ついにレスリングの学生大会が再開した。今年初の公式戦、そして団体戦となった全日本大学グレコローマン選手権(全グレ)。5階級の試合が行われた大会初日、早大からは60キロ級に谷口虎徹(スポ1=和歌山・和歌山北)、72キロ級に野本洲汰(スポ4=群馬・館林)、77キロ級に山倉孝介(スポ1=千葉・日体大柏)、97キロ級に山崎祥平(商2=茨城・土浦日大)の4人が出場した。今大会が早大デビュー戦となった谷口と山倉、昨年度フリースタイルで東日本学生秋季新人戦を制した山崎は初戦を突破。さらに山倉と山崎が勝ち進み、3位入賞を果たした。一方、ラストイヤーの野本は初戦敗退と悔しい結果に終わった。
この日最初に登場したのは1年の谷口。「良い出だしだった」と振り返る初戦は、バックポイントで2点を先制すると、積極的な動きでパッシブを獲得。相手に反撃の隙を与えず、5点の投げ技を決め、第1ピリオド(P)残り10秒の時点でテクニカルフォール勝ちを収めた。勢いに乗った準々決勝の相手は昨年度3位の神田優人(中京学院大)。谷口は2点技を連続で決め4-0と差をつけたものの、直後に相手に4点の投げ技を決められ4-4に並ばれた。後半は両者得点を許さない拮抗(きっこう)した展開が続き、ビッグポイントの差で惜しくも敗れた。今年度グレコローマン主将を務める野本の一回戦の相手は、高校時代から度々対戦している北條良真(神奈川大)。第1P序盤にパッシブで1点を失うと、続けてローリングを決められ0-7まで追い詰められた。得意とする投げ技を相手に警戒され攻撃のきっかけを作れず、第2Pでさらに場外ポイントを追加され、テクニカルフォール負けを喫した。7年間続けたレスリングの集大成としていただけに、「何ひとつ上手くいかなかった」と悔しさを滲ませた。
7年間の集大成として臨んだ野本
高校時代より階級を上げて臨んだ山倉は、フリースタイルを専門とする選手だ。新しい階級、グレコローマンスタイル、そして大学へ、3つの挑戦として臨んだ今大会。初戦をテクニカルフォール勝ちの圧勝でスタートすると、続く準々決勝は後半での逆転勝ちに成功した。準決勝では72キロ級でJOC杯を制した菅原魁一(日本文理大)にポイントを重ねられ1-6で敗北。3位決定戦では、3-0とリードして迎えた第2P、「思うように持っていくことができた」と振り返るように、相手にバックポイントを取られた状態から5点の投げ技を決めた。この大技で突き放し、9-3で勝利を収めた。
97キロ級で出場した山崎の初戦、序盤から場外押し出しやパッシブで点を重ね、5-0で快勝。続く準々決勝、ここで今大会優勝候補の仲里優力(日体大)と当たった。格上の相手に不安を感じたという山崎。試合開始早々に先制点を与えたが、その後だった。組んだ時に「いける」と確信した首投げがきれいに決まると、そのまま相手を組み伏せ、鮮やかなフォール勝ちで2勝目を挙げた。迎えた準決勝では相手の守りに対して、2-7と攻めきれず。しかし、その後の3位決定戦では3点をリードした時点でパッシブを獲得すると、ローリングで確実に点を追加。これで8-0とし、試合開始から2分15秒でテクニカルフォール勝ちを収め、山倉とともに3位入賞を決めた。
ポイントを奪う山﨑、3位入賞を果たした
選手たちにとって久しぶりの実戦となった今大会。対人練習が思うようにできなかった期間も、走り込みや筋力トレーニングに取り組み準備してきた。山崎は「体力の自信があったので、全然緊張感はなかった」と振り返る。チーム早稲田は現時点で団体5位。順位を上げることはできるか、2日目に出場する3人の活躍に期待がかかる。
(記事 鬼頭遥南、写真 長村光)
結果
▽60キロ級
谷口 準々決勝敗退
▽72キロ級
野本 一回戦敗退
▽77キロ級
山倉 3位入賞
▽97キロ級
山﨑 3位入賞
野本州汰(スポ4=群馬・館林)
――コロナウイルスの影響で早稲田のラストイヤーである1年のうちの上半期の大会がなくなってしまいました。この期間どのような思いで過ごされていましたか
