ついに迎えた決勝リーグ。このリーグは予選のA〜Dの各グループ1位で総当たりし順位を決めるリーグである。相手は山梨学院大、拓大、日体大と強豪ぞろい。8年ぶりの優勝を目指し臨んだが、早くも暗雲が立ち込める。初戦の山梨学院大で2−5で敗北。昨年王者の壁は厚かった。2戦目は拓大戦。負ければ優勝はなくなる状況だが、3−4と惜しくも敗退。0勝2敗で最終日日体大戦を迎えることとなった。
ライバルの榊大夢(山梨学院大)に惜敗した安楽
初戦は昨年王者山梨学院大戦。先鋒を任されたのは4年生岩澤侃(スポ4=秋田商)。パッシブポイントをそれぞれ獲得し、1−1の状況で迎えた残り34秒。このままいけば判定勝ちになる場面で2個目の警告を与えられてしまう。少ない時間でなんとか点をもぎ取ろうとするも叶わず、1点を献上。1−2で早稲田に流れを作ることはできなかった。続く吉村拓海(スポ4=埼玉栄)は場外に投げられ、バックポイントも取られてしまい、攻めあぐね続け敗北。流れを変えて欲しい場面で登場したのは予選全勝の安楽龍馬(スポ2=山梨・韮崎工)。パッシブポイントを互いに献上し1−1で迎えた残り40秒。安楽が相手を場外に投げ1点勝ち越す。これは勝てると誰もが思った。しかし、素早い攻めでかかる相手に最後の最後バックポイントを取られてしまい2−3で決着。残り2秒の出来事だった。安楽はマットに拳を叩きつけ悔しさをあらわにした。これからは1戦も落とすことは許されない。そんな場面で託されたのは1年生鈴木歩夢(スポ1=埼玉栄)。しかし、相手の棄権により貴重な1勝を獲得する。続くは予選無失点の米澤凌(スポ2=秋田商)。米澤は開始約1分後バックポイントを獲得し、その後場外に投げ3−0で第1ピリオドを終える。迎えた第2ピリオドでも米澤の勢いは衰えない。さらに2点獲得し、5−0とまたも無失点で勝利した。全体勝ち数2−3と背中が見えてきた中で主将の山﨑弥十朗(スポ4=埼玉栄)が登場。第1ピリオドは劣勢を強いられ、相手の攻めに守り続ける展開。パッシブで献上し1−0で折り返す。第2ピリオドでは早々1点取られ2点差をつけられる。しかし、その後場外へ相手を投げ1点差に追いつく。タイムリミットが迫る中、山﨑はなんとか得点しようと食らいつく。残り5秒バックポイントを取ろうと相手の足元にタックル。投げが決まったかと思われたが、相手が上手くひっくり返し4点の大技を決められてしまった。負けが確定した早稲田。最後に登場した松本直毅(スポ4=神奈川・横浜清陵総合)も1分でテクニカルフォール負けを喫し、2−5で敗北した。残り数秒でまくられる展開が山梨学院大戦では多かった。惜敗が多い分悔しさも大きかった。
主将の山﨑が敗れた瞬間、早大の優勝は消滅した
2戦目は拓大戦。どちらも1敗の状態で試合を迎えた。ここで負ければ優勝の道は完全に絶たれることになる。拓大戦のオーダーは、125キロ級で松本から山崎祥平(商1=茨城・土浦日大)に変更。トップバッターは、初戦ではテクニカルポイントを取れなかった岩澤。しかし今試合は第1ピリオドからバックポイントとローリングで4点を獲得。第2ピリオドでは最後2点を取られるも追加点を挙げ、6−2で白星スタートを決めた。この勢いに続きたかったが、61キロ級の吉村は6分間通して自分のかたちに持っていけず、0−3で敗北。続く安楽は2点先制され、第2ピリオドで追いつくも残り27秒で場外に出され2−3で再び惜敗。70キロ級の鈴木は終始攻めることができず、相手に押され続け為すすべもなく0−8で終わる。白星でスタートしたものの、3連続で黒星となり窮地に追い込まれた早稲田チーム。ここで登場したのは今まで全試合勝利してきた米澤。開始2分でパッシブポイントを与えると、第1ピリオド終了間際にバックポイントをとる。第2ピリオドではさらに1点を追加し、3−1でまたも貴重な白星を早稲田にもたらした。86キロ級に登場したのは主将山﨑。次に繋ぎたかったが、2度のパッシブを献上すると、得点を次々と重ねられ点差が開いていく。なんとか追いつこうと相手の足元に沈んで体勢を崩しにかかるも、その隙を突かれさらに失点。0−9と大敗してしまった。すでに敗退が決まった早稲田。最後に登場したのは1年山崎。開始から果敢に攻め、15秒でバックポイントを獲得する。その直後相手に持ち上げられ危険体勢となり、山崎は倒れてしまう。「棄権しようかと思う場面もあったが、棄権したら明日にもう1試合あるのに暗い雰囲気で終わっちゃうなと思った」と話す山崎。第2ピリオドでは相手の猛攻により2点差をつけられるも相手の2度の反則で再び点差を広げ、残り1分でだめ押しのバックポイント。7−5で最後を白星で飾った。結果3−4と惜敗。1勝して明日を迎えたかったが、それは叶わなかった。
チームで唯一全勝し白星をもたらし続けた米澤
