【連載】全日本大学女子選手権直前特集 最終回 熊谷汐華主将×柳澤紗希副将×高野佑美

ア式蹴球女子

 最後に登場するのは、MF熊谷汐華主将(スポ4=東京・十文字)、MF柳澤紗希副将(スポ4=浦和レッズレディースユース)、高野佑美主務(スポ4=東京学芸大附属国際中教校)の3人。それぞれの役割を果たし、先頭に立ってチームを引っ張ってきた3人にお話を伺った。

※この取材は12月9日に行われたものです。

「関カレでは勝ち切れない甘さが出てしまった」(熊谷)

ここまでのシーズンを振り返る熊谷

――まず、関東女子リーグ戦(関東リーグ)と関東大学女子リーグ戦(関カレ)についての振り返りをお願いします

柳澤 チームとしては、関東リーグ10連覇をしたいというのと、関カレでは1年生の時から優勝していないので、優勝を目標にしていました。個人的には、10連覇の方が積み重ねてきたものが多かったのでそこの不安が大きかったです。自分が在籍していないときも、10年分先輩が積み上げてきたということなので。10連覇を達成できて良かったです。ケガで出る機会も少なかったんですけど、チームのみんなのおかげだと思います。関カレは、他の大学のレベルも上がってきている中で、自分たちがインカレ優勝しているのもあって、相手の勢いに飲まれやすくて難しい試合が続きました。結果的には2位だったけど自分たちのインカレ(全日本大学女子選手権)につながる戦いができたかなとポジティブにとらえています。

熊谷 関東リーグは、10連覇を目標に掲げてやってきて、出だしも良かったかなと思って、10連覇できたことはほっとしています。先輩たちがつなげてきてくれたものを自分たちがつなげられたのは良かったです。関カレの方は、優勝をもちろん目標にしていたんですけど、勝てる試合を勝ち切れない甘さが出てしまったと思います。関東リーグは個の戦いでなんとかできたんですけど、関カレは個が対策されてしまったときに、チームとしてどういうふうに戦うかという面で甘さが出てしまいました。それが2位っていう結果になってしまったと思っています。

高野 関カレを勝つのは難しいと純粋に思いました。私は試合を見ているだけなんですけど、関東リーグには東洋大や神奈川大もいて、関東リーグでは勝てていても関カレではいきなり苦戦したいとか…。インカレにつながっていて重みがあるのかな。4年間で1回しか(1位を)取れなかったのは、何か要員があるし関カレは難しいなと4年間で思いました。

――2回戦で敗退となった皇后杯はいかがでしたか

熊谷 (マイナビベガルタ仙台レディースは)格上で、去年はINAC神戸に勝ったのでそれより上に行きたいと思っていたんですけど、ベガルタの試合は、相手のストロングポイントはセットプレーだったので自分たちも警戒していました。勝つ可能性はあったのに、自分たちはもっと戦えたんじゃないかなと思います。この負けを無駄にしてはいけないと思うので、セットプレーを練習でやるときは前より熱が入っていると思うし、インカレにつなげていけたらと思っています。

柳澤 通用する部分と通用しなかった部分があると思います。失点部分だけ見たら、セットプレーで2失点というのは悔しいです。それ以外でも危ない場面もすごくありました。自分たちにはインカレがまだ残されているので、しっかり改善していかないといけないし、逆になでしこ1部にも通用する部分もあったので、そこはどんどん突き詰めていって完成形まで持っていきたいと思っています。

高野 11月は、インカレまで1カ月ほど残されている中で、1部と戦って課題が多く見つかったのは良かったと思います。負けとか戦いを無駄にはしないようにしていければいいなと思います。

――みなさんチームを引っ張る立場にありますが、何か意識していることはありますか

柳澤 自分は、副将という立場でもあるんですけど、グラマネ(グラウンドマネージャー)という役職にもついています。練習メニューを考えたり、練習を取り仕切ったりするんですが、自分のこと以外にもチームとしてどういう練習をしたらいいのかを優先して考えるようにしていました。自分のレベルアップよりもチームのことを、このシーズンには特に。ピッチ外とかでも、後輩との関わりを積極的に取るようにしていました。

熊谷 この1年は、最初のうちは主将という役割を果たしていなかったというか、自分自身がふわふわしていました。自分がどうしたいかとか、どういうチームにしたいかとかを全然伝えていなかったです。それじゃだめなんだというのを同期に気づかされて、そこから自覚を持って、主将なので自分が引っ張っていかないといけないということで、思いがすごく出てきたのでピッチ内外で行動に表せたのかなと思います。関東リーグは何もしなくても勝てたという状況があったので、その状況に甘えていました。関カレで難しい試合が続いていく中で、原因が自分の甘さにあるのではないかと気づいて、気持ちを入れ替えて自分がチームのためにやれることだったり厳しく言わなきゃいけないところを言うように意識しました。

