ようやく上り詰めた皇后杯全日本女子選手権(皇后杯)3回戦。しかし昨季王者、日テレ・ベレーザ(ベレーザ)を前にワセダは思うような試合運びができない。前半のうちに3点のビハインドを負い、苦しい展開となる。続く後半も、果敢にボールに迫ろうとするが日本のトッププレイヤーを相手にレベルの差を痛感。0-5と大差をつけられ、2年前のリベンジはお預けとなった。
昨季の皇后杯王者であり、日本の女子サッカー界で名を連ねる選手が多く集うベレーザ。「いつも通りのプレーでは勝てない」(MF松川智主将、スポ4=大阪桐蔭)と、相手1人に対して枚数をかけるなど戦略を練る。しかし、プロトップチームは一切の隙を与えなかった。スピードあふれるFW田中美南を筆頭に、猛攻を仕掛けられる。開始8分で先制点を奪われると、その後も立て続けにサイドをえぐられ自陣に侵入されてしまう展開に。13分には右サイドからダイレクトで合わされ、点差を広げられる。時折ボールを保持するも、レベルの高い相手選手の動きに八方ふさがりのワセダ。3失点するなど、思うようなプレーを繰り広げられずに試合を折り返した。
MF阪口夢穂とのマッチアップを見せる松川主将
続く後半もベレーザはペースを乱すことはなかった。開始早々に再びPAでのパス回しで苦しめられる。GK山田紅葉(スポ3=東京・十文字)が何とか死守し、ピンチを切り抜けようとするが中盤から先に配球できない。「ボールを奪ってからも焦ってしまった」(DF大島瑞稀、社4=宮城・常盤木学園)とスピーディーな相手に対し、本来のリズムを崩される。66分にはスルーパスから抜け出され、左ネットに突き刺さるシュート。またもスコアを離されてしまう。試合終盤にかけ、猛攻を阻止しようと大島、MF中村みづき(スポ2=浦和レッズレディース)が相手DF有吉佐織を封じ込めるなど随所で献身的なプレーが見られるものの、決定的なチャンスをつかめずに時間切れのホイッスル。今シーズン初の全国大会、皇后杯は3回戦で幕を閉じた。
ピッチ全域にわたって貢献した中村
惨敗を喫し、悔し涙を流しながらも「いい経験となった」と口をそろえた選手たち。日本トップレベルとの対戦を通じて、技術面における差を痛感しながらも、それ以上に大きな収穫があったに違いない。来週末には関東女子リーグ戦が再開し、勝てば関東三冠が決まるワセダ。その先にある全日本大学女子選手権を見据え、気を入れ直して走り出す。最高のフィナーレを飾るべく、再び松川軍団の挑戦が始まった。
(記事 渡部歩美、写真 桝田大暉、佐藤諒)
激闘に立ち向かった選手たちに多くの拍手が寄せられた
結果
皇后杯全日本女子選手権3回戦 | ||||
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早大 | 0 | 0-3 0-2 |
5 | 日テレ・ベレーザ |
【得点者】(日)8、36、66、86田中、13上辻 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 16 | 山田紅葉 | スポ3 | 東京・十文字 |
DF | 4 | 大島瑞稀 | 社4 | 宮城・常盤木学園 |
DF | 5 | 松原有沙 | スポ2 | 大阪・大商学園 |
DF | 14 | 菅原靖巴 | スポ2 | 浦和レッズレディースユース |
DF | 24 | 渡部那月 | 社1 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | 7 | 高木ひかり | スポ4 | 静岡・常葉学園橘 |
MF | 6◎ | 松川智 | スポ4 | 大阪桐蔭 |
MF | 10 | 正野可菜子 | 社4 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | →64分 | 柳澤紗希 | スポ1 | 浦和レッズレディースユース |
MF | 15 | 中村みづき | スポ2 | 浦和レッズレディース |
MF | 30 | 熊谷汐華 | スポ1 | 東京・十文字 |
MF | →45分 | 山本摩也 | スポ4 | スフィーダ世田谷 |
FW | 31 | 河野朱里 | スポ1 | 静岡・藤枝順心 |
◎はゲームキャプテン 監督は福島廣樹(昭45教卒) |
コメント
MF松川智主将(スポ4=大阪桐蔭)
――なでしこリーグ1部、トップチームとの試合はいかがでしたか
