ついに関東女子リーグ戦(関東リーグ)が開幕。今大会9連覇中のア式蹴球部女子(ア女)は、ホーム早大東伏見グラウンドに宿敵・慶大を迎えた。前半8分にFW河野朱里(スポ4=静岡・藤枝順心)のゴールで先制。そこから流れをつかみ、中盤での連携ミスから1点を失ったが前半の内に5点を追加しリードを広げる。後半にも3点を追加し終始慶大を圧倒したア女。関東リーグ10連覇に向けて幸先のいいスタートを切った。
ア女は前半開始直後にいきなり見せ場を作る。1分、相手選手のトラップミスからMF山田仁衣奈(スポ3=大阪・大商学園)がミドルシュート。しかしこれは惜しくもゴール左に外れ、ファーストシュートでの先制とはならない。その後はボールを保持するがなかなか連携が合わず、リズムに乗れない時間が続いた。この嫌な流れを断ち切ったのは、今年から背番号10番を背負うエース河野であった。8分、DF冨田実侑(スポ2=岡山・作陽)のロブパスに反応すると、トラップで相手GKをかわし、冷静にゴール。相手の一瞬の隙を見逃さず、ア女は先制に成功した。するとその直後には、ゴール前での混戦から河野が落とすと、MF村上真帆(スポ2=東京・十文字)が強烈なシュートをゴール右端に決めて追加点。立ち上がりに2点を連取し勢いに乗るア女は、さらに攻撃のギアをあげる。18分のCK、キッカーを務めるMF安部由希子(スポ4=宮城・聖和学園)からのボールにDF渡部那月(社4=兵庫・日ノ本学園)が頭で合わせる。このシュートは惜しくもポストに嫌われたが、そのこぼれ球にDF三浦紗津紀(スポ4=浦和レッズレディースユース)が反応しゴールを決めた。21分には渡部のパスを受けたMF高瀬はな(スポ3=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)がMF熊谷汐華主将(スポ4=東京・十文字)へとスルーパス。熊谷はゴール前に抜け出すと、相手DF2人に寄せられながらも右足を振り抜く。アウトサイドで蹴られたシュートは、美しい軌道を描きゴール左上へと吸い込まれた。さらに28分には、相手GKのパスミスから河野がゴール。しかしその直後、「5点取った後で少し抜けた部分があった」(河野)と守備での連携が乱れ、慶大に得点を許してしまった。それでも37分のCKからDF源関清花(スポ3=ちふれASエルフェン埼玉)が公式戦初ゴールを記録し、再び流れを引き寄せた。失点はしたものの、立ち上がりから得点を奪い、攻め続けたア女。前半を6-1で折り返した。
6点目を決めた源関。公式戦初ゴールだ!
後半に入っても全く攻撃の手を緩めないア女は48分、熊谷のアーリークロスに河野が完璧なタイミングで反応。一度は相手GKにセーブされたものの、泥臭く押し込んだ。58分には左サイドを崩し、河野のパスを受けた山田仁が思い切り右足を振り抜く。相手GKから逃げるような軌道で放たれたシュートは、ゴール左下へと決まった。そして72分、選手交代でラインを1枚上げていた冨田がゴール前にグラウンダークロスを供給。これに河野が合わせこの日4点目となるゴールを奪った。その後は冨田、村上、途中出場のMF並木千夏(スポ1=静岡・藤枝順心)が惜しいシュートを放つなど、最後の最後まで慶大を圧倒したア女。後半に3点を追加し、結果9-1で見事開幕戦を白星で飾った。
1得点1アシストの熊谷主将
開幕戦から9得点と自分たちのペースで試合を進めたア女。この要因の一つとして、今季からより力を入れているスカウティングが挙げられる。「相手に対してどのように戦うかを毎試合変えていこうと思っている」と河野が語るように、相手に有効なプレーを分析し練習に取り入れているのだ。今日はショートカウンターからのアーリークロスを意識し試合に挑んだア女。特に、熊谷のアーリークロスからの河野のゴールはまさにお互いの共通理解があったからこそ生まれたものであった。「狙って取れたゴールが多かったので、そこは収穫だった」と熊谷は確かな手応えを感じている。開幕戦から大勝を収めたが、「今日は点差が開いていい意味でも悪い意味でも余裕がでてしまうところがある。また一から積み上げていきたい」(河野)と選手たちは気を引き締める。次節の相手は全日本大学女子選手権で死闘を繰り広げた東洋大。この相手にどのようなサッカーを展開するのか。ア女のこれからの戦いに目が離せない。
(記事 永池隼人、写真 守屋郁宏、下長根沙羅)
スターティングイレブン