高野 私は選手ではないんですけど気が強い方なので(笑)。同期とか後輩に強く言ったこともありました。ピッチ外だからこそ見えることっていうのは発信したいと思っていたし、それをするように意識していました。それが私本位のものだったり、どれくらい伝わってるかは分からないですけど、自分が思ったことは発信するようにしていました。

――今年から監督が変わりましたが、今までと変わったことはありますか

柳澤 学生の自主性が高まったっていうのはあります。練習に関しても、試合の戦術に関しても自分たちで考える機会もあります。それは良い面もあるし悪い面もあるので、自分たちの成長につなげられたらいいなと思っています。

高野 責任も増えたなという感じです。

――4年間で印象に残っている試合はありますか

柳澤 1年生の時の、インカレ準決勝の日体大戦です。自分は出ていないですけど。先制されてもしぶといチームでした。0-2までいったけど、追いついてPK戦で勝って優勝を決めました。3連覇につながる1勝目で、試合中でも折れない心は今の自分たちに必要だなと思います。

熊谷 去年のインカレの準決勝・東洋大戦です。自分は去年苦しいシーズンで、その中でも結果を残すというのを自分の中ではすごく大事にしていて、インカレの準決勝という舞台で、目に見える結果で自分がチームに貢献できたなと一番思えた試合です。

高野 2年生の時の関カレ最終節です。日体大と優勝決定の直接対決で、0-3で負けてしまったんですけど。その試合からチームの雰囲気もすごく変わってインカレで優勝できました。負けを糧にできたというか、今はメンバーは違うけど、そういうチームにいるのは心強いなって。普段ア女は悔しい経験をあまりしないからこそ、大事な試合だったなと思います。

「汐華のえげつないシュートが一番好き」(高野)

主務としてチームを支える高野

――お互いのプレーの印象はどうですか

柳澤 まず高野さんは…。

一同 (笑)

熊谷 すごくフィジカルが強くて、サイドを駆け上がります。

高野 どこで見たの(笑)。

――柳澤さんのプレーの印象は

熊谷 紗希は中盤の真ん中にいるので、パスの出し手と受け手になることが多いんですけど(柳澤が出し手、熊谷が受け手)、それで結構やりやすいというかほしいところにパスをくれます。自分の特徴を分かってくれているので、自分が生きるパスを出してくれます。4年間で感じたのは、守備力が上がったなって思います。去年のインカレの神奈川大戦とかは、紗季が効いてるなってすごく感じて、相手の中盤の要の選手をしっかりつぶせていたのが紗希だったので。球際のところだったり、守備でも強さも特徴なのかなと思います。

高野 今年とかもシーズン序盤とかはケガで離脱をしていて。試合に出てない人が、出てる人に言うっていうのも難しいと思うんですけど、そういう時も支えてくれていたなと思います。副将だからとかそういうことじゃなくて、プレーで貢献できないときも支えてくれました。外で見ている期間があったからこその頑張りがあると思います。

――続いて熊谷さんはどうですか

柳澤 傍から見たら突破力がすごいし、派手なプレーするし、得点力もある。やりやすいっていうのもあるんですけど、自分的にはボールが無いところの守備力とかがすごくやりやすいです。守備になった時に、マークの受け渡しとかは特に今年はやりやすくて、サイドから全体を見てくれています。今年の関カレの神奈川大戦でもここぞというときに決めてくれたり、チームに貢献するプレーをしてくれるなと思います。

高野 汐華のえげつないシュートが一番好き。相手のGKが困るようなすごいシュートが好きですね、個人的には。

――高野さんはなぜ数ある部活の中からア女を選ばれたのですか

高野 最初は違う部活を考えていたんですけど、ア女を見に来た時に、さつ(DF三浦紗津紀、スポ4=浦和レッズレディースユース)と朱里(FW河野、スポ4=静岡・藤枝順心)が「ア女に入れば、日本一と楽しさだけは保証するから」って。私はそのとき「1年生なのにそういうこと言うんだ」って思ったんですけど(笑)。今のところ保証してくれた通り楽しいですし、全部じゃないけど決め手は結構そこで、いろんな経験をさせてもらってア女に入って良かったなと思っています。

「1年の頃から4連覇という目標は立てていた」(柳澤)

