皇后杯全日本女子選手権(皇后杯)3回戦、悲願達成を懸けた大舞台がやって来た。毎年『皇后杯ベスト8』を目標に掲げるも、なでしこリーグ(Lリーグ)所属のチームに敗れ3回戦で姿を消していたこれまでの皇后杯。ことしの相手はDF岩清水梓主将をはじめ数多くの日本女子代表選手を擁する日テレ・ベレーザだ。試合は立ち上がりに連続失点を許したワセダが苦戦を強いられる。0―4で折り返した後半もスコアを動かすことができず、3年連続でのベスト16敗退となった。
昨年の皇后杯ではINAC神戸レオネッサに対し『引いて守る』戦法を取ったが、ことしは一転、ワセダらしく『つなぐ』サッカーで堂々と真っ向勝負に挑んだ。しかし立ち上がりから日テレ・ベレーザの猛攻を食らう。8分、CKをクリアしきれなかったところをMF阪口夢穂にダイレクトで決められ先制点を奪われる。この1点が相手を勢いづけてしまい、10分にはスルーパスを通されたところをFW隅田凛に決められ追加点。その後も左サイドからのカウンター攻撃を許し、待ち構えていたFW木龍七瀬がクロスを絶妙に合わせ、16分の間に3失点。「失点してからというのに慣れていなかった」(DF千葉梢恵主将、スポ4=宮城・常盤木学園)という言葉通り、連続失点から本来のワセダを取り戻すことができない。25分には無情にも4点目を献上してしまう。しかし、オープンスペースを見つけ徐々に大きく展開していくなど、ワセダも流れをつくり始める。終盤には左サイドから駆け上がったMF正野可菜子(社2=兵庫・日ノ本学園)がDF石田みなみ(スポ4=静岡・常葉学園橘)とのワンツーでこの日初めてのシュートを放つが、相手DFに阻まれ枠を捉えることはできなかった。1点返したいところであったが、得点を奪うことができないまま前半を終える。
懸命にボール奪取に向かう福沢
一矢報いたいワセダ、「5点を取って勝ちにいく」と口をそろえ、逆転勝利に向け団結を強める。しかし「守りだけになってしまった」(千葉梢)、「前半よりも自分たちのサッカーができなかった」(大宮)と後半、試合はこう着状態に。ディフェンスに体力を奪われ、攻撃への枚数を掛けられずハーフラインを越えることができない。終了間際の85分には、途中出場のFW川原奈央(スポ1=兵庫・日ノ本学園)のスルーパスに反応したMF松川智(スポ2=大阪桐蔭)が抜け出すも相手GKに止められる。決定的なチャンスをつくることはできず、0―4のスコアのまま試合を終えた。
客席に挨拶する選手たち
中盤での溜めやアイディアの豊さなど、さまざまな面においてLリーグのトップチームとの差を見せつけられたこの試合。「高いレベルになるとまだまだ通用しない」(大宮)と実力差を痛感した一方で、サイド攻撃やプレスなど「できることも多かった」(GK三田一紗代、社3=京都精華)と手応えも感じた。技術の高さを誇る強豪チームとの対戦からは得られる収穫もたくさんあったはずだ。3回戦敗退で皇后杯を終え、残る試合は全日本学生選手権(インカレ)ただ一つ。このチームでの試合も最大で残り4試合。この悔しさは必ずやインカレの舞台で晴らしてくれるだろう。
(記事 芦川葉子、写真 石原瑞季)
ア式蹴球部女子
皇后杯全日本女子選手権3回戦 | ||||
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早大 | 0 | 0-4 0-0 |
4 | 日テレ・ベレーザ |
【得点者】(べ)8阪口 10隅田 16木龍 25籾木 |
早大メンバー | ||||
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位置 | 背番号 | 名前 | 前所属 | 学部学年 |
GK | 1 | 三田一紗代 | 京都精華 | 社3 |
DF | 2 | 石田みなみ | 静岡・常葉学園橘 | スポ4 |
DF | 3 | 千葉望愛 | 浦和レッズレディースユース | スポ4 |
DF | ◎4 | 千葉梢恵 | 宮城・常磐木学園 | スポ4 |
DF | 13 | 大島茉莉花 | 鹿児島・神村学園 | スポ3 |
DF | →24分 | 小野田莉子 | 宮城・常磐木学園 | スポ3 |
MF | 5 | 権野貴子 | 宮城・常磐木学園 | スポ3 |
MF | →77分 | 松川智 | 大阪桐蔭 | スポ2 |
MF | 6 | 渡井汐莉 | 鹿児島・鳳凰 | スポ4 |
