今回、お送りするのはこの二人。MF高木ひかり(スポ4=静岡・常葉学園橘)、MF正野可菜子(社4=兵庫・日ノ本学園)の4年生コンビだ。これまでの四年間、多様なポジションで数多くの試合に出場し、様々な経験を培ってきた。最上級生となり、これまでとは異なった思いで迎えた今季を振り返りながら、ラストステージに向けての熱い思いを語っていただいた。
※この取材は12月12日に行われたものです。
「うまくなりたい」(高木)
熱く語る高木
――まずお二人には今季の振り返りをしていただくのですが、すでに関東三冠を達成した今季のこれまでの感触はいかがですか
高木 まず皇后杯全日本女子選手権(皇后杯)関東予選はチーム全員で勝ち取ったという感じがあって、連戦の中でもちゃんと結果を出せたのはすごくよかったと思います。関東大学女子リーグ戦(関カレ)は日体大が本気のメンバーじゃないということがあって、手応えは確かに感じましたが、まだ上に強い相手がいると思ったらまだまだなのかなと感じました。関東女子リーグ戦(関東リーグ)も負けた試合や引き分けが多かったりして序盤は苦しかったんですけど、なんだかんだ優勝できたのはよかったも思います。
正野 三冠を達成したのですが、自分の中ではどれもギリギリな戦いだったのかなと思っています。その中で勝って優勝を獲れたのは大きいなと思っているんですけど、全日本女子大学選手権(インカレ)で戦うことを考えたらやっぱりまだまだ足りない部分があるのかなと思っています。
――タイトルを獲り切れなかった昨季と比べて、順調に歩みを進めている印象があります。プレーヤーとしてはどのような心境なのでしょうか
正野 昨年は昨年で獲れなさすぎたという印象があります。なんだろうね。
高木 なんだろうね。雰囲気やリズムが悪かったりすると自分たちで立て直せないというのが昨年でしたが、ことしは悪いなと思ったら全員で変えていこうというのを試合の中でできているのが良い方向につながっているのかなって。
正野 たぶんそれが皇后杯の中で一番出たのかなって思っていて、強みというか自信を持っていいところなのかなって。
――やはり昨季の経験があるからこそ、試合の中で立て直せるようになったのでしょうか
高木 だからと言って昨年を教訓にしているかと言ったらそうでもないですね。
正野 でもどこかにあるんじゃない?
高木 4年生が昨年から試合に出ている選手が多いのもあって、そこらへんは反省されているのかな?
正野 うん、たぶん(笑)。
高木 そうかもしれないですね。
――出場枠が増えたとはいえ、皇后杯本戦進出を関東予選優勝で決めることができた点はいかがでしょうか
高木 それは本当によかったなと思います。枠が増えたから本戦に出られたというよりは、ちゃんと実力で勝ち取ったというのはすごいよかったです。
正野 さっきも話しましたが、粘り強さを出せた大会だと思います。粘りながら、苦しみながら勝てたのは少しではありますが自信になっています。
――粘り強さといった点で、今季のア女らしさを出せたということですね
高木 そうですね。
正野 そうですね?
高木 たぶん。
正野 粘り強さは昨年に比べたらだいぶ。
高木 なんか焦らなくなったというのはあるかもしれないですね、やっぱ。
正野 うんうん。
高木 先に点を取られても取り返せばいいやという、客観的にポジティブな視点をとる人が多いというのもあります。それは4年生というよりも、下の子たちに救われているなと思います。
――チーム全体で取り返せるという自信があるからこそなのでしょうか
高木 どうよ?
