堅実な試合運びで皇后杯初戦を突破

ア式蹴球女子

 関東大学女子リーグ戦、関東女子リーグ戦を制したワセダの次なる目標は『皇后杯全日本女子選手権(皇后杯)ベスト8』。悲願達成の最初の関門として立ちはだかったのは仙台大だ。試合は関東王者の風格を見せつけ、着実に得点を重ねていくワセダが3―0で完勝。福井の地で行われた1回戦を危なげなく突破し、2回戦へとコマを進めた。

 「情報が無い中での対戦でした」(DF千葉梢恵主将、スポ4=宮城・常磐木学園)。東北地区のチームということもあり、十分なスカウティングができずに試合に臨むことになってしまったワセダ。しかしそんな心配は、10分のゴールで早くも杞憂に終わる。右サイドの深い位置で得たFKのキッカーはMF渡井汐莉(スポ4=鹿児島・鳳凰)。相手の意表を突くグラウンダーのボールを中に蹴り込むと、フリーで反応したDF千葉望愛(スポ4=浦和レッズレディースユース)が右足でゴールに流し込んだ。幸先よくリードを奪ったワセダだが、その後はFW福沢真菜美(スポ4=北海道・大谷室蘭)が激しいタックルを見舞われ交代を余儀なくされるなど、仙台大の執拗なボディコンタクトにやや悩まされることになる。福沢と交代で投入されたFW川原奈央(スポ1=兵庫・日ノ本学園)も41分に絶好機を迎えたものの決め切れず、結局1―0のまま前半を折り返した。

左サイドでの途中出場となった松川

 勝利を決定付ける追加点が是が非でも欲しい後半。歓喜の瞬間は早々に訪れた。千葉望からのロングフィードを受け、右サイドのスペースに勢いよく駆け抜けたのはDF石田みなみ(スポ4=静岡・常葉学園橘)。対峙した相手をドリブルで抜き去り、正確なセンタリングを上げると、これをMF大宮玲央奈(スポ4=浦和レッズレディースユース)がダイレクトで合わせる。ジャストミートとは言えなかったものの、コースを突いたシュートが決まり、47分に貴重な2点目を奪うことに成功した。その後も前半と比べてダイレクトパスで相手をいなしていくプレーが増え、数多くチャンスを生み出していく。79分には途中出場で入ったMF松川智(スポ2=大阪桐蔭)のコーナーキックが相手GKのミスを誘い、オウンゴールでダメ押しの3点目を記録した。なおもゴールに迫るワセダ。高校の後輩が試合を見に来ていることもあり、気合十分のMF高須咲帆(スポ3=福井工大附福井)が86分にミドルシュート、90分にはゴール至近距離で強烈なシュートを放つ。アグレッシブな姿勢は惜しくも実らなかったものの、最後まで攻めの姿勢を崩さず、3―0で圧巻の勝利を挙げた。

するどいシュートを放つ高須

 シュート数24本、被シュート数2本。スタッツでも仙台大を圧倒したワセダだが、チームに『慢心』などという2文字は存在しない。きょうの内容であれば、「もっと得点を取れた」と選手たちも試合後にそろってコメントを残すなど、反省も忘れていなかった。2回戦は、11月30日(土)に三重で行われる。皇后杯ベスト8へ向けて、弾みとなる白星を挙げることができるか――。

(記事 松坂和之進 写真 石原瑞季)

ア式蹴球部女子

皇后杯全日本女子選手権1回戦
早大 1-0
2-0
仙台大
【得点者】(早)10千葉望 47大宮 79OG
早大メンバー
位置 背番号 名前 前所属 学部学年
GK 三田一紗代 京都精華 社3
DF 石田みなみ 静岡・常葉学園橘 スポ4
DF 千葉望愛 浦和レッズレディースユース スポ4
DF ◎4 千葉梢恵 宮城・常磐木学園 スポ4
DF 13 大島茉莉花 鹿児島・神村学園 スポ3
MF 渡井汐莉 鹿児島・鳳凰 スポ4
MF →62分 松川智 大阪桐蔭 スポ2
MF 高木ひかり 静岡・常葉学園橘 スポ2
MF 10 大宮玲央奈 浦和レッズレディースユース スポ4
MF →83分 高須咲子 福井工業大附属福井 スポ3
MF 20 正野可菜子 兵庫・日ノ本学園 社2
MF 権野貴子 宮城・常磐木学園 スポ3
MF 福沢真菜美 北海道・室蘭大谷 スポ4
FW →32分 川原奈央 兵庫・日ノ本学園 スポ3
◎はゲームキャプテン
監督は長岡義一監督(昭43商卒=京都・山城)
コメント

