まさに気持ちでつかみ取った勝利であった。皇后杯関東予選準々決勝で対するは、横浜FCシーガルズ。昨シーズン、本大会の初戦で倒したとはいえ強豪チームである。試合の主導権を握られた前半、PA内での混戦から先制点を許してしまう。迎えた後半、多くの選手がゴールへ仕掛けようとする中、一瞬の隙を突かれるとまたも失点。しかし攻撃の足を止めないワセダは、MF正野可菜子(社4=兵庫・日ノ本学園)のゴールを皮切りに、MF高木ひかり(スポ4=静岡・常葉学園橘)、MF山本摩也副将(スポ4=スフィーダ世田谷)が続けてシュートを決め逆転する。勝利への熱い思いをプレーで体現し、準決勝へと駒を進めた。
試合序盤から自陣を苦しめられる。「受け身になってしまった」(山本)と、テンポの速いボール回しでゲームを支配され、思うような攻撃ができない。ケガからの復帰戦となったDF松原有沙(スポ2=大阪・大商学園)の力強いキックで、PA付近に侵入してくる相手を跳ね返すが、セカンドボールを拾えずシュートまでが遠いワセダ。流れを変えられぬまま19分、PA内でシュートを打たれ先制点を奪われる。負けずとゴールまで向かうが、好反応を示す相手GKに阻まれネットを揺らせない。38分にはDF三浦紗津紀(スポ1=浦和レッズレディースユース)がシュートを放つも、相手GKの手をかすめわずかにそれる。リードを許したまま試合を折り返した。
公式戦復帰で、存在感を示した松原
後半、ワセダは目の色を変えてゲームに挑む。タッチ数の少ないボールさばきで、積極的にゴールへ迫ろうとする。しかし45分、PA内における混戦の隙を突かれ追加点を決められてしまう。何とも苦しい展開を強いられるが攻撃のテンポが緩まることはなかった。「ここで負けられない」(MF松川智主将、スポ4=大阪桐蔭)。勝利への渇望を全面に表し、少しずつチャンスをつくり出す。そして迎えた47分、DF大島瑞稀(社4=宮城・常盤木学園)の右クロスに正野が合わせ、待望の1点を獲得。プレスを仕掛け、優位に試合を運び始める。70分にはミドルで受けた高木がそのままダイレクトシュート。ゴール右端に刺さり同点に追い付く。勢い付いたワセダは止まらない。続いて74分、MF熊谷汐華(スポ1=東京・十文字)の左クロスに山本がヘディングで押し込む。わずか4分の間にスコアをひっくり返した激闘の末、見事準決勝進出を決めた。
高木(中央)の得点で同点に追い付き、直後に逆転。ピッチに勝利の笑顔が広がった
2点ビハインドを背負った中で、闘志をむき出し、果敢にゴールへ迫った結果が勝ち星につながった。あすは大東大との試合を迎えるが、「先を見据えすぎずに、一戦一戦こなしていきたい」(高木)と、チャレンジャー精神を忘れない闘争心で、確実に駒を進めていきたい。
(記事 渡部歩美、写真 豊田光司)
スターティングメンバー
結果
皇后杯関東予選準々決勝 | ||||
---|---|---|---|---|
早大 | 3 | 0-1 3-1 |
2 | 横浜FCシーガルズ |
【得点者】(早)47正野、70高木、74山本(横)19佐藤、45村田 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 16 | 山田紅葉 | スポ3 | 東京・十文字 |
DF | 4 | 大島瑞稀 | 社4 | 宮城・常盤木学園 |
DF | 5 | 松原有沙 | スポ2 | 大阪・大商学園 |
DF | 34 | 三浦紗津紀 | スポ1 | 浦和レッズレディースユース |
DF | 24 | 渡部那月 | 社1 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | 15 | 中村みづき | スポ2 | 浦和レッズレディース |
MF | →40分 | 松川智 | スポ4 | 大阪桐蔭 |
MF | 13 | 三田村桃子 | スポ2 | 宮城・常盤木学園 |
MF | →40分 | 高木ひかり | スポ4 | 静岡・常葉学園橘 |