早稲田は3年ぶりの決勝リーグ進出を果たしたが、強豪たちとの戦いで勝ち進むことはできなかった。しかし、完敗ではなく、内容をみれば接戦の試合はいくつかあった。特に山梨学院大戦では終了ギリギリで失点する惜しい場面が多かった。「全体的に練習でやってきたことを出せてなかったのが一番の敗因」と佐藤ヘッドコーチは話す。ついに残り1試合。4年生は最後のリーグ戦。練習で身につけたものを発揮できるかどうか、ここに勝負はかかっている。すでに優勝の道は絶たれたが、最後の試合日体戦では悔いのない有終の美を飾りたい。
(記事 北﨑麗、写真 涌井統矢)
結果
▽決勝リーグ
1回戦 ●早大 2−5 山梨学院大
●57キロ級 岩澤 1−2 服部
●61キロ級 吉村 1−4 榊(流)
●65キロ級 安楽 2−3 榊(大)
◯70キロ級 鈴木 棄権 乙黒
◯74キロ級 米澤 5−0 横山
●86キロ級 山﨑 1−6 山田
●125キロ級 松本 0−10 アルメンタイ
2回戦 ●早大 3−4 拓大
◯57キロ級 岩澤 6−2 諏訪間
●61キロ級 吉村 0−3 早山
●65キロ級 安楽 2−3 谷山
●70キロ級 鈴木 0−8 志賀
◯74キロ級 米澤 3−1 山田
●86キロ級 山﨑 0−9 吉田
◯125キロ級 山崎 7−5 山本
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コメント
佐藤吏ヘッドコーチ(平17スポ卒=秋田商)
――まず山梨学院大戦をふりかえって一言
勝つ予定だったんですけど、とるつもりのところを落としてしまってうちの流れにできなかったことが最大の敗因ですね。
――山梨学院大戦はタイムリミットギリギリで失点する場面が多かったように思います
うちの勝ちパターンというのはやはり得点差を広げるということで、そこを練習してきました。いわゆる僅差でそういうことが起こりえるわけなので、そこまでに得点差を広げることができなかったので最後に負けてしまったというのがあります。やっぱりそこは流れを掴めなかった、勝てるところを落としてる、それが敗因ですね。
――拓大戦をふりかえって
拓大戦も同じですね。まずは全体的に練習でやってきたことが出せてなかったのが一番の敗因なんですけども。あとは攻撃力ですね。タックルに入るシーンってのが非常に少なかったので、いわゆる勝ちきる力を、最後こじあける力をアタックにつなげられないというのがうちの悪いところというか、課題かなと思います。あとは技術的な面で、組み手をやって離れたところを追うという練習をしてたんですけど、それが全然出せてなかったですね。
――米澤凌選手は予選から全5試合、確実に勝ちをあげています。そのことに関しては
凌に関しては、練習でやってきたことをきちんと出せていた。あとはやっぱり勝ちにこだわってましたね。集中してました。なのでしっかり相手に反応できていた。凌が現時点では今大会で一番伸びてるんじゃないかなと思います。
――最後に明日の日体大戦に向けて
そうですね、相手がどうのこうのというよりも、強いのは分かってるのであとはうちのとる場所をしっかり。4つとれば勝ちですけど誰が4つとるのかというのは本人たちもよく分かってると思うんですよね。だからそこをしっかりとりきる。もちろん早稲田の砦と日体大の砦はやっぱり重なってるので、そこで勝ちきる。そして勝ちきるためには練習でやってきたことをしっかり出す。それに尽きると思いますね。
米澤凌(スポ2=秋田商)
――山梨学院大戦、無失点での勝利を振り返っていかがでしたか
練習でやってる組手ができて、それが攻めにも守りにもなったのが無失点につながったかなと思います。
――団体戦というところで、いつもと違う意気込みなどはありますか
やっぱり個人ではなく団体戦ということで、OBの方も来てくださって応援してくださるので、その方々を含めチーム全員のために頑張ろうと個人戦より強い意志を持って戦えています。
――その中での個人としては5連勝でチームに貢献していますが、その点はいかがですか
まぁ、明日もあるので、まだ安心はしていないですね。
――ご自身の状態としてはいかがですか
調子としては良いと思います。自分のペースがつかめているのかなと思います。
――拓大戦では先制を許し苦戦しましたが、振り返っていかがですか
相手が結構守ってきていたので、不安要素はそこまでなかったんですけど。(取れるところで)確実に取らないと相手も守りが強かったので危ない試合になるかなと思いましたね。
――チームの雰囲気としてはいかがですか
目的に対して皆が同じ方向を向いて戦っていたので、チーム全体の勢いが良かったかなと思います。
――相手校2校の印象はいかがでしたが
2校とも強いので、勝負所で落としてしまったのは痛かったですね。タラレバではあるんですけど、そこを取っていれば勝てていたかなと思うので。せり試合だっただけにもったいなかったなと思いますね。
――あすの日体大戦へ向けた意気込みをお願い致します
きょう2敗してしまったんですけど、最後は絶対勝って終わりたいと思います。
山崎祥平(商1=茨城・土浦日大)
――初のリーグ戦ですが、雰囲気などはいかがですか