なでしこ2部覇者に大善戦も、わずかに力及ばず敗退

ア式蹴球女子

 先日の皇后杯全日本女子サッカー選手権(皇后杯)1回戦で福岡・Jアンクラスを下し(◯5-0)、2回戦へと駒を進めた早大。次に相見えたのは今季、なでしこリーグ2部を驚異の無敗優勝で勝ち抜き、念願の1部昇格を決めたノジマステラ神奈川相模原だ。OGであるDF高木ひかり(平28スポ卒)やMF田中陽子らを擁する強豪を相手に金星を収めたい早大は立ち上がりから押し込む展開が続く。しかし一瞬の隙から立て続けに失点し、2点のビハインドで前半が終了。後半も開始早々にCKから失点するがそこから意地の追い上げを見せた。MF松原有沙(スポ3=大阪・大商学園)とFW河野朱里(スポ2=静岡・藤枝順心)のゴールで1点差に迫り、なおも相手ゴールに襲い掛かる。しかし、あと1点が遠かった。プロを相手に互角以上の戦いを見せたものの、わずかに届かず、早大は2回戦で皇后杯から姿を消すこととなった。

高木の得点で3点のビハインドを背負う展開となった

 序盤、ペースをつかんだのは早大だった。後方からパスをつなぎ攻撃を組み立てようとするノジマステラに対し、早大は前線からの組織的なプレッシングでミスを誘発。そこから敵陣でのプレーを増やしていくと14分にはMF中村みづき(スポ3=浦和レッズレディース)のクロスに河野が飛び込み、さっそく得点の気配を感じさせる。その4分後、MF平國瑞希(スポ3=宮城・常盤木学園)が右サイドで仕掛け獲得したFKを松原が蹴り込み、そのこぼれ球をDF三浦紗津紀(スポ2=浦和レッズレディースユース)がシュート。相手GKがはじいたところに複数のプレイヤーが飛び込むがぎりぎりのところでかき出されてしまい、先制点を奪うまでには至らない。早大のプレッシングを嫌がるノジマステラは徐々に後方から大きく蹴り始める。すると31分、早大はディフェンスラインの裏に蹴り出されたボールをDF小林海青にうまく収められてしまい、そのまま先制点を流し込まれてしまう。この失点に動揺したのか、その直後にもクロスから田中にゴールを許し、失点。立ち上がりからゲームを支配したものの、思わぬかたちで2点のビハインドを負ってしまった早大。追い掛ける展開で前半を終えた。

河野の豪快なヘディングで1点差まで追い上げた

 迎えた後半、流れを変えたい早大だったが46分にCKから高木に押し込まれ、いきなり点差を広げられてしまう。「3失点目を許してはいけないのはみんなわかっていたはずなのに」(中村)。苦しい状況を打開できずにいた68分、早大ベンチが大きく動いた。MF中井仁美(スポ3=兵庫・日ノ本学園)に替え、MF高瀬はな(スポ1=ジェフ千葉レディースユース)を投入。同時に中盤の並びを変え、松原を最前線に配置した。するとこの交替策が見事に的中する。直後の69分、中村がドリブルからクロスを上げると前線に入ったばかりの松原がPA内でうまく収め、豪快に蹴り込む。反撃の狼煙(のろし)を上げると、77分には平國との連携で抜け出した中村のお膳立てに河野が頭で合わせ、ついに1点差。早大の驚異の追い上げを前にノジマステラは防戦一方。なおも猛攻を仕掛ける早大。90分、CKから三浦がヘディングシュートを放つがここは枠の上へ。表示されたアディショナルタイムは2分。早大は最後まで前線にボールを供給していく。しかし、あとわずか、届かなかった。プロの意地を見せたノジマステラが何とか逃げ切り、早大の皇后杯への挑戦は2回戦で幕を閉じることとなった。

あとわずかに届かず、皇后杯への挑戦は2回戦で幕を閉じた

 プロを相手に互角以上の戦いを見せただけでなく、勝利の予感まで漂わせたこの試合。「勝てた試合を落としてしまった」(松原)。主導権を握り、相手を大きく苦しめることができただけに、勝利を逃した悔しさはいつも以上に大きかった。しかし、「自分たちに足りないところを見つけることができたし、まだまだということも実感できた」と松原が振り返るように、この戦いはエンジイレブンにとって大きな経験値となった。皇后杯への挑戦は終わってしまったものの、まだまだ試合は続く。目標の全日本大学女子選手権2連覇へ、ア式蹴球部女子はその歩みを止めることなくこれからも突き進む。

(記事 桝田大暉、写真 新庄佳恵)

第38回皇后杯全日本女子サッカー選手権
早大 0-2
2-1
ノジマステラ神奈川相模原
【得点者】(早)69松原、77河野(ノ)31小林、32田中、47高木
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 木付優衣 スポ2 ジェフユナイテッド千葉レディース
DF 32 中田有紀 スポ1 兵庫・日ノ本学園
DF 奥川千沙 スポ3 静岡・藤枝順心
DF 三浦紗津紀 スポ2 浦和レッズレディースユース
DF 渡部那月 社2 兵庫・日ノ本学園
MF 中井仁美 スポ3 兵庫・日ノ本学園
MF →68分 高瀬はな スポ1 ジェフ千葉レディースユース
MF 松原有沙 スポ3 大阪・大商学園
MF 平國瑞希 スポ3 宮城・常盤木学園
MF ◎10 中村みづき スポ3 浦和レッズレディース
MF 26 大井美波 社2 大阪・大商学園
MF →HT 熊谷汐華 スポ2 東京・十文字
FW 河野朱里 スポ2 静岡・藤枝順心
◎はゲームキャプテン
監督:福島廣樹(昭45教卒=東京・独協)
コメント

