第2回目を飾るのは、下級生でありながらピッチ内での存在感を存分に発揮する2年生コンビだ。ケガからの復帰がままならない中、力強いキックで安定した守備ラインを形成するDF松原有沙(スポ2=大阪・大商学園)、今季からワセダに加入し中盤でゲームメイクに欠かせないMF中村みづき(スポ2=浦和レッズレディース)。これまでの今季を振り返りながら、全日本大学女子選手権(インカレ)に向けての意気込みを伺った。
※この取材は12月5日に行われたものです。
「自分たちのやりたいサッカーが見えてきた」
これまでの今季を振り返るお二人
――東伏見での優勝パレードはいかがでしたか
松原 どうだったんだろうね・・・(笑)。野球部の応援ですか?って聞かれました(笑)。
中村 認知度の低さね(笑)。
松原 まあ野球部がメインだったので仕方ないのかなと。
――それではまず、今季の振り返りから入りたいと思います。中村選手は今季からア式蹴球部女子(ア女)に加入ということで最初は慣れないことも多かったのでしょうか
中村 チームの雰囲気は結構親しみやすかったので問題なかったのですが、サッカーは難しいと感じました。以前いた自分のチーム(浦和レッズレディース)は組織的に守備をやるのですが、ア女は感覚的なので。それではまるときははまるのですが、それを体で理解するまでが難しかったです。攻撃に関しても感覚だよね?
松原 そうだね、もう流れだもんね(笑)。
中村 結局体で理解するまではちょっとしたずれからミスにつながってしまって、そこで難しさはありました。
――一方の松原選手は、ケガからの復帰をしたばかりですが
松原 復帰してまだ3カ月ちょっとですが、自分自身もやっとキレが戻ったという感じですね。自分は昨年もやっていたので、全体になれない部分はありましたけど試合を重ねていくうちに感覚が戻って来たという感じです。
――皇后杯全日本選手権(皇后杯)関東予選を優勝というかたちで終えて、それぞれのプレーはいかがでしたか。松原選手は復帰戦となりましたね
松原 そうですね、すっごい緊張しました(笑)。
中村 私あの時すごいだめだった(笑)。
松原 でも実際焦ったよね。横浜FCシーガルズ戦とか2点取られて。やばいってなったよね。でもメンバー代わってからはうまくいって。
中村 代えられた代えられた(笑)。そんでよくなったという・・・(笑)。
松原 でもあれは4年生の力だったよね。
中村 うん、4年生の力を知ったね。
――そこからチームが勢い付いて関東大学女子リーグ戦(関カレ)では逆転優勝となりましたね
中村 関カレも、前半は本当にダメで・・・(笑)。自分的には全然何もしてなくて。点も取ってないですし、アシストもしてないですし・・・。良かったか悪いかで聞かれたら皇后杯関東予選も関カレも悪かったですね。けど、それでチームが勝てたのでチームとしては良かったのかなと思います。
松原 全然ダメじゃなかったよ。
中村 ありがとう(笑)。
松原 (中村は)すごいストイックなんですよね(笑)。
――松原選手は関カレを振り返っていかがですか
松原 関カレ自体も後半から出られるようになったのですが、復帰したばかりということもあって調子は万全という感じではなかったですし、失点もありました。そんな中で優勝できるかすごい不安というのはありました。勝たなくてはいけない試合で結果を残せなくて大丈夫かなって。
中村 最初のほうは勝たなきゃいけない試合で引き分けとか多くて、でもそれが後半終盤になってから勝たなくてはいけないところで勝てて、だから優勝できたんだよね。
――何か変わるきっかけがあったのでしょうか
中村 皇后杯関東予選を間に挟んだことが大きかったのかな、とは思いますね。
松原 それで結構変わったよね。流れにうまく乗れたというか。
――皇后杯ではプロチームと対戦し、勝ったことでも大きな力になったと思いますがそちらを振り返っていかがですか
松原 自分は皇后杯の全国は初めてだったので、公式戦でプロのチームと当たることはとても新鮮でした。1,2回戦目はなでしこリーグ2部のチームとの戦いで、個人的には自分の力のなさを感じました。まだまだ通用しない部分はありましたし、自分のいまの欠点を見つけられた試合となったと思いますね。
中村 ア女としては、1部の相手と戦っても勝てるような力を持つというのが目標だったと思うので、2部とやって勝てたというのは大きなことだと思うのですが、どれもぎりぎりの試合で圧倒はできなくて。結果日テレ・ベレーザ(ベレーザ)戦ではボロボロでしたし、そういうのを考えるとチームとしても個人としてもまだまだだなと感じます。通用した部分と通用しなかった部分はあったから、そういうのを見つけられたのは良い機会だと思います。それを今後どう生かしていくかが課題かなと思います。
