2発完封で公式戦4連勝、次戦はINAC神戸との大一番!

ア式蹴球女子

 関東大学女子リーグ戦(関カレ)は残り2節。5勝1分1敗で首位に立つ早大は、8位の武蔵丘短大と対戦した。試合は、MF大井美波(社3=大阪・大商学園)とMF熊谷汐華(スポ4=東京・十文字)のゴールで2−0の勝利。この結果を受け、早大は最終節の日体大戦(11月15日)で勝利すれば、他会場の結果に関係なく、2年ぶりの関カレ優勝が決定する。

 ミッドウィーク開催となったこの試合は、早大にとってここ5日間で3試合目。疲労の蓄積も懸念される中、ターンオーバーを敢行した前節(対筑波大:○2−0)とは違い、今節はレギュラーメンバーを中心に臨んだ。試合は開始3分、左CKから相手のクリアミスを大井が押し込み、あっさりと先制に成功する。その後も、ア女がボールを回しながら様子を伺い、ややスローペースで試合は進んでいった。20分、相手のクリアボールをトラップしたMF中村みづき副将(スポ4=浦和レッズレディース)が左足でハーフボレーを放つも、これは相手GKが横っ飛びでキャッチ。その後はパスワークのテンポを徐々に上げていったものの、細かいミスもあり追加点を奪えない。攻撃に停滞感が漂う中、1−0のまま折り返した。

先制点をあげた大井

 後半最初のチャンスは53分、ハーフタイムからピッチに入った熊谷汐の折り返しを中村が収め、反転から右足を振り抜く。しかし、シュートは相手GKにセーブされてしまった。その後もセットプレーや細かい崩しから好機を迎えるが、ゴールネットを揺らすことはできない。それでも84分、MF松本茉奈加(スポ1=東京・十文字)がゴール前にグラウンダーのボールを入れると、走り込んできた熊谷汐がダイレクトで蹴り込み追加点を挙げた。守っては前半以上に接点での強度を高め、相手に攻め込まれる場面をつくらせず。2−0で危なげなく勝利し、公式戦の連勝を4に伸ばした。

貴重な追加点となった熊谷汐のゴール、得点後は笑顔を見せた

 実にタフな一週間だ。11月4日、5日に皇后杯全日本女子選手権(皇后杯)と関カレの連戦を行った早大(5日の関カレに至っては、福井県で行われた前日の試合終了から、わずか22時間後に東京でキックオフだった)。そこから中2日で迎えたのがこの試合だった。過密日程の中、しっかりと勝ち点を積み上げたのはさすがの一言だが、ボールタッチやプレースピードといった部分で、明らかに疲労の色がにじみ出ていた。「正直、疲れが一番ですね(笑)」と、遠慮気味に吐露する選手もいたほどだ。日々の練習はもちろん、大学の授業などもこなしながら、これだけ多くの試合を消化しているとなれば、無理もないだろう。それでも時間は待ってくれない。中3日で挑むのは、皇后杯3回戦・対INAC神戸@エディオンスタジアム広島である(その後、中2日で優勝が懸かる関カレ最終節を迎える。これはあまりにタイトな日程だ)。日本代表の岩渕真奈や鮫島彩らを擁するINAC神戸は、皇后杯2連覇中の強豪。日本女子サッカーリーグ(なでしこリーグ)1部の強豪を倒すことを目標の一つとしてきたア女にとって、一年で最も重要な試合の一つと言える。INAC神戸戦、勝利のカギは間違いなくディフェンスにある。粘り強く守って持久戦に持ち込むというのは、ジャイアントキリングが起きるときの常道だ。もちろん、ロングカウンターだけに頼るのは心もとないが、ア女にはGK木付優衣(スポ3=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)を含め、後方にも足元の技術が高い選手がそろっている。ロングボールを多用せずとも、守り勝つ戦いに持ち込めるはずだ。今季はハイプレスとダイレクトな攻めを貫くア女だが、個々のスキルに自信を持ち、割り切って自陣に引いて守る戦い方を仕掛けてみるのも、有効な手立てと言えるかもしれない。

 とにもかくにも、選手たちは残り3日間という限られた時間で、大一番にアジャストしなければならない。「自分たちが完全にチャレンジャーとして臨める試合。やるからにはチーム全員で勝利を目指して、伸び伸びとプレーしたい」(中村)。一流のプロ相手にチャレンジできる機会を楽しみながら、90分間はつらつとしたプレーを見せて欲しい。

(記事 栗村智弘、写真 田中佑茉・篠原希沙)

スターティングメンバー

関東大学女子リーグ戦 第8節
早大 1-0
1-0
武蔵丘短大
【早大 得点者】3大井/84熊谷汐
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 21 鈴木佐和子 スポ1 浦和レッズレディースユース
DF 奥川千沙 スポ4 静岡・藤枝順心
DF →82分 冨田実侑 スポ1 岡山・作陽
DF 三浦紗津紀 スポ3 浦和レッズレディースユース
DF 渡部那月 社3 兵庫・日ノ本学園
DF ◎5 松原有紗 スポ4 大阪・大商学園
MF 中井仁美 スポ4 兵庫・日ノ本学園
MF 平國瑞希 スポ4 宮城・常盤木学園
MF →69分 松本茉奈加 スポ1 東京・十文字
MF 27 村上真帆 スポ1 東京・十文字
MF 10 中村みづき スポ4 浦和レッズレディース
MF 17 大井美波 社3 大阪・大商学園
MF →46分 熊谷汐華 スポ3 東京・十文字
FW 河野朱里 スポ3 静岡・藤枝順心
FW →87分 山田仁衣奈 スポ2 大阪・大商学園
◎はゲームキャプテン
監督:福島廣樹(昭45教卒=東京・独協)
コメント