MF中村みづき(スポ3=浦和レッズレディース)

――なでしこリーグ2部トップチームとの対戦を終えて率直な感想はいかがでしょうか

格上ということは分かっていたのですが、負ける相手ではないということがチーム全体としてあったので、勢いを前半の立ち上がりから見せることができれば良かったです。

――ノジマステラ神奈川相模原との対戦においてどんなゲームプランで臨みましたか

まず、前半は失点なしで勢いを持って前から掛けるということと、最初の15分ははっきりしたプレーをするということを徹底してやろうとチームで話し合っていました。ですが前半の20分から崩れ始めてしまって、2失点を立て続けにしてしまいました。そこから立て直せずに、ハーフタイムに入ってしまったと思います。

――ハーフタイムで話し合われていたことについては

前半は、2列目から飛び出されてしまうなど、相手のやりたいサッカーをやらせてしまっていました。こちらとしては、実力の差でリードされているわけではないから、まだまだいける、というように前向きな気持ちで捉えていました。まだ2失点だったので、1点1点返していこうという感じで後半に臨みましたが、後半の早いタイミングで1失点してしまいました。3失点目は許してはいけないということをみんな分かっていたはずなのに、失点してしまったことがいまのチームの弱さなのではないかと思います。

――3点のビハインドを背負っていた中、後半で2点返すことができましたね

去年の皇后杯では粘り強く点を返して劇的な勝利を収めている中で、ことしのチームはそういうところが欠けている部分があったのですが、今回は去年に負けないくらいのものを体現できたと思います。ですが、その中でも勝ち切れなかったというのはまだまだ課題がたくさんあるということなので、もっと突き詰めていかなければいけないと思います。

――具体的な課題というのは何でしょうか

最初はできていたのに途中で崩れてしまったことです。崩れるというのは、具体的にマークについていけなかったりだとか、2列目から飛び出していくのについていけなかったり、攻撃面だったらサイドチェンジに対応していかなければいけないところを、同サイドで4人が揃おうとしたり、ビルドアップするに当たって意図もないキックをしてしまうといったことです。

――再び関カレが始まりますね

関カレ(関東大学女子リーグ戦)で勝たないと、インカレ(全日本大学女子選手権)も勢いを持って臨めないと思うので、どちらも優勝を目指してやっていきたいなと思います。

MF松原有沙(スポ3=大阪・大商学園)

――ノジマステラ神奈川相模原を相手に2-3の敗戦となりました。試合を振り返っていかがでしょうか

悔しいの一言です。自分自身、前半は何もできなかったです。後半は点も取って、流れは来てたんですけど、最後に決め切れなくて。勝ち切れなかったことは今後の自分たちの課題ですね。

――やはり感触として「勝てたな」という印象があるのでしょうか

そうですね。前半は点を取られてから引いてしまって、相手にやられてしまったのですが、後半は気持ちを切り替えて前からプレスにいこうと話しました。そこから流れが良くなって、点も取れたので勝てた試合を落としてしまったという感じです。

――相手はなでしこリーグ2部を優勝した強豪でした

いつも以上の力を出さないと勝てないという話はしてました。通用する部分もありましたけど、まだまだな部分もあって、自分たちにとって学ぶことがありました。それを今後につなげていけたらいいなと思います。

――後方からパスをつないでくる相手に対して、序盤は特に前線からのプレスで押し込むことができていた印象ですが

そうですね、失点するまでは前から(プレス)を掛けてうまくはめられました。でも失点して、流れが悪くなって、自分たちが引いてしまってという悪循環がありました。失点がなければ一番良かったですけど、失点しても後ろに引かずに前からのプレスを続けていたら内容は変わっていたのかなと思います。

――やはり2失点目が痛かったですね

1失点目をしてからすぐだったので、痛い部分でした。後半の失点もなければ、同点に持ち込めていたわけですし、そこは改善していかなきゃいけないところです。

――後半、MF高瀬はな(スポ1=ジェフ千葉レディースユース)選手の投入をきっかけに前線に入りましたが、その点を振り返っていかがでしょうか

トップにいくとは思ってなかったのですが、FWにいくからには点を取らなければなと思いました。でも全然走れなくて力になれなかったので、今後はもっと走れるようにして期待に応えられるようにしていきたいです。

――ゴールを決めた場面では後ろに来たボールがうまく前に出てくれましたね

そうですね、トラップがたまたま前に来てくれました(笑)。気付いたら入っていたという感じです。うまく(PAの)中に入り込めていたので良かったです。

――前線の布陣が変わってから、チームとしてどのような変化を感じていましたか

点を取って、結構勢いは付いたので、前に人数が掛かる場面が多かったように思います。

――皇后杯はチャレンジの大会でした。大会全体を振り返っていかがでしたか

大学のチームじゃないチームと戦うことができて、自分たちに足りないところを見つけることができたし、まだまだということも実感できた大会になりました。これを無駄にせず、インカレ(全日本大学選手権)で日本一を獲れるよう、またみんなで気を引き締めて戦っていきたいです。