――ベレーザ戦を経て、チームの目指すべき場所が見つかったという言葉を頂きましたが具体的にはどういった部分でしょうか
松原 プレーの質とか動き方とか。
中村 全部だと思う。ベレーザのサッカーは、ア女が目指しているサッカーの完成形に近かったというのをグラウンドで実感できました。それが何かっていうのを具体的に表すと、攻守の切り替えだったり攻撃のときに複数人関わるだったり、パスの質、というようなサッカーにおける全てですね。
――それまで当たってきたチームとは全然違いましたか
松原 そうですね。なんもできなかったよね。
中村 個人がうまいのは当たり前じゃないですか。日本代表もいるし日本一だし。でもそれよりもグラウンドに立ってる11人がチームとしてどう戦うかを知っているというのを感じました。
――ここまでのシーズンを振り返って一番印象に残っている試合は
松原 ベレーザ戦かな。
中村 泣いてたよね(笑)。
松原 なにもできなかったんだもん。立ち上がりで2失点ぐらいしちゃって、勝てるかなというよりもこのままいったら何失点いくんだろうというのが大きくて。とりあえず守るしかないなと思いました。でもそれが結果につながらなくて、5点取られて。本当にいろんなことを感じたし、学べた試合だったのかなと思います。
中村 自分はベレーザもそうですけど、関カレの日体大戦ですかね。個人的に楽しめた試合かな、と。すごい疲れたんですけど、疲れた中でもすごいサッカーを楽しめた気がします。
――お互いのプレーの印象というのは
松原 うまいです(笑)。
中村 いやいやいやいや。めっちゃ持ち上げてる。
松原 ここ持ち上げるところだもん(笑)。ボールを収めてくれて、個人でも打開できるし、かつ周りも使えるみたいな。本当に何でもできる。
中村 めっちゃうれしい(笑)。
松原 高校の時に代表で一緒だったのですが、その時から思っていました。今こうしてチームメイトとしてサッカーできてうれしいです。最初は、ちょっとイメージ変わったなと思ってあれー?って思ったんですけど、試合を重ねるごとにチームにも慣れてきてやっぱりすごいなと。一回トップに入ってから変わったよね?
中村 あーなんか思い出してきた。
松原 FWをやり出してからめっちゃ点取るじゃんみたいな。そこからトップ下に定着して、すごいなと思っています。
中村 ありがとうございます(笑)。有沙は、めっちゃケガしてるのに、やり出したら超うまい。サッカーをしている時間よりもケガしている時間のほうが長くて、自分のほうがサッカーしている時間が長いはずなのに、うまいんですよね。天才なのかなーって(笑)。個人的に備わっている力なのかな、って思うのとキックがすごいよね。実はうまいと思っているでしょ(笑)?
松原 自信ではあるけど、うまいとは思ってないよ(笑)。
中村 逆サイドがよく見えているなと思います。
松原 でも感覚なんですよね。あ、いるなーって思って蹴ったらつながったみたいな。
中村 あれ感覚で蹴ってるの?
松原 絶対あそこに蹴ろうってなるとうまくいかなくなっちゃうので、見えたコースが自分としては一番やりやすいのかな、と思います。感覚です。
中村 負けました(笑)。
――今シーズンを振り返ると前期よりも後期のほうが勝ち切る試合が増えましたが、チームとしての変化は何かありますか
松原 ずっとシュートを打つ練習はありましたね。きれいにシュートを打とうとしすぎ、泥臭いゴールも必要だってずっと言われてますし。あとタッチ数少なくするとか、センタリングはゴロで、とか。
中村 センタリングの指導に関してはとても熱いです。シュートとタッチ数は大きいよね。
松原 それに結構、自分たちのやりたいサッカーが見えてきたからイメージができてきた気がするよね。
中村 イメージができるのは大きいと思う。
松原 プレーしていてこんなにつながるんだって。結構きれいな崩しからのゴールが増えてきた気がする。
中村 そうだね。
「お肉がめっちゃ大好き」(中村)
オフはもっぱら出かけるという中村
――プライベートな質問に移っていこうと思いますが、オフは何をしていることが多いですか。ちなみに昨年松原選手はずっと寝ていると答えていましたが
松原 そうですね、言ってましたね。今も変わらずごろごろしています(笑)。
中村 あんまり外でないでしょう?