正野 たぶん点を取られても「負ける」という雰囲気は出てこないですね、ことしのチームは。点を取られても「まだ点を取れるな」みたいな感じが自分自身にもあります。
――皇后杯ではなでしこリーグ2部の相手に互角以上の戦いを見せました
高木 攻めている時間が長かったですしシュート本数を見ても相手を上回っていましたが、結果を見ると厳しい試合でした。互角以上と周りの人たちが認めてくれたのはうれしいですが、自分たちではまだまだもっとできるなと思いました。
正野 負けちゃいけないなというレベルでやっている中で、高木も言ったように結果的にギリギリだったのでもっと一つ一つの質を上げていかなければいけないです。もう少し圧倒できるような結果がこれから必要になってくるなと思います。
――完敗を喫した3回戦の日テレ・ベレーザ(ベレーザ)戦を振り返っていかがですか
高木 もううますぎると一言です。自分たちよりも年下の選手が多いんですけど、技術レベルやフィジカルレベルなど全部が格上でしたね。
正野 なんかもう次元が違ったというか、自分たちが2年生の時にベレーザとやった時(●0-4)よりも全然違うイメージでした。対戦しているのに見惚れるというか。頭こんがらがっちゃいました。
――そのイメージの違いは具体的にどのようなところから生まれたものなのでしょうか
正野 ことしは本当にベレーザが日本一のチームなんだなっていう感じでやられました。
高木 (2年前は)まだできたかなって。ことしの方が歯が立たない感じでした。
正野 こりゃだめだって感じ。
――王者の貫禄を見せられたのですね
高木 そうですね。これが上のチームの力なのかみたいな。
正野 こっちは必死なのに、向こうは遊んでる感じがして。笑いながらやってたから。これは(レベルが)違うなと思いました。
――どのようなプレーにレベルの違いを感じましたか
高木 ワセダが攻める時間が少なく、相手は保持率が高い中でもボールを失いませんでした。一人がボールを持つと何個もパスコースがあって、失うリスクが全然ないなって。こっちは奪ってすぐ誰かにつながなければ相手が寄ってきて焦っていたのに、いろんなパスコースがある相手はすごい余裕があって、そこが全然違いました。
正野 一人一人の能力が対戦する前にイメージしていたものよりはるかに上回っていました。持ち方一つにしろ、タッチにしろ、本当にうまくて、一人一人に怖さがありました。
――そのような試合を経て、いまに生かされている経験はありますか
高木 いまは違うことに試みていて、チーム内で違うポジションをやったりというのをやっているんですけど。いまに生かされているってなんだろうね?
正野 生きているというよりは生かそうとしている段階ですね。
高木 こういうパターンもあるからやってみようというのを共有して、イメージを持つようにしました。まあまだ届かないですね(笑)。
正野 まだまだだね(笑)。
高木 目指すところが高すぎて。苦戦しているところですね。
――ア女が目指すサッカーの完成形がベレーザだという話をお伺いしましたが
高木 まあ選手が思っているというよりかは、監督(福島廣樹、昭45教卒)が「そういうサッカーができたらいいね」っていう感じだよね?
正野 監督すごいよね。
高木 もう、ね(笑)。
正野 ベレーザ戦が終わってからすごい大好きみたいな。あんな監督初めてじゃない?
高木 あれができたら優勝できるのはわかってるわ!みたいな感じだよね(笑)。
正野 言うのは簡単だけど、やるのは難しいからね。
――やはりプレーとしてかたちにできない難しさがあるのですね
高木 ベレーザの選手は一人一人が何をやらなきゃいけないかを全部理解していて、アイコンタクトしなくても動き出しに対してボールが出せるんですよ。ワセダではまだ、ね、意思疎通が足りていないのもありますし、1人が落ちたら(裏に)抜けるというのはあるのですが、それがわちゃわちゃしてます。
正野 できてもそれが1人2人で終わってしまうみたいな。
高木 ベレーザの前線の選手は全員でプレーに関わっていけるみたいな感じです。
――プロを意識するお二人にとってもいい刺激になったのではないでしょうか
高木 意識しているってわけではないですがもっとうまくなりたいなと思いました。
正野 それは思うわ。
――対戦した選手に、このプレーを身に付けたいというのはありましたか
正野 身に付けたいというか、唯ちゃん(MF長谷川唯)すごいなと思った。受け方とか。みんな余裕があって、ベレーザの選手が本当にすごいなって。なんかもう言い表せない。
高木 サイドの選手なんですけど、サイドハーフなら外に張っているのが普通なのに中に入ってきてトップ下みたい動きをするんですよ。そういう動きを可菜子もするタイプなんですが、向こうの方のクオリティが高いからこのような心境になっているのかなと思います。
正野 ありがとう(笑)。