最初の頃、コロナウイルスによっていろんなことが一時中断して大会の見通しが立たなくなったときは、「俺この1年間このまま何も出来ずに終わるんだ」と思いました。6月頃に再開の兆しが見えましたが、再びコロナウイルスが広がり、開催の可能性があった大会も中止になってしまって・・・。しかし、1ヶ月前に今大会が開催できるということになり、自分にとって最後に活躍できる舞台ができたんだと嬉しかったです。
――久々の実戦へ向けてモチベーションはあがりましたか
モチベーションはもちろん。今大会が7年間やってきたレスリングの集大成なので、そこへ向けてとにかくやりきりたいという思いが強かったです。
――この長い練習期間ではどのようなところを強化していきましたか
コロナウイルスの影響で実際にコンタクトできない分、筋力が落ちてしまったので、走り込みなどをして筋力を戻しかつ維持しました。そしてその後実戦形式によって体の使い方を練習し、どれだけ自分の体を自分の思い通りに動かせるかを意識して練習しました。
――対戦表を見たときにどのように感じましたか
対戦表を見たら、高校3年で試合相手にあたったときからずっとあたっている相手で。これは運命なのかなと(笑)。自分の実力の100パーセントよりも発揮できなかったら、絶対勝てない相手なので、全力でぶつかりにいきました。
――実戦で強敵に臨んで思ったことはありましたか
自分は投げ技が得意なんですけど、投げ技のときに重要な引手が相手に常に警戒されていて、全然とらせてもらえなかったです。自分の得意な状態はすでに相手にバレてしまっているので、何ひとつ上手くはいかなかったです。でも、狙えるチャンスはしっかりとりにいくということはとても意識していました。
――実戦の感覚はすぐに取り戻せましたか
久しぶりの試合でもっと動かないかなと思っていましたが、そんなこともなく。今大会の開催が決まってから、実際の試合を想定して練習を積み重ねてきたので、実戦の感覚は以前とそこまで変化はなかったです。
――今大会初戦敗退という悔しい結果に終わりました。悔いている部分はどの点になりますか
相手が返してきたときにフォールの体勢から上に乗れたんです。そこでしっかり決めることができていれば自分は勝てました。けど、そこでどうしてもとりきれなかった。後ろでクラッチを決めた瞬間もあったんですけど、そこも決めきれず。それがとても悔しかったです。
――最後に早稲田の4年間についておうかがいします。早稲田での4年間でどのような経験を自分が積むことができたと思いますか
高校のときは道場に自分より強い相手がいなかったんです。でも、全国屈指の強者が集まる早稲田に入ってそのレベルのあまりの高さに驚きました。体力がバテバテになって、練習が終わったらすぐに寝ていました。2年生になって入ってくる後輩もすごく強い奴らばかりで。そういう人たちと切磋琢磨しあうことができたのは、ものすごく自分にとっての財産となりました。いい先輩や後輩にとても恵まれたなというのが素直な感想です。さらに、ただ部活をやるだけでなく、生活面においても成長できました。「こういう大学生活にしていきたい」という考えで動くとどんどん形になっていったなと実感できました。この4年間いろいろな経験ができたし、充実していました。
――最後になりますが、早稲田のこれからを担う後輩たちに何か残すメッセージがありましたらお願い致します
まず言いたいのは、全力で取り組んでほしいです。全力でやっていくなかで多くのことが見えてきて、いろいろな自分の感情や見方に気づけます。それは自分を表すうえでとても大事なことになってくると思います。あと、部活だからできないという考えはやめてほしいです。自分の社会性や人間性を高めるための活動に、部活をネックにしないでほしいです。部活は一番大切ですが、大学の4年間にできたはずのことが部活のせいでできなかったと言うことは違うと自分は考えています。部活をやりながらも多くのことができるし、この時間の使い方を学んでほしいです。
山崎祥平(商2=茨城・土浦日大)
――久しぶりの公式戦でしたがどのような気持ちで臨まれましたか
最初緊張するかなと思っていたのですが、最近心肺機能を上げるための体力トレーニングをしていて、以前は試合に出ると疲れるから嫌だなという緊張感があったのですが、今回は疲れないという体力の自信があったので、全然緊張感はなかったです。
――体力トレーニングは自粛期間中に取り組まれていたのですか