松原 そうなんだよね。だから東京いるのに、まだディズニーランドにも行ってないですし、原宿とか渋谷とかにも全然行かないですし。
中村 やばいね(笑)。
松原 でも最近、映画見に行ったりとか・・・。
中村 中学生みたい(笑)。
松原 徐々に行動するようにはなったかなと思いますけど、みんなに比べるとまだまだだなとは思いますね。
――家ではいつも何をしているんですか
松原 本読むか、動画見るかですね。あとは寝るかです。
――最近読んだ本は
松原 ・・・漫画なんですよね(笑)。
中村 漫画って言いなよ(笑)。インテリぶるのは良くない。
松原 ふとした瞬間に、勉強の本とかは読みます。教職を取っているので、教育の本を。あとは、スクールでコーチを読んでどうやったらいいかなとか思って読んでますよ、漫画以外では(笑)。でも(中村の)プライベートって謎だよね。
中村 まじ?でもア女とは遊ばないかな。自分は結構家にはいないですね。バイトやってるのと、遊びに行くのと。そんなに遠くはいきませんが、新宿とかはパット行けちゃうタイプですね。
松原 練習後に、みんながどこか行こうという話を聞いてると、よく動けるなーと思いますね。
中村 でも私も別にア女と遊びたいというわけではない。練習でも会うし、いる時間が長いし。
――どういったつながりの友人と遊ぶことが多いのですか
中村 高校や地元がこっちなので、高校とかですかね。あとバイト先とか。
――2年生でイベントなどの企画はありますか
松原 中村 ないよね。
松原 1年に一回くらい?学年で集まるのは。
中村 仲が悪いわけではないのですが、お互いがそこまで干渉しなくてもいいかな、みたいな。
松原 仲は良いですけど、みんなで集まる?ってなっても集まらない。
中村 練習で会ってるし、もう十分(笑)。
松原 学年会しようってなっても日にち決まらないで時ばかりが過ぎていく(笑)。でも仲は良いよね。
中村 そうだね、仲良いね。
――それぞれ仲が良い同期は
松原 でもこれ自分だけが思ってたら恥ずかしいよね(笑)?
中村 でもそうだったら自分だけのにしておこう。
松原 自分はMF三田村桃子(スポ2=宮城・常盤木学園)。
中村 そしたら自分はFW平國瑞希(スポ2=宮城・常盤木学園)。取ってる授業がほぼ一緒なので。
松原 取ってる授業が一緒の人とほぼいるよね。(中村とは)会わないよね。
中村 まじで会わない。自分、所沢キャンパスに行きたくなさすぎて東伏見キャンパスでの授業ばっか取ってるので。でも2年でこれなので、来季は行かなくてはならないと思っているのですが・・・。
松原 うらやましい。自分ほぼ所沢キャンパスしかないもん。
中村 やば。
松原 金曜日なんて本キャン行って所沢キャンパス行って、東伏見みたいな。
中村 西武線ありがたいね。
――では、もし他のア女のメンバーになれるなら誰になりたいですか
松原 中村 誰だろう・・・(笑)。
松原 サッカー的な面で言ったらひかりさん(MF高木、スポ4=静岡・常葉学園橘)だな。
中村 うん確かに。
――理由もうかがってよろしいですか
松原 ひかりさんすごいよね。どこでもプレーできるし、とにかく落ち着いてて。めっちゃ周り見れるし、パスセンスあるし運動量多いし。全部すごいよね。ディフェンスも強いし。
――練習から存在感ありますか
松原 意識がすごく高いので、練習中も結構言ってくれてみんなを引っ張ってくれます。
中村 えー誰だろう、悩む。
松原 私生活だったら誰だろう・・・。
中村 けどヤナ(MF柳澤紗希、スポ1=浦和レッズレディースユース)とか悩みなさそうじゃない?
松原 確かに。毎日を楽しく過ごしてるよね。
――どういった部分でそう感じますか
中村 いつもうるさい。朱里(FW河野朱里、スポ1=静岡・藤枝順心)とかもそうかも。私朱里になりたい。サッカーもやってて面白そうだし。朱里うまいよね。
松原 うまい。いつもいいところにいるよね。
中村 そうそう。ポジショニングとかいいし、一回消えてぱって出て来れて、大事な時にはゴール決められるし。
松原 本当いいところにいるよね。
松原 中村 ありがたいよねー。
一同 (笑)。
松原 やっぱり点入るとDF的にも落ち着く部分があるし。切羽詰まった試合で決められるってところが強いよね。
中村 うん、強い。
――後期に入ってから試合が続いていましたが、リラックス方法とは
松原 自分は結構音楽聞いてます。家だと、オルゴールとか聞いてます。
一同 (笑)。
中村 やばいね。
松原 歌詞がある曲だとのっちゃうので・・・。モチベーションを高めるときは歌詞があるのを聞きますけど、リラックスしたいときはオルゴールとか聞きますね。
中村 え、イヤホンで聞くんだよね?回すタイプのじゃないよね?
