第2回は男子フリースタイルの3年生。61キロ級の藤田颯(スポ3=埼玉・花咲徳栄)、74キロ級の深田雄智(スポ3=千葉・日体大柏)、79キロ級の山倉孝介(スポ3=千葉・日体大柏)の3人が登場。新体制での主将、副将を含む同学年の3人は、天皇杯全日本選手権(全日本選手権)を前に何を語ったのか。
今年を振り返ると
趣味に人間観察を挙げた山倉
――他己紹介をお願いします
藤田 (深田は)ミステリアスですね。冷静沈着。あんまり熱くなっているところを見たことがないです。試合はたまにあるかな。
深田 (山倉は)オンオフの切り替えが、すごくはっきりしているというか。やると決めたことはちゃんと全力でやるんですよ。でも、やらないときはびっくりするほどやらないみたいな(笑)。そんな感じですね。長い間一緒にいるので、その辺はわかっているかなという感じです。
山倉 (藤田は)なんでかはわからないのですが、最近楽しそうですよね(笑)。
藤田 それはだるい(笑)。
山倉 大学生活楽しんでいるのはいいことじゃないですか。1人で言うのもあれだから、ふっか(深田)もちょっと何か言ってよ。
深田 優しいです。めっちゃ。自分のことをちゃんとやるし、周りの人のこともちゃんと見てるなっていう印象がありますね。
藤田 こうやって褒められるとうれしいですね(笑)。
――最近ハマっていることはありますか
藤田 僕は、大学に入ってからめっちゃサウナにハマっています。減量もあるので、高校のときから行ってはいたのですが、プライベートでも行くようになりました。そんなにマニアックではないのですが、趣味と言えるくらいにはサウナが好きなのかなと思います。
――おすすめのサウナはありますか
藤田 錦糸町の…名前なんだったっけな。下町感溢れる外観で、温度もめちゃめちゃ良かったので、結構気に入ってはいます。孝介と1回一緒に行ったのですが、あの後も何度か1人で行っています。
山倉 最近ハマっていることは、人間観察です。変わっている人を見るのが好きで。東京にいると普通に道を歩いていても、「なんだこの人」とか思う人絶対いるじゃないですか。そういう人を見ると、話しかけちゃうんですよね。
一同 (笑)。
山倉 見るだけだと、「こういう人なのかな」で終わるのですが、絡んでみて、その一歩先の「あ、本当はこういう人だったんだ」っていう。「悪そうに見えるけど、いい人なんだ」とか。そういう新しい人と関わるのが楽しいなって(笑)。
深田 怖いよね、こんなでっかい人が話しかけてくるんだよ(笑)。このあとしゃべりにくいなあ。
藤田 孝介がトリの方が良かったかもね(笑)。
深田 ラーメンが好きなので、色んなところに食べに行ってますね。最近は家系ラーメンが好きなので、どことかはないのですが、朝イチで家系とか食べられます(笑)。ラーメンは小さいときから食べていて、欠かせないですね。
――レスリングの話に移ります。今年を振り返って、点数をつけるとしたら何点ですか
山倉 70点で。理由は、今年の夏、インカレで優勝できて、そこまでは良かったのですが、小さいケガとかもあってなかなか練習できませんでした。あとは、優勝したことによって気持ちの浮き沈みが激しくなっちゃったりとか。自分をまだコントロールできてないという面で、まだ成長し切れていないと思っているので、70点で。本当は100点にしたいのですが、まだ全日本もあるので。
藤田 自分も70点で。上半期にインカレで、1、2年は3位だったのですが、3年でようやく決勝まで上がれて。決勝では負けちゃったのですが、一つ順位を上げられたので、結構自分の成長を実感できました。ただ、インカレが終わってから中だるみじゃないですけど、試合期間が開いちゃって。インカレ前より練習の強度が落ちて体調を崩したりとかいろいろあって、下半期はあまり良い成績を残せていないので、全日本もこれからあるのですが、とりあえず今年を振り返ると70点くらいかなと思います。
深田 50点くらいですかね。去年がちょっとできすぎたかなという年で、僕はメンタル的に安定感のない人だから、それが今年は如実に。例えばリーグ戦だったりインカレだったりで出ちゃったので。逆に気持ちが整っている全日本(明治杯全日本選抜選手権)でも今年は3番に入れたし、U23も経験できたので、そういう面では良かったかもしれないです。ただ、ちゃんとした結果が出てないから50点かなという感じですね。
