【連載】天皇杯全日本選手権直前対談『覇』 第2回 尾西大河×北脇香×山路健心×掛川零恩

レクリング

 第2回は1、2年生四人による対談。尾西大河(スポ2=佐賀・鳥栖工)、北脇香(スポ2=山梨・韮崎工)、山路健心(社2=和歌山)、掛川零恩(社1=山口・豊浦)が登場する。1、2年生ながら数々の大会で好成績を収めている四人は何を語ったのか。

お互いの印象

対談に臨む四人

――まずは左隣の人の紹介をお願いします(尾西→掛川→北脇→山路→尾西)

尾西 社会科学部1年の掛川君です。難しいな…。

掛川 地元が近いとか?

北脇 そんなことないよな。

尾西 僕が福岡で、零恩が山口で、小さい頃から試合会場で会っているので、大学に入る前から知っていました。あとは、寮の夜ご飯が魚やカレーの時はよくご飯に誘われて毎回行っています。ラーメン行ったり焼肉行ったりしています。

掛川 スポーツ科学部2年の北脇香です。強くて有名だったので昔から知っていて、個人的には仲良くなりたいとずっと思っていたのですが、結果的に初めて会ったのは高校3年生の時のアジア大会でした。たまたま日本代表で一緒になったのが初めてで、僕が一方的に仲良くなりたくて変に絡んでいったのが最初です。すごい変なやつだったのですが、最初から受け入れてくれて、初めから仲良くしてくれたのが印象に残っています。大学に入ってから同部屋になって、一番過ごしている時間が長いと思いますし、私生活で至らない部分を最初に教えてもらったというのが多いです。レスリングも階級が近いですし、世界大会に一緒に行ったり、一番面倒を見てもらっている先輩です。

⼭路 いいように言い過ぎている気がするな(笑)。

北脇 日本代表とかちょっと自慢も入れながらな(笑)。「俺は高校生なのにこいつは大学生で同じステージに立っていた」みたいな。

掛川 違う違う(笑)。

北脇 同期3人で少ないですけど、大河が減量続くとご飯に行けなかったりというのがあるので、自分らは減量がないのでいつでも気にせずご飯を食べているというので結構一緒にいる時間は長いです。大阪出身というのもあって、人懐っこいというか、すぐ誰にでもフレンドリーに関わっていくというのが自分としてはありがたかったです。大阪人ですが面白くはないです。

⼭路 面白くないは大阪人に一番言ったらあかんやん(笑)。

――面白くないと言われましたが、反論はありますか

⼭路 いつもめっちゃいじってくるんですよ。目細いとか足短いとか、身長低いとか。それよりも響きました。

――最後に尾西選手の紹介をお願いします。

尾西 小学校から知っていて、誰よりも熱心にレスリングに取り組んでいるなと思います。レスリングを一番知っているなと思います。ただ、レスリング以外は抜けているところが多いです。最近流行っている歌を聞かれて、Adoの「唱」とかいいんちゃうって言ったら、20分後くらいに「Adoって曲にするわ」って言っていました。Adoを曲名だと思っていました(笑)。レスリングは博識なのですが、それ以外はかわいらしいところもあります。

――次にマイブームを教えてください

尾西 日曜の夜にバレー部の前田凌吾(スポ2=大阪・清風)と一緒にご飯行くことです。授業もほぼ一緒なので、ずっと一緒にいます。

掛川 大学入ってから自由な時間が増えたので、趣味の時間が増えるかなと思っていたら、寝たりダラダラしたり、漫画を読んだりする時間が増えただけでした。あとは、筋トレをして筋肉痛になるのが楽しいみたいなところがあります。

――おすすめの漫画はありますか

掛川 描写がグロいのが好きなので、押見修造という人が個人的には好きです。

北脇 今年入ってから変わったなというのは、夜寝る前にこいつ(掛川)がめっちゃしゃべるんですよ。12時には電気消しているはずなのですが、もう3時じゃんみたいな。何がおもろいのか分からないのですが、ずっとしゃべっているというのはありますね。

掛川 たまたま出てきたYouTubeショートについて議論したりしています。

北脇 あと、こいつ(掛川)の勝手なルーティンで「おやすみ」って言ってからしゃべらないで寝るみたいなのがあるのですが、「おやすみ」って言った後にめっちゃ話しかけたりしています。それで3時まで長引いています(笑)。

――山路選手はどうですか

⼭路 さっきまでやっていたのは「すいかゲーム」です。最近携帯でできるのを知ってやっていたら止まらなくなって、さっき監督の息子に教えてもらいました。

一番は6月の明治杯で優勝したこと(尾西)

