試金石の71分間。地力示し、再起へ大きな逆転勝利!

ア式蹴球女子

 関東大学女子リーグ戦の第7節が行われ、早大はともに上位を争う東洋大と対戦した。前節、帝京平成大に敗れ(●1-2)、優勝に向けてはこれ以上勝ち点を落とせない中で迎えた一戦。19分に先制を許して追い込まれたが、前半のうちに同点とすると、後半の立ち上がりにFW河野朱里(スポ4=静岡・藤枝順心)の得点で勝ち越した。そのままリードを守り切り、復調へ向け重要な勝利を挙げた早大は、他会場の結果を受けて首位に再浮上した。

 今季はサイドで起用され続けてきたFW山田仁衣奈(スポ3=大阪・大商学園)を1トップで起用し、選手の配置にも変化をつけて臨んだ。試合開始直後にMF冨田実侑(スポ2=岡山・作陽)がドリブル突破を図るなど、積極的な姿勢を見せて試合に入った早大。後方から丁寧なつなぎで攻撃を組み立てようとする東洋大にボール保持こそ許したが、「はっきりしたプレーができた」(山田仁)とメリハリのある連動したプレッシングで自由を与えない。東洋大は状況を打開しようとロングボールも交えるが、これに対しても最終ラインを高く保って落ち着いた対応を見せた。しかし、試合を優位に進めるかと思われた19分。中盤にポジションを落として縦パスを受けた東洋大2トップの一角のFW塩谷瑠南をつかまえられず、FW大内梨央に裏抜けを許してしまう。最後はGK木付優衣(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)の頭上を強烈なシュートで抜かれ、一瞬の隙を突かれる形でリードを奪われた。追い掛ける状況となった早大は、前線からのプレスを強めたが、ボールを奪うことはできてもパスの精度を欠き、思うように攻撃に転じることができない。次第にプレスもかわされ始め、押し込まれる場面も増える中、40分にカウンターの好機が訪れる。後方からのクリアボールを中盤で拾った河野がドリブルで持ち上がり、山田仁を経由して左サイドに展開。ボールを受けたMF村上真帆(スポ2=東京・十文字)のクロス性のボールが直接ゴールに向かってバーをたたくと、ゴール前で待っていた山田仁が頭で押し込んだ。生まれかけていた悪い流れを払拭するように、試合を振り出しに戻して前半を終えた。

スタメン起用で1点目を決めた山田仁

 試合の行方を左右する次の1点はあっさりと生まれた。後半に入ってすぐの48分に中盤でFKを獲得すると、MF柳澤紗希(スポ4=浦和レッズレディースユース)がボックス内にボールを送る。これを山田仁が頭で落とし、ボールウォッチャーになった相手守備陣を尻目に、河野がスペースに抜け出して決め、試合をひっくり返した。その後は再び東洋大に押し込まれる時間帯が続いてゆく。それでも、「うまくいかないムードをしっかり切り替えてやれた」(DF渡部那月、社4=兵庫・日ノ本学園)と前半の反省を生かしながら、集中力を高く保って守り続けた。最大のピンチは61分。セットプレーからフリーのDF山幡あやに頭で合わされたが、木付が鋭い反応でキャッチ。また、流れの中からは3度、ボックス内の大内にボールをつながれシュートを許したが、全て枠を外れた。試合が終盤に向かうにつれ、互いにシュートまで持ち込めないシーンが増えてこう着状態に。早大はMF並木千夏(スポ1=静岡・藤枝順心)を投入して推進力を加え、攻めに転じるシーンも作りながら時計の針を進める。逆転後はほとんどの時間で受けに回ったが、リードを守り切ってタイムアップの瞬間を迎えた。

前節の敗戦を踏まえ、最後まで集中した守備を見せた

 「強くなれるかどうかは負けた時次第。ここで崩れてしまえば単純に弱いチーム」と川上嘉郎監督(昭51商卒=神奈川・横浜緑ケ丘)が前節終了後に指摘したように、シーズンの分岐点ともいえる重要な一戦だった今節。それだけに、どうしても勝利が必要だった。早々にビハインドを背負い、一時は崖っぷちに立たされたが、苦しみながらも逆転勝ち。「(この1勝は)大きいと思う」(山田仁)。試合後の選手たちに笑顔は見られなかったように、理想からはまだまだ遠いが、自信を取り戻す1勝を挙げ、再び歩みを進め始めたア女。次節の慶大戦は、皇后杯全日本女子選手権の開幕前最後の公式戦となる。引き続きの課題である『遅攻』の質の向上を急ぎ、今季4度目の早慶戦で優勝に向けて前進する勝ち点3を鮮やかに奪いたいところだ。

(記事 守屋郁宏、写真 守屋郁宏、下長根沙羅)