――今年印象に残っている試合があれば、教えてください
深田 二つあって、1個は、スペインでの負けちゃった試合です。さっき藤田君から、冷静とか熱いところをあんまり見せないと言われたのですが、あの試合は自分なりに熱い気持ちを持って試合をできたかなと思います。
藤田 めっちゃいい動きだったよ(笑)。
深田 相手の選手も、シニアの世界選手権とかに出ている格上の選手で、そういう相手といい試合をできたというのが一つ自信になりました。もう一つは、この前の内閣(全日本大学選手権)の決勝です。それも負けた試合なのですが、相手は高校の同期で一緒に切磋琢磨(せっさたくま)してきたので、すごく感慨深かったです。試合の結果以上に、見ている人に何か伝わったものがあったかもなという試合だったので、その二つが印象に残っています。
山倉 夏のインカレの決勝です。相手が高校の同期で、キャプテンと副キャプテンという立場で、階級も近くて、毎日のように一緒に練習していた仲なので。小中とずっとライバルみたいな感じで一度も勝てたことがなかったのですが、全国の舞台の決勝で戦うことができて。結果、勝つことができました。ただ、自分の中で一時のうれしさはあったのですが、内閣(全日本大学選手権)で負けちゃったことで、成長過程なんだなって。「人生甘くないな」って思いました。なので、インカレの決勝と内閣(全日本大学選手権)の戦いが僕の中では印象深いです。
藤田 1番印象に残っているのは、直近だからというのもあるのですが、内閣(全日本大学選手権)の準決勝で負けた試合が印象です。内閣(全日本大学選手権)のちょっと前に国体があって、僕のお兄ちゃんが出ていたのですが、決勝で同じ選手に負けていて。「ちょっとやばいな」と思っていました。内閣(全日本大学選手権)の1、2週間前から体調を崩していて体力がなかったので、「もう一発で決めるしかない」と思っていたのですが、試合が始まったら、ちょっと予想以上に強くて、「あ、これ勝てる気しないな」っていう。「どうしたら勝てるんだろう」っていう切ない気持ちになりました。
一同 (笑)。
深田 見ててわかった(笑)。
藤田 最初足で取った瞬間に、相手にカウンターで取られちゃって、そこでもう心が折れちゃったので。気持ちの面もあるだろうけど、全日本でもう1回やるので、リベンジできたらいいなと思います。
――ご自身の強みや得意技を教えてください
山倉 強みであり弱みであるのですが、相手に合わせることができると思います。基本、どんな相手でも動きを合わせられるというのが強みであって、得意技はくぐりですかね。これはU23でもかかった技でもあるので、最終奥義じゃないですけど(笑)。
一同 (笑)。
山倉 いざとなったら使うしかないという技ですね。
――どのような動きですか
山倉 タックルじゃないのですが…くぐるんですよね。相手の脇のところを頭突っ込んで、くぐる。
藤田 あれすごいよね。
山倉 わかっていても、タイミングでずらしてかかるんです。でもめっちゃ警戒されてます。やりすぎて(笑)。
藤田 強みは、もつれですね。大学から結構強化し続けたので、だいぶ自信はあるし、タックル入られたり、逆に自分がタックル入っても、絶対勝てるという自信はあります。ただ、それが慢心になってしまって。反応する速度とか、いい位置を取るのが、高校生のころに比べて雑になってきているので、もつれに自信を持ちすぎて慢心せずに、取れるところがあるならしっかり取り切ることも大事だなと思います。得意技は、テークダウンしてからのアンクルがすごく得意です。倒してから、ぐるぐる連続で回す技が、自分の1番の得意技かなと思います。
深田 俺のいいところでもあり、悪いところでもあるのですが、めちゃめちゃ頭を使ってやるんですよ。頭を使って、相手が思い通りに動いてくれたときとかは楽に勝てるのですが、逆に考えちゃって体が思うように動かないとか、相手が先に攻め込んできちゃうともろいというか。自分のリズムでできなくなっちゃうので、そこは直さなきゃいけないところなのかなと思います。得意技は、カウンターですね。相手がタックル入ってきたのに合わせて、自分が技を決めるみたいな。それが決まったときは気持ちいいですね。
――ライバル視している選手はいますか
