5月15日、東京体育館を会場に明治杯全日本選抜選手権が開幕した。天皇杯全日本選手権(全日本選手権)と並び国内二大大会の一つに数えられる今大会は、全日本トップクラスの選手によるハイレベルな戦いが繰り広げられる。この日、早大からは男子グレコローマンスタイル(GR)55キロ級の尾西大河(スポ2=佐賀・鳥栖工)と、女子55キロ級の片岡梨乃(社4=千葉・日体大柏)の2人が出場し、そろって全日本の頂点に立った。
優勝し、喜びをあらわにする尾西
第1シードの尾西は準々決勝からの登場で、増田壮兼(育英大)と対戦。第1ピリオドでリードを奪った尾西だったが、第2ピリオドに入り同点に追いつかれる。危ない展開となったが、その後相手のパーテールポジションから1点を奪い、4-3で接戦を制した。続く準決勝では荒木瑞生(九州共立大)と対戦。相手の2度にわたるパッシブ(消極的な選手に与えられる指導)で2点を奪い、2-0で決勝へと駒を進めた。決勝の相手は山際航平(日体大)。4月のJOCジュニアオリンピックカップの決勝で敗れた因縁の相手である。第1ピリオドでは、相手のパッシブで1点、その後パーテールポジションから相手の体を返して2点を奪う。しかし、第2ピリオドに入り、3点を返され同点に追いつかれてしまう。この時点で残りの試合時間は1分30秒ほどだったが、尾西は冷静だった。再び相手のパッシブでパーテールポジションからのスタートを選択すると、4点の投げ技を決めて7―3に。そして、そのまま逃げ切ることに成功し、見事優勝を果たした。
決勝で4点の投げ技を決める尾西
片岡も、尾西と同じく準々決勝から出場し、本多香里菜(神奈川大)と対戦。第1ピリオド終盤に得点を重ねると、そのまま5-0で準決勝進出を決める。準決勝では、中村成実(法大)と対戦。1-1で迎えた試合終了間際に相手が投げ技をかけたかに見えたが、チャレンジの末得点は認められず、片岡が2-1で勝利した。迎えた決勝の相手は屶網瑠夏(至学館大)。試合開始直後に相手の背後に回って2点を先取すると、第2ピリオドでさらに2点を加える。終了間際に2点を取られはしたものの、4―2で勝利を収め、自身初の栄冠に輝いた。
決勝を戦う片岡
大会1日目は、昨年の全日本選手権で涙を流した2人が、そろって優勝を果たし、表彰台で笑顔を見せた。2日目は男子フリースタイル74キロ級の深田雄智主将(スポ4=千葉・日体大柏)と男子GR97キロ級の北脇香(スポ2=山梨・韮崎工)が出場を予定している。尾西、片岡に続いて好成績を残したいところだ。
表彰式に臨む尾西
表彰式に臨む片岡
(記事、写真 齋藤汰朗)
関連記事
結果
男子グレコローマンスタイル
▽55キロ級 尾西 優勝
女子
▽55キロ級 片岡 優勝
コメント
片岡梨乃(社4=千葉・日体大柏)
――今日の試合を振り返っていかがですか
今回非五輪階級で前回の天皇杯(全日本選手権)で2位に終わってしまっていたので、まず優勝できて素直にうれしいです。
――優勝できた要因は何でしょうか
55キロ級では減量もなくて、天皇杯(全日本選手権)の時とアジア選手権でフィジカル面の強化が必要だと身に染みて感じたので、フィジカル強化をしたのと、得点パターンが今まで少なかったのでとにかく攻める練習をしました。今回気持ちが上がってしまっていい動きはできなかったのですが、このように優勝できて本当にうれしいです。
――フィジカル面の強化というのは具体的にはどんなことをしましたか
上半身です。組み手で手が張ってしまったり、組み手を練習していたのですが、自分より力の強い相手にはなかなか通用しないというのが55キロ級ではあったので、懸垂やロープのトレーニングを積んで、そのおかげで今回は力負けはしなかったなと思います。
――今後の目標を教えてください
まずこの大会で優勝することを目標にアジア選手権が終わってから一生懸命頑張ってきたので、すごく安心もあるのですが、内容的には課題しかない大会に終わってしまったので、それを目先一つ一つの大会で克服してさらに強くなっていけるように頑張っていきたいと思います。
尾西大河(スポ2=佐賀・鳥栖工)
――決勝を終えての感想を教えてください
12月(全日本選手権)決勝で負けて自分自身すごい落ち込んで考え直すきっかけになったのですが、それでも早稲田大学の先輩後輩同期が支えてくれたおかげでこの大会に向けてもう1回頑張ることができて、本当に自分一人の力ではないので、トレーナーの方だったり、コーチだったり、所属は違うのですが青山学院大学の長谷川恒平監督がマンツーマンで一緒に練習してくれて、ここまで強くしてくれた多くの方たちに感謝をしたいです。
――お世話になった方にどんな言葉を伝えたいですか
本当にありがとうございましたと伝えたいです。僕一人でこの優勝ができるわけではなくて、先輩後輩同期や長谷川コーチといった多くの方に本当にありがとうございましたと感謝の気持ちを伝えたいです。
――12月の全日本選手権での敗北から自分の中で強くなった部分やレベルアップした部分は何でしょうか
決勝戦は課題が浮き彫りになって、自分はまだまだ上のレベルで勝てる実力がないので、これからも伸ばしていかないといけないのですが、スタンド、グラウンドともにレベルアップをしてきました。レスリング以外で言うと、メンタル面です。12月は相手が高校生だったということもあり、失点した場面で落ち着いて試合に臨むことができなかったので、今回は決勝の負けている場面でも冷静に落ち着いて平常心で挑みました。
――今回は予選から接戦続きでしたが、それは想定していたことだったのでしょうか
正直1回戦、2回戦は内容で言うと全然ダメで、もちろん決勝もあんまり失点しているのは良くない場面なのですが、ここまできつい試合になることは予想していなかったので、そういった気持ちの持ち方もまだ自分自身の課題になると思います。先ほどの長谷川コーチからもLINEで全然ダメだということで修正点を伝えられたので、そういうありがたい言葉を次につなげようという気持ちで準々決勝、準決勝、決勝とつなげていきました。
――決勝の相手は4月のJOCジュニアオリンピックカップの決勝で敗れた相手でしたが
これまで勝っていたのですが、初めて4月に負けて、スタンドとグラウンドで課題があったので、これまでやってきたことを意識して試合に臨みました。
――今後の目標について教えてください
まだまだ戦いは終わっていないので、あと一つプレーオフが待っているので、プレーオフで勝って、世界選手権の代表になって、もう一度世界の舞台で戦えるように準備していきたいと思います。