 | スポ3 | 大阪・大商学園 |
→88分 | 12 | 並木 千夏 | スポ2 | 静岡・藤枝順心 |
MF | 32 | 高橋 雛 | 社1 | 兵庫・日ノ本学園 |
→77分 | 13 | 蔵田 あかり | スポ2 | 東京・十文字 |
MF | 10 | 村上 真帆 | スポ3 | 東京・十文字 |
MF | 11 | 松本 茉奈加 | スポ3 | 東京・十文字 |
FW | 9 | 山田 仁衣奈 | スポ4 | 大阪・大商学園 |
リザーブ:DF37吉野真央(スポ1)、MF田中実夏(スポ4)、MF桝田花蓮(スポ2)、MF加藤希(スポ2)、FW18荻原優花(スポ3)、FW30土居明日香(スポ4) | ||||
◎=ゲームキャプテン 監督:川上嘉郎(昭51商卒=神奈川・横浜緑ケ丘) |
コメント
MF高瀬はな主将(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)
――きょうの試合を振り返って
初戦なので難しい試合になる覚悟はしていましたが、結果を出せず情けないなと思いました。
――スカウティングではどのような分析をしていましたか
サイドバックがボールに食いつきやすいのでその裏を狙おうという話し合いをしていました。前半はそれをうまくプレーに反映させることができましたが、後半は失点後に流れを持っていかれてしまった印象です。
――前半を振り返って
危ない場面もありましたが、決めるべきところで決められたことで余裕を持ってプレーできていたと思います。
――きょうは早関定期戦で苦戦したセットプレーから得点が生まれました
早関定期戦では自分のキックの調子がよくなかったのですが、きょうの得点場面は狙い通りに蹴ることができて、菜々子(小林)が確実に決めてくれたのでよかったです。
――ハーフタイムで話し合ったことは
8番(狩野蒼葉)と10番(村上真生)のところを自由にさせないといった守備の確認をしました。
――後半を振り返って
スコアを振り出しに戻されたことによって非常に難しい時間帯が続きました。負けなかったことが唯一の救いですが、ラスト5分、点を取りに行かなければいけない時間帯でのプレーがかみ合っていなかったので、状況に応じて狙いを持ったプレーをみんなでできるようにしていかないといけないなと感じました。
――きょうも課題である自陣でのミスからの失点がありました
もちろんミスはしないことが一番ですが、その後の流れを良くするための声かけ、確認をもっと自分を中心にできたらよかったなと思います。
――きょうは終始相手の守備に苦戦していた印象です
後半になって攻守ともに自分たちの距離感が遠くなってしまっていたので、ボールを引き出す動きもそうですが他の人に(パスが)出た後のサポートの動きの質も高めていく必要があると思います。
――きょうのフォーメーションの手応えは
バランスは悪くなかったと思いますが、2失点目の場面など中盤とディフェンスラインが間延びしてしまうところがあったので、それは極力減らしてきたいです。
――最後に次節への意気込みをお願いします
次節までにあまり日数はないですが、きょうの内容を引きずらず、気持ちを切り替えて臨めるかが鍵になってくると思います。チーム全員で前向きな気持ちで戦い、必ず勝って勝ち点3を獲りにいきます。
DF小林菜々子(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
――きょうは関カレの開幕戦でしたが、どんな意気込みで臨みましたか
関カレの開幕戦ではありましたが、いつもと変わらずに勝ちに行こうという思いで臨みました。
――試合全体を振り返って
全員の共通理解とか試合中の修正はよかったなという反面で、いらないところで失点してしまったところは、相変わらず改善できていないと思いました。
――前後半通じてビルドアップのミスが目立ちました
そこもずっと課題としてあります。一人一人がやりたいことと全員がやりたいことが合っていなくて、そこが出てしまったなと。個性を打ちだしつつ、安全に前へボールを運んでいく方法を模索していかなければと思います。
――相手の守備もスライドが早く、前線でボールを失う場面が多いように思えました
前半は左サイドは生かせていたのですが右サイドを生かせていなかったので、相手を焦らしながらサイドチェンジとかを中盤の選手ができればよかったのかなと思います。
――それでもセットプレーから2得点を挙げました
自分自身セットプレーから点を取ることは意識していたのでよかったですし、(チームも)夏合宿でもセットプレーに力を入れていたので、一つ成果が出たのかなと思います。
――現在の布陣に対する手応えは
正直4−1−4−1でも4−4−2でも、私はあまり変わらないと思っています。ただ選手が入れ替わる中でも、それぞれがやりやすいポジションでプレーできているのはよかったと思います。
――次節への意気込みをお願いします
東京国際大戦はすぐそこなので、まずはコンディションを整えたいです。ビルドアップは一人一人の考えではなく、全体として一つの方向性を見つけていきたいと思います。