そうですね。対人で出来なかったので、走り込みとかを強化してやっていました。
――今日の試合を振り返って、良かった点は
準々決勝で仲里さんと当たって、実力も天と地の差があるほど大きい相手だったので、勝てるかなあと思っていました。でも組んだ時に、首投げいけると思ってやったら案の定かかったので、それが一番嬉しいというか気持ちいいという感じで、よかったです。
――逆に反省点はありますか
準決勝のときに相手がガチガチに守ってくる相手で。それに焦りながら、力みすぎて攻めきれない部分があったので、冷静に相手の守りを崩していく練習が必要だと思いました。
――今大会で得た手応えは
最初に言った体力の面で、だいぶ(調子が)上がっているなというところがあったので、次はフリースタイルの試合に出ると思うのですが、その時もこの調子を持続できるようにして行けたらなと思います。
――最後にこれからの試合に向けて意気込みをお願いいたします
次の大きな試合が内閣総理大臣杯で、去年は本来より上の階級で戦って3位だったのですが、今回はどっちに出ても戦えるような体力と力をつけて優勝を目指して頑張りたいと思います。
谷口虎徹(スポ1=和歌山・和歌山北)
――早稲田のデビュー戦となりました。どのような気持ちで臨みましたか
コロナ禍で練習も思うようにできず心配な面もありましたが、1年生という立場なので思い切りやっていこうという気持ちで試合に臨みました。
――大会自粛期間はどのような練習をしてきましたか
自分の得意なポジションの強化と苦手なポジションの克服を目指して練習に取り組みました。
――得意なポジションとは
引手を取って巻き投げという技があるのですが、それは高校時代から練習してきて得意です。
――初戦を振り返って
試合前は緊張して動けるかどうか不安だったのですが、思ったより動けて、良い出だしだったのではないかなと自分では思っています。
――準々決勝を振り返って
相手は名の通っている方で、今思い返すと気持ちの面では負けていたのかもしれないです。いざ(試合を)やってみるとそこまで自分と力の差は感じられなくて。負けたことがすごく悔しいです。
――今大会の収穫は
大学のレベルを知ることができたのが一番大きいです。
――最後に今後の意気込みをお願いいたします
この大会で大学のレベルを知って、それを踏まえて今後の練習につなげていけたらと思います。
山倉孝介(スポ1=千葉・日体大柏)
――今年早稲田に入学し、上半期は大会ができず練習期間となってしまいました。その期間中早稲田で強化した部分はどこでしょうか
僕の場合、高校のとき戦っていた65キロ級から階級を上げたんですけど、まず筋力を増やしました。77キロ級で戦える身体をつくることが大切だと思いました。自粛中も筋力トレーニングに励みました。
――今大会へ向けてどのようなことを考えていましたか
フリースタイルは少しずつ力がついているなと実感できましたが、グレコローマンは専門外で、練習でも下の階級の選手にたくさん投げられていました。だから、今大会はあまり自信がなくて、コーチ陣もまあ頑張れといった感じでした。
――早稲田のデビュー戦となりました。どのような意気込みで臨みましたか
新しい階級への挑戦とグレコへの挑戦、そして大学での挑戦という3つの挑戦へ向けて、今までとは違った気持ちで気合が入りました。
――初陣となった1回戦はテクニカルフォールの圧勝、2回戦も順調に勝利しました。自分の中でうまくいったと感じましたか
自分の持っていきたい流れにしっかり運べました。2回戦も焦らず後半にしっかりとりにいけました。
――3位決定戦は拮抗した試合展開でしたが、攻撃に転じることができたと感じられたのはどの部分ですか
パッシブでバックに回られたときに、返せるだろうなと思い、そこでしっかり返せたのが良かったです。自分の思うように持っていくことができました。
――今大会の3位入賞はどのように受け止められていますか
素直に嬉しいです。本当に勝てないと思っていたので。
――最後にこれからの試合に向けて意気込みをお願いいたします
この試合での経験を糧に、決しておごらず、これを自信にして次につなげていきたいなと思います。