公式戦ここ2試合勝利から遠ざかっているワセダ。何としても勝って悪い流れを断ち切りたいところだったが、前期関東女子リーグ戦(関東リーグ)で敗れた武蔵丘女子短大(●0-1)に先制を許すと、その後はゴールが遠い時間帯が続く。後半に入ってからもなかなか決定機を生み出せずにいたが、MF中井仁美(スポ2=兵庫・日ノ本学園)の同点弾をきっかけに勢いに乗ると、その後立て続けに2得点を奪い見事な逆転劇を演出。前回の借りをきっちり返すとともに、関東リーグ優勝に向けても貴重な勝ち点3となった。
試合はいきなり動く。8分、相手の縦パスからDFラインの裏を取られると、そのままGKとの1対1を決められてしまう。課題としていた試合序盤にまたしても失点してしまう展開に、前節の悪夢(●0-1)が再び頭をよぎる。追いつきたいワセダは徐々に自分たちのペースを取り戻し、中盤でボールを回す時間を増やしていく。37分にはMF正野可菜子(社4=兵庫・日ノ本学園)のヒールパスに抜け出したFW河野朱里(スポ1=静岡・藤枝順心)がフリーでシュートを放つ。だがこれは相手GKのファインセーブに阻まれた。
中井の同点ゴールが試合を大きく動かした
後半も引き続きボールを保持して相手ゴールに迫りたいワセダだったが、なかなかスコアを振り出しに戻せない。それどころかシュートすら打てない時間が続き、試合は完全な行き詰まり状態となる。だがこの嫌な雰囲気を一瞬で吹き飛ばしたのは交代出場の中井だった。68分、中央の河野がドリブルから左のMF熊谷汐華(スポ1=東京・十文字)に展開すると、その鋭いクロスに中井が上手く反応。ボールはゴール右隅に吸い込まれた。これで息を吹き返したワセダはその6分後、CKにドンピシャで合わせたDF三浦紗津紀(スポ1=浦和レッズレディースユース)が豪快なヘディングシュートを叩き込み、逆転に成功する。さらにその3分後には、MF松川智主将(スポ4=大阪桐蔭)が蹴ったCKが相手GKの頭上を越え、そのままゴールイン。わずか9分の間に3点を奪い、試合を一気にひっくり返す。その後も全員が足を止めず、最後までしっかり守り切ったワセダが見事な逆転勝利を手にした。
直接CKを決め、喜びを分かち合う松川(右)
「みんなの勝ちたいという強い気持ちがあったからこその勝利だと思う」(中井)。チーム全員が一つになってつかみ取ったこの白星が持つ意味は非常に大きいだろう。確かに序盤での失点という課題は再び浮き彫りになった。しかし、90分間にわたるハードワークと、ワセダの真骨頂とも言える、流れるパスワークの持つ力を再び証明できたことには、計り知れないほどの価値がある。「しっかり自分たちのサッカーをして勝ち切りたい」とDF大島瑞稀(社4=宮城・常盤木学園)が語ったように、自分たちのスタイル、信念を貫き通していけば、今のワセダにとって怖いものなど何一つないはずだ。
(記事 栗村智弘、写真 豊田光司)
スターティングメンバー
結果
関東女子リーグ戦第11節 | ||||
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早大 | 3 | 0-1 3-0 |
1 | 武蔵丘女子短大 |
【得点者】(早)68中井、74三浦、77松川(武)8山嵜 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 河邊花観 | スポ4 | 宮城・常盤木学園 |
DF | 24 | 渡部那月 | 社1 | 兵庫・日ノ本学園 |
DF | 4 | 大島瑞稀 | 社4 | 宮城・常盤木学園 |
DF | 34 | 三浦紗津紀 | スポ1 | 浦和レッズレディースユース |
DF | 14 | 菅原靖巴 | スポ2 | 浦和レッズレディースユース |
DF | →63分 | 稲山菜月 | スポ2 | 東京・十文字 |
MF | 13 | 三田村桃子 | スポ2 | 宮城・常盤木学園 |
MF | →45分 | 中井仁美 | スポ2 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | 6◎ | 松川智 | スポ4 | 大阪桐蔭 |
