【第5回】DF福井菜月×MG松田つみき×MF宮沢里彩

ア式蹴球女子

 苦しい状況になった時、頼りになるのは4年生の力だ。プレーヤーとして、マネージャーとしてチームを支えるDF福井菜月(スポ4=宮城・常盤木学園)、MG松田つみき(スポ4=愛知・瑞陵)、MF宮沢里彩(スポ4=FC岐阜BELTA)の3人に全日本大学女子選手権(インカレ)に向けて胸に秘める覚悟、思いを語っていただいた。

※この取材は12月17日に行われたものです。

「後輩には支えられているし、その分4年生も他学年にはない強みがあります」(松田)

主務としてチームを支えるMG松田

――まず、インカレまでの今季を振り返っていかがですか

松田 私はチームを支える立場としてやってきましたが、夏合宿で新しく場所を変えたり、メンタルコーチの方にセミナーをお願いしたりと新しいものを取り入れて去年とは違うチームになれたかなと思います。

宮沢 選手面で考えると、去年の4年生とは違った色を持っていて、不器用な学年ですが、みんなで作り上げてきたチームで、模索しながら毎日みんなで突っ走ってきたので、まとまりつつ同じ目標に迎えているチームかなと思います。

福井 関東リーグ(関東大学女子リーグ戦)で連覇をすることができました。失点も少なかったですし、いい感じでトントン勝つことができていましたが、関カレ(関東大学女子リーグ戦)で勝てなかったり、皇后杯で勝てなかっですし、ここにきて弱い部分が出てきています。ここでインカレに向けてどう修正していくか4年生がやるべきことだと思うので、関カレで負けた日体大に借りを返す場だと思うので頑張りたいと思います。

――松田さんは主務、宮沢選手は地域貢献、福井選手はグラウンドマネージャーという仕事にもついていますが具体的にはどういった仕事をしていますか

松田 遠征の試合の申し込みであったり、試合のメンバーを監督に聞いてメンバー表を作ったり、交通の手配、練習の前までは予算を作って決OB会の方に報告し、終わったら決算を報告したりと選手、チームとOBの方であったりその他の方々を繋げる役割が多いです。

宮沢 私はスカウンティングもありますが、地域貢献ではボランティアを探してオファーを受けてそれを発信して参加したりしています。やはりサッカーをするだけではいけないので、サッカーをさせていただいてこと、その方々に感謝の気持ちを表したいと思っています。スカウンティングは相手チームの映像を撮りそれをミーティングで伝えています。

福井 簡単にいうと練習メニューを考えて、練習時に中心になって練習を動かすことです。試合での課題であったり 、監督、選手たちが取り組みたいことを聞いてまとめて 練習メニューを考えることが主な仕事です。

――仕事をやってきて大変だったことはありますか

宮沢 いや、あまりないです。完ぺきにこなせたわけではないですがいやだなと思ったことはないです。

福井 大変でした(笑)。私は特に人の前に立って話すこと、伝えることが苦手なので、その中で練習メニューの意図を伝えることが難しかったですし、練習を厳しくできなかったり、あんまり盛り上がらなかったりと、思うようにいかないことがあったので。インカレまではできることを精一杯やりたいと思います。

松田 私は大変だったことと同時に嬉しかったことなのですが、今年初めて新潟で合宿することになり初めての場所だったので、1年以上前から下見に行き、大学の施設を使うことになったので、大学の方と1年間連絡取り合いながら、栄養士の方と相談して食事メニューを決めたりしました。また選手に目に見える形で還元したいと思っていたので、お金を絶対減らそうと思っていて実際選手の負担が何千円という少ない金額ですが、減らせた時は夜な夜な決算を作っていたのでよっしゃ!って思いましたね(笑) 。

――役職はどういったいきさつでなりましたか

松田 例年マネージャーが主務になっていたのでその流れでという感じです。

宮沢 私は元々ボランティアに興味がありやることも好きでした。もっとやらなければと思っていて、地域貢献どう?と誘いもあったのでやらしてもらいました。スカウティングに関しても試合の映像を見ることが好きだったので、地域貢献も毎日仕事があるわけではないので、スカウティングでチームに貢献したいと思ったのでやりました。

福井 自分は3年の時に分析係をやっていて、分析係は試合の映像を見て分析して、分析ミーティングのときにチームの課題をまとめることをしていて、そのつながりでチームの状況見ることが得意だったので、チーム状況を見極めて練習メニューに反映できたらと思ったのでグランドマネージャーになりました。

