関東リーグ9連覇を達成!次なる舞台はインカレだ

ア式蹴球女子

 怒涛の試合ラッシュとなった11月が過ぎ去り、ついに関東女子リーグ戦(関東リーグ)は最終節を迎えた。実はこの試合は4年生にとって早大東伏見グラウンドで行う最後の公式戦でもあった。引き分け以上で優勝が決まる有利な条件ではあったが、試合は最後まで勝利を目指したア式蹴球部女子(ア女)が快勝し、悲願の関東リーグ9連覇を達成した。

 立ち上がり、相手の勢いに押されたア女は苦戦を強いられる。「シュートまではいかれなくても相手の勢いに負けてしまう部分があった」とMF松原有沙主将(スポ4=大阪・大商学園)が振り返るように我慢の時間となった。しかし、粘り強い守備から次第にリズムをつかむとその後は好機を何度も迎えた。10分、MF村上真帆(スポ1=東京・十文字)からのパスに反応したFW河野朱里(スポ3=静岡・藤枝順心)が裏へと抜け出すと、5分後には河野からMF冨田実侑(スポ1=岡山・作陽)がフリーでパスを受けるもシュートまでは行くことができず。その直後のCKのこぼれ球にはMF中村みづき(スポ4=浦和レッズレディース)が頭で合わせたがこれは相手GKの正面。次のプレーでもセンタリングに河野が飛び込むなど立て続けにレッズユースゴールへと迫ったが得点とはならなかった。しかし待望の瞬間はすぐにやってきた。19分、冨田が相手陣内へとゴールを運び裏へ走っていた中村へパス。そこにオーバーラップしてきたDF奥川千紗副将(スポ4=静岡・藤枝順心)がパスを受け、相手を振り切って折り返すと、ゴール前に走り込んでいた河野がこれを冷静に流し込んで先制に成功した。リードを奪った後もア女ペースで試合は進む。ところがこのまま前半が終了すると思われた33分のことだった。「相手も自分たちのことを研究してきていて、後ろに引いて一発で攻撃してくるかたちだった。そのカウンターで一発やられてしまったのは自分たちの弱さだと思う」(河野)。マイボールが審判に当たり、相手の速攻を受けるというアンラッキーなかたちではあったが、痛恨の失点を許してしまったア女。まさかの1-1と引き分けのまま前半を終えた。

先制点と勝ち越しゴールはどちらも河野。調子の良さをアピールした

 後半は開始早々からア女が主導権を握る。サイドからの攻撃で立て続けに2度河野がゴールへ迫ると、代わって入っていたMF熊谷汐華(スポ3=東京・十文字)も最終ラインからのロングボールをうまく処理し、何度もシュートへと持ち込む。すると56分、相手に囲まれながらも熊谷汐が粘り中村へパス。これにうまく抜け出した中村のクロスにしっかりと合わせたのは河野だった。再びリードを得たア女。攻撃の手を一切緩めることはなくその後も畳み掛けるようにシュートを連発。しかし相手は昨年度準優勝チームというだけあり、簡単には勝たせてもらえない。連続攻撃により前がかりになったア女に対し、ボールを奪ったレッズユースが一気にカウンターを仕掛けるという展開が繰り返された。終盤には失点を覚悟するようなピンチを何度も迎えたが守護神・GK木付優衣(スポ3=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)やDF三浦紗津紀(スポ3=浦和レッズレディースユース)を始めとする守備陣の懸命なディフェンスがゴールを許さなかった。そして再びア女へとチャンスが巡ってくる。83分、前線からのプレスでCKを獲得すると、キッカーは松原。このこぼれ球を村上が押し込み3-1とすると、試合終了間際にもFW山田仁衣奈(スポ2=大阪・大商学園)からのパスに反応した村上が再びゴール。ダメ押しの4点目が決まり、勝利を決定付けた。その後のラストプレーでゴール前の混戦となったが、しっかり掻き出すとここで長いホイッスル。自らの手で今季2つ目のタイトルをつかんだ。

村上も2得点の活躍を見せた

 9連覇を達成したが、ことしの関東リーグは勝ち続ける難しさをあらためて痛感させられたものとなった。一時は開幕当初から守ってきた首位の座から陥落し、次に負ければ自力優勝の可能性が消滅するという状況まで追い込まれたア女。8連覇というこれまでの結果がプレッシャーとなり、選手たちに重くのし掛かっていたに違いない。しかし、土壇場で踏みとどまり最終戦でも力の差を見せつけたその姿はまさに女王にふさわしいものだった。これから開幕する全日本大学女子選手権(インカレ)も関東リーグと同様に連覇を達成している大会であるが、「謙虚におごらずに、自分たち自身を見つめ直してまたやっていきたい」と松原は語った。勝ち続ける難しさを実感したからこそ、この1年間で得たものは大きい。現体制の集大成となる大舞台でア女の選手たちはどのような戦いを繰り広げるのか。またあの弾けるような笑顔とエンジ色の勝利の輪がピッチで見られることを祈りながら。まもなく幕が上がる決戦の時を楽しみに待ちたい。

(記事 篠原希沙 写真 大山遼佳・守屋郁宏)