話をする尾西

――レスリングの話題に移ります。今年最も印象に残っている試合は何ですか

掛川 4月のJOCで優勝したのが印象に残っています。単純なうれしさだったら全グレ(全日本大学グレコローマン選手権)の時の方がうれしかったのですが、高校時代に準優勝4回ということで、決勝で勝てないというジンクスがあったので、そこから脱却できていい始まりができたということで印象に残っています。

尾西 今年シニアの国際大会も出る機会があったのですが、一番は6月の明治杯(明治杯全日本選抜選手権)で優勝したことです。昨年は天皇杯(天皇杯全日本選手権)で高校生に負けたり、4月のJOCでも苦しんだりしたのですが、そこ(明治杯)で優勝できたのが良かったです。優勝したというよりもセコンドに同級生三人が付いてきてくれて、香にはもともと頼んでいたのですが、健心は当日急に来てくれて、一人で優勝というよりも同級生三人で優勝できたのが自分の中で印象に残っています。

⼭路 自分はリーグ戦(東日本学生リーグ戦)の国士館大戦です。サプライズみたいな感じのメンバー編成で挑んだのですが、自分も減量した状態で相手のポイントゲッターと戦うみたいな感じでした。大河がやってから自分だったのですが、(尾西が)負けると思っていなかったのに負けて、「あ、やばいな」みたいな感じだったのですが、しっかり勝ててそこから流れが来て(チームとして)6-1で勝ったのは楽しかったし印象に残っています。

北脇 個人的には今年は楽しくやろうと思って試合に出ていて、勝ちにこだわるというよりかは楽しめればいいかなくらいの気持ちでやっています。4月のJOCだけは、優勝したらU20世界選手権の代表というのがあったので、楽しむというよりかは本気で勝ちにいきました。楽しむスタイルでやろうと思っていたのですが、こればかりは負けたくないという気持ちが強くて、人生で初めてくらい試合開始からガンガン押していって先にグラウンド取ってローリングで返してみたいなのを唯一やった試合です。案の定全く面白くなかったのですが、そのくらい本気になれることがあるのは幸せなことだなと思います。本当はU17のカテゴリーの時にメダル狙って頑張りたいなというのがあったのですが、コロナで出ることなく終わってしまって、U20が自分の中で最後のカテゴリーだと思っていたのでどうしても優勝したいと思っていました。

アップでサッカーやってくれるんですよ(山路)

話をする山路

――今年は4年生が多いチームでしたが、どんなチームでしたか

北脇 本当に4年生中心のチームというか、過ごしやすいチームでした。もともと中学と高校でそういう環境を選んできてはいたのですが、その中でもダントツやりやすい1年間でした。

――4年生との思い出はありますか

⼭路 本当に感謝しかないのですが、個人的にめっちゃサッカー好きで、アップでサッカーやってくれるんですよ。毎回ウキウキでした。

――サッカーは誰の提案ですか

⼭路 深田主将(深田雄智、スポ4=千葉・日体大柏)です。昨年くらいに新チームになってからちょうどW杯があったんですよ。日本が勝って盛り上がっている時にそのままアップでサッカーというのが今まで続いています。

――サッカーは誰が上手いですか

⼭路 やっぱり香です。

北脇 いやでもこいつ(山路)も上手いですよ。

掛川 やっぱり好きなだけあってね(笑)。

⼭路 毎回別チームでやって楽しんでいます。

――他に思い出はありますか

尾西 自分は寮の同部屋が雄智さんで、寝る時に寝言を言っているタイプなので迷惑をかけているはずなのですが、何も言わずに一緒に過ごしてもらえています。朝練に遅れそうな時も起こしてもらって何回か助けてもらっています。中でも一番は、泥酔して財布をなくして帰れなくなっちゃった時に助けてもらったことです。

掛川 インカレ(全日本学生選手権)で玉さん(玉岡颯斗、スポ4=群馬・館林)が優勝する時に、「優勝したら82キロ級を譲ってください」とお願いしていて、「いいよ」と言った上で優勝して、全グレで82キロ級を譲ってくれました。結果的に(自分の)優勝につながって、これが4年生との一番大きな思い出です。

北脇 2個上の代は、中高だと1年の時の3年の代ということでめちゃくちゃ強い、そしてスターがそろっているという憧れの代です。その中でもスター選手が早稲田に集まっていて、そんな人たちと一緒にできたことが自分の中でうれしかったです。(中高で)遠征にいった時には実力差もあって、雰囲気もあって話しかけにくい存在だったのですが、(大学に入って)毎日一緒にやってもらえたのが印象に残っています。

⼩さい選⼿が勝つところってやっぱりかっこいい(北脇)