MF | 10 | 正野可菜子 | 社4 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | ◎8 | 山本摩也 | スポ4 | スフィーダ世田谷 |
MF | 30 | 熊谷汐華 | スポ1 | 東京・十文字 |
FW | 31 | 河野朱里 | スポ1 | 静岡・藤枝順心 |
FW | →65分 | 山田彩未 | スポ1 | ジェフ千葉レディースユース |
◎はゲームキャプテン 監督は福島廣樹(昭45教卒) |
コメント
MF松川智主将(スポ4=大阪桐蔭)
――後半からの逆転勝利、おめでとうございます。試合を振り返ってみていかがですか
後半、自分たちは結構前から攻めることができて、早い段階からファーストシュートが打てたので勢いはあったものの、先に点を入れられて0-2に持ち込まれたのですが、気持ち的には勝てていたので最終的に逆転できたのかなと思います。
――交代出場の際、どのようなプレーを意識してピッチに入りましたか
負けている状態であったので、ワイドに大きく使うということをまず前提に置きました。前半はタッチ数が多かったというのがあったのですが、その中でもタッチ数を少なくして展開していこうということを考えて臨みましたし、自分から積極的にシュートを打っていこうということを考えていました。
――ゴールへの積極性が印象的でした
前半に比べて相手にボールを触らせることが少なくなっていて、自分たちのペースに持っていってワイドに展開もできましたし、シュートに持ち込むこともできていたので自分たちのプレーができたのかなと思っています。
――今季を通して、交代出場の選手が結果を残している試合が多いという印象です
やっぱり後半から出る選手というのは、前半から出ている選手よりもフレッシュな分、動き回ることができると思うのでその分ボールに絡むことが多いのかなとは思います。
――これまで苦手としてきたトーナメントで、準決勝まで駒を進められてきたことはチームとしてはどのようにお考えですか
昨年の皇后杯関東予選では関東学園大に負けて、全日本女子大学選手権(インカレ)でも国士大に初戦で負けてしまったので、ことしこそはトーナメントで勝ち進んで皇后杯もインカレも優勝っていう目標を掲げているので、ここで負けられないという気持ちが強いです。そういう気持ちを全面に出したということが結果につながったのだと思います。
――ここから連日での戦いとなりますが、とのようにコンディションを整えていきたいですか
東伏見グラウンドに残っているメンバーもいて、こっちに来ているメンバーは20名なのでいかに次の日にコンディションを持っていけるかが重要だと思います。やっぱり一人一人がセルフケアをしっかりして次の準備を今からしていきたいと思います。
――最後になりますが、あすの準決勝に向けての意気込みをお願いします
先ほども話したように、東伏見グラウンドに残っているメンバーもいるのですが、離れていても一丸となって、あすも絶対に勝って明後日の決勝ではチームみんなで応援し、戦って喜びを分かち合いたいです。
MF山本摩也副将(スポ4=スフィーダ世田谷)
――逆転のゴールでチームを勝利に導きましたが、ゴールの場面を振り返って
後半は攻める時間が多くて、あとは決めるだけというのが多かったので、そういうときに、すごい良いボールが来たので、あとは押し込むだけで良かったです。
――点が入る中でチームがかなり勢い付いていたと思いますが、ピッチ上でどのように感じていましたか
前半があれだけ受け身になってしまっていましたが、(後半は)交代選手含めてチームが活性化していたので、そこはチーム全体の力だと思うし、ちょっとエンジンかかるのが遅かったんですけど、同点に追い付いたことで気持ちにも勢い付いて、プレーにも現れていたので、諦めないで攻めの姿勢を貫いたことは良かったと思います。
――中盤までリードを許し、攻めあぐねていましたが、試合全体のご自身のプレーを振り返って