MF | →88分 | 安部由希子 | スポ1 | 宮城・聖和学園 |
MF | 10 | 正野可菜子 | 社4 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | →72分 | 山本摩也 | スポ4 | スフィーダ世田谷 |
MF | 15 | 中村みづき | スポ2 | 浦和レッズレディース |
MF | 30 | 熊谷汐華 | スポ1 | 東京・十文字 |
FW | 31 | 河野朱里 | スポ1 | 静岡・藤枝順心 |
FW | →88分 | 山田彩未 | スポ1 | ジェフ千葉レディースユース |
◎はゲームキャプテン 監督は福島廣樹(昭45教卒) |
コメント
MF松川智主将(スポ4=大阪桐蔭)
――劇的な逆転勝利となりましたが、実際に試合を振り返ってみていかがですか
前半での失点が8分と、前節のジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18戦(●0-1)と変わらない時間帯で、早い時間帯であったのでそこから焦ることなく点を取りに行こうと話しました。前半は追いつくことができなかったのですが、後半逆転することができてよかったです。
――失点シーンでは相手の縦パスから裏を抜かれ、DFが一枚もつかない状態だったと思いますが
この間と本当に同じかたち、というイメージが自分の中にもあったのですが、前半の入りの部分で前がかりになっている時に後ろのスペースっていうのが空きがちなのかなと思います。やっぱりそこのケアをしっかりしていかなくてはいけないということは、きょうの試合でも前節の試合でも感じることは大きいです。
――前半の半ばの時間帯からシュートを放つシーンが見られるようになりました
この暑い中で、相手も足技があるということはわかっていたのでそういった中で自分たちがどれだけハードワークできるか、ということを考えてどんどん前からシュートを打とうということを話していました。でも、前半よりかは後半の方がシュートをたくさん打てたかなというのが素直な感想です。
――両チーム共にメンバー交代してから、徐々にワセダの攻撃が主体のゲームとなりました
フレッシュな選手が入ってきた中で、その子たちが前線でボールを拾ってくれたおかげで攻撃もしやすくなりましたし、流動的な攻撃ができたのかなと思います。
――試合が経過するにつれて、1トップの河野選手(FW河野朱里、スポ1=静岡・藤枝順心)にボールが収まるようになってきましたが振り返ってみていかがですか
朱里も相手を抑えることが得意な選手なので、そこで周りがどこまでゲームに関われるか、というのをトップ下やサイドハーフも関わってという攻撃が後半は特にできたのかなと思います。
――松川選手はCKから直接ゴールを決め、勝利に大手をかけました
相手のGKはそこまで前に出てくるタイプではなかったのでゴールを狙えば弾くかなとか思いながら、あわよくば入ればいいという思いで蹴りました。入ってよかったです(笑)
――今回の相手は、前期関東女子リーグ戦(関東リーグ)で敗北したチームだったので、その中での闘志というのはいつも以上のものでしたか
この間はアウェイで負けてしまってとても悔しい思いをしたので、きょうのホーム戦では絶対に勝とうということはチームの中でも話しました。最後までハードワークした方が勝つということを感じていたので、みんなで動こうということは共有していました。
――次節は、関東リーグ中断前の最後の試合となりますが意気込みをお願いします
日テレ・メニーナ(メニーナ)も技術に長けていて、アウェイという戦いとなりますが、その中でもしっかり自分たちのサッカーをしていきたいです。前半の早い段階での失点はなくしていかなくてはいけないと思いました。
DF大島瑞稀(社4=宮城・常盤木学園)
――きょうは以前対戦して敗北したチームとの試合でしたが、どのような気持ちで臨みましたか