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関東女子リーグ戦展望/第24回関東女子リーグ戦(2018.04.14)
第24回関東女子リーグ戦 | ||||
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早大 | 9 | 6-1 3-0 |
1 | 慶大 |
【得点】 (早大)08’、28’、48’、72’河野朱里、09’村上真帆、18’三浦紗津紀、21’熊谷汐華、38’源関清花、58’山田仁衣奈 (慶大)29’鈴木紗理 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 木付 優衣 | スポ4 | ジェフユナイテッド市原・千葉レディース |
DF | 15 | 冨田 実侑 | スポ2 | 岡山・作陽 |
DF | 4 | 三浦 紗津紀 | スポ4 | 浦和レッズレディースユース |
DF | 23 | 源関 清花 | スポ3 | ちふれASエルフェン埼玉 |
→54分 | 32 | 小林 菜々子 | スポ3 | ジェフユナイテッド市原・千葉レディース |
DF | 2 | 渡部 那月 | 社4 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | 13 | 高瀬 はな | スポ3 | ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18 |
→54分 | 3 | 中田 有紀 | スポ3 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | 5 | 安部 由希子 | スポ4 | 宮城・聖和学園 |
→64分 | 37 | 並木 千夏 | スポ1 | 静岡・藤枝順心 |
MF | ◎11 | 熊谷 汐華 | スポ4 | 東京・十文字 |
MF | 7 | 村上 真帆 | スポ2 | 東京・十文字 |
MF | 9 | 山田 仁衣奈 | スポ3 | 大阪・大商学園 |
→64分 | 12 | 山田 彩未 | スポ4 | ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18 |
FW | 10 | 河野 朱里 | スポ4 | 静岡・藤枝順心 |
◎=キャプテン 監督:川上嘉郎(昭51商卒=神奈川・横浜緑ケ丘) |
コメント
川上嘉郎監督(昭51商卒=神奈川・横浜緑ケ丘)
――きょうの試合を振り返っていかがですか
リーグの開幕戦ですが、相手がケイオーなので(勝てて)良かったです。
――どのようなことを強化されましたか
(きょねんの)4年生がいなくなりましたが、今年の4年生も力のある選手が多いですし、きょねんは大型の選手がいましたが今年はいないです。しかしパスワークや動きなどがしっかりできるように練習を積んできました。
――きょうの戦術はどのようなものですか
基本的にはコンパクトにして相手にサッカーをさせないようにしながら自分たちのサッカーをしましょうという感じです。
――去年から変えたことは何かりますか
今までも球際強くですとか、タッチ数を少なく声を出してやりましょうということでした。ことしはもう少し走れる部分、ボールを持たない部分で走ることをやっている最中です。
――ことしのチームの強みはどこですか
相手をリスペクトするというのが良い言い方かは分かりませんが、相手に合わせたサッカーをしないというのがおそらく強みになると思います。
――今後の目標を教えてください
立てている目標を達成できればいいと思います。
MF熊谷汐華主将(スポ4=東京・十文字)
――オフシーズンでどのようなチームづくりをしてきましたか
今までのシーズンと比べて、今シーズンは週末にどんどん練習試合を入れて、実戦的に、ゲーム形式で失敗を繰り返して、チームをつくりあげてきたという感じです。
――昨季からの変化としては何かありますか
主力だった4年生が抜けてスタメンも変わりましたけど、戦い方はそんなに変わらないです。
――シーズンの初戦ということで、チーム内で共有していたことはありますか
開幕戦ということもそうですし、相手が慶応ということもあったので、負けられないというのと、今年の関東リーグは10連覇がかかっているので、そこに向けても初戦はすごく大事だと共有できていたと思います。