MF | 7 | 高木ひかり | 静岡・常葉学園橘 | スポ2 |
FW | →54分 | 川原奈央 | 兵庫・日ノ本学園 | スポ3 |
MF | 8 | 福沢真菜美 | 北海道・室蘭大谷 | スポ4 |
MF | 10 | 大宮玲央奈 | 浦和レッズレディースユース | スポ4 |
MF | 20 | 正野可菜子 | 兵庫・日ノ本学園 | 社2 | ◎はゲームキャプテン 監督は長岡義一監督(昭43商卒=京都・山城) |
コメント
DF千葉梢恵主将(スポ4=宮城・常盤木学園)
――試合を終えていかがですか
格上の相手ということを分かり切っていたし、自分たちはチャレンジャーという意識の中でやっていたんですが、実際に試合をしてみて相手のプレッシャーの速さとか実感したし、自分たちがまだまだだなというのを実感したゲームでした。あと前半に失点をしてから、そのままチームの雰囲気が良くないまま失点を重ねてしまったので、そういうところでもう少し立て直していけたらなと考えています。
――強豪の日テレ・ベレーザとの対戦でしたが、ゲームプランは
やっぱり前半は失点をゼロで抑えようということと、その中でもFWのワンチャンスで入れようと話していました。でも昨年のINAC神戸戦のように全部引いて引いて守って、という試合はしたくなかったので、自分たちのつなぐところはしっかりつないで、っていうのはチャレンジしていこうっていう話をしていました。
――開始15分間で3失点を喫する入りとなりました
まだ失点してからというのが慣れていないというか、弱いというか・・・。自分もチームを引っ張っていかなければいけないんですが、それがあまりできなくて、失点してしまいました。
――重い4点のリードを許した中でハーフタイムを迎えましたが
前半取れてた部分や通用していたシーンはDFにもあったし、後半5点取って勝ちに行こうっていう話をしました。
――後半スコアは動きませんでしたが振り返って
もうなんか後半は守りだけっていうかたちになってしまって。自分たちのボールになっても2、3本ですぐ奪われてしまう場面が多くて、そういうのが後半進まなかったかなと思います。ゴール前まですら持って行けなかったというのは事実だし、ラストパスの精度も良くなくて、そこで相手にカットされてしまってシュートまで行けなかったのかなと思います。
――日テレ・ベレーザとの差をどこに感じましたか
やっぱりベレーザはパスの選択肢というか、全部プレーに対しての余裕がすごくあって。自分たちはそこにパスを通すっていうのしかなくても、ベレーザの選手には2、3個選択肢を持っていて相手が動いてきたのに対して逆を突くことができていたなと思います。自分たちにはそういうのが少なかったなと思います。
――皇后杯は3年連続でのベスト16での敗退となりました
やっぱりLリーグ(なでしこリーグ)のチームの当たるまでは相手もそこそこだったし、良かったんですけど、自分たちがベスト8という目標を掲げるのも低すぎるし、もうちょっと高く目標を掲げて取り組んでいくのも大事かなと思いました。あとやっぱりLリーグのチームを倒さなければ、道は開けないと思うので、もう少し普段から高いレベルの経験を積めたら良かったかなと思います。
――Lリーグのチームを倒すためには何が足りなかったのでしょうか
Lリーグのチームは学生のようにがむしゃらには来ないし、余裕を持って逆を突くプレーをしてきました。それに対抗できるかわからないですが、学生らしく攻守の切り替えやフィジカル、気持ちの面で上回らないと勝つのは厳しいのかなと思います。
――残すは最後のインカレのみとなりました。意気込みをお願いします
これからインカレに向けて足元だけはすくわれないように、しっかり自分たちのプレーができるように、残り1カ月もないですが、もう一度全員で話し合って共有するところはして修正していきたいなと思います。
MF大宮玲央奈(スポ4=浦和レッズレディースユース)
――いまのお気持ちは
本当にいまは頭の中が真っ白というか、ただ悔しいという気持ちしかないです。
――試合を振り返っていかがですか
ここまで相手を自由にやらせてしまったというか、劣勢な試合は久しぶりで、貴重な体験はできたと思うんですが、本当にまだまだだなと悔しい思いがすごく残っています。
――格上の日テレ・ベレーザとの対戦をどう迎えましたか