長岡義一監督(昭43商卒=京都・山城)

――3ー0の完勝を飾りました。仙台大の印象はどのようなものでしょうか

ボディチェックが激しすぎるね。相手の監督がそう指示しているんでしょうけど、アフターのタックルも多いのはいただけないね。

――激しいボディチェックで交代を余儀なくされてしまったMF福沢真奈美(スポ4=北海道・大谷室蘭)選手の状態はいかがでしょうか

福沢に関しては大丈夫です。軽い脳震とうです。全然問題はないですよ。

――試合全体を振り返ってみて

前半は少しダイレクトパスが少なくて、ハーフタイムにそのことを注意しました。もっと人が動いてボールが動いて、ダイレクトパスを織り交ぜていけば、相手も取りどころが定まらなくなるのでね。そこから後半は少し良くなったなと思います。

――崩しの部分で手応えは感じていますか

ワセダと戦うとき、多くの相手はフィールドプレーヤーの10人が帰陣してくる。徹底して引かれると崩すことも難しくはなってくるので、相手が帰陣してくる前に素早い攻撃でゴールをゲットする。そういった部分に関しては、もう少し研究してやっていかないといけないね。

――MF松川智(スポ2=大阪桐蔭)選手をサイドハーフで投入し、それに伴ってMF正野可菜子(社2=兵庫・日ノ本学園)選手をボランチで起用した意図を教えてください

汐莉(MF渡井、スポ4=鹿児島・鳳凰)がいつもの動きができていなかったので、まずはボランチのポジションをいじろうと思って。状態を聞いたら、「足が釣りそうでした」と言ってきて。最近そういうことがよくあるんだよね。リーグ戦とかでも足が釣っての交代はありましたし。厳しい言い方をするならば、そういったところは無くしていってほしいね。正野をボランチのポジションに移したのは、相手に対して当たっていくフィジカルの強さがあるんでね。松川はトレーニングでは中盤の底で使っていたりしたんだけども、良い左足を持ってるし、サイドで使ったほうがアグレッシブなプレーをしてくれるという判断での起用です。

――MF高須咲帆(スポ3=福井工業大付属福井高)選手の投入も印象的でした

3年生だし、そろそろ芽を出してほしい。こういう舞台で経験値を得てほしいと思っての起用です。結構良いプレーをしていたけど、最後のシュートがね(笑)。GKの正面を思いっきりついてしまった。ただシュート力はあるし、それを生かしていってほしいね。

――本日の試合で得た収穫や課題を踏まえて、2回戦ではどのようなサッカーを見せていきたいですか

毎試合テーマとして掲げていることなんですけど、ア女のサッカーはワイドな展開で、オープンスペースを活用していくことを意識しています。それと攻撃から守備への切り替え、守備から攻撃への切り替えをスムーズにするためにもチーム全体をコンパクトにしていこうとは言っています。そうしたうえでダイレクトパスを使って攻めていきたい。ドリブルばっかりになると、相手も守りやすくなってしまうしね。次の試合でも引き続き、それらのことにトライしていきます。

DF千葉梢恵主将(スポ4=宮城・常盤木学園)

――試合を終えての感想を教えてください

まずは初戦を勝ち切れたことが本当に良かったなということと、ワセダはシュート25本打っていたんですけどその中で3点しか取れなかったというのはちょっと課題に挙がるなと思いました。

――皇后杯初戦となりましたがどう臨みましたか

チームとしては自分たちのサッカーをしようっていう話をしていたんですが、個人としては初戦の相手が大学生でここで負けていられないというか、ここで止まっていはいけないと思ったので絶対に勝たないといけないと思っていました。