――試合を振り返っていかがですか
立ち上がりから点を重ねることができて、失点してしまったのはまずかったんですけど、点数的にはよかったのかなと思います。
――攻撃では9得点と力を見せたと思います。収穫はどんなところにありますか
結構意図して取った点が多くて、偶然取れたというよりは狙って取れたゴールが多かったので、そこは収穫だったと思います。
――触れていただきましたが、課題はやはり失点というところになりますか
そうですね。声を掛けあったりしなきゃいけないですし、誰が見るのかというところをはっきりさせていかないといけないと思います。
――きょうは前線からの積極的な守備が印象的でした。あれが今季のチームの色になるのでしょうか
いや、相手にもよるんですけど、きょうは前ではめた方が確実にボールを取れるなという相手だったので、そういうところは試合の中で共有して、これからもやっていけたらと思います。
――いよいよシーズンが始まりました。今後に向けて一言お願いします
まだ始まったばかりなので、この結果に満足することなく、毎回気持ちを引き締めてやっていければと思います。
FW河野朱里(スポ4=静岡・藤枝順心)
――きょうの試合を振り返っていかがですか
関東リーグ開幕戦でチームとしても初の公式戦ということで、なにより結果にこだわって臨んだ試合だったんですけど、勝てたとはよかったと思います。
――開幕に向けてチームとしてどのようなことを練習されてきましたか
今季に入ってスカウティングにもけっこうこだわってやってきたので、相手に対してどのように戦うかを毎試合変えていこうと思っていて。それを今回始めてやってみたんですけど、練習通りにいったこともありましたし、逆にうまくいかなかったこともあったので、それを次回の反省材料にしてやっていけるんじゃないかなと思っています。
――スカウティングの話がありましたがきょうはどのような戦術で試合に挑まれましたか
ショートカウンターを第一にあげていて、そのときにアーリークロスを意識してました。それで何点か取れたので、共通理解ができていたんじゃないかなと思います。
――アーリークロスはきょうの試合までにこだわってきた部分ではありましたか
そうですね、練習にも取り入れていたので、うまくはまったかなとは思います。
――ご自身のプレーを振り返っていかがですか
前半から縦へのパスがくることが多くて、しんどい時間もあったんですけど、前半で点を決めることができてよかったですし、最初緊張感がある中で前半7分で決めれたのは一番前にいるFWとして仕事は果たせたかなと思います。
――1点目はDF冨田(実侑、スポ2=岡山・作陽)選手のロブパスに反応してのゴールでしたがあれはアーリークロスを意識していたから反応できたのですか
自分はいつもサイドバックの選手がボールを持ったときにあそこに飛び出すんですけど、それを周りがわかってくれていて。トミー(冨田)とも目が合ったので、お互いが意識していたところにいけたかなとは思います。
――3点目も熊谷(汐華、スポ3=東京・十文字)選手のアーリークロスに反応しましたが
あれはもう練習通りという感じで、相手の頭を超すボールをしお(熊谷)が供給してくれて、うまくトラップもできたんですけど、一発で決めたらよりよかったかなと思います。
――きょうの試合で4ゴール決めましたがご自身の調子はいかがですか
自分的には4年生になって、より責任感が出てきて、毎試合自覚を持って挑もうと思ってますし、そういう面できょうはよかったんじゃないかなと思います。
――相手を圧倒する中で失点がありましたが振り返っていかがですか
5点取った後で少し抜けた部分があったというのは反省です。何点取っても失点はゼロに抑えたいので。あそこの場面はマークの受け渡しがうまくいってなかったので、ボランチ、サイドバック、センターバックで連携して改善したいなと思います。
――最後に次の試合への目標をお願いします
次は東洋大なので、インカレでもけっこう競った試合をしましたし、きのう東洋大はメニーナ(日テレ・メニーナ)に2-0で勝っていたので、ある程度調子が上がってきていると思います。自分たちは負けちゃいけないですし、きょうはけっこう点差が開いていい意味でも悪い意味でも余裕がでてしまうところがあるので、次節に向けてまた一から積み上げていきたいと思います。