あれだけ前半に相手も勢い付いていたし、自分たちもそうやって乗らせてしまった部分もあり、前半0ー2、後半3ー0のスコアでわかるように自分たちが気持ちの部分で出せれば、後半のような良いゲームが出来ると思い、本当に気持ちだと思うので、技術どうこうというよりは気持ちの部分でもうちょっとゲームに臨まないといけないと個人的にもチーム全体としてもそれがきょうの一番の課題かなと思います。
――相手の守備で攻めにくいと感じた部分はありますか
しっかりコンパクトに戦ってきていたし、やりたいサッカーがはっきりしていたのもあって、相手の攻撃を乗らせてしまったのが全てかなと思います。そのまま守備もアグレッシブに前半は来ていたので、あしたどのチームに当たるにしても自分たちのやりたいことをやらせてしまうと勢い付かせてしまうので、守備がどうこうというよりは全体的に相手を乗らせないように、自分たちのペースに持っていけると後半みたいにどんどん攻められるので、そういうところは自分たちの問題かなと思います。
――中日がない中であしたの試合ですが、どのように調整しますか
中日がないのはどのチームも一緒だし、本当に総力戦だと思うので、ワセダはチーム力としてはどの選手が出ても遜色ないプレーが出来るので、あした出るにしろ出ないにしろ、出ている選手も、出ていない選手もいつ出てもいい準備が出来るように、みんなが準備しておけばいいかなと思います。
――あした試合に出たらどのようなプレーをしたいですか
最近心掛けているのは得点することで、きょう逆転弾を決められましたが、シュートも少ないし、もっと仕掛けるプレーがあってもいいし、本当に良かったのは得点ぐらいかなと思うので、あしたは前半から気持ちの部分で入れるようにしていきたいなと思います。
MF高木ひかり(スポ4=静岡・常葉学園橘)
――逆転勝利となりました。試合を振り返っていかがですか
前半見ていると、相手のペースでゲームが進んでいることをわかっていたし、中盤があまり使えていないなという印象でした。攻撃もチャンスはあったのですが、あまりいいかたちではなかったのでそれを修正して自分のできることをしっかり発揮できるようにと思って試合に入りました。
――交代出場の際は監督からどのような声かけがありましたか
ボール動かせ、っていう感じだったと思うのですが、やってやるぞという気持ちが強すぎてあんまり覚えてないです(笑)。
――ゴールへの積極性を感じましたが、そちらに関してはいかがですか
GKがうまかったので、あまり壊すとは思ってなかったのですが、前が空いていたらチャレンジしようと思っていました。自分の球が使えなくても、こぼれ球に仲間が反応してくれると思ったので、そういうところを狙ってまた。
――2点目となった高木選手のシュートは目を見張るミドルシュートでしたがそのシーンを振り返っていかがですか
まぐれだったし、自分も入ると思ってなくて。入った瞬間びっくりしすぎて、「入っちゃった」みたいな感じでした。あまりミドルシュートは打たないのですが、ゴールに向かう姿勢がああいった得点につながると思うので次の試合とかでも続けていけるようにしたいと思います。
――後半の途中から相手の選手の足が止まっている印象を受けましたが、攻撃は展開しやすかったのでしょうか
やっぱり前半に比べて、ワセダの中盤の選手がボールを受けることが多くて、そこからボールを散らしてうまく組み立てられました。相手の足が止まったりプレスが遅くなったりしてすごいやりやすかったです。
――苦手してきたトーナメントで準決勝まで駒を進めてきたことをどのようにお考えですか
ここに来てない選手も合わせてワセダというチームだと思うので、来ているメンバーは試合に出た際は実力を発揮することは当然のことと思いますし、苦手って思うだけでネガティブなプレーへとつながってしまうと思うので、そういうのは出さずに明るく元気にポジティブに声を掛け合ってできていることはいいことだと思います。自分もそういう心がけでやっています。