話をする北脇

――天皇杯への話題に移ります。まずはそれぞれの⽬標を教えてください

⼭路 74キロ級に出るのですが、その階級はパリ五輪代表が決まっていて、トップ争いをしていた⼈たちがだいぶ抜けてしまいました。それでも、⾃分よりちょっと強いかなという選⼿が4、5⼈います。運もありますが、それらの選⼿から何回か勝って、決勝に⾏けたらいいなと思います。

北脇 ⾃分はもともと階級が97キロですが、今回の天皇杯は130キロ級に出ます。97キロ級も130キロ級もまだ五輪の代表選⼿が決まっていません。⾃分が⾒た中で97キロ級の選⼿だと、優勝できるレベルの選⼿が3、4⼈います。⾃分は4年間の⽬標が97キロ階級で3番以内に⼊ることだったのですが、前回の明治杯でそれを達成してしまったので、ちょっと天皇杯のモチベーションがなかったんです。でも、もしかしたら 130キロ級が⾯⽩いのかなと思いました。だから、⾃分のレスリングを楽しむことが⽬標です。130キロ級でどこまでできるのかですね。

――130キロ階級は北脇選⼿ご⾃⾝で選択したのですか

北脇 天皇杯に出たくないと思っていたのですが、130キロもありかなと思い始めてからすごい楽しみで。全然コロッと負ける可能性もありますが、それを含めて⾃分が1個上の階級で、ましてやめちゃくちゃデカい相⼿に何ができるかすごい楽しみです。けがだけしないようにしつつ、⼩さい選⼿が勝つところってやっぱりかっこいいですよね。それを⽬指して頑張ろうと思います。

――尾⻄選⼿と掛川選⼿はいかがですか

掛川  今回僕はフリーとグレコの両⽅に出場権があったので、共にエントリーしました。「1年⽣のうちは経験」と思っていて、とにかくたくさんの⼤会に出てチャンスがあればやれるところまでやってみようという感じです。両⽅のスタイルでメダルが取れたらかっこいいなって思って、エントリーしました。フリースタイルは、⼤学に⼊ってからほぼやっていなくて、出場したのもチームの団体戦で出ただけですが、体重が⼩さく素早い⼈よりも⼤きくて⼒強く戦ってくる⼈の⽅が好きなのでエントリーしました。⾃分のスタイルを貫いて楽しむことがフリーの⽬標ですが、グレコはやはり本職でやっているので、明治杯よりもグンとレベルは上がりますが、明治杯と同じ3位を目指します。

尾⻄ 天皇杯は⼀昨年が3位で、昨年が2位でした。昨年は決勝で⾼校⽣に負けたので、天皇杯は⾦メダルを取っていない⼤会です。ここはしっかり優勝することが⽬標です。あとはまだ⾃分も2年⽣で、3年⽣になっても⼤会が続くので、来年につなげるという意味でも試合内容や勝ち⽅にこだわり、コンディションも含めて準備したいと思います。

―― 現在重点的に取り組んでいることは何ですか

北脇 増量ですね(笑)。体重が97キロないと出られない上に、今年の夏までに90キロくらいしかなかったので、とりあえず試合前に97キロまでもっていくことが一番の⽬標です(笑)。炭⽔化物で増やすしかないと思っています。

⼭路 増やしている時マジで⾷べるんですよ。焼⾁屋でビビンバを3つくらい⾷べるんです。

――尾西選手は体重を減らす⽴場ですが、横で食べまくっているというのはどうなんですか

尾⻄ 例えば、増量は97キロ必要な上に、ゴールは130キロなので遠いんですよね。僕の場合はゴールがしっかりあるので、増量の⽅がキツいと思います。

――他の皆さんの取り組んでいることも教えてください

尾⻄ レスリングの技術に関して常に取り組んでいます。⾃分はまだ体の使い⽅、体幹や腹圧といった細かい部分の使い⽅が全然できていないので、重点的に⾏っています。ナショナルトレーニングセンターにて、スノーボードの⼩野光希ちゃん(スポ2=東京・成⽴学園)のトレーニングを⾒ていると、体幹が使えているなと思いました。あと前⽥凌吾(スポ2=⼤阪・清⾵)と話した時も、バレーボールでアタックする時に体幹とか腹圧のかけ⽅がすごいなあと思いました。バレーボールの監督のゼミに所属しているので、そこでも体幹や腹圧の掛け⽅が重要というのは聞いています。今は体幹と体の使い⽅の連動を頭の中でしっかりイメージして、それをレスリングにつなげていこうとしているところです。

⼭路 同部屋の増量(北脇)の影響を受けて、僕も体重が増えすぎてしまい、減量が過去⼀きつくなることが予測されています。今回の減量では筋トレをしながらうまく落としつつ、フィジカルが他の⼈より強いという⾃信があるので、そこでさらに他⼈を上回れるようにしていきたいです。あと、⾝の回りの⼈からできるだけ試合前に技術を吸収できるように頑張ります。