最後にして最高の舞台、インカレの開幕はもうすぐだ

関東女子リーグ戦 後期第7節
早大 1-1
3-0
浦和レッズレディースユース
【早大 得点者】19,56河野/83,89村上
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 木付優衣 スポ3 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
DF 奥川千沙 スポ4 静岡・藤枝順心
DF 三浦紗津紀 スポ3 浦和レッズレディースユース
DF ◎5 松原有紗 スポ4 大阪・大商学園
DF 渡部那月 社3 兵庫・日ノ本学園
MF 柳澤 紗希 スポ3 浦和レッズレディースユース
MF →55分 平國瑞希 スポ4 宮城・常盤木学園
MF 29 冨田 実侑 スポ1 岡山・作陽
MF 27 村上真帆 スポ1 東京・十文字
MF 10 中村みづき スポ4 浦和レッズレディース
MF →89分 中井仁美 スポ4 兵庫・日ノ本学園
MF 17 大井美波 社3 大阪・大商学園
MF →46分 熊谷汐華 スポ3 東京・十文字
FW 河野朱里 スポ3 静岡・藤枝順心
FW →86分 山田仁衣奈 スポ2 大阪・大商学園
◎はゲームキャプテン
監督:福島廣樹(昭45教卒=東京・独協)
コメント

MF松原有沙主将(スポ4=大阪・大商学園)

――9連覇達成おめでとうございます

ありがとうございます、本当にほっとしています(笑)。

――勝って9連覇をきめることができましたね

状況的には引き分け以上で9連覇ということだったんですけど、4年生にとってはこのグラウンドでやる最後の公式戦だったので、ここは勝って9連覇決めたいとチームみんなで言っていたことだったので、本当に勝てて良かったです

――試合全体を振り返って

最初は悪くて、シュートまではいかれなくても相手の勢いに負けてしまう部分があったんですけど、先制することができて少し落ち着けたかなと思います。ただそのあと失点してしまって、前半を1-1で折り返して。後半の立ち上がりもまた良くなくて攻められてしまったんですけど、その中でも全員で集中して守り切ることができたかなと思います。そしていい時間に追加点を取ることができて、結果的に勝つことができたと思います。ただまだまだ試合内容的には改善すべきところもあると思うので、そこはしっかりやっていきたいです。

――満足いっていない点、具体的にはどこですか

攻撃に関しては、サイドを使ってワンツーで抜けるなど、特に後半は流動的にできたかなと思います。守備の部分で、切り替えだったり、カウンターの時に誰がファーストにいくのかなどの甘さがピンチを招いてしまったのかなと思うので、そこはもっとハードに、全員での守備の意識などをもっと持ったりしていかないといけないのかなと思います。

――4得点を上げた攻撃陣について

あのようなところでしっかり決めてくれて本当に助かりましたし、色々な人が点にからんでいて、全体のチーム力も上がっているかなとは思います。後輩だけではなく4年も点取れたらいいのかなとは思いますけど(笑)。でも得点までにも色々な人が関わっていて、チーム全員で取った得点だったかなと思います。

――伏見での最後の試合が終わってしまいましたが

実感は湧いていないんですけど、伏見での最後の公式戦では絶対勝ちたいと思っていたので、勝てて良かったと思います。

――来年、後輩のみなさんには10連覇がかかっています

10連覇って、本当にプレッシャーかかると思うんですけど、みんなならできると思いますし、私たちも応援してます(笑)。この歴史というか、結果を引き継いでいってほしいなと思います。

FW河野朱里(スポ3=静岡・藤枝純心)

――9連覇できたことを振り返っていかがですか

引き分け以上で優勝をする状態で挑んだ試合でしたが、引き分けで終わるわけにはいかなかったので、こうして最後にいいかたちで締めくくれたのは良かったです。

――最終節に向けて準備してきたことはありますか

関東リーグの期間が空いてきょうを迎えましたが、優勝争いの試合というよりもインカレに向けての準備する試合だと自分は捉えていました。いいかたちで終われたのはもちろんのこと、それにプラスで結果もついてきたのがなお良かったです

――前半は引き分けで折り返しましたが

前半は自分たちがペースを大体握っていたと思いますが、相手も自分たちのことを研究してきていて、後ろに引いて一発で攻撃してくるかたちでした。そのカウンターで一発やられてしまったのは自分たちの弱さです。相手が上手だったのもありますが、そこは改善していかなければならないですし、オフェンス陣の守備の意識が足りなかったのが反省点です。

――得点を振り返っていかがですか

前半の一点は順心の頃からちーさん(DF奥川千沙副将、スポ4=静岡・藤枝順心)と一緒にプレーしているのですが、初めてちーさんがアシストをしてくれて自分がゴールを決めました。優勝がかかった試合で決められたのは良かったです。2点目も相手の頭を越すようなボールを供給してもらって自分は触るだけだったので、周りに生かされた得点だったと思います。

――来年に向けて一言お願いします

9年間優勝し続けてきているので、自分たちの代では10連覇という大きな節目になります。自分たちが絶対に10連覇しなければならないという責任とワクワクする気持ちもあります。らいねんも頑張ります。