――試合を振り返って

全体的に自分たちのペースで試合が進めることができて良かったんですけど、中盤で全て自分たちのサッカーがやれたわけではなくて、時間帯で後半とか特に悪い時もありました。そこは声掛けて修正できて良かったんですけど、修正する前にそうならないように努力していきたいと思います。

――仙台大との対戦に向けて準備はできましたか

全然なくて、情報が無い中での対戦でした。一応自分は仙台出身なので知っている選手はいたんですけど、スカウティングができなくて、行き当たりばったりで臨むことになっていましたね。でも上手い選手がいることはみんな知っていたので、そこの要所要所をしっかり抑えることができて良かったなと思います。

――きょうの試合の中で手応えと課題があれば教えてください

大学生相手に3点で終わってしまったことと、あとは攻められたところもあったので、そこはこの一週間で修正していきたいです。手応えとしては点にはつながらなかったんですけど、良いかたちで崩せる場面も結構あったのでそこは継続していきたいです。

――来週の2回戦に向けて

きょうしっかり勝ち切ることができたので、一週間しかないですけど、一人一人で反省することは反省して、チームとしては次に向けて修正して一試合一試合重ねていく中で成長していけたらいいなと思います。

MF大宮玲央奈(スポ4=浦和レッズレディースユース)

――試合を終えての感想をお願いします

皇后杯の初戦ということで難しい試合になると思っていたのですが、3点取って勝てたので本当に良かったと思います。いつも試合に臨むにあたってはスカウティングをしているのですが、調べても相手の情報が非常に少なかったです。メンバーも分からないという状況だったので、不安がありました。(仙台大は)関東のチームより泥くさく守備を固めてカウンターを狙ってきたので、難しかったですね。

――相手の激しいボディコンタクトに対するやりづらさはありましたか

皇后杯予選の日体大戦で「球際の弱さ」という課題が上がって、そこからトレーニングの中で意識して取り組んできました。相手は球際にがっつり来ていたのでファールは怖かったですけど、負けるという怖さはなくバチバチいけていたと思います。

――ご自身のゴールを振り返っていかがですか

ゴール自体は上手く当たってポロっと入ったようなゴールだったんですけど、そこまでの崩しが本当に良かったと思います。後半の立ち上がりから良い入りができて、ああいった何人も関わった崩しができたのが良かったですね。

――普段の人工芝とは異なる天然芝での試合でしたが、その点はいかがでしたか

(人工芝の)東伏見グラウンドで慣れ過ぎているのもあるのですが、天然芝は足にまとわり付いてくるような感覚があって、すごく疲労感を感じてしまいます。試合後は自分も含めて、「足がつりそう」と言っている選手が多かったです。最初は芝が濡れていたのでパススピードは良かったのですが、だんだん芝に持って行かれて止まる場面が多くなってしまったことが次への反省です。

――ベスト8を目指す皇后杯に臨むにあたって、特に意識されている点はありますか

昨季はINAC神戸と対戦できるということで、そこに力を使い過ぎて自分たちのサッカー自体を変えてしまいました。今季は自分たちのサッカーを貫いて3回戦も戦おうというのは4年生の間で話し合っています。

――福井に遠征しての試合となりましたが、コンディションはいかがでしたか

前日のお昼くらいから練習してそのまま前泊に入ったんですけど、ホテルもきれいで夜ご飯もおいしかったので、みんなテンションが上がっていました(笑)。良いコンディションにつながったと思います。

――三重で行われる2回戦へ向けて

目標はベスト8なのであくまでも通過点ですが負けたら終わりなので、しっかり勝ち切りたいです。東伏見に残っているメンバーもいるので、全員で戦いたいですね。

DF千葉望愛(スポ4=浦和レッズレディースユース)

――開幕戦を迎えましたが、チームの雰囲気は

きょねん、おととしと3回戦で負けてしまっているので、チームの目標のベスト8に向けては大事な初戦になるな、と。相手は同じ大学生だったので負けるわけにはいかないなと思っていました。

――あまり対戦したことのない仙台大でしたが、どのような対策をしてこられましたか

色々と探しはしたのですがあまり情報が無かったので、自分たちのいつも通りのサッカーをしていけば大丈夫だろうという認識でした。具体的な作戦とかはそんなに立てなかったです。