日本のトップレベルを感じさせられた試合で、何もできなかったというのが率直な感想です。
――ゲームプランとしては
いつも通りだと勝てないというのはわかっていたので、1人の相手に対して2、3人で行こうというのは考えていたのですが、そこを振り切られるというのはなでしこリーグ1部1位のチームだなと感じました。相手は、1人1人がハードワークをしていて、次の動き出しが早いと思いました。
――前半、サイドが崩されてしまう部分が多い中で中盤としてはどのようなボール運びを意識していましたか
前半は特に、受け渡しの面でDFとうまくいかなくて。2列目から飛び出された時の対応が甘かったなというのを感じましたし、サイドをえぐられて、クロスを上げられるというのもあったので、そこは体を張って止めなくてはならないと思いました。
――MF阪口夢穂とのマッチアップもありましたね
阪口選手は、ほんとに競りが速くて上から叩かれるという感じで、プレーをしてても余裕がありました。判断面での素早さなどでなでしこジャパン(女子日本代表)を見せつけられました。
――松川選手も、そのプレーからくみ取るものはありましたか
やっぱりそういう人たちと対戦できたのは貴重な経験ですし、今後インカレ(全日本大学女子選手権)タイトルを獲るために、自分たちがどういうプレーをしていけばいいのかを考えたいです。
――これまで熱い試合を繰り広げてきた皇后杯(皇后杯全日本女子選手権)ですが、今大会で得たものとは
一番は、日テレ・ベレーザ(ベレーザ)と対戦できたことによって、1人に対して2枚も3枚もかけることでボールの出しどころがたくさんあるというところでたくさん戸惑いました。いろんなパスコースがある中で、一番いいものを選択してるなぁと感じました。今後、この試合のビデオを見ることがあると思うので、その中で自分たちは、今季のスローガンである「追求」のもと一人一人が追求していって今後のプレーに生かしていきたいと思います。
――来週末には、関東リーグ(関東女子リーグ戦)が始まりますがそちらに向けての意気込みをお願いします
関東リーグも次勝てば優勝という試合で、今月は厳しい戦いが続いています。アウェイの浦和レッズレディースユース戦ということで、昨年もアウェイのレッズ戦で優勝したので、絶対勝って三冠は取りたいです。
DF大島瑞稀(社4=宮城・常盤木学園)
――きょうの試合全体を振り返ってみていかがですか
相手が強くて。感想は相手が強かったというその一言につきます。
――きょうの失点シーンについてなのですが、サイドからの崩しで失点をしてしまいましたが、その点についてお話を伺えますか
逆サイドからサイド展開されてきて、少し人数が足りてないということは分かっていて、人数が足りてないなりの対応を自分的にはしていたつもりだったんですけど、いつもと同じような対応をしてしまってそれが全く通用しないというのを失点でやっと気付いたというか。それはなでしこのトップだったらそういうことは通用しないと思うし、そういうことを考えてできたらもっとよかったのではないかと思います。
――きょうの一戦はプロとの一戦ということでしたが、いつもとの大きな違いは何か感じましたか
一つは相手の個人個人の技術の高さというところと、チームの完成度がぜんぜん違うというところです。自分たちが相手の一瞬の隙もなかなか気付けなかったというところがプロと自分たちとの違いを感じましたし、スピードもすごい違うなというのを感じました。
――きょうの試合を振り返ってみて率直に自分たちのサッカーはできたかできなかったかでいうとどうですか
できなかったです。
――どのあたりを出せなかったと思いますか
自分たちはサイドを攻撃して、それを強みにしていると思うんですけど、まずマイボールの時間が少なかったということと、あとボールを奪ってからもすぐ焦ってしまって、そこからミスという場面も多かったですし、チーム全体でつなぐという考え方になかなか至らなくて、回せる部分もなかった訳ではないんですけど焦ってしまったり。そういうところができなかったと感じます。
――きょうの試合の収穫と、それをどのように次の試合に生かしていきたいかお聞かせください
自分的には後半やられてしまう場面も多かったんですけど、相手のサイドからの攻撃を少しは潰せたなと実感できる部分はあったと思うのでそれは一つ収穫として自信につなげていきたいです。自分たちがあまり攻められなかったので相手の処理を見ることができませんでした。でも、相手の攻撃は少ないタッチ数と連動した攻撃で、自分たちが目指しているものの中で全くできていない部分だったので、ビデオとかきょうの試合をしっかり見て相手の良い部分を少しでも盗めるように、そういうところを学んでいきたいと思いました。
