対談のスタートを切るのは、今季ア式蹴球部女子(ア女)の快進撃を支えたルーキーのお二人だ。FW河野朱里(スポ1=静岡・藤枝順心)とMF熊谷汐華(スポ1=東京・十文字)。1年生ながらスタメンに定着し、すでにチームに欠かせない存在となった2人に、これまでの振り返りと全日本女子大学選手権(インカレ)への意気込みをうかがった。
※この取材は12月5日に行われたものです。
今季これまでの振り返り
決勝点に欠かせない河野
――1年生コンビということで、お二人の仲はいかがですか
河野 いいです!!
――オフの日を一緒に過ごされたりは
河野 でも、オフはあまりア女自体と関わらないんですよね。
熊谷汐 しかも朱里(河野)は部屋から出ないんで(笑)。
一同 (笑)。
――同じスポーツ科学部ということで、一緒に授業を受けることはありますか
河野、熊谷汐 結構あります!
――4月から始まった大学生活はいかがですか
河野 高校と比べていろいろと自由になったので楽ですね。
――お2人はそれぞれ第一印象を覚えていますか
河野 (熊谷汐は)人見知り感がすごく出ていて、多分お互い出ていたのかもしれませんけど、最初は敬語で話していました。
熊谷汐 そうだったね(笑)。朱里は最初すごく怖いイメージがあったんですよ。目つきとか悪いから。でも私たちすごく似てるんですよ!(笑)。
河野 え、それ最近めっちゃ思う。
熊谷汐 性格似てるよね。
河野 もちろんちゃんとやるところはちゃんとやるんですけど、楽なところは楽にやって手を抜くところは“ちゃんと手を抜く”みたいな(笑)。
――では、ここからはこれまでの戦いぶりをおうかがいいたします。これまで三冠を果たして、いまの率直な感想はいかがですか
熊谷汐 うれしいというか、4年生の力がすごいなと思います。
河野 ちょっとまだ他人事感というか、自分での達成感はあまりないです。
――河野選手はかなり最初から試合に出られていたと思いますが、それでもそうやって感じるのでしょうか
河野 自分が点を決めても、そういうのも4年生の引っ張る力が強いなとか、そうやって感じていました。
――それぞれいままで一番印象に残っている試合はありますか
河野 自分は一番最初に点を決めた日テレ・メニーナ戦(関東女子リーグ戦第5節、〇4-1)ですね。
熊谷汐 点を入れた日も一緒だよね(笑)。
河野 そうなんですよ!やっぱり公式戦で一番初めに点を決めた試合だったので、それが印象に残っています。
熊谷汐 PKまでもつれ込んだASハリマアルビオン戦(皇后杯全日本女子選手権2回戦、〇2-2(PK3-0))です。自分は最後まで出ていないですけど、底力と言うか、大学サッカーのすごさを実感した試合で一番感動した試合でした。
――河野選手は関東女子リーグ戦(関東リーグ)の第1節(筑波大、〇2-1)から出場されていますが、その時のことは覚えていらっしゃいますか
河野 最初は監督(福島廣樹、昭45教卒)とあまりプレーが合わなくて試合に出たり出なかったりだったので、その時は素直に試合に出られてうれしいなと思っていました。点を決めようとか意気込んだ感じではなく、うれしいなあくらいでした(笑)。
――お2人はそれぞれ試合に出られるとき、プレッシャーは感じますか
熊谷汐 プレッシャーというか、緊張は常にしています。緊張しいなのもあって。
河野 緊張はあまりしないんですけど、日テレ・ベレーザ(ベレーザ)と試合をしてから(皇后杯3回戦、●0-5)特に連携を意識するようになったので、試合毎にみんなの動きを見るようになりました。そしてやっとみんなの動きをしっかり見られるようになったので、最近は楽しいです。
――連携を意識するようになったのは、チーム全体としてですか
河野 そうですね。そのベレーザ戦から特に意識するようになったと思います。
――それは練習から変わったのですか
河野 練習のメニュー的には変わらないんですけど、同じメニューで意識が変わったというか。
熊谷汐 すごい変わったよね。
――河野選手は優勝が懸かった試合で決勝点を決めることが多いですが、試合中意識していることはありますか
河野 相手を強いと思っちゃうと自分のプレーができなかったりするので、ピッチに立つ以上は自分が一番うまいと思ってプレーするようにすると点が取れることが多いです。
――では熊谷汐選手は何か試合中意識していることは
熊谷汐 初めのほうは大事な試合の時に、緊張しちゃって自分のプレーが出せない時があって。その時にひかりさん(MF高木、スポ4=静岡・常葉学園橘)に「頑張ろうとか、やってやろうとか思うんじゃなくて、今度はこのプレーをやってみよう、とか気楽に考えたほうがいい」と教えてもらいました。それでこういう考え方に変えていってからは、割といいプレーができているかなという印象です。
――これまでの自身のプレーに得点を付けるなら何点くらいですか
河野 これまで全部ですよね?50点ですかね。FWって得点を獲ればなんでもチャラになっちゃうところあると思うんですよ。でも得点を除いたプレーを見ると、みんなよりボールをタッチする回数も少ないですし、結構自分的にはミスも多くて、そういうところを見ると全然できてないなと思います。
熊谷汐 40点です!