――実際に戦ってみた印象は

守備もしっかりしていましたし、中盤でのボールの溜めとかもすごく良かったです。何度か裏に蹴られたりして、FWの選手も足が速かったりしましたが、落ち着いて対応すれば大丈夫だという声があったので、しっかり落ち着いてつなげていけるように心掛けました。

――球際に強い印象がありました

意外とガツガツと来るかたちでちょっと焦りましたけど、やっぱりみんなで声を掛け合いながら落ち着けたのかなと思います。

――3―0の快勝となりました。試合全体を振り返ってみて

前半よりも後半の方がしっかりボールを回せていたかなという感じでした。でもあと2、3点決められたかなということがありました。あと攻撃面では決定力を上げていくということで、守備も何度か裏に抜けられる場面もあったので、そこを警戒してこれからやっていこうかなと思っています。

――フリーキックから先制点を奪いました。その場面を振り返ってみて

普段点を取る時はヘディングで決めることが多かったので、足で決めるのは久しぶりだったのでとてもうれしかったです。

――試合を通してセットプレーの場面が多かったと思いますが

相手GKは体が大きくて前に出てくるタイプだったんですが、GKに取られてしまうことが多かったのでそこをもう少し修正して、GKを外して狙えばもっとチャンスがあったのかもしれないと思っています。

――無失点で試合を終えましたが、DFとしてきょうの試合は

SBもすごく攻撃参加できていたし、あまりボール触る機会は無かったんですが裏に対しての対応のカバーリングなどがしっかりできていたのかなと思います。

――相手に決定的なチャンスをつくらせていませんでした

シュートを打たれなかったことは良いことだと思っているんですが、後半の最後の方に危ない場面があったので、そこは後でしっかり反省していきたいなと思っています。

――次戦をどのように戦っていきますか

きょうは前半と後半でしっかり修正てきていたのでそれを継続できるようにして決めるところは決めて、3回戦に向けて勝ってつなげていけたらと思います。

MF高須咲帆(スポ3=福井工大附福井)

――皇后杯初戦のチームの雰囲気は

次に絶対つなげようということと、今来ているメンバーではない東伏見に残っているメンバーのためにも来週につなげようという気持ちで試合に臨みました。

――これまでに仙台大と対戦したことは

対戦したことがなくてどういう相手か全然わからなかったです。スカウティングは知っているメンバーの情報だけを集めて戦いに挑んだという状況です。

――後半監督には何と指示されて入りましたか

視野を広く持ってとにかく落ち着いてやれと言われました。

――ゴールまで惜しい場面も見られました

すごく得点を決めたいという気持ちが大きくて、チャンスをものにできなかったのはすごく悔しいですが、もし次に機会があれば絶対点を決めたいと思います。

――出身地福井での試合ということで、何か気持ちの面なので違っていましたか

知っている子たちも何人かいたので試合にでたいという気持ちはとても大きくて、でもずっと試合に出ていなかったので今回出られたことはとてもうれしかったです。

――三重での皇后杯の2回戦に向けて

――次にこういう機会が与えられたら点をとってチームに貢献します。

MF松川智(スポ2=大阪桐蔭)

――試合を終えての感想をお願いします

前半、後半共に1点しか取れていない中で、流れを変えるためにゴールを狙っていきました。守備があっての攻撃なので、そこもさぼらずに試合に入っていきました。相手がどうこうではなく自分たちのサッカーをしようということで、しっかりリズムをつくって攻撃につなげられた点が良かったです。

――狙いとしていたプレーは発揮できましたか

シュートも1本しか打てず、もう少し左サイドからえぐっていくプレーができれば良かったと思います。

――3点目につながったコーナーキックは直接狙ったボールでしょうか

いや、あれはミスです(笑)。ラッキーって感じでした。狙いは中に合わせようとしていました。セットプレーに関してはきょうのグラウンドは天然芝なのでプレースキックは浮くのですが、そこでもう少し抑えたボールを蹴ることができれば良かったかなと思います。

――三重で迎える2回戦へ向けて意気込みをお願いします

次も違ったグラウンドでの試合ですが、自分たちでしっかりリズムをつくって、前半から攻撃に枚数をかけて得点を奪う試合をしていきたいです。