MF高木ひかり(スポ4=静岡・常葉学園橘)
――試合を振り返っていかがでしょうか
相手がすごくうまくて日本一のチームだけあるなと感じましたし、まだまだ力が足りないというか、力が足りない以前に大きな差を見せ付けられました。いろいろ経験になりました。
――0-5というスコアをどのように受け止めていますか
立ち上がりに失点してしまったのですが、そこで失点していなかったら少しは(試合の流れが)変わったのかなと思います。それも相手の強さですし、前回の対戦は0-4の敗戦で今回は1点分悪い方に差が開いてしまったなと感じています。
――この試合はチャレンジする立場での試合でしたが、どのような気持ちで臨まれましたか
なにができるかわからない状態で臨んだので、できるだけ自分たちの力を発揮するということを目標にやりました。積極的に、アグレッシブに、若いなりに、そして大学のチームとしてなにができるのかを考えながら試合に臨みました。
――ボールを奪ってもすぐに攻撃の芽を摘まれ、ほとんど攻めることができませんでした
やっぱり失点したことで相手の強さを感じてしまって、自分たちで周りに相手がいる状況をつくってしまい慌てる場面が多かったです。もうちょっと落ち着いてできた部分もあったですし、相手の切り替えが早い分、自分たちが攻撃に移るスピードを上げたり、攻撃に関わる人数を増やせればよかったなと思います。
――相手の日本代表MF阪口夢穂選手とのマッチアップはいかがでしたか
やはりなでしこジャパンなだけあってうまかったですし、競り合いに全然勝てなかったので、ボールを跳ね返すプレーをもっと練習していかないとなと思いました。(攻撃の)起点になっている選手なので、阪口選手からボールを出させないことを意識したのですがうまくいきませんでした。やっぱりうまさをすごく感じましたね。
――阪口選手との間に感じた差はいかがでしょうか
阪口選手以外にもみんなパスがうまくて、他の選手がうまいからこそ(阪口選手が)フリーで受けてパスを散らして攻撃に関わっていけるんだなと感じました。ベレーザの力を感じたことにより、ワセダもチーム全体でのうまさを上げていかなければいけないです。(阪口選手)一人だけが起点になるのではなく周りの選手が誰でもボールを出せるのはすごいなと思いました。
――先ほどいい経験になったというお話がありましたが、この試合でどのようなことを学びましたか
やはり相手の攻撃のすべてが流動的でしたし、パスを出した後に必ず動き出しているとか、(パスが)少しずれてもそれを補う動き出しをしているのがすごいなと思いました。
――大学生として通用した部分はありましたか
うーん、ないかもしれないですね、きょうは。
――今大会を通じて得た収穫はありましたか
なでしこリーグ2部のチームと試合して、そういうチームに勝てる力はあるなと思いました。それでもそれより上のチームと戦うとなると、まだ力の差がすごいあって、個人の技術やチーム全体のレベルもまだまだだなと痛感しました。攻撃の関わり方やサイド攻撃がうまくいった場面があったので、それはよかったのかなと思います。
――再開する関東リーグに向けて抱負をお願いします
絶対勝って優勝したいと思います。
――招集されたUー23日本代表への意気込みをお願いします
今年の3月の大会に参加したときはいいプレーを発揮できなかったので、今回は同世代が多い分しっかり自分の強みを発揮してアピールできるようにがんばりたいと思います。
DF松原有沙(スポ2=大阪・大商学園)
――きょうは悔しい敗戦となりました
自分たちのプレーが全然できずに、DFの裏を抜かれる失点が多くて何もできなかった印象が強いですね。
――試合後、涙を流されていました
自分のレベルがまだまだだっていうことを感じることができましたし、自分のミスから(失点に)つながった部分も多くて、東京に残っているメンバーにも、試合に出ているメンバーにも申し訳ない気持ちが強かったです。
――日テレ・ベレーザの印象は
個人個人の技術がすごく上手くてミスがないというか、どんどんボールを動かして相手のマークを外して、裏に抜ける選手もタイミングが上手かったっていうのが印象的ですね。
――そういった上手いプレイヤーたちに対応する上で何か気を付けたことはありますか
