関東女子リーグ戦(関東リーグ)の後期第2節が行われ、ア式蹴球部女子(ア女)は、ホーム・東伏見グラウンドに筑波大を迎えた。7分にセットプレーからFW河野朱里(スポ3=静岡・藤枝順心)のヘディングシュートで先制すると、19分、25分にはMF中村みづき副将(スポ4=浦和レッズレディース)が追加点を挙げ、試合の大勢は決した。後半にも4得点を追加し、筑波大を圧倒。終盤にミスから2失点を喫するなど脆さも垣間見せてしまったが、大勝で順当に勝ち点3を積み上げた。
エースがファーストシュートで試合を動かした。7分、左サイドからのCKのチャンスで、MF柳澤紗希(スポ3=浦和レッズレディースユース)が、インスイングの鋭いボールをゴール前の河野の頭にピンポイントで合わせた。早々に1点を失った筑波大は、流れを引き戻そうと高い位置からのプレスを試みたが、早大も選手が距離感よくポジションを取り、要所ではワンタッチのつなぎでテンポを変え、状況の打開を続けた。19分には中村がMF松原有沙(スポ4=大阪・大商学園)とのワンツーからペナルティエリア内に抜け出すと、相手GKの肩口を豪快に右足シュートで射抜いて追加点。さらに、25分にはハーフウェーライン付近での松原のボール奪取を起点に、カウンターを仕掛ける。こぼれたボールを中村がさばき、左サイドで河野が運んで折り返すと、並走していた中村が滑り込みながら合わせて決めた。「2人で長い距離を走って、崩して決めることができたのは良かった」(河野)と会心の得点で勝負を決定づける。その後は決定的なシーンを作るには至らず、「ちょっとだらだらしてしまった」(中村)。それでも、ピンチらしいピンチもつくられることなく前半を終えた。
初スタメンとなったDF冨田実侑(スポ1=岡山・作陽)、これからの活躍にも期待だ
ハーフタイムに筑波大は3人の選手を入れ替えたが、後半もペースを握るのは早大。57分に、相手最終ラインに対してFW平國瑞希(スポ4=宮城・常盤木学園)がプレスをかけ、相手DFのミスを誘うと、こぼれ球を拾った河野が決めた。さらにその1分後、FW熊谷汐華(スポ3=東京・十文字)とのパス交換で左サイドを突破した河野が、再び中央にラストパスを送る。ファーサイドに走り込んだ中村が決め、点差を5点に広げた。80分と90+1分には、DF三浦紗津紀(スポ3=浦和レッズレディースユース)のロングパスから、相手DFの背後を取った河野、中村がそれぞれ得点。83分とアディショナルタイムのラストプレーで、パスミスが絡んだ失点をそれぞれ喫し、完封は逃してしまったが、河野と中村の2人で計7得点を記録し、危なげなく白星を挙げた。
今節のハットトリックにより、河野は得点ランキングトップタイに躍り出た
筑波大はここまでの関東リーグでは全敗で、最下位に低迷しているチームということは考慮すべきかもしれない。それでも、第6節のシステム変更以降では初めてとなる大量得点を記録したことは、非常にポジティブな要素だ。それぞれの選手が細かいポジション修正を繰り返し、距離感よくボールを回してゲームを支配。ついに新たな布陣もハマり、多くの局面で数的優位を作り出すことに成功していた。一方で、パス回しの中でのミスが起因の失点が続いたのも事実だ。以前と比べ、より攻撃に厚みを出すようなサッカーを目指すということは、それだけ守備面でより多くのリスクを負うということ。本来強みであるはずの攻撃の組み立てだが、一つのミスが生じれば、命取りにもなりかねない。「ミスなく強みを出せるようにやっていかなきゃ、今後通用しない」と気を引き締めたのは中村。より丁寧さを突き詰めながら、攻撃面で得たモデルケースを今後に生かし、勢いそのままに好循環へと入っていきたいところだ。
(記事 守屋郁宏、写真 篠原希沙)
スターティングメンバー
関東女子リーグ戦 後期第2節 | ||||
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早大 | 7 | 3-0 4-2 |
2 | 筑波大 |
【早大 得点者】6,56,80河野、18,24,58,90中村 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 木付優衣 | スポ3 | ジェフユナイテッド市原・千葉レディース |
DF | 15 | 中田有紀 | スポ2 | 兵庫・日ノ本学園 |
DF | 4 | 三浦紗津紀 | スポ3 | 浦和レッズレディースユース |
DF | 20 | 高瀬はな | スポ2 | ジェフ千葉レディースユース |
DF | 29 | 冨田 実侑 | スポ1 | 岡山・作陽 |
MF | ◎5 | 松原有紗 | スポ4 | 大阪・大商学園 |
MF | →83分 | 安部由希子 | スポ3 | 宮城・常盤木学園 |
MF | 6 | 柳澤 紗希 | スポ3 | 浦和レッズレディースユース |
MF | →60分 | 中井仁美 | スポ4 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | 28 | 松本茉奈加 | スポ1 | 東京・十文字 |