――4年生がほかの学年に比べて人数が少ないなと思いました。後輩との関係性はどうですか、遊びに行ったりはしますか

宮沢 がっつりご飯食べにいきますね(笑)。

松田 この前3,4年会やりました。

福井 買い物とかはないですけどご飯を食べに行くことは多いです。

――下の学年からいじられたりしますか

福井 里彩はよく(笑)。

宮沢 いや~いい勝負です(笑)。

福井 絶対里彩だと思うけど 。

宮沢 あだなあるじゃん(笑)。

松田 朱里(FW河野 朱里 スポ2=静岡・藤枝順心) とかに言われてるよね。

――今シーズン印象に残っている試合はありますか

福井 やっぱり関カレの日体戦かなと思います。2連覇かかっていた試合ですし、その中で惜しかったというより何もさせてもらえなかったので、本当に自分たちの弱さ突き付けられたというか、関東リーグではうまく勝てていた分悔しかったですし、自分達はまだまだだなと教えてくれた試合だったと思います。

宮沢 私も日体戦かなと思います。先日関カレの表彰式があったのですが、そこで壇の上に上って写真を撮るのですが、去年は自分達がいた場所に今年はいなくて日体大がいて、それを見て自分たちは負けたんだなと改めて思って、今年はまだ関東リーグしか獲れていない現状を突き付けられました。試合では、菜月は何もできなかったと言っていましたが、自分は相手の攻撃を理解して対応できていたと感じていましたが、1点取られてから一気に崩れて失点しまいました。そこで精神的支柱になれるような、食い止められるようなことができなかったので、やはりそこに4年生があまりいることができない責任をすごく感じましたし、実際にそこで外からしか声をかけることしかできないことに歯がゆさを感じて、このままではチームも4年生もいけないなとあらためて気づかされました。

松田 私は皇后杯のノジマ戦がすごく印象に残っています。負けてしまったのですが、その後選手達からインカレは絶対勝つという次に向けた言葉が出て、悔しくて泣いている選手もいて、頼もしく感じたというか、次に向けて頑張ろうと気持ちになりました。

――今シーズンのチームの特徴、カラーはどういうところですか

福井 去年は4年生が上に立って引っ張っていくかんじでした。ことしは個人的に思うのは4年生が引っ張っていくというよりも、それぞれの学年の足りないところを補ってチームを作っているという感じです。ことしはみんなで1つになるという形で、自分たちも後輩には支えられているし、その分4年生も他学年にはない強みがあります。

宮沢 菜月も言っていましたが1人1人がしっかりしているので、先輩後輩関係なく、みんなが頼れる存在ですし、4年生が頼りないということもありますが後輩が補ってくれています。4年生も4年生しかできないことをやって、試合に出ていないメンバーも他の面で貢献していますし、去年とは違う形ですがお互い刺激しあっています。

松田 マネージャーは1、2年がいますが私がその年代だったときよりもしっかりしているので感謝していますし、それ以外の時間もご飯を食べに行ったりとか話す機会が多いので、新しい意見もくれます。今まで私は空気のような存在というか当たり前の存在というか、練習の時は当たり前のことを当たり前にこなしてそれ以外の時に私が頑張れることがあると思っていましたが、下の学年も当たり前のこと以外に他でがんばっていて、補えあっています。

「本当に4年生が好き」(福井)

4年生愛を語った福井

――松田さんが大学でサッカーに関わろうと思ったきっかけを教えていただけますか

松田 関わろうと思ったきっかけは、私は高校の時何もサッカーを知らなかったっていうのと、私はずっと陸上をやっていて、陸上の方に関わりたいという思いが強かったんですけど、女の人で責任を持たせてもらえる部活が少ないということもあったのと、自分では日本一になれないというのがあったので、ホームページで日本一になれそうなところを調べたら、マネージャーがいなかったっていうのもあって、ここなら必要としてくれるかなって思ってこの部活に入りました。

――宮沢さんと福井さんのお二人のサッカーを始めたきっかけは何ですか

宮沢 私は二つ上の兄の影響で、兄がサッカーを始めて、兄のことがすごく好きだったので、兄がサッカーを始めたらかまってくれなくなって(笑)。サッカーを始めたらかまってくれるのかなと思ってなんとなく始めました。でも始めた時はすごくつらかったんですよ。女子サッカーが全然普及していなくて、少年団に入ったんですけど全然パスを回してもらえなくて。練習中に泣いて帰ったりしていたこともあったんですけど、ただただ見返してやろうと思ってやってきて、そしたらそういう人たちが大事な人たちになってきてっていうので今ここにいます。お兄ちゃんかまってという感じで始めて22までやることになるとは。びっくりです。

福井 私も兄の影響が大きくて、兄がやってたからっていうのと、好きな男の子がサッカーをやってました(笑)。自分は小学校の時とかすごく楽しくて、背も大きくて、男の子に負けないくらいの身体能力で勝負できたっていうのもあって、そういう部分でも、楽しかったです。そこでサッカーの楽しさを知りました。

