関東予選優勝!中村の左足がチームを勝利に導いた

ア式蹴球女子

 2年ぶりに帰ってきた舞台・関東女子選手権決勝。昨年度は5位に終わった今大会での雪辱に燃えるア女のここまで戦いぶりはまさに圧巻だった。初戦こそシーソーゲームとなったものの、3回戦と準決勝は相手を全くひきつけずに5-0と快勝。優勝への階段を一気に駆け上がった。しかし、決勝の相手は関東女子リーグ戦(関東リーグ)で唯一土を付けられた日テレ・メニーナ(●0−1)。U-16日本代表に選出された選手を多く抱える強豪だ。緊張感のある立ち上がりから両者チャンスを作り出すも、スコアは動かないまま前半は終了し、迎えた後半10分。MF中村みづき副将(スポ4=浦和レッズレディース)の左足からのミドルシュートが決まりついに先制に成功する。テンポをつかんだア女はその後も攻め続け、メニーナを圧倒。試合終盤に相手の猛攻に遭うが意地でゴールを守りきったア女が再び関東女王の座に返り咲いた。

 「前回負けているのでリベンジとしてのいい機会。みんな強い気持ちを持って臨めたのは良かった」(MF松原有沙主将、スポ4=大阪・大商学園)。開始直後からFW河野朱里(スポ3=静岡・藤枝順心)や中村などが前線からしつこくゴールホルダーを追い掛け、相手のミスを誘う。きょうこそは、という選手たちの気迫がひしひしと伝わってくるア女のプレーが続いた。CKの場面でもDF陣がしっかりと対応。FKを直接狙われあわやというシーンでも守護神・GK木付優衣(スポ3=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)ががっちりとボールをキャッチした。攻めては26分、CKを河野が頭で逸らし、MF大井美波(社3=大阪・大商学園)がボレーシュート。惜しくもGKの正面でゴールとはならなかったが得点の気配を感じさせた。しかし終盤になるにつれて徐々にメニーナに足元を狙われ、ボールロストが増えてしまう。やっとの思いでボールを奪っても苦し紛れのようなパスとなってしまい前に運ぶことができず。終了間際に河野からのパスに反応したMF村上真帆(スポ1=東京・十文字)が強烈なミドルシュートを放ったがこれもわずかにクロスバーの上。互いに得点のないまま前半を折り返した。

やはりチームを優勝に導くゴールを決めたのは中村だった

  鳴り響くホイッスルとともに今大会最後の40分間がスタート。ここで前の試合ハットトリックの活躍を見せたMF熊谷汐華(スポ3=東京・十文字)と、絶好調のDF冨田実侑(スポ1=岡山・作陽)を投入したア女に本来のリズムが戻る。「大きくピッチを使ったり、縦に楔のパスを入れたりできるようになった」(松原)。44分、熊谷汐からのクロスに冨田が飛び込みヘディング。その直後にも再び熊谷汐からのパスに抜け出したDF中田有紀(スポ2=兵庫・日ノ本学園)がシュートしたが惜しくも枠捉えることはできなかった。再三のチャンスが実を結んだのは50分だった。河野がハーフライン付近で中村にパス。「無心に足を振った」という中村のミドルシュートは、昨年度の全日本大学女子選手権(インカレ)決勝での逆転ゴールを彷彿とさせるような綺麗な弧を描き、相手GKの頭を越えてゴールへと吸い込まれた。中村のもとへと一斉に駆け寄る選手たち。頼れる副主将のゴールにベンチや観客席の仲間たちも歓喜に湧いた。リードしてもなお攻める姿勢を崩さないア女はその後も立て続けにシュートを放つ。終了間際にCKやカウンターなど連続でピンチを迎えたが、粘り強い守備でゴールは割らせず、結果1-0でうれしい今季初タイトルをつかみ取った。