藤田 大学の1個上の先輩とか、今まで試合してきた中でも何人もライバル視している選手はいるのですが、その中でも1番勝ちたいって思うのは、自分のお兄ちゃんである藤田雄大(自衛隊)選手です。お兄ちゃんはいつも1個下の階級で出ているので、試合をするとしたら国体なのですが、やるとしたら勝ちたいなって。すごくライバル視はしています。
山倉 インカレの決勝でも戦った、日体大の山田脩選手ですね。内閣(全日本大学選手権)の準決勝でも負けちゃって。スタイルも違うのでライバル視したくはないのですが、負けちゃってるのでせざるを得ないですよね。あと名前を出したいのは、早稲田のOBの山﨑弥十朗(令2スポ卒=現サイサン)さんを倒したいですね。全日本で当たるとしたら決勝だと思うのですが、弥十朗さんに勝つことによって自分の中で一つ自信になるというか、次のステージに進める気がするので、全日本、全力で戦いたいです。
深田 周りに強い人が多すぎてですね…ライバルか…まあ自分自身ということにしておきます。以上です。
一同 おー(笑)。
――同じチームの山路健心(社1=和歌山北)選手はひそかに山倉選手に勝つことを狙っていると言っていましたが
山倉 まあまあ、まだ1年生なんでね(笑)。
一同 (笑)。
深田 負けられたら困るね(笑)。
山倉 負けられないですね。やれるもんならやってみろっていう。勝負の世界なので、後輩に負けるつもりはないぞという感じです。
――61キロ級も早大から3人出場しますよね
藤田 太一(山口太一、スポ2=東京・自由ヶ丘学園)もいるし、侃(島谷侃、スポ4=秋田商)さんもいるので。正直、太一は後輩なので負けたくないなと。侃さんに対しては、胸を借りるつもりで戦えればと思います。
自分がチームの後押しをするような存在になれたら(深田)
新たに主将を務める深田
――早大のレスリング部はどのようなチームですか
深田 自主性がありますよね。言われなくてもできるし、みんな意識高いし、みんな強いから言わなくてもわかっちゃうみたいな。この選手は何を考えて練習してるなとか意思疎通できるところがいいところだし、集中力がすごく高いと思います。大学の強いとこで言ったら1番練習時間が短いくらいだと思うのですが、でもこうやって安定した成績を残せているのが、早稲田の強みかなと思います。そこは伝統として守っていきたいです。
――来年は皆さん4年生になりますが、最上級生としての目標や決意はありますか
山倉 そこはもう主将(深田)が…。
深田 もういいって(笑)。
山倉 僕は副主将という立場で、主将を支えていけたらなと。当たり前のことですが、当たり前のことを副主将としてできるように支えていきたいなと思います。
藤田 僕はチームを引っ張っていく力はないので、そこはもう主将と副主将に任せて、逆に自分は縁の下の力持ちになってサポートできるような存在になりたいなと考えています。
深田 僕としては、上下関係が厳しいのは反対派で、そういうのはゆるくいきたいという。その上で、言いやすい環境、誰でも意見が出せるような環境を整えるのが上級生の役割だと思うので、その辺はしっかりしていきたいなと思います。あとは、自分がチームを引っ張るというよりは、自分がチームの後押しをするような存在になれたらいいなという感じです。
山倉 素晴らしいですね。
深田 カットしないでください(笑)。
藤田 スタンディングオベーションだ。
一同 拍手
――深田選手、山倉選手は千葉・日体大柏高出身ということで、日体大に進学という選択肢もあったと思います。その中で早大への進学を決めた理由は何ですか
山倉 僕は、日体大には大前提として行きたくなかったんですよ。理由としては、高校と大学で何が違うんだろうと思っちゃって。日体大を省いて考えた結果、1番学歴が良かったのが早稲田で、早稲田を選んだ感じです。あとは練習に来たときに、チームの雰囲気が良かったという二つの理由ですね。
深田 まあ自然の成り行きですね。僕は、勉強もある程度やってきたという自負があって。
山倉 僕は?(笑)
深田 僕はね(笑)。私立の大学の中でも、いいところに行けたらいいなというのは漠然としたビジョンとしてあったのですが、その流れで自然に早稲田という感じになりましたね。
――藤田選手はどうですか
藤田 僕の母校の出身の人は、日大に行くようなルートがあるのですが、自分自身、レスリングを続けようか迷っていた時期があって。迷っていたときに、監督から「推薦来ているけどどうだ」と言われたときに、1番学歴がいいところが早稲田だったので(笑)。練習に行ったときに、OBの龍馬さん(安楽龍馬、令4スポ卒=現nobitel)にめっちゃ技術とかを教えてもらって。すごく優しくて練習環境も良かったので、ここが1番自分に合っているなと思って早稲田を選びました。