河野 謙虚か!(笑)。
熊谷汐 いや朱里の聞いちゃったからね(笑)。自分はプレーに波があるタイプなので、一回できないとそのまま引きずっちゃうのでそこを直さないといけないなと思っています。良かった時は得点も取れたり朱里との関係性もいいんですけど、そういうところを含めたら40点くらいかなと。
――では、かなりお2人とも厳しめの点数ということですね
河野 自分に厳しく。
熊谷汐 似てるんでね(笑)。
――お互いのプレーの印象は
河野 ボールを持ったら縦に行ってくれて、あまりフォローしにいかなくてもクロスを自分に合わせてくれることが多いので、そういうとこで信頼しています。
熊谷汐 朱里はTHE・フォワードって感じです。前期はトゲトゲしてたから、うまく合わせられるかなと自分の不安がありました。ただ最近は朱里のプレーも分かってきて、こちらのプレーも分かってきてくれているので、人に合わせられるタイプなんだなと気付きました。
――河野選手は後期に入ってかなり得点を伸ばしてきて、前期と変えたことはありますか
河野 やっぱり自分を使ってもらうには自分を知ってもらうこともそうなんですけど、自分自身が周りのことを知ること、自分が周りを見て動き出したりその人のパスのタイミングをつかんだり、後期はそういうことを意識するようになりました。なのでボールに触れる回数や、(ボールを)呼び込めるようになったかなと。
1年生コンビの素顔
笑顔の絶えない対談となった
――少し前に1年生みんなでディズニーランドに行かれたそうですが
河野 やな(MF柳澤紗希、スポ1=浦和レッズレディースユース)がいきなり「行こう!」みたいに言って、「えっ?(笑)」ってみんななったんですけど結局みんなで行きました。
熊谷汐 予定が合っちゃったんだよね。
――全員でシャツをそろえて行ったとか
熊谷汐 そうなんですよ、わざわざオフの日に集まって買いに言って(笑)。でもこいつ(河野)家にいてその時来なかったんですよ。
河野 みんなシャツ買いにいってくれました。自分は家で、「買ってきて―」って(笑)。
――みなさんで企画して遊ぶことは多いのですか
河野 今月もクリスマス会しようみたいな流れがあったんですけど、結局みんなライブ行くとかあって予定会わずにおそらくできません。
熊谷汐 厳しいですね。自由人も多いので。
――お2人はオフの日はどうやって過ごされていますか
河野 昼間は寝て、夜はバイトです。
熊谷汐 同じですね。
――バイト代はなにに使うことが多いですか
河野 服とか・・・あと、最近は本を買っています。
熊谷汐 え、最近本読んでるの!?どうしたの!?
河野 岡崎慎司の本を買って読んでいます。そして飾ります。
一同 (笑)。
――マイブームは
河野 部屋の模様替えとかかな。部屋に閉じこもるので、そこにはこだわりたくて(笑)。いま、人をダメにするソファーってあるじゃないですか。無印とかに売っているやつなんですけど、あれを買ったり羽毛布団にしたりと。もう出られないです、部屋から。
熊谷汐 食べ物なんですけど、カステラと牛乳です。練習前にカステラを食べて、練習後に牛乳を飲むっていう。
――せっかくのこの機会に、何かお互いに聞きたいことはありますか
河野 恋愛は?(笑)
熊谷汐 いまわたしそれ聞こうとした!ネタ出てこないもん(笑)。
河野 だって汐、最近ちょっと女の子ぽいし・・・。
熊谷汐 やめろよ(笑)。元から女の子っぽいから!(笑)。
一同 (笑)。
「4年生のために」(河野、熊谷汐)
プレーで貢献したいと語る熊谷
――お2人は試合に臨むにあたって決まって行うルーティンはありますか
熊谷汐 ルーティンですか(笑)。
河野 汐(熊谷汐)はあれだよ、グラウンドに向かって礼をするやつ!