喜びを噛み締める選手たち

 今季一度敗戦した相手に決勝という大舞台でリベンジに成功し、2年ぶりの優勝を達成。この結果は夏の間に様々な場で経験を積んだア女の選手たちが個人としても、チームとしても大きく成長したという紛れもない証だ。ところが「優勝できたことは嬉しいが、これが終わりじゃない」(中田)、「なでしこリーグのチーム相手にも通用するように自分たちはもっと成長していかないといけない」(松原)と試合後の選手たちは早くもこれからを見据えていた。王者奪還のためにはもう1つも負けは許されない苦しい戦いが続く関東大学女子リーグ戦(関カレ)。格上のチーム相手にどこまで自分たちのサッカーが通用するのか、チャレンジャーとして臨む大舞台・皇后杯本戦。そしてその先には3連覇の偉業が懸かったインカレが待っている。日本一という頂からの最高の景色をもう一度見るために――。ア女の戦いはここからが勝負だ。

(記事 篠原希沙、写真 森田和磨・大島実咲)

表彰式後の集合写真、全員が満面の笑みを見せていた

関東女子選手権 決勝
早大 0-0
1-0
日テレ・メニーナ
【早大 得点者】50中村
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 木付優衣 スポ3 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
DF 15 中田有紀 スポ2 兵庫・日ノ本学園
DF 三浦紗津紀 スポ3 浦和レッズレディースユース
DF 奥川千沙 スポ4 静岡・藤枝順心
DF 渡部那月 社3 兵庫・日ノ本学園
MF ◎5 松原有紗 スポ4 大阪・大商学園
MF 27 村上真帆 スポ1 東京・十文字
MF 平國瑞希 スポ4 宮城・常盤木学園
MF →41分 冨田 実侑 スポ1 岡山・作陽
MF 10 中村みづき スポ4 浦和レッズレディース
MF 17 大井美波 社3 大阪・大商学園
MF →41分 熊谷汐華 スポ3 東京・十文字
FW 河野朱里 スポ3 静岡・藤枝順心
◎はゲームキャプテン
監督:福島廣樹(昭45教卒=東京・独協)
コメント

MF松原有沙主将(スポ4=大阪・大商学園)

――優勝おめでとうございます。今季初タイトルの感想をお願いします

目標の1つとしている優勝という結果を残せたことはチームとしても個人としても本当に良かったなと思います。ただ、試合内容的にはもっとできる部分もあったんじゃないかなと思うので、再開する関カレとかでそういったところは改善していきたいなと思います。

――前半と後半をそれぞれ振り返っていただけますか

前半は自分たちのペースでいけた時もあるんですけど、相手のペースの時の方が多くて。セカンドが拾えなかったり、ファーストがはっきりせずにフリーにさせてしまう部分が多かったりだとか。でも後半は立ち上がりからいい流れでいくことができたのでチャンスも作ることができたかなと思います。点も取ることができましたし、攻め込まれた場面でもしっかり集中して守ることができていたかなと。無失点で終わることができたのも良かったです。

――先ほどあった納得いっていない部分について具体的には

セカンドを拾えずに相手にペースを握らせてしまっただとか、あとはボールの取られ方とかですね。これは個人的になんですけど、自分のところでボールを取られてしまってピンチになる場面とかがあったので、そこはもっといいゲームができるようにしていかないといけないなと思います。

――関東リーグで敗戦(●0−1)してしまった相手に対して、どのような対策をたてていましたか

足元がうまいというのは何度もやっているのでわかっていた部分で、足でいかないっていうのと、前回負けているのでリベンジとしてのいい機会ですし、みんな強い気持ちを持って臨めたのは良かったんじゃないかなと思います。

――相手の印象は

パスを回すし、足元もすごい技術があって、攻撃の部分でも前で収めることのできる選手や速い選手などもいて、自分たちもうまくはめ切ることができていなかった部分もあったかなと思います。