MF | →46分 | 平國瑞希 | スポ4 | 宮城・常盤木学園 |
MF | 10 | 中村みづき | スポ4 | 浦和レッズレディース |
MF | 17 | 大井美波 | 社3 | 大阪・大商学園 |
MF | →46分 | 熊谷汐華 | スポ3 | 東京・十文字 |
FW | 7 | 河野朱里 | スポ3 | 静岡・藤枝順心 | ◎はゲームキャプテン 監督:福島廣樹(昭45教卒=東京・独協) |
コメント
MF松原有沙主将(スポ4=大阪・大商学園)
――率直な感想をお願いします
攻撃に関しては得点を取れたので良かったと思うんですけど、終了間際に2失点ということで、集中力の部分であったり甘さがあったのかなと。そこは改善していかないといけない部分だなと思います。
――2失点の原因は
後半、自分たちがボールを持てたんですけど、低い位置でなかなかスイッチをいれることができなくて、そこを狙われてしまったという感じです。もう少し自分も関わりにいけたら良かったなと思いますし、全体的にその場その場で考えて、選択肢を増やしていかないといけないなと思います。
――久しぶりの大量得点となりました
久々に7点取れたことは本当に良かったなと思います。それもロングボールだったり、スイッチ入れていい崩しからの得点があったりしたので、そこは継続してやってきいきたいなと思います。
――初先発の冨田選手への声かけが多かったように思います
もっとガツガツいっていいよとか、自分の殻破って自分らしいプレーをしていいよとか、前向きな言葉をかけて、プレーしやすいようになればいいなと思ってやっていました。
――きょうのご自身のプレーについては
前半は低い位置に入って、ディフェンスラインからボールをもらって組み立てることができていたんですけど、後半はその動きが中途半端になってしまって。味方も自分もどうしていいかわからないという感じになってしまって、それが失点にもつながってしまったと思います。もう少し自分がはっきりしたプレーをすることでチームも流れに乗ってくると思うのでそこは改善点かなと。守備の部分でも軽いところとか、ファーストがはっきりしないところがあったので、DFとか中盤と声かけしながらもっと連携してできたら良かったかなと思います。
――FW河野朱里(スポ3=静岡・藤枝順心)選手が久しぶりの得点を挙げましたね
点を取れるとても頼りになる選手なので、点を取ってくれるのはチームとしてもありがたいことですね。ただ、朱里だけに頼るんじゃなくて誰が出ても点が取れるチームにしていかないともっと高いレベルになったときには通用しないなと思います。でもほんと朱里は頼れる存在なので、チームを救ってもらったなという感じです。
――次節への意気込みをお願いします
きょうに続いて大学生との対戦なんですけど、前節も今節も終了間際に失点していて。最後の部分で集中力が切れているということではないんですけど、甘さがこのような結果にあらわれていると思うので、チームでしっかりこの結果を受け止めて、改善して臨みたいと思います。
MF中村みづき副将(スポ4=浦和レッズレディース)
――試合を振り返っていただけますか
きょうは7点という大量得点はできたんですけど、その点数ほど圧倒できていた内容でもなかったし、2失点もしてしまったので、良くはなかったのかなと思います。
――立ち上がりは距離感よくボールを回していて、良い試合の入りができたように見えました
そうですね。最近立ち上がりのところであまりうまくいかなかったので、大きなプレーをしようというところは意識していって、割と高い位置でプレーできていたので、テンポもよく回せていた部分もあるんですけど、立ち上がりが良すぎてちょっと(時間が)経過したあたりから全体的にだらだらしてしまって、そこでパスミスとかも増えてしまってリズムも悪くなってきたかなという印象です。
――チームとしては、崩しやカウンターなど様々なかたちから得点を重ねました
距離感が近かったら(ボールの近くに)人がいっぱいいると思うんで、そこでアイデアをそれぞれ出し合って良い攻撃ができると思うんですけど、問題は人をどうやって集めるかではなく、距離感の良いところでどうプレーするかだと思うんで、いろんな(攻撃)パターンを生み出せるポジション取りというのを今後も意識してやっていかなければいけないなと思います。
――ご自身の得点について振り返っていただけますか
2得点は朱里(FW河野、スポ3=静岡・藤枝順心)からの左(サイド)のクロスが来て、長いランをしたら相手があまりついてこなかったので。長いランニングというのは非常に有効的だと思うので、続けていきたいと思います。有沙(MF松原主将、スポ4=大阪・大商学園)とワンツーしたやつ(チームの2点目)はちょっとギリギリだったんですけど、いいタイミングでボールが来たので、しっかり足を振ったらいいところに行ったので良かったと思います。
――ビルドアップの過程でのミスが絡んだ失点が続いている点については、感じることはありますか