MF中村みづき副将(スポ4=浦和レッズレディース)

――選手の皆さんにとっては少し消化不良な試合だったかと思います

そうですね。みんなの表情を見てもわかるように、満足できる内容ではないです。

――ただ、結果としては勝ち点3を積み上げました

もちろん結果としては良かったです。自力優勝ができる状況になったので。ただ本当に、良かったと言えるのは結果だけですね。

――試合の内容に関しては疲労の影響もあるのでは

疲れていない、と言えば嘘になります。特にディフェンスラインの選手は疲労があると思います。

――一年もいよいよ終盤に入ってきていますがチームの完成度についてはどう思われますか

強い相手とやるときの方が、自分たちが相手に対してできることとできないことがはっきりとわかっていて、ある意味戦いやすいというか…。逆にきょうのように、自分たちよりも下位にいるチームが相手になると、プレーが探り探りになってしまうというか、相手に合わせて(戦い方に)一貫性がなくなってしまいます。それは悪いことではないと思いますけど、シーズン終盤のこの時期にブレてしまう部分があるという意味では、完成度はまだまだなんじゃないかと思います。

――次戦はINAC神戸戦です。中村選手ご自身としては、一昨年に皇后杯で日テレ・ベレーザに完敗した(●:0ー5)という経験があります。ラストイヤーになでしこ1部の強豪を倒したいという気持ちも強いのでは

そうですね。一昨年ベレーザとやったときは、自分は本当に何もできなかったので。そのときよりも成長した姿というのを、絶対に見せなければいけないですし、やるからにはチーム全員が勝利を目指して臨みます。自分たちとしては、完全にチャレンジャーとして臨める試合はなかなか無いので、伸び伸びやれればと思います。

――勝つ自信としてはいかがですか

勝負である以上、絶対はないと思うので。一人ひとりが実力を出せれば勝てるチャンスはあると思いますし、謙虚な気持ちで、勝利目指して頑張ります。

MF大井美波(社3=大阪・大商学園)

――前半を振り返って

先制点早く取れたのは良かったんですけど、それが逆に緩みになってしまって。点を取ってからの前半は、球際とか対人の面で意識が緩くなっちゃったかなと思うので、どんな相手でもそこははっきりしていかないといけないなと思います。

――後半はベンチから見ていましたが何か感じた部分などは

ハーフタイムの間の監督の指示をしっかりと理解して、はっきりとしたサッカーをピッチで表現してくれていたので良かったと思います。

――得点シーンを振り返って

クリアが自分のところに流れてきて、あとは決めるだけという感じだったので、運が良かったなという(笑)。

――貴重な先制点となりましたね

流れの中でだったり、もう少し納得のいく得点をしたいなと思います。

――きょうのご自身のプレーについて

シュートを打った場面では決められるところもあったので、そういうシーンで決める決めないというのでチームの流れも変わると思うので、そこをもっと詰めてやっていきたいです。

――みつかった課題などは

前半で出し切る気持ちでやっているので、もっと攻守ともに運動量をあげて動き回れるようにしていきたいです。

――相手の印象は

ことし初めて当たる相手だったんですけど、いつも同じタイプのサッカーをしてくるので。足元がうまかったり、こねてくるという感じで。それに対してもっとア女のフィジカルで勝れれば前半からもっと点が取れたかなと思います。

――皇后杯、そして関カレと関東リーグの最終戦も控えています。今後への意気込みをお願いします

厳しい戦いが続くんですけど、インカレも近いので、1戦1戦出し切るという気持ちでやっていきたいです。耐える試合も多くなるとは思うんですが、1点を大事にして、とにかく走って勝ちたいと思います。

MF熊谷汐華(スポ3=東京・十文字)

――前半は外から見ていてどのような印象を受けましたか

監督とかもハーフタイムに言ってたんですけど、大きい展開があんまりなくて、外から見たら相手に合わせてるような感じのサッカーで、いつもの自分らのプレーが出せてないかなと思いました。あとはシュートまで全然いけてなかったので、シュート数がもうちょっと欲しいかなと思いながら見てました。

――ご自身はどのような意識で後半入りましたか

ハーフタイムに監督とかコーチから、裏にディフェンスから蹴ってという話があったので、自分はその蹴ったボールに反応するように、あとはクロスとシュートを狙ってというのを意識して入りました。

――最初のゴールが決まってからなかなか点が決まりませんでしたが

もうちょっと縦に速い攻撃とか、スイッチをはっきり入れるところは入れるとかできたら、相手も順応し切れなかったかなと思うので、そういったところを緩急つけてやれたら良かったなと思います。

――その中でも2点目を決め切りました。ご自身の得点シーンを振り返っていかがですか

あれはもう松本(MF茉奈加、スポ1=東京・十文字)がナイスボールをくれたので、ただ合わせるだけだったんですけど、あそこまで走り込んでがんばったので、入って良かったです。チーム的には時間も終わりのほうだったのであれですけど、個人的にはうれしかったですね。

――次はINAC神戸戦です

もう日曜日にはINAC戦が控えているので、あした休みであさってからもう合わせていかなきゃいけなくて。その後日体大戦もあるし厳しい日程なんですけど、うまく調整しながらやっていきたいと思います。

――強敵ですね

そうですね。勝つとかそういうことも大事なんですけど、チャレンジャーの気持ちを忘れずに一生懸命挑むっていう気持ちでやれたらいいのかなと思います。