ベレーザ相手でしたが自分たちのサッカーは変えずに、勝っても負けてもどこまで通用するのか、みんなでそこは変えずに行こうって話していました。
――前半で4失点という厳しい戦いでした
立ち上がりに良い時間帯もあったんですがそこでしっかり押せなかったということと、本当に1本のコーナーキックから簡単に失点してしまって、そこから相手にリズムつかまれて苦しい時間を耐える時間が長かったかなと思います。
――4点のリードを許した中でハーフタイムを迎えましたが
「この4点リードされている状況で、どういうサッカーをするんだ」っていうのをスタッフの方に言われて、こず(DF千葉梢恵主将、スポ4=宮城・常盤木学園)が「勝ちに行く」って言ってくれたので、5点取って勝ちに行くっていうのはみんなっで思って後半に臨みました。
――後半を振り返って
スコアは動かなかったですが、前半よりもずっと守っている印象が強くて。前半よりも自分たちのサッカーができず、本当にきつかったなと感じです。
――相手のプレスが速く、チャンスメイクはほとんどできない苦しい試合でしたが
最初の方はトップに当てて、落として2枚目が出たり、そういう私たちのかたちができていたんですが、後半ディフェンスの方で体力が取られてしまって、そこから攻撃の時にFWが孤立してしまったり厚みのある攻撃ができずに潰されてしまったなと思います。
――得点は奪うことができませんでした
大学の中ではまあまあやれるのかもしれないですが、なでしこリーグっていう高いレベルになるとまだまだ通用しない攻撃なのかなと、本当に実力が足りないなと思います。
――日テレ・ベレーザとの差をどこに感じましたか
全てにおいて、攻守にわたってだと思いますが、中盤の作りだったり、無駄な動きも無駄なミスも少なくて、相手は余裕を持ってやっていたなと思います。
――ベレーザ相手に自分たちのサッカーを貫いての対戦でしたが、終えての感想は
ゼロではなかったというのが正直なところで、何個かGKと一対一になる場面があったり、前半もサイドからのクロスが何度かあったので、そういう良いところをもっと伸ばして増やしていけたら良いのかなと思います。
――皇后杯は3年連続でのベスト16での敗退となりました
ベスト8とは言っていましたが、個人的にはもっと上を目指していたし、最後の年にこういう負けで本当に悔しいです。でもベスト8で終わりたくないってみんな思っていると思うので、来年の後輩たちに思いは託したいと思います。
――残すは最後のインカレのみとなりました。意気込みをお願いします
4年間あっという間で、本当にあと一つの大会しかないんだって思うと、悔いのないように残りの試合は全部勝って、しっかり最後に国立のピッチで笑えるのは1校だけなので、その1校を目指して2回戦からですけど絶対にみんなで勝ちたいと思います。
GK三田一紗代(社3=京都精華)
――試合を終えて率直な感想をお願いします
うまかったです、正直に。でも自分たちができることも多かったと思うんで、もう少し早く試合慣れして自分たちのペースをつくることが大切だと思いました。
――「できること」とは
サイドの大きい展開で攻めれている部分もありましたし、プレスがはまるとボールを奪えている部分もあったので、もっとしっかりかけて最後のシュートまで持ち込めていたらもっと良い試合ができていたのかなと思います。
――相手は日テレ・ベレーザということで苦戦が予想される中で、スカウティングの段階でどんなゲームメイクを想定していましたか
結構前から来るので早く展開していくというのと、前に食いついてしまうと相手はうまいのでかわされて間にパスを通されてしまうので、むやみに行かず、行くべきときに行くというふうにしっかりしようと話していました。
――実際に戦ってみた印象は
決めるところはしっかり決めてくるなというのが一番の印象で、全体的にもう少し速くプレスにいけたら対応できたのかなって思いました。
――ポゼッションが特長のワセダ、きょうは相手にボールを持たせてもらえなかった印象がありました
相手のプレスが速かったし準備の段階でみんな一歩ずつ相手より劣っていたので、準備をもっと速くするということと、予測をもっとしっかりしなくてはいけないなと感じました。
――早い時間帯での3失点、相手に大きいパスを通されての形が多かったです