前回は相手にやりたいようにやらせてしまって、自分たちのマークがついていけなかったという反省があったので、しっかりマークについていって、きょうは絶対に勝とうという気持ちで臨みました。
――前線に怖い選手が何人かいたと思うのですが、それにはマーク以外に何を意識してあたりましたか
マークっていうところもそうですけど、私は最終ラインだったので、カバーもいける位置にいることを意識しました。
――前半は早々に失点してしまいました
少し球際が弱くなっていてボールにはついていっているんですけど、しっかり球際でつぶせていなかったので、そこが失点につながってしまったのかなと思います。
――ハーフタイムでは何を話しましたか
先ほども言ったように、球際をしっかりいくっていうことと、集中を切らさなければ逆転できると思っていたのでそういうところを話し合いました。
――同点弾が決まったときの気持ちを教えてください
流れは来ていたと思っていたので、やっと点取れたと思いました(笑)
――やはり点が入って楽になったのでしょうか
基本的にはそうですけど、相手も少し動きが鈍くなっていて、そこで追加点が取れたので良かったなと思います。
――大差がついたときの守備の意識としてはどのようなものでしたか
大差がついたからと言って、緩むことなくしっかり攻めていこうということは、グラウンドでみんなで声を掛け合っていました。センターバックでも速い選手をしっかり、マークして相手のプレーをやらせないことを意識していました。
――きょうの勝利はかなり大きなものだと思うのですがいかがでしょうか
失点はしてしまったんですけど、早慶戦から負けとか引き分けが続いている中で勝ち切れたということでこれからどんどん勝ちをつなげていけたらいいなと思います。
――来週の試合への意気込みをお願いします
次はアウェイになると思うのですが、自分たちはアウェイが苦手という意識があると思うので、ここでもしっかり自分たちのサッカーをして勝ち切りたいと思います。
DF稲山菜月(スポ2=東京・十文字)
――今シーズン公式戦初出場となりましたがどのようなプレーを意識しましたか
みんな結構疲れていたというのもあったので、しっかりプレスに行くということと、声もなくなっていたので出すことでチームに勢いを与えたい、という思いでプレーしました。
――開始早々の失点シーンを外から見ていていかがでしたか
前回の試合も同じような失点をしていたので、勢いもなかったし、プレスの強さも欠けているなと思っていました。ですが、途中から立て直していたのでそのうち取り返せるかな、とは感じていました。
――実際に試合に入ってみて、相手の攻撃はどのような印象でしたか
相手も結構疲れていたので、結構手応えはありました。自分が入って、すぐに点が入ったのであまりDFシーンはなく、攻撃のシーンの方があって、タイミングが良かったかなというのはあります。
――自身のプレーの持ち味は何ですか
きょうの関東リーグではサイドバックだったのですが、そのあとの育成リーグはサイドハーフでの出場でした。最近はサイドハーフも多くなっているので、オーバーラップしたときのクロスの質かなと思います。
――最後になりますが、関東リーグ中断前の試合に向けての意気込みをお願いします
ユニバーシアード女子代表の選手も帰ってくるので、その中で争いは厳しくなると思います。でも、きょうみたいに後半からでも出て、チームの力になれたらいいなと思います。
MF中井仁美(スポ2=兵庫・日ノ本学園)
――今日の試合はいかがでしたか
前節に続いて立ち上がりに失点してしまって流れが良くなかったのですが、逆転できて良かったです。
――前半の失点に関しては
アシストを決められた選手をフリーにしてしまっていたことが失点の原因だと思います。
――先制されてから苦しい時間帯が続いていましたが
個人的にはそこまで悪くはないと思っていましたし、点も取れると思っていたので、そこまで気にしてはなかったです。
――貴重な同点ゴールを決められたシーンに関しては
今季は関東リーグになかなか出場できていませんでしたが、自分自身そんなに調子も悪くないと思っていましたし、出たら決めてやろうって思っていました。