高木 自分は原さん(MF原菜摘子)と阪口さん(MF阪口夢穂)です。ボールにただ寄っていくだけでなく、最善の受け方をするためにあえて(ポジションに)入らなかったり、二人の連携でフリーになるという動きができていて、それができたら有効的に前へボールを出せるし、攻撃の起点にもなれるのかなと。そう思うとすごく真似したいなって。
――やはりレベルの違いを経験したことは大きかったのですね
高木 試合が終わった後、もちろん悔しかったんですけど、みんな「あーうまくなりたい!」って心の底から言っている感じでした。それを考えるとやっぱり試合ができてよかったとすごく思いましたね。
――次は関カレについて振り返っていただきたいと思うのですが、優勝までの道のりを振り返っていかがでしょうか
正野 自力優勝がなくなったのって何試合目だったっけ?その時に「ああもう無理だ」って思ってしまって。
高木 もうなんかどよーんてね。
正野 なんかもうやばかったよね。
――昨年王座を譲った日体大相手に見事最終戦でリベンジを果たし、逆転優勝を決めましたね
高木 まあそうですね。
正野 結果的に見ればそうですけど、日体大はそうでもなさそうなので。
高木 何とも思ってないんですよ。Aチームはなでしこ2部で戦っていて(※日体大FIELDS横浜)、その人たちが一番強いってこっちもわかっていました。Bチームのメンバーが出てきたので絶対に負けられないという気持ちもありましたし、応援しているAチームの人たちは「自分たちが出たら勝てる」と思われているんだなと勝手に思ってました。
正野 勝手にね(笑)。
――優勝してもどこかにもどかしさが残ったということでしょうか
正野 もちろん優勝はうれしかったのですが、高木から聞いた話だと日体大の眼中にうちらはないらしいので。
高木 全日本大学女子選手権(インカレ)の組み合わせが決まった時も「ことしもまた体育大同士の決勝だね」って話していました。
正野 こっちも負けていられないので。
高木 日体大が当たり前だと思っていることを変えてやりたいという気持ちはあります。
――最終節を残し7連覇を決めた関東リーグですが、この『7』という数字をどのように受け止められていますか
高木 連覇が途切れなくて本当によかった!(笑)
正野 よかった~!(笑)本当によかったなって思います。だって7連覇ってすごくない?途絶えちゃったら、ねえ。
高木 昨年関カレが途切れていて、そういった悔しい気持ちを味わっている分、自分たちで歴史を崩したくなかったです。浦和レッズレディースユースは最近の中で一番強い年代なんですよ、いろんな代表に呼ばれている子も多いですし。そういう相手に勝って優勝を決められたのはすごいよかったと思います。
――その浦和レッズレディースユース戦は長い中断期間を経た後の試合でしたが、その間の皇后杯などの経験は活かせましたか
高木 シュート数は相手の方が多くて、内容も相手の方がよかったんですけど、ワンチャンスをものにする力が身に付いていたのかなーとは思うよね。
正野 まあ気持ちだね。
――その試合を含め、大事な試合で重要なゴールを決める1年生のFW河野朱里(スポ1=静岡・藤枝順心)の活躍はいかがですか
正野 心強いよね。すごくない?
高木 (関カレの)日体大戦の前の日に緊張してたんだよね。
正野 そう、4年生はすごい緊張していて。昨年のことも味わっているし、「あしたどうなるかな」って。
高木 そわそわしてたよね。なのに(河野)一人だけ「絶対勝ちますよ~!ワセダのサッカーなら勝てますよ!」ってずっと言ってるんですよ。そのポジティブな感じに救われて当日の緊張も少なかったですし、朱里がポジティブなこと言っているからそれに便乗して前向きにやろうみたいな感じでした。そういう存在はすごい心強いなって。
――河野選手がこの一年間で最も伸びた部分はなんでしょうか
正野 結果残すようになったことじゃない?
高木 最初の方は(試合に)出れていなかったしね。
正野 そうだね。いつからやろ、点決めだしたの。途中からじゃない?
高木 まあでもFWなので、点決めるのは当然だよって感じで(笑)。
一同 (笑)。
正野 甘やかさないようにね(笑)。
高木 甘やかさないように(笑)。
――それはこれからさらに成長してほしいという期待の表れということですね
高木 はい!
――今季のア女は僅差の試合をものにするという印象がありますが、その要因をどのようにお考えでしょうか
高木 周りのチームが強くなってきたというのもあります。ミーティングでも、まあ気持ちのことを言われるよね。
正野 そうね。
高木 ほんと「気持ち、気持ち」って言われるよね。
正野 ハーフタイムでもすごい言われる。
高木 試合の流れが悪いと、「気持ちがないからだ」みたいな。別にないわけじゃないけど、そう言われたら「ああ、ないのかな」って気付ける分、後半に修正できるのもあるかもしれないです。そんな感じかな?
正野 まあ気持ちだね(笑)。
――それは主に福島監督から言われるのでしょうか
高木 監督ってか川上さん(川上嘉郎HC)じゃない?