裏のマークをしっかりつけていなかったことと、マークがあいまいになってキッカーに対して一枚しっかりプレスにいかないといけない段階で声を掛けられていなかったのかなと思います。
――4点ビハインドの中で、ハーフタイムに戦術の変更は
戦術面というよりも気持ちの面で後半しっかり点を取りにいこう、勝とうという気持ちで向かいました。
――後半はセカンドボール奪われる場面が多かったと思います
みんな疲れてきて足が止まっているという部分があったので、もっと足を動かしてしっかり取りにいかなければいけないと思います。
――3回戦突破とはなりませんでした。なかなかベスト8のカベは厚いといったところでしょうか
Lリーグのチームは一味違うというか一歩上をいっているので、大学の女子サッカーをしっかり引っ張って行くという点でもここで勝っておかなければいけなかったなって思います。
――2週間後にはインカレが控えています。最後に意気込みをお願いします
またトーナメントになるので、一からスタートして、チャレンジャーという気持ちで戦わないといけないですし、絶対に優勝するという気持ちで2週間の間にしっかり自分自身も強化して成長して、インカレの舞台を戦っていきたいと思います。
MF正野可菜子(社2=兵庫・日ノ本学園)
――試合を終えて率直な感想をお願いします
すごくうまかったです。うまかったし、一人一人がしっかりしているので、その点ワセダはまだまだかなって思いました。
――この日に向けてどのような準備を
きょねんとかはフォーメーションも変えてINAC神戸に勝つために引いたサッカーをしようという考えだったんですけど、ことしは引かざるを得なくなると思うけど自分たちのサッカーをしてインカレにつなげられるようなア女のサッカーをしていこうと話していました。
――日本女子代表DF岩清水選手擁する、ベレーザの守備陣と実際に戦ってみて
一枚どころか二枚、三枚…、想像していたよりも上手(うわて)でした。自分のサイドが有吉さんだったんですけど、こっちがプレスを掛けにいくにしろ向こうには選択肢がたくさんあるので、寄せなさ過ぎると相手に簡単にパスをつなげられてしまいますし、今度突っ込み過ぎると一発でやられてしまうというのがあったので、守備をする上で迷いというかやりにくさがありました。
――ポゼッションのワセダですが、なかなかボールに触らせてもらえない印象がありました
相手は球際にがっつりくるようなタイプではなくトラップのところを狙ってくるので、そういう点でいつもとは違う守備のされ方というか、真ん中の阪口さんや原さんの分厚さはワセダにとってやりにくかったと思います。
――早い段階で許してしまった連続3失点について振り返ってみて
出だしが悪いというかもったいないというか、そこを変えていたらもうちょっと試合の流れは変わっていたのかなと思います。集中力というのもありますし、試合への慣れやスピード感、相手の勢いがあったと思います。ワセダとしては出だしは悪くなかったと思います。でもそこでもうちょっと流れをつかめていたら変えられたのかなと思います。
――前半の途中から裏を抜けられた後の対応が改善されてきたと思います
何回も自分は裏を取られてしまったので、その点は課題として挙げられます。
――4点のビハインドを負って、ハーフタイムに話したことは
4点も失っているので勝つためにはやっぱり点を取らないといけないということで、取りにいこうということは話していました。
――後半セカンドボールを奪われるシーンが目立ちました
後半から中盤が間延びしてしまって、フィジカルでも結構きつかったと思うんですけど、守ってつぎ攻めにいこうってなったときの動き出しについては、体力が無かったのかなと感じました
――ボールを持ってもなかなかハーフラインを越えられませんでした
それもありますし攻撃にかける枚数やアイディアは、ベレーザの攻撃はアクションが様々だったのに、それに対してワセダは極端というか枚数もかけられなかったし、その分相手は守りやすかったと思います。
――全体を振り返ってみて、立ち上がりの3失点が響きましたか
全体でも守備面でも軽さというか球際の弱さや、攻撃のアクションでも個で打開する力もまだまだだと思います。チームとしての点の取り方もこれからインカレに向けての課題だと思います。
――インカレに向けて
最大で4試合しかないので、少しでも長くこのチームでできるようにこの試合で挙がった課題を修正できるように、短い間ですが取り組んでいきたいです。