――お互いの第一印象は覚えていらっしゃいますか

福井 つみきとはバスで会ったね。

宮沢 初めてつみきと電車で帰った時に、いつのまにかパーソナルエリアに入って来てる感じでした(笑)。いつの間にか入ってきててそれが居心地悪くないって感じだった。すごいよつみきって。

松田 なにそれ嬉しい。四年間で初めて言われた(笑)。

福井 すって入ってきてすってなじむって感じだよね。

松田 里彩は、なんだろう。

福井 里彩は、本当に、田舎のヤンキーみたいな感じで(笑)。そんな感じです。方言とかもあったし。最初はびっくりしました。

松田 でも最初はもっと子供っぽかったよね。四年間ですごく変わったと思う。

宮沢 菜月は、指導日の時に、私が一番最初に来たんですけど、数日後に菜月が来て、めっちゃ眠そうだったんですよ。でも毎日この顔なので、こういう子だって思って(笑)。でもやばい人だと思っていました。

松田 第一印象なんだったけ。でも学年が上がるにつれて良さを知っていったって感じ。ぱって見て明るいタイプではないじゃん(笑)。あんまり喋らない人間だなって思ってました。でも今は欠点のない人間だなって思ってます。

――3人ともスポーツ科学部でいらっしゃいますが、どのような勉強をなさっているのですか

福井 コーチングコースなので、コーチング系の勉強と、走り系の勉強です。卒論も、サッカーの中で行われる走りについての研究をしました。サッカーの中でどういう風な走りだとサッカーに活かされるのかということをやっていました。

宮沢  私はスポーツ心理学系のゼミなんですけど、元々入ろうと思ったきっかけは、私はすごくメンタルが弱いので、すぐ緊張しちゃってそれがプレーに現れたりするので、心理学を学びたいなと思いました。卒論でも、ペナルティーキックのあがり防止研究というのをやって、いい結果はでなかったんですけど(笑)。日々緊張しない方法について学んでいます。

松田 私はビジネス系のゼミで、部活でもマネージャーとしてサッカーを支えるという形で関わっていて、ビジネスでも、サッカー系のゼミで、観客の、なぜサッカーを見るのかというのを研究しているゼミです。ゼミでも、サッカーが好きな人が多いので、サッカーのことを教えてもらったりとか、みんなでサッカーを見に行く機会もあって楽しいです。

――学んでいることは部活に活かされていますか

福井  卒論でやったことなんですけど、試合後半って体力が落ちるじゃないですか。そうするとパフォーマンスも低くなるということで、試合後半のパフォーマンスが、有酸素系によるものなのかスプリント系の能力によるものなのかということをやったんですけど、試合後半は結局体力は落ちるんですけど、その中で足が速い人だと、高い位置で保たれるじゃないですか。なので、試合後半は無酸素系の能力があった方がいいということが分かって、それはこれからサッカーに還元できるのではないかと思います。

宮沢  右脳を賦活させると、パフォーマンスを向上できるという研究があって、右脳を賦活させるには、左手にボールを握ったりとか、あとはかわいいものの写真を見るとパフォーマンスが上がるという研究があったりしました。

松田  私は、なぜサッカーを見に来るのかというのを、サッカーそのものが好きという人よりも、サッカーの来た時の高まりとか歓声とか、そこで出会った人と仲良くなるとか、サッカー以外のことを目的でサッカーを見に来る人がJリーグでは割といるっていうことを知って、それがすごく生かされたのが早慶戦で、加藤ミリヤさんを呼ぶのに割と中心的に関わらせてもらうというのがありました。

――プライベートは皆さんで遊ばれたりしますか

福井  ご飯が多いですね。あと学年会とかあります。来週に。

松田 人数が少ないので集まりやすいです。

――オフの日は何をして過ごされていますか

松田  4年生になってからは、オフの日も何かと部活のことをしていることがほとんどです。何かしらやることがあります。でも、1人で買い物に行くことも多いです。

宮沢 自分は、8時くらいに起きて、家事をやったりしています。軽く潔癖なので汚いのが嫌で。家事をオフの日にまとめてやっています。その後はア女のモチベーションビデオを見たりとか。この前の試合のことを考えたりしていたら一日がいつのまにか過ぎています。

福井 月曜日しかオフが無いので、買い物とかです。それか家のことをやってるか、ア女といて、ボール蹴ったりとかメニュー考えたりとか、ご飯行ったりとかこれといってすることは無いです。