松原 イヤホンイヤホン。
中村 あーよかった。
一同 (笑)。
松原 Youtubeとかでオルゴールのメドレーを聴いています。そうすることで結構リラックスできますよ。
中村 自分は食べるのが好きなので、食べれば元気になります(笑)。
――最近何かおいしいものはありましたか
中村 シュラスコ!きょうも行くんですけど、お肉めっちゃ大好きで(笑)。お寿司も好きですね。基本的においしいといわれるものは何でも好きです。
「恩返しをしたい」(松原)
4年生への思いを語る松原
――それではここからインカレ(全日本大学女子選手権)について伺いたいと思います。これまで2年連連続で初戦敗退という結果に終わってしまっているインカレですが、そういった意味でもこの大会に対して特別な思いはありますか
松原 4年生とできる最後の大会ですし、集大成ですからね。とにかく「日本一」というのが自分たちの目標なのですが、皇后杯で負けてしまったことで、インカレしかそのチャンスはもうないので、これをものにしたいです
中村 他の大会と目指しているところは同じなので、そこまで特別ということはないかもしれませんが、最低でも「優勝」というのが目標ではあります。
――インカレで優勝するためには何が必要になってくると思いますか
中村 ベレーザの体現じゃない?
松原 それは間違いない。
中村 やっぱりベレーザは日本一のチームですし、真似するわけではないのですが、対戦して実感したことを一人一人がいかにピッチで体現して、自分たちの理想に近いサッカーができるかどうかだと思います。
――今季は粘り強いサッカーで僅差の試合をものにしてきたという印象なのですが、そのあたりの手ごたえはありますか
松原 確かに競った試合で勝てるというのは、今季のいいところではあると思いますし、個人的には、それはやはり4年生の力なのではないかと思います。
中村 4年生の存在は大きいよね。
松原 プレーでもそれ以外のところでも、いつも自分たちを引っ張ってくれます。
――最後の大会を迎える4年生に対しては、どういった思いがありますか
中村 自分は一年間しか一緒にプレーしていないのですが、4年生と一緒にプレーできたことは、自分の残りの大学生活や部活動でも生きてくると思います。なので、その恩返しとして、しっかり結果を残したいと思います。
松原 自分が高校生だった時も、先輩の引退がかかった試合は、やっぱり恩返しをしたいという思いでプレーしていました。昨年は(インカレに)怪我で出られなかったのですが、ことしはチャンスがあると思いますし、出場できたら恩返しの思いも込めて、今季一番のプレーをしたいと思います。
――インカレでの個人としての目標をお聞かせください
中村 今季はこれまで得点が少ないので、一番はやはり点を取りたいですし、まずはそれに絡めるプレーができるようにしたいです。試合が終わった後に、きょうはチームのために貢献できたと思えるようなプレーをしたいです。
松原 自分はやはりディフェンスの選手なので、無失点に抑えることですかね。無失点に抑えれば負けることはないですし、いまのア女は得点力が高いので、守っていれば点を取ってくれると思っています。あとはセットプレーなどで前線に上がった時にシュートを打ったり、ロングフィードなどで得点に絡んでいければいいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 渡部歩美、栗村智弘)
インカレに向けた意気込みを書いていただきました!
◆中村 みづき(なかむら・みづき)(※写真右)
1995年(平7)8月15日生まれ。身長167センチ。前所属・浦和レッズレディース。スポーツ科学部2年。サッカーのことからプライベートのことまで意気揚々と語ってくださった中村選手。今季スタメンの座を定着させながらも、自身のプレー内容には納得していない様子。インカレでは「得点に絡む」プレーで、チームを勝利に導かせる意気込みバッチリです。
◆松原 有沙(まつばら・ありさ)(※写真右)
1995年(平7)5月1日生まれ。身長166センチ。大阪・大商学園高出身。スポーツ科学部2年。1日に三つのキャンパスを往復することもあるというタフさを兼ね備えながら、オフは家でのんびりすることが多いという松原選手。サイドを見据えたロングパスが、実は感覚によるものだったとか!?インカレでも、武器とするキックに注目です!!