全日本選手権へ向けて
独特のルーティンを持つ藤田
――深田選手にとっては、今回はパリ五輪の選考の第一段階でもあると思うのですが、意識していますか
深田 全く意識していないです。1個1個目の前の試合に集中するタイプなので、先のことはあまり考えないですね。
――全日本選手権の目標を教えてください
藤田 まずは、さっき言っていた内閣(全日本大学選手権)のリベンジを果たしたいなと考えています。その先に、入賞、もしくは優勝も視野に入れて頑張っていきます。
山倉 目標は優勝なのですが、「絶対に優勝するぞ」ではなくて、全力で戦ってその先に優勝があったらいいなという感じです。目標は、負けるつもりはないので、優勝です。
深田 先に言えば良かった…(笑)。まあ、新しい主将として恥ずかしくない試合をしたいと思います。
――今重点的に取り組んでいることはありますか
深田 タックルの回数を意識的に増やす練習をしています。自分は、しっかりタックルに行けばある程度点数につながることに最近気付きました。攻める回数を増やせば得点を多く取れるんじゃないかなと思っているので、その辺を意識して練習しています。
山倉 僕が意識していることは、絶対にケガをしないことです。
深田 大事だよね。
藤田 1番大事かもしれない。
山倉 ケガしちゃうと、体だけじゃなくてメンタルもやられるので、ケガを絶対にしないこと。技術面でいくと、ポイントを取るレスリングよりも取られないレスリングを意識しています。自分のバランスで、自分の不利なところを徹底的に排除するレスリングを心がけています。
藤田 メンタル面でいくと、自分は点数を取られたらもう駄目だと落ち込んじゃうことが結構あって。内閣(全日本大学選手権)のときもそんな感じで展開をずっと握られていたので、そういったところをなくすように、取られても次取り返すという気持ちでやっています。練習面では、強みであったもつれというのが慢心になって、取れるところで取らないことにつながっていたので、もつれる前の展開を意識して、もつれずに自分の点数につなげるということを意識しています。
――試合前のルーティンはありますか
藤田 小学校のときから、お兄ちゃんがやっていたということもあるのですが、レッドブルとポカリを混ぜるんですよ。それを飲むと、試合だという気持ちになります。あとは、高校のときに監督によく「四股を踏め」って言われていたんですよ。試合に行く前に毎回四股を踏んでいたので、それが習慣化しています。試合前は毎回、マットに上がったときは四股を踏んでいます。
――最後に全日本選手権に向けて、決意表明をお願いします
山倉 出場するからには、負けるつもりはないので、優勝目指して全力で頑張ります!
藤田 リベンジをしっかり果たして、まずは表彰台に立つということですね!
深田 誰よりも面白い試合をするので、見ていてください!
――質問は以上です。ありがとうございました!
(取材・編集 澤崎円佳、齋藤汰朗)
色紙に決意を書いていただきました
◆藤田颯(ふじた・はやと)(※写真右)
2001(平13)年11月14日生まれ。男子フリースタイル61キロ級。埼玉・花咲徳栄高出身。スポーツ科学部3年。主将、副将ではなくとも、「縁の下の力持ちになってサポートできるような存在」を目指したいと語った藤田選手。色紙には「学歴も試合も勝つ!!」と書くなど、『早稲田』に誇りを持ち、目標である全日本大学選手権のリベンジ、その先の入賞、優勝を目指します!
◆深田雄智(ふかだ・ゆうと)(※写真中央)
2001(平13)年6月23日生まれ。男子フリースタイル74キロ級。千葉・日体大柏高出身。スポーツ科学部3年。来年度の主将に就任した深田選手。目指す主将像を話すと、その場にいた全員から「おー」という声が上がりました。頼れる主将が見せる「誰よりも面白い試合」に期待です!
◆山倉孝介(やまくら・こうすけ)
2001(平13)年9月24日生まれ。男子フリースタイル79キロ級。千葉・日体大柏高出身。スポーツ科学部3年。来年度の副将に就任した山倉選手。今年は全日本学生選手権(インカレ)で優勝を果たすなど飛躍の1年に。全日本選手権でも満足のいく結果を残し、1年を気持ち良く締めくくります!