――最後まで全員が集中した守りで勝ち切りましたが、走り切れた要因は何でしょうか
皆の勝ちたい、という強い気持ちがあったからこその勝利だと思います。
――次節以降の意気込みを
7連覇が懸かっているので、ここで止まらずにしっかり勝ち続けて優勝したいです。
DF三浦紗津紀(スポ1=浦和レッズレディースユース)
――久々の勝利ですが
勝って良かったという感じです(笑)。うれしいです。
――ただ課題としている前半での失点がきょうもありました
今回はそんなに入り悪くないと思ったのですが、まだ相手の特徴とかを抑えられない時間帯に早い相手に裏取られてしまって、そういうところはまた多めにピンチということを考えて、しっかりとカバーしあったりしないといけないなと改めて思いました。
――DFが誰もいない状況だったことについて
裏を取られてというのが多いので、そういうのはGKが出てくる、出てこないというのが、関係してくるので、GKとDFでしっかり連携していきたいと思います。
――前半は苦しい時間が続きましたがどのように状況を打開しようとしていましたか
声を掛けて周りの選手を鼓舞するというのと、行けていない部分に対して行けって言うことや、改善はしていきたいと思いながらずっとやっていました。
――後半立て続けに3点を奪いました
やっぱり流れに乗れば、点を取れるチームだし、実力もあると思うので、そのスイッチを誰かが押すのではなくて、みんなが押せると言われるチームになっていきたいと思います。
――逆転の2点目は頭で合わせましたが
練習でもあまり決められていなくて(笑)、でも前々節の関東学園大戦で決められてチームのために点を取りたいなと思っていたので、取れてうれしいです。
――セットプレーで合わせるのは、前々から打ち合わせなどしていましたか
そうですね。自分のことを狙ってくれているというのがあったので、そこは責任を持って決めたいなと思い、入れました。
――次節メニーナ戦ですが
アウェイのグラウンドですし、アウェイを苦手にしているという部分があるので、ユニバード女子代表がいる、いないに関係なく、自分たちで責任を持って勝利したいと思います。守備も攻撃も関係なく、しっかりと目立てるように頑張っていきたいと思います。
FW河野朱里(スポ1=静岡・藤枝順心)
――久しぶりの勝利となりましたが、試合全体としてはいかがでしたか
先週の試合よりはチームの雰囲気が良くて、きょうの入りもいいかなと思ったんですけど、相手がさらに上回ってきて先制点を取られて、そこからなかなか自分たちのペースに戻せなかったんですけれど、最後まで粘って逆転できたことは良かったです。
――前半や後半の序盤、相手につぶされてしまい思うようなプレーができない時間が多かったですが
足元に受けにいくとつぶされることが分かったので、裏に抜けるプレーを意識していたら相手も対処しきれなくなったので、そのことを意識してやりました。
――チームとしてはプレスをうまくかけられない場面が多かったですが
前から自分はプレスをかけたかったんですけど、相手のMFがうまくて、その選手に対処するために全体として引き気味になって、うまくDFができなかったんですれど、点が入り始めたら前からいけたので、そういうことを最初からできたら良かったと思います。
――河野選手自身がボールを持てるようになってから周りの選手の動きも良くなってきましたがボールを持てるようになった要因は
全体的に点が入ってから気持ちに余裕ができて、周りを見られるようになったので、パスコースも増えて回せるようになったことと、DFがラインを上げてくれたことでボールを受けやすくなりました。
――きょうの反省点としてはどういったことが挙げられますか
やはり最初の入りで、最近引き気味になってしまうので、そこで引き気味にならないことと、先制点を15分以内に取ることをチームとして目標にして、個人としては前からプレスをかけて一人でもゴールにいけるようにFWとしてできたらいいと思います。
――次節に向け意気込みをお願いします
暑い中での試合がこれから続くので、そこで体力が落ちることなく、FWとして点を決めたいと思います。