熊谷汐 ああそうです、それルーティンです!小学校の時からなんですけど、グラウンドに入る時と出る時に一礼するみたいな。それを叩き込まれていたからしみ付いちゃって、いまでもやっています。意識していないから気付かないけど、これルーティンだね。
――河野選手はいかがですか
河野 えー、あるかなあ・・・。
熊谷汐 朱里あれじゃない?腰骨鳴らすとかじゃない?
河野 それはストレッチだよ!(笑)。
熊谷汐 超鳴らしてるじゃん(笑)。
――それはいつもやられているんですか
河野 練習前とかは腰を捻るとボキボキって鳴るんで、それが気持ちよくてやっています。実はルーティンです。
一同 (笑)。
――インカレを控えて、チームの雰囲気は
熊谷汐 ひと段落したわけじゃないですけど、一息ついてしまったところがあるので緩んじゃっているかなと。
河野 あと一ケ月、まとまっていかないとね。特に1年生はね。
――自身に求められているプレーは
熊谷汐 求められているのは縦への突破と左からのクロスとかシュートですね。左サイドハーフやることになったのは大学に入ってからなので、いまはそれをなんとか自分に身に付けようと必死です。
河野 自分はFWなので、汐とか可菜子さん(MF正野、社4=兵庫・日ノ本学園)からあがってくるクロスを確実に決めることと、裏への抜け出しです。
――熊谷汐選手は大学に入ってから現在のポジションを任されたということですが、それまでは
熊谷汐 高校はいろいろなところをやらされていたんですけど、ボランチとか真ん中が多かったですね。
――コンバートされたときの感想は
熊谷汐 最初は本当に動き方が分からないし、攻め方も守備の仕方も真ん中とサイドで全然違うので。戸惑いしかなかったですけど、ひたすら縦へ縦へと意識するようにしました。いまは慣れてきた感じです。
――お2人は初のインカレとなりますが、意気込みをお願いします
熊谷汐 自分がああしたい、こうしたいというよりかは、4年生の役に立ちたいです。すごく尊敬しているので、自分ができることで4年生に貢献したいです。良いかたちで終わってほしいので、そのために自分ができることをしようみたいな。
河野 いままで淡々とタイトルが獲れてきちゃったのでそこまで緊張も無いです。ことしのチームのいい状態でインカレを迎えて、勝敗も大事ですけどいい試合をしたいです。
――先ほど4年生のために、というお話がありましたが、どういったプレーで貢献したいですか
熊谷汐 わたしができることはドリブル突破とクロス、シュートくらいなので、あとはいかに献身的に走れるかとかどれだけ泥くさいプレーができるかとか。必死にやれるか、だと思います。
河野 自分はFWということで、どれだけ点を取られてもそれ以上に点を取れば勝てるので、とにかく点を取ることに尽きるかなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 佐藤凌輔、篠原希沙)
インカレでも1年生コンビに注目です!
◆河野朱里(かわの・じゅり)(※写真右)
1996(平8)年12月16日生まれ。身長160センチ。静岡・藤枝順心高出身。スポーツ科学部1年。取材中はストライカーとしてのプライドが垣間見えるなど、かっこいい印象の河野選手。しかしパン屋さんでアルバイトをしているという女の子らしい一面も。そのギャップがステキですね!
◆熊谷汐華(くまがい・しおか)(※写真左)
1996(平8)年5月24日生まれ。身長160センチ。東京・十文字高出身。スポーツ科学部1年。熊谷汐選手は誕生日プレゼントに同期からスターバックスカードとタンブラーをもらったそうです。「それを使ってみんなにおごらされているんです」と苦笑いを浮かべつつも楽しそうに話されていて、みなさんの仲の良さが伝わってきました!