正野 うん。むしろメンタル面以外は言わないよね。技術だったり、チーム的なことはあんまり。
高木 それが最後まであきらない部分につながっていると思います。
――今季のご自身のプレーに点数をつけるなら何点をつけますか
高木 知らなかったんですけど、関東リーグでチーム内得点王らしいんですよ。それが信じられなくて、昨年シーズンを通して2点ぐらいしか入れてないんですよ、同じポジションをやっているのに。だから昨年よりは少しくらい上かなって思いますけど、監督からの評価はあまりよくないので、30点くらいかな。
正野 低い!(笑)
高木 100点とか言えないでしょ?
正野 100点は言えないけどさ(笑)。
――残りの70点はどのように埋めていくのでしょうか
高木 自分の中では100点を出すことはあまりないなって思うんですよ。120%の力を出しても100点を出せることはないかなって。まあパスミスをしないとかかな、点に絡むとかアシストするとかをもっと詰めていきたいなって思います。今季はあまりないので。
――正野選手はいかがでしょうか
正野 45点。
高木 おまえもそんな高くないじゃん!(笑)
正野 いや、高木がそんな低いからさ~
高木 じゃあ最初は何点のつもりだった?
正野 でも40~50点とかじゃない?
――その理由は
正野 今季は点が取れていないなっていうのが自分の中にあって、昨年の方が点が取れていたかなって。そうなったらチームの役に立てているのかなって思っちゃう。
高木 ネガティブー(笑)。
正野 そんなねえ、自信は持てない(笑)。
高木 まあ人のこと言えないんですけど(笑)。
――それではお二人ともインカレに向けてさらに高めていくということですね
高木・正野 はい!
二人の素性
クールに語っていただきました
――次にお二人の内面に関して迫っていこうと思いますが、この対談の組み合わせはいかがですか
高木 なんでだろうって(笑)。
正野 うん(笑)。
高木 同じサイドでもないし。
正野 確かに。あそこ(MF松川智主将、スポ4=大阪桐蔭・MF山本摩也副将、スポ4=スフィーダ世田谷)はあれだと思った。
高木 あれはね。まあここは中盤の組み合わせかなって。
正野 余りかなって(笑)。
――四年間一緒にやってきてのお互いの印象はいかがですか
高木 正野選手は人なつっこさがあります。
正野 うそでしょ(笑)。
高木 ありますよ~。先輩からすごい可愛がられるタイプで、後輩からはばかにされるタイプです(笑)。いい中和をしてくれる選手ですね。まあでもおもしろいことは全然やってくれないんですよ!4年生はちょっとおちゃらけていて、「おもしろいことをしろよ!」って言っても絶対にやってくれないんですよ!(ア女での生活も)あと1カ月しかないですけど、その皮をむきたいですね。そういうところはまだ物足りないですね。
――高木さんの印象はいかがですか
正野 我が道を行くって感じですね(笑)。いい意味でも悪い意味でも。普段はすごい適当な感じでやっているのに、サッカーになると人が変わるというか、頼りがいがあります。
――先日、MF中村みづき(スポ2=浦和レッズレディース)選手が「高木さんはプレー中、常に意識が高い」と話していましたが
高木 絶対思ってないでしょ!(笑)
正野 やば(笑)。
――意識が高いと思う部分はありますか
正野 なんだろ、でも本当に考えてるし頭を使う人なので。何をするにも無駄にしたくないって思っているところがあるからすごいこだわっているところがあります。
――逆に適当な部分というのは
正野 私生活はもう本当に適当です。「えー、めんどくさい」とか言ってるよね(笑)。ほんとに適当!すべてにおいて。
高木 なんか物事がはやく進めばいいっていう人間なので、丁寧に仕事をこなすよりは要領よくこなせればなんでもいいという感じです。
――毎年高木選手のプライベートを暴こうという話題が上がるのですが、正野選手は「わたしはここを知っている!」というのはありますか
正野 まあ割と握っていますけどね!(笑)
高木 これは割とね(笑)。でも落ち着いてきたじゃん!
正野 最近は“そういう”話を聞かないね(笑)。
高木 プライベートを晒すのはあんまり面白味がないかなって(笑)。
正野 まあいろいろ握ってましたけど(笑)。最近は落ち着いた感が出ちゃったから。
高木 なんかそういう言い方するとさ、すごい“荒れてる”みたいになっているけどね?(笑)
一同 (笑)。
正野 まあいいじゃん(笑)
高木 過去はやばい!みたいな(笑)。
――ことしに入ってから高木選手が前よりもクールになった印象がありますが
正野 前よりですか?!