スターティングイレブン

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第32回関東大学女子リーグ戦
早大 1-1
1-0
東洋大
【得点】
(早大)40’山田仁衣奈、48’河野朱里
(東洋大)19’大内梨央
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 木付 優衣 スポ4 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
DF 渡部 那月 社4 兵庫・日ノ本学園
DF 32 小林 菜々子 スポ3 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
DF 23 源関 清花 スポ3 ちふれASエルフェン埼玉
DF 中田 有紀 スポ3 兵庫・日ノ本学園
MF 柳澤 紗希 スポ4 浦和レッズレディースユース
MF 村上 真帆 スポ2 東京・十文字
DF 15 冨田 実侑 スポ2 岡山・作陽
→73分 37 並木 千夏 スポ1 静岡・藤枝順心
MF ◎11 熊谷 汐華 スポ4 東京・十文字
FW 10 河野 朱里 スポ4 静岡・藤枝順心
FW 山田 仁衣奈 スポ3 大阪・大商学園
◎=キャプテン
監督:川上嘉郎(昭51商卒=神奈川・横浜緑ケ丘)
関東大学女子リーグ戦1部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
★早大 16 17 +13
★帝京平成大 16 13 +6
★日体大 14 13 +9
東洋大 12 +5
神奈川大  0
慶大 10 -3
大東大 -3
武蔵丘短大 17 -14
山梨学院大 -4
10 東京国際大 13 -9
※第7節終了時点
※★は第27回全日本大学女子選手権(インカレ)出場権獲得チーム。今リーグ戦1~7位のチームが関東地区からインカレに出場する
※9位のチームは2部リーグ2位のチームとの入替戦に出場する
※10位のチームは2部リーグに自動降格
コメント

DF渡部那月(社4=兵庫・日ノ本学園)

――東洋大は特徴ある攻めをしてくるチームだと思います。何か気を付けていたことはありますか

この一週間の練習の中で、東洋大相手にどういう守備をするのかというのをチーム全体で共有しました。プレスの行き方とか徹底してやっていたのですが、前半ちょっと上手くはまらなくて、上手くいかないムードで前半は終わってしまいました。後半しっかり切り替えて、上手くいかないこともあったんですけど、常に声を掛けながらやれたと思います。試合中に変えられたところは、良かった部分です。危ない部分も前半いくつかあったので、そこはしっかり声を掛けながら守れたらいいなと思います。

――前半、相手に先制されてしまいました。失点のシーンを振り返ってみていかがですか

自分たちのやりたいことをやる前に相手にやられてしまいました。前回(帝京平成大戦)負けているので、失点して落ち込んでいるわけにもいかないので、しっかり声を掛けて絶対に取り返すという気持ちで全体はやっていたと思います。

――後半はすぐに点が入りましたが、相手に攻められる場面も多かったように思います。我慢の時間帯が続いたのではないですか

自分らも気持ちにちょっと余裕があったんですけど、ここでまた(相手に点を)入れられたら意味が無いと思っていました。ディフェンスラインを中心にしっかり声を掛けて、絶対に失点しないようにできたんですけど、まだ上手くいかない部分が色々とあるので、そこはしっかり話し合いながら修正していく部分かなと思います。

――敗戦した前節と比べて、良くなった部分はどこでしょうか

はっきりディフェンスが最後まで集中して声を掛けて、それによって中盤も前線の選手も守備を頑張ってくれたのが良かったと思います。全体が、絶対にやらせないという気持ちを見せていたと思います。

――目指すべきサッカーと比べて、足りない部分はありますか

まだまだ上手く攻撃のかたちをつくれない部分が多くて、自分たちがボール保持しながら攻めるというのがなかなかできていないので、そこはもっと練習から質の高いサッカーを求めていかなければならないと思います。そうするには1人1人がどうプレーするのかっていうのを伝えていかないと思います。

――来週の慶大戦に向けて一言お願いします

慶應も何回も当たっている相手で、しっかり自分たちをスカウティングしてくると思うので、結構慶應さんも勢いに乗ってくると思います。その勢いに負けないように、しっかりワセダも気を緩めないで、きょうの試合よりも良い試合ができるようにまたこの一週間全員で取り組んでいきたいと思います。

FW山田仁衣奈(スポ3=大阪・大商学園)

――前節の敗戦から、この試合に向けてどのように準備をしてきましたか

もう次は負けられないということで、スカウティングの部分から気持ちを入れて、どういうふうに相手を攻略するのか、守備の部分も攻撃の部分もみんなで考えてきました。この1週間は気持ちを入れて、良い取り組みができたと思います。

――対東洋大対策として意識をしたことは

後ろからビルドアップをしてくるチームだったので、前半はサイドに入れさせて、そこで取り切るという形でした。それがあまりうまくハマらなくて、1失点目も真ん中のスペースを突かれてしまいました。ハーフタイムで話し合って、後半はそこを修正して、中切りをして取り切るという形に変えました。自分たちで変えてしっかり試合運びをできたので、そこは良かったと思います。

――今季初のトップでの起用でした。どのような役割を意識しましたか

くさびのボールを多く受けること、それから逆サイドの裏(のスペース)が空くのでそこを意識していて、その逆サイドに入った時に自分が中でプレーできるようにポジション取りをしていました。あとは、シャドーとの位置が一番近い存在なので、そのサポートなどを意識して動いていました。

――攻撃の起点になる場面も少なくなかったと思いますが、手応えもあるのでは

自分の中ではそんなになくて、全体的にでもあるんですけど、後半はあまり仕事ができていなかったです。そこは改善点かなと思います。

――前節と比べて良くなったと感じる部分はどこにありますか

前の試合と比べてよかったのは、チームの中での共通理解が深まって、ディフェンスの部分も攻撃の部分もこういうプレーをしようという全体の意識があって、はっきりとしたプレーができるようになったことだと思います。でも、そのプレーをうまくやれなかった時に臨機応変に対応できずに崩れてしまう場面があったので、そこはしっかり声をかけ合いながら、一人一人が考えてプレーしなきゃいけないかなと思います。

――今日の勝利はやはりチームにとっても大きいですか

そうですね。大きいと思います。次の試合は慶応となんですけど、しっかり勝って関カレの首位をまた奪えるように(※インタビュー後に帝京平成大が敗れ、今節終了時点で首位に浮上)チーム一丸となって頑張っていきたいと思います。