――きょうのチームの攻撃について

シュートで終わる場面が後半は特に多くなって、それは良かったかなと思います。ただ、タッチ数が多くなってしまって大きい展開ができなかったり、早く出せるのに出せなかったりで、リズムが遅くなってしまったり一定になってしまったりというのが前半の課題でした。でも後半は大きくピッチを使ったり、縦に楔のパスを入れたりだとかが見られたので少しは良くなったかなと思います。

――今後への意気込みをお願いします

今まではなでしこリーグのチームに負けて敗退という感じで。なでしこリーグのチーム相手にも通用するように自分たちはもっと成長していかないといけないと思います。あと、強いチームとやれるのもとても貴重な体験になるとと思いますし、無駄にしないようにしたいです。自分たちの力を試すという意味でも、本戦でも優勝を目指してがんばります。

MF中村みづき副将(スポ4=浦和レッズレディースユース)

――今季初タイトルとなりました。どんなお気持ちですか

昨年は取れなかったタイトルというのもあって、みんな優勝目指してやってきたので、それが結果としてうまく出たので良かったと思います。

――関東リーグで負けた相手でしたが、きょうはどういう作戦で臨みましたか

メニーナの子はすごい体格は小さいんですけど、足元の技術だったり気持ちだったりっていうのがすごい強くてほんとにサッカーがうまい子たちなので、そこを出させないで、球際の部分だったり自分達が勝れるところでしっかり勝って、ゲームを有利に進めていこうとしました。

――シュートシーンを振り返って

朱里(FW河野朱里、スポ3=静岡・藤枝順心)が落としてくれて、そこまでは覚えてるんですけど、そこからあまり覚えてなくて。ほんと無心に足を振ったらいい所に入ったので良かったです。

――試合前半を振り返っていかがでしたか。

前半の部分は、悪くはなかったと思うんですけど、攻撃の所もフィニッシュまでなかなか行かなかったり。相手のDFがうまかったっていうのもあるんですけど、ほんと悪くはなかったけど良くもなかったというゲーム内容でした。

――無得点で迎えた後半でしたが、気持ちの切り替えなどはありましたか

このチームの特徴かもしれないですけど、得点ができてないからと言って焦ったりはしないっていうのがあったので、後半も普通通りに入れたかなと思います。

――きょう見つかった課題はありましたか

セカンドが拾えなかったり、守備の部分ではめれた時とはめれなかった時っていうのがあったりしたので、そこをもっと、成功っていうのを回数増やせるように、とは思います。

――来週から再開する関東リーグに向けて意気込みをお願いします

次は東洋大で、東洋大もほんといいチームだと思うので、挑戦する気持ちで、自分達のサッカーをするっていうのもそうですけど、まず気持ちの面で全力で臨んで勝ちたいと思います。

DF中田有紀(スポ2=兵庫・日ノ本学園)

――きょうの試合を振り返っていかがでしたか

しっかり勝ちきれて、予選を1位で通過で本戦に臨めるということで良かったなと思います。

――無失点で試合を終えられた要因は

相手もうまくて危ない場面もあったんですけど、最後粘り強く対応できていたことが失点をしなかった要因だと思います。

――関東リーグで唯一負けてしまった相手でしたが特別な気持ちはありましたか

関東リーグでは0-1で失点をして負けてしまっていたので、とりあえず無失点で終わりたいなとは思っていて、関東リーグでは1点がなかなか入らずに攻めていても決めきれていなかったので、この試合では決めきることができて良かったと思います。

――今季初タイトルですが、率直な感想をお願いします

優勝できたことは嬉しいですけどこれが終わりじゃないので。本戦でしっかりなでしこ2部、1部のチームと戦えるチャンスなので勝ち進んでいきたいなと思います。

――来週からの関カレに向けての意気込みをお願いします

前の東京国際大戦では結果的に負けてしまって勝ち点を取れなかったので、勝点3を取りにいけるように無失点で抑えて攻めきって、内容にもこだわりながら1戦1戦臨みたいと思います。