高木 まあたぶん大人になったのかな?(笑)人見知りなので、インタビューを受けているときも全然目を見て話せないんですよ。すっごい変な方向を見ていると思っていて。
正野 自分は(高木が)1年生のときの方が不愛想だったと思います。今の方が全然(愛想が良い)と思う。
高木 やっぱり?自分もそう思う(笑)。そんなに関係性は変わっていないですけど、みんなに対してね。
正野 そうそうそう。先輩に対してだったりね、後輩にも。
高木 そんなにクールですかね?(笑)
正野 なにクールぶってるの?(笑)
高木 やばいな(笑)。格好つけてるのかな、知らない間に(笑)。
――では正野選手が変わったところはありますか
高木 いまグラマネ(グラウンドマネージャー)をやっているんですけど、全然変わりました。試合中の声の出し方も変わりました。みんなに伝える言葉のセンスも良くなりましたし。
正野 それはさ、元がやばいから(笑)。
一同 (笑)。
高木 本当になんにもしゃべらないでサッカーしているみたいな感じだったんですけど、いまは気持ちをちゃんと伝えるようになった。
――大きく変わったのはこの一年なのでしょうか
高木 この一年はすごいは練習中もすごい声出すし、盛り上げるために力を注いでくれているなと思います。
――やはり意識している部分があるのでしょうか
正野 いままでは、自分の性格上、「だれかがやってくれるだろう」と思っていました。でも上に立ったら、「自分がやらなきゃいけない」と思う分、任せてばっかじゃいけないというのはありますね。
――いま「ルーティン」が流行っていますが、試合に臨む上で独自のルーティンはありますか
高木 ルーティン?なんだろう。
正野 自分はキックオフの時に、屈伸を2回してジャンプを3回します。
高木 そんなことやってたの?!知らなかった!(笑)
正野 やるやるやる!
――それは前からやっていたのですか
正野 それは高校の時くらいからかな。
――高木選手はいかがですか
高木 うちはないかも。最近は試合の勝敗はもう神頼みなのかなって思っていて、実力で上がれる程簡単ではないというのをインカレで2回戦敗退を2年連続で経験したことで感じています。だから最近は「神様見てるかなー、日頃の行いを良くしよう」って感じのことばっかり考えています。だからルーティンとかはないかな。
――他のア女の選手でルーティンを持っている人はいるのですか
高木 なにしてるんだろう。みんななんかあるのかな
正野 全然見ないよね。
高木 人のことはどうでもいい、みたいな(笑)。
一同 (笑)。
「とにかくインカレで結果を残したい」(正野)
シュートへの意欲を示した正野
――それでは目前に控えるインカレに向けてお話を伺っていきます。現在のチームの雰囲気はいかがでしょうか
正野 この時期に言うのもなんですが、まだ未完成感があります。よく言えば、まだまだ上がっていけるのかなっていう段階です。どうですか?
高木 今は模索をしすぎているのかなって感じがあります。どういう方向に(チームが)向かっていくかわからないところがあります。
正野 いまは合わせるのに必死というか。
高木 わかるよ、言いたいこと。
正野 別に悪いってわけではなくて、さらに上を目指していく真っ最中というか。
――昨年とは違い、試合が続いていく中で迎えるインカレとなりますが、実戦感覚やコンディション面での違いはありますか
正野 昨年は連戦が苦手でというイメージがあって、ことしはそういうイメージがありません。試合が続いていく中で克服できたというか、そういう意識はなくなりました。
――インカレは皇后杯と同じトーナメント制である点はいかがでしょうか
高木 (短期決戦ということで)「やるしかない」っていう雰囲気はチーム全体にあるよね。
正野 尾瀬に合宿に行ったんですけど、そこで1日に2試合+走りみたいな。
高木 それに朝練とかもやってたんですけど、その時4年生がめっちゃケガして全然(メンバーが)いなくて、試合中の交替も1人いるかいないか、みたいな。そんな合宿を乗り越えたので。もう鬼のようなね(笑)。
正野 そういうのも強みとして持てているのかな。
高木 しかも(普段の)筋トレもきついから、平日の体のコンディションが常にMAXみたいな中で土日の試合に臨んでいるので、そのおかげでよくなっているのかな。
――昨年のインカレでは初戦となった2回戦で敗退となりました(対国士館大、⚫1-1 PK2-4)。いまあの試合を振り返っていかがですか
正野 悲しかったね、とりあえず。
高木 立ち上がりの硬さが異常だったなと。
正野 緊張してたよね。「楽しもう」とか言いながら体は動いていないみたいな。
高木 なんなんだろうね。インカレになると全員緊張しちゃって。プレーに出せないのが点を取れなかった原因かなと思います。
――このインカレはお二人がア女として臨む最後の戦いになります。特別な思いはありますか
正野 この3年間はインカレに対していい思いがないので、ラストだからというわけではないですが、とにかくインカレで結果を残したいというのがすごくあります。このチームでは最後だし、より長くプレーしたいというのはあります。
高木 インカレには魔物がいるって自分は思っていて、自分らしさを出せている試合がないかなって感じています。だから落ち着いてプレーしたいです。あと4年生が結構試合に出ていることもあるので、できるだけ長くみんなと一緒にプレーしたいなという思いが一番強いです。
――4年生として、後輩に残したいものはありますか
高木 みんなうまいんで。
正野 残すもなんも、ね。
高木 まあ、優勝という結果ですね!