掛川 特にないですね。全体的に頑張ろうと思います。

同じ階級に4年⽣の⽟岡先輩が出るので、できることなら最後に戦って勝ちたい(掛川)

話をする掛川

――⾃分の強みや特徴を教えてください

北脇 全⽇本でもやっちゃうよっていう(笑)。いろんな意味での「アレ」を。⾃分の調⼦の波はとてもありますが、うまく波を整えられた時、⾃分は結構強いと思います。ぜひ注⽬してほしいです。

⼭路 ⼤学チャンピオンの技を真似してみるのが⾯⽩くて、試合でやりたいと思っています。

掛川 僕はハーフなので、⽣まれつき⼒が強いです。そこだけですね(笑)。⾎をうまく使って戦うことですね(笑)。

尾⻄ 胃の強さを発揮したリカバリーで、⾝体を⼀気に⼤きくした状態でマットに上がろうと思います。いつもの練習くらい⾝体を⼤きくした状態でマットに上がって、1回戦から決勝まで、朝から晩まで全試合を勝ち抜けるようにしたいです。

――ご⾃⾝がライバルとして意識している選⼿はいますか

掛川 同じ階級に4年⽣の⽟岡先輩が出るので、できることなら最後に戦って勝ちたいと思います。

北脇 ⾃分のモチベーションです。マットに上がって1回投げてみるまで、⾃分のモチベーションは本当に分からないです。今回の階級に関しては誰ともやったことないので、ライバル選⼿は全然いないです。

⼭路 ⾃分は同じ階級に、⽇体⼤の同じ世代の選⼿で昨年⼤学1年⽣のときに全⽇本選抜選⼿権で優勝した⼈がいるのですが、その⼈がライバルです。まだ⼩学校の時から1回も対戦したことがないので、やりたいなとは思っています。正直無理ですね(笑)。でもやりたいです。

尾⻄ ⾃分の中では、同じトーナメントにいる全員がライバルという意識です。誰と戦っても勝てるように、どんなタイプでも対応できるようにしたいと思います。誰か一人を挙げるよりも、トーナメント20⼈全員がライバルという意識でいたいです。

――天皇杯が終わった後に楽しみにしていることを教えてください

掛川 帰省です。初めての⻑めの帰省なので、楽しみたいと思います。

尾⻄ 成⼈式ですかね。どんな感じなのかなって楽しみです。久しぶりに会う⼈もいるのでこれも楽しみです。

⼭路 最近マネジャーが⼊部しました。だから、同期が4⼈になり、練習後4⼈でご飯を⾷べに⾏く⽇常が来ることを楽しみにしています。

北脇 そしたら俺も年末に炭⽔化物以外も⾷べられることが楽しみです(笑)。体重を増やさなくていいご飯を楽しみたいなあと思います。

――最後に意気込みをお願いします

掛川 表彰台に上がりたいです。

北脇 ⾃分より40キロ以上あるヤツを宙に回します。

尾⻄ 圧倒します。

⼭路 絶対優勝します(笑)。

――ありがとうございました!

(取材・編集 齋藤汰朗、中村環為)

色紙に思いを書いていただきました

◆尾西大河(おにし・たいが)(※写真左)

2003(平15)年10月2日生まれ。男子グレコローマンスタイル55キロ級。佐賀・鳥栖工高出身。スポーツ科学部2年。明治杯で優勝し、シニアの世界選手権も経験した尾西選手。豊富な経験を糧に、昨年高校生に敗れたリベンジを果たします!

◆北脇香(きたわき・きょう)(※写真左から二番目)

2003(平15)年6月25日生まれ。男子グレコローマンスタイル130キロ級。山梨・韮崎工高出身。スポーツ科学部2年。レスリング界で希少な投げ技を軸に戦うスタイルの北脇選手。豪快な投げ技で観客を楽しませてくれるに違いありません!

◆山路健心(やまじ・けんしん)(※写真右)

2003(平15)年12月19日生まれ。男子フリースタイル74キロ級。和歌山北高出身。社会科学部2年。今年最も印象に残っている試合に東日本学生リーグ戦での一戦を挙げた山路選手。負傷しながらも気合いで戦い続ける姿勢には感動しました。天皇杯でも気迫のこもったプレーを見せてくれることでしょう!

◆掛川零恩(かけがわ・れおん)

2004(平16)年12月24日生まれ。男子フリースタイル92キロ級・男子グレコローマンスタイル82キロ級。山口・豊浦高出身。社会科学部1年。明治杯3位、全日本大学グレコローマン選手権優勝など、1年生ながら強さを発揮している掛川選手。初めての天皇杯でさらなる活躍が期待されます!