――これから連日での戦いとなりますが、まずは準決勝に向けての意気込みをお願いします
きょうの試合は入れられたり入れたりの試合だったので、もうちょっと安定感のある試合をしたいですし、先を見据えすぎないで一戦一戦の戦いをこなしていきたいと思います。
DF大島瑞稀(社4=宮城・常盤木学園)
――2点リードされるという苦しい状況もありましたが、守備陣でのそれを生んだ原因などはありますか
前半の入りが少し硬くなってしまい、前半はずっと受け身になってしまったというのがあって、1点目は中盤自由に相手に使われて、そのまま失点してしまいました。2失点目はDF同士の声かけや正しい判断が出来ていれば、失点しなかったと思うんですけど、失点してしまって、もったいなかったと思います。後半の入りは自分たちのペースが出来ていたので、逆転できると思っていました。
――相手の攻撃の印象は
結構つなぐところはつないできて、前線の選手は足が速い人が多かったので、裏が多いと感じていて、前半でしっかりパスの部分で人に当たれていたら良かったのですが、少し後手に回ってしまったということがありました。
――久々の右SBでの出場だったと思いますが、ご自身のプレーを振り返って
まずは守備からというところで、チャンスがあったら攻撃に参加していけたら良いなと思っていたのですが、攻撃に参加出来た部分は良かったと思いますが、自分たちのミスから失点してしまったので、守備の部分はもう少し気を引き絞めて、集中していかないといけないと思います。
――試合を通してかなり右から攻撃参加で上がる場面が多かったと思いますが
結構前半で右から攻められるかなと感じて、後半は自分たちのペースということもあって相手の左サイドの攻撃があまり来なかったので、そこを攻めていこうと思いました。
――きょうの反省点をどのように生かしていきたいですか
失点の原因になってしまったコミュニケーションとか判断ということをしっかり反省して、また次の試合でそういった失点がないように気を引き絞めていきたいと思います。
――あしたの試合に向けて意気込みをお願いします
あしたは相手がどこになるかはわからないですが、自分たちのサッカーをして、次こそは無失点で勝ちにいきたいと思います。
DF松原有沙(スポ2=大阪・大商学園)
――逆転勝利おめでとうございます。今のお気持ちをお願いします
久しぶりの公式戦ですごく緊張しましたが、チームみんなが助けてくれて勝てたのでホッとしています。
――復帰戦となりましたが、自身のプレーを振り返っていかがですか
チャレンジの部分では行けたこともありましたが、小さなミスや失点とかも自分が絡んでいることが多かったので改善していかなくてはならないなと思います。
――力強いキックでチームのピンチを救っていましたが、その点に関してはいかがお考えですか
自分の持ち味がキック力なので、ラインが低い時にしっかり裏返すことを意識していました。後半はボランチを使ってつなぐことはできましたが、前半は前にただ蹴るだけだったのでそこは工夫したいなと思います。
――特に前半は右サイドでの展開が多いように思われましたが
プランというわけではなかったのですが、右に寄ることが多かったです。前半のうちに逆サイドを使えていたら後半のようないい展開が出来たのかな、と思います。
――後半は前での展開が多かった中で、DFとしてはやりやすかったでしょうか
前からコンパクトにDFできていたので、そこでボランチとかがしっかり守ってくれたのはやりやすかったです。
――先ほど触れていましたが松原選手のプレーの持ち味は
自信があるのはキック力で、DFの対応とかは復帰したばかりというのもあって感覚もつかみ切れていないので、ここから徐々に戻していきたいと思います。
――ここから連戦となりますが、まずはあしたの準決勝に向けての意気込みをお願いします
ここに来てないメンバーの分もしっかりやらなくてはならないと思いますし、試合に出させてもらったら、きょう以上のプレーをして次につなげられるようにしたいと思います。