――インカレで期待している選手は
正野 個人的には摩也さん(MF山本副将、スポ4=スフィーダ世田谷)です。なにかしてくれそうだなっていう期待感を持って、摩也さんで!
高木 別にだれか1人というわけではなく、前線の選手全員という感じです。うまいから試合に出ているのであって、なにかしら結果を残すことで11人に入っていると思います。今季あまり点を取れていないとかうまくいかないこととかあると思うんですけど、そういう選手にちゃんと“しっかり”点を取っていただいて、楽に試合を進められるように。可菜子だったり朱里だったり、みづきや汐華(MF熊谷汐華、スポ1=東京・十文字)や摩也さんといった人たちにちゃんと点を取っていただいて勝ちたいです。
――インカレで勝ちたい相手はどこですか
正野 勝ちたいのは日体大かな。
高木 (早大が)2年連続初戦敗退で眼中にはいないと思うので、挑戦者、チャレンジャーとして戦いたいです。MF植村祥子とかたたきたいと思います。
――インカレで応援する人に見てほしいプレーとは
高木 パス。
正野 なんだろな。
高木 持ち込んでからのシュートとかじゃない?
正野 シュート?うーん、最近撃てていないんですよ。
高木 (正野は)最近撃てないんですよね~。
正野 撃てないんですよ~。じゃあシュートで!(笑)
――もちろん目標は優勝かと思いますが、チームでどのようなプレーをして勝ち上がりたいですか
高木 チームがうまく連動しているのはお互いがいい表情でプレーをしているときだと思います。そういう試合をして試合に勝てればと思いますね。調子が悪いと個人に頼るプレーが多く孤立する場面が多いので、ベレーザのようにだれにパスを出してもたくさん選択肢があるというような試合ができれば負けることはないですし、ボールを奪われてもすぐに取り返せるような試合ができると思うので、そういう試合運びができたらなと思います。
正野 チーム全体で攻守共にみんなが支え合えるよう団結してできたら内容もきっと付いてくると思うので、そうやっていけたらいいなと思います。
――それでは最後に、インカレに向けた意気込みをお願いします
高木 毎年「優勝します」って言っても負けてしまっているので、まずは2回戦突破をして、一戦一戦相手にリスペクトを持って、自分たちが楽しむ大会にしたいと思います。
正野 まずはしっかり勝つということ。負けてしまうとまた帰ることになるので。ことしは全員がチームに帯同できないので、みんなの思いもしっかり背負って、一試合ずつ戦いたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 桝田大暉)
最後の大一番に向け意気込みを色紙に書いていただきました
◆高木ひかり(たかぎ・ひかり)(※写真右)
1993年(平5)5月21日生まれ。身長164センチ。静岡・常葉学園橘出身。スポーツ科学部4年。何度も逆質問するなど、対談を盛り上げてくれた高木選手。U-23女子日本代表にも選ばれ、その実力と経験値はチーム随一。ア女を支える中盤の要がインカレの舞台で華麗に攻守のタクトを振ってくれるでしょう!
◆正野可菜子(しょうの・かなこ)(※写真左)
1994年(平6)2月6日生まれ。身長157センチ。兵庫・日ノ本学園出身。社会科学部4年。4年生の自覚が芽生えた今季、プレーだけでなく声でもチームを引っ張るようになった正野選手。類まれな攻撃センスで数々のチャンスを創造します。集大成となるインカレでその才能を存分に発揮すること間違いなしです!