目標をつくる
高校では柔道をやっていた遠田航平(政経=東京・日比谷)は大学でも格闘技を続けようと考えていた。しかし、条件がある程度決まっている格闘技に比べ、山や自然に入るワンダーフォーゲルのフィールドの広さに興味を持ち、新しくワンダーフォーゲルを始めることを決めた。部活動を通して「山の楽しみが増えた」と語る遠田の4年間を振り返る。
遠田にとってワンダーフォーゲルの最大の魅力は「ゴールを自分で決められるところ」と語る。勝敗が決まるスポーツではないからこそ、自分たちで目標が決められる。「こういうルートをひいてみたい」というように自分で決めた目標に向かって頑張ることができるところが魅力だった。そして、目標を決めるというプロセス自体が好きだった。しかしこの魅力は主将になると、部員それぞれやりたいことが違ってきてしまう中で、それをひとつにまとめる苦労にもなった。ワンダーフォーゲル部には山登りの他に沢登り、自転車、ボートの部門がある。これらをまとめて部としてのひとつの目標を作ることが大変だったと振り返った。加えて、主将になると一気に責任が大きくなった。ワンダーフォーゲルは死亡事故なども起こりうる活動だが、主将には部員を安全に家に帰す責任がある。このプレッシャーが主将を務めたなかで最もつらかった部分であった。
夏合宿中の遠田たち
4年間一緒にワンダーフォーゲルをやってきた同期の存在は遠田の中でとても大きいものだった。「同期がいちばん頼りになる」と振り返る。ずっと一緒に活動していると、一人ひとりのできること、できないこともよくわかるようになった。同じひとつのテントで長い時間を過ごすことで、部員と密な関係になれるのが楽しかったと語る。
ワンダーフォーゲルは、計画を作る、目標を作る、という段階がとても重要である。明確な目標が定まっていないため、目標設定など山以外の場所での活動が増える。その活動が重く、純粋に山を楽しめなくなってくなってしまうこともそれなりにあった。そのなかで、下級生には「下界でどんな苦労を持ってたとしても、山にいったらとりあえず切り捨てて、楽しんでほしい」と下級生への想いを語った。
主将を務めた1年間の目標は東北の魅力を探ることだった。フィールドを設定した中で、様々なアプローチの仕方を探求したいと考えていたという。実際に最も大きな合宿である1ヶ月程度の夏合宿では、自転車と山の融合に力を入れた。この目標の達成度を聞いてみると、「ほぼ100点に近い」と語ってくれた。ワンダーフォーゲル部で得たものは自然に関する感性だけでなく、目標を達成させる力も大きいだろう。卒業後ワンダーフォーゲルと直接の関係はない企業への就職が決まっている遠田だが、これらが活かされることは間違いない。
(記事 佐藤桃子、写真 ワンダーフォーゲル部提供)