明るく場を盛り上げてくれた柳澤

――インカレについての話に移ります。組み合わせを見ての感想は

柳澤 去年のインカレの結果とかで日体大と別の山になったんですけど、そこで甘えてはいけないなと思います。今年は100パーセント以上の力を出さないと勝てないと思うし、組み合わせどうこうではなくてしっかりやらなきゃいけないと思っています。

熊谷 他の人からは、「ワセダ良い山入ったね」って言われることが多くて、日体大が逆の山だったので。自分自身は良い山に入ったなんて思ってもいなくて、相手がどうであれ、インカレに向けてどのチームのやってきているわけだから一戦一戦しっかりやらないといけないです。本気度はどのチームも負けていなくて、そこで少しでも「いける」って思っていたら勝てないと思います。こっちが3連覇をしているだけ、向こうも全力でぶつかってくると思うので、相手がだれであっても全力でやらなきゃいけないと思います。

高野 2人がこんなこと言っているのに申し訳ないのですが、私は日体大と逆の山で良かったと心の底から思ってしまいました。去年の優勝候補だった日体大も、負けちゃったりしていて。日本一になるには、いつどこでどんなチームと当たっても勝たなければいけないと思うので、初戦から目の前を大事に戦わなきゃいけないと思います。去年までは私も東伏見に残っていたのですごく感じるんですけど、インカレの遠征に行けなくて悔しい思いを抱えながらも結果を気にしている人たちがいることを忘れないで、西が丘に戻ってきて優勝したいと思います。

――インカレでのキーマンは誰になりますか

高野 私は、誰っていうよりは交代してくる選手かなと思います。交代で出てくる選手が途中から、厳しい試合でも流れを変えてくれているので。ずっと出場している選手がいるからこそ、新しい力が生きると思います。90分出られていなくても、そういう人が大事なところで流れを変えてくれるかなと思います。

――最後にインカレに向けての意気込みをお願いします

柳澤 1年生の頃から生意気なことばかり言っていたんですけど、1年の頃から4連覇という目標は立てていました。その間に色々なことがあって、個人としてもつらいこととか苦しい時期とかあったけど、4連覇を目指せるのは私たちだけなので。4連覇するためなら何でもするくらいの気持ちです。

熊谷 日本一になるとすごく嬉しいし、幸せな気持ちになるんですけど、それは早稲田大学しか経験できないし、自分たちしか経験できないことです。ア女以外の他の大学に味わわせたくないです。優勝した時の嬉しさとか、苦しかったことが報われた嬉しさは自分たちだけが味わいたいです。プレッシャーもあるんですけど、それも力に変えて4連覇したいなと思います。

高野 1年生の時から優勝できているんですけど、その前は初戦敗退が2回続いて、ワセダは今は強いって言われてるけど、インカレで勝つのはすごく難しいことで。インカレで負ける悔しさを味わっていないから、悔しさを味わっている他の大学の怖さもあります。ずっと、「日体大が強い」と言われてきて、でもワセダがずっと勝っています。それでも3回勝っているのは、ワセダの実力だと思っているし、4連覇を達成できるくらいみんなは頑張っているし、もう少し頑張れると思うので、信じて私は応援しています。4連覇は必ずします。

――ありがとうございました!

(取材・編集 下長根沙羅、写真 吉田寛人)

インカレへの意気込みを書いていただきました!

◆熊谷汐華(くまがい・しおか)(※写真中央)
1996年(平8)5月24日生まれ。160センチ。東京・十文字高出身。スポーツ科学部4年。MF。主将として1年間チームを率いてきた熊谷選手。悩みや葛藤を乗り越え、主将としての在り方を見出しました。集大成となるインカレでは、優勝杯を掲げる熊谷選手の姿が見たいです!色紙には「頂」と書いてくださいました。

◆柳澤紗希(やなぎさわ・さき)(※写真左)
1996年(平8)5月5日生まれ。156センチ。浦和レッズレディースユース出身。スポーツ科学部4年。MF。副将として熊谷選手と共にチームを引っ張ってきた柳澤選手。対談では持ち前の明るさで場を盛り上げてくださいました。インカレでは正確なキックやミドルシュートでチームを勝利に導いてくれるでしょう。色紙には「献身」と書いてくださいました。

◆高野佑美(たかの・ゆみ)(※写真右)
1996年(平8)4月19日生まれ。160センチ。東京学芸大附属国際中教校出身。スポーツ科学部4年。主務として多くの役割を担ってきた高野さん。1年生の頃は他の部活に入るか迷っていたそうですが、「ア女に入って良かった」と笑顔で話してくださいました。インカレでも献身的なサポートでチームを支えます。色紙には「信」と書いてくださいました。