どんな相手でも自分たちのやることをしっかりやろうと話していたんですけど、やっぱり強い相手だとまだまだ自分たちのプレーができないっていうのを感じました。個人的には無失点に抑えたいっていうのがあったんですけど、5失点してしまって、自分たちの課題も見つかったのでそこは改善していけたらと思います。
――課題とは具体的に何ですか
やはりDFの裏の対応だったり、落ちた相手に対してどういくのかとかそういうところです。
――皇后杯で得たものは
やはりなでしこリーグの相手とやることで、さっきも言いましたけど、自分の力がまだまだっていうのを感じました。でも、その中でも自分がこれからやっていかないといけないことを見つけることができたので良い経験になりました。
――次戦へ向けて
次は関東リーグなんですけど、勝てば優勝が決まるので、今回の反省を生かして勝ち切って優勝決めたいと思います。
MF中村みづき(スポ2=浦和レッズレディース)
――きょうは強豪との戦いでしたが、どのような気持ちで試合に臨みましたか
試合をするにあたって勝利というのは必ず目指さなければダメだと思って臨んだんですけど、結果はついてこなかったですね。
――前半を振り返って
開始早いタイミングで立て続けに失点してしまって、それでこっちも守備に追われて攻撃に移っても焦ってしまう悪循環に陥っていて。中盤が相手に自由に使われていて、FWの動き出しとかも良くて、それに対応しきれないで前半が過ぎちゃったかなって感じです。
――3点のビハインドを背負った状況の中、ハーフタイムでどのようなことを話し合いましたか
前半は自分がMF阪口夢穂選手にマンツー気味についていたんですけど、それであまり上手くいかなかったので、それはやめて、結構受け渡して(プレッシャーを)掛けられるところは前から掛けていこうっていうので後半臨んで、できてはないんですけど、やろうとはできたかなって感じです。
――この試合での収穫は
自分らのぬるさ?(笑)まだまだだなっていうのを実感できた試合で、ポジティブに捉えたらそう言えるかもしれないですけど、ただただ相手が上手いなって。やってやろうっていう気持ちは最後まで持ってできたとは思うんですけど、圧倒的な差があったのかなって思います。
――どういった点で特に差を感じましたか
一つ一つのパスの正確さだったり、ポジション取りっていうのがすごく上手くて、特に相手も難しいことはしようとしていなくて、シンプルなことを簡単にしてきました。それをできるだけの技術と判断がずば抜けているのかなって思います。
――次戦へ向けて
負けて得るものっていうのは絶対あると思うし、今回は相手の凄さっていうのを実感できたと思うので、それを間近で見られたっていうのをしっかり吸収して、さらにワセダらしく良いサッカーをできたらいいと思います。
DF菅原靖巴(スポ2=浦和レッズレディースユース)
――きょうの試合全体を振り返ってみていかがですか
まず一番は失点が5点もなってしまったので、そこでしっかりとおさえることができなかったというところが一番悔やまれるところです。
――ディフェンスをしていて難しい、やりづらいと感じたところはどのようなところでしたか
複数人が落ちていく人だったり裏にいく人だったりと流動的に動いてくるので、ボールが出てからじゃないとどこに出るか分からないというシーンが多かったので対応が難しかったと思います。
――きょうの試合はプロとの一戦ということで特別なものだったと思いますが、いつもとの大きな違いは何だと感じましたか
いつもは大学生とやりますが、きょうは格上とやるということでどうしても自分たちのやりたいことをやれる時間というのがいつもよりも少なくなってしまうというところで、いかに自分たちのやりたいことをやる時間を増やしていけるかどうかを考えてやったというのがいつもと違うところだと思います。
――きょうの試合を終えての一番の課題というのは何だと思いますか
攻守共にあると思うんですけど、自分はディフェンスなのでまずは5失点もしてしまったというところで裏へ斜めに走られてしまったりとか、そういうところでの足の速い人への対応だったり、シュートが上手い人への対応で一歩寄せるというところの対応だったり、そういう守備の課題というのはまだまだあると感じました
――最後に次の試合に向けての意気込みをお願いします
今回、皇后杯負けてしまったので次のインカレでは今回負けてしまった悔しさというのをしっかり晴らせるように優勝目指して頑張りたいと思います。