松田  オフの日に部活行くと意外にみんな部室にいるよね。

宮沢  みんないるから嬉しくなる。

――個人的に仲のいい選手はいらっしゃいますか

福井 自分は後輩よりもやっぱり同期の方が好きです。本当に、同期といる時が一番楽しいし自分を出せるので。誰っていうよりは、本当に4年生が好きです。

宮沢 自分も同期が好きです。でも全然後輩も誘ってくれるので、あんま誰だからこうとかは考えたことなかったです。みんな好き。

福井 でも最近ご飯行った人を挙げると、学生トレーナーの令菜(ト部令菜、スポ2=栃木・幸福の科学学園高等学校)と、あと里彩と行きました。あと三年生の仁美(MF中井仁美、スポ3=兵庫・日ノ本学園)と遥楓(MF熊谷遥楓、スポ3=北海道大谷室蘭)とご飯行きました。

松田 私はご飯とか行くのは4年生が一番多いのですけど、練習以外のとこで木付(GK木付優衣、スポ2=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)とジョギングをするというのが日課になっています。あと一番話すのは、ゼミが一緒っていうこともあって、二年生の高野佑美(スポ2=東京学芸大学附属国際)と沢山話して信頼もしています。

「2連覇してこそ本当のチャンピオン」(宮沢)

4年生としての姿勢の在り方を語った宮沢

――インカレについてうかがっていこうと思います。今のチームの雰囲気はどうですか

宮沢 正直言うともう一歩かなと思います。だからこそセミナーをお願いしたり、いろいろ動いているところで、1人1人思っていることがあるのですがなかなか表現できなくて、みんな思っていることを一つにする、「同じ方向を向かせることができたら最高だと思うので、あと一歩でそうなれると思います。

――インカレに向けて各自どう具体的にチームに貢献したいですか

松田 私は試合に出ている人だけではなくてチーム全員が応援されているということを感じてほしいので、試合前でも何か形としてできたらなと感じています。

宮沢 まず4年生として姿勢で示すということ、思いを負っているだけではいけないと思うのでそれを体現すること、伝え続けることが大事かなと思います。サッカー面に関しては、自分が試合に出れていない状況ですが、常に上を目指し続けることがチームの刺激になると思いますし、そういう姿勢を続けること、チームのために続けることが大事かなと思います。

福井 グラウンドマネージャーとしては、練習やってきたことが試合での得点につながる、失点を防ぐことにつながればうれしいですし、4年生としては自分ができることを最大限にやるそれしかできることがないので、それをやれば後輩もついてくると思います。

――インカレで期待したい選手、キーパーソンになる選手はいますか

宮沢 自分は朱里(かなと思います。去年のインカレでも得点を決めたというのもありますが、やはり代表に選ばれてW杯にも出場しましたし、本当にすごいと思うのは、代表に行くたびに一回りも二回りもいろいろな面で成長して帰ってくるので本当にすごいと思います。成長し続けることは難しいことだと思います。朱里を見ているとわくわくするというか、本当に尊敬できる選手です。

福井 自分も朱里かなと思っていて、W杯から戻ってきたときにチームの雰囲気がガラッと変わって、そういう力を持っています。普段はそんなに真剣な感じを出さないですけど、実は1番熱い女です。

松田 私は3年生のDF松原有紗(スポ3=大阪・大商学園)です。有紗はけがをしている期間が長かったのでマネージャーと話す機会が多く色々話していたというのもありますし、その期間中見えにくい部分ではありますがすごく頑張っていたと見ていて思ったので、頑張って欲しいと思います。

――では最後にインカレに向けて意気込みをお願いします

松田 紺碧を歌う最後のチャンスなので日本一になって紺碧を歌いたいです。

宮沢 4年生にとってはエンジを着て戦う最後の大会ですし、2連覇してこそ本当のチャンピオンだと思うので2連覇してワセダは強いということを証明したいと思います。

福井 去年日本一になったからといって過信してはいけないですし、決勝のことばかり見ずに1試合1試合勝って自分達のやるべきことをやりたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 高橋弘樹、下長根沙羅)

集大成となるインカレで2連覇を果たすためには、4年生の力が欠かせません!

◆DF福井菜月(ふくい・なつき)(※写真左)

1994年(平6)7月22日生まれ。身長162センチ。宮城・常盤木学園高出身。スポーツ科学部4年。練習メニューを考えチーム作りに奮闘する福井選手。ただ後輩から面白いあだ名をつけられるなどいじられている一面もあるそうです。

◆MF宮沢里彩(みやざわ・りさ)(※写真中央)

1995年(平7)2月17日生まれ。身長154センチ。前所属・FC岐阜BELTA。スポーツ科学部4年。対談中ずっと緊張していた宮沢選手。この対談を就活の面接だと思って手汗をかくほど緊張していたそうです。

◆MG松田みつき(まつだ・みつき)(※写真右)

1994年(平6)2月6日生まれ。身長166センチ。愛知・瑞陵高出身。スポーツ科学部4年。マネージャーとして、主務として献身的にチームを支える松田さん。松田さんがいるからこそ選手が安心してプレーできるのだと感じました。インカレでも彼女のサポートが鍵になっているでしょう。