きょうの失点に関しては、2失点とも自分へのパスをかっさらわれたかたちになったので、自分のポジショニングというのも非常に良くなかったと思いますし、今までのゲームでもそういうかたちがあったと思うので、ビルドアップをできるというのはワセダの強みでもあると思うので、そこをしっかりミスなく強みを出せるようにやっていかなきゃ、今後通用しないかなと思います。
――今の課題をまとめていただくと
すごく大雑把に言うと、失点が続いているので、無失点で勝ち切るっていうところですかね。
――次節へ向けて
先ほども言ったんですけど、失点が続いているので、しっかり無失点でというのと、攻撃面に関してはきょうできていたことをもう一回やって、しっかり得点を重ねて、勝ち点3をしっかり取れるようにします。
FW河野朱里(スポ3=静岡・藤枝順心)
――率直な感想をお願いします
点は入ったんですけど、2失点したし、最後、締めくくるという意味では良くない試合だったかなと思います。
――2失点してしまった原因は
点を取っていたので、悪い余裕が生まれてしまっていたかなと思います。最終ラインでのパスの意識が少し薄くなってしまった一瞬の隙を突かれてしまったかなと。そこがだめだったと思います。
――得点シーンを振り返っていただけますか
1点目は、やな(MF柳澤紗希、スポ3=浦和レッズレディースユース)がいいボール出してくれて、もう触るだけでした。2点目は、みずきちゃん(FW平國瑞希、スポ4=宮城・常盤木学園)が相手のCBにかけてくれてて、自分も同じタイミングでいったらこぼれてきて。最近一対一が苦手だったので、そこはみっちゃん(MF中村みづき副将、スポ4=浦和レッズレディース)と練習したりしていたのが生かせたかなと思います。3点目は横パスが多くなっていて、1回縦に大きく入れないといけないというタイミングでさつ(DF三浦紗津紀、スポ3=浦和レッズレディースユース)が自分の声に反応していいボール出してくれたので、いつものように裏へ抜け出すことができて。落ち着いて決められたのは良かったと思います。
――きょうの試合、暑い中かなりの運動量だったように思いますが
最近、個人的にも得点が取れなかったというのもあってすごい悔しかったので。最後の方はみんな疲れていて、自分もあまり前から追えなかった部分もあるんですけど、追うところは追ってという感じで意識できました。あと、みっちゃんが点もたくさん取って走ってたので、自分も負けられないなと思って走ってました。
――久しぶりの得点はやはり嬉しかったですか
そうですね。ただ1点目は取らせてもらったという感じだったのでなんとも言えなかったですけど。きょうは得点というよりかは、みっちゃんのアシストの方が印象に残っています。2人で長い距離を走って、崩して決めることができたのは良かったです。
――2つのアシストの場面、どちらも完全に相手を崩していましたね
ほぼカウンターみたいなかたちで、相手も崩れたまま下がってきていたので、自分がスピードアップして、それにみっちゃんが付いてきてくれたので。2本とも同じような感じだったんですけど、いいパスを送れたかなと思います。
――見つかった課題は
90分、どう試合運びをするかが今後の課題になってくると思いますし、相手がどんなレベルであってもずっと同じ力を出し続けられるだけの集中力と技術を毎試合発揮しないといけないなと思います。
――次戦への意気込みをお願いします
引き分けが多くて、もうできませんし、全勝しかないと思っているので、次戦も得点をきょうくらい重ねて、失点はゼロに抑えて完封で勝ちたいなと思います。
DF冨田実侑(スポ1=岡山・作陽)
――トップの公式戦での90分間の出場は初めてだったと思います。試合を終えていかがですか
やっぱり90分集中して戦うというのは簡単じゃないことで、高校とはまた違ったサッカーで、後半になったら集中も切れている部分もあったし、体力面で走り切れていない部分もあったので、夏に向けて体力的なトレーニングとフィジカル的なトレーニングとを取り入れていかなきゃいけないなと思いました。
――かなり試合の立ち上がりは動きも硬かったように見えました
すごい緊張して、全然プレーできていなかったんですけど、先輩とかベンチの方がリラックスしてとか自分らしくという風に声をかけてくれたので、90分戦えました。
――改めてご自身の持ち味を教えてください
自分の持ち味はスピードに乗ったオーバーラップを積極的にすることと、その上下運動を繰り返すということが持ち味だと思うので、それをしっかり(試合に)出させてもらった時は発揮できるようにこれから頑張りたいと思います。
――プレーの出来としてもあまり納得いっていないですか
そうですね。
――まだ悩みながらプレーしているという部分はあるのですか
まだ(ア女の)サッカーを理解できていない部分と、頭で理解したものを表現できていないというのもありますし、メンタル面での課題もあったと思います。
――今後に向けて目標などありますか
先輩方はすごく上手なんですけど、試合に出させてもらったら自分の持ち味をしっかり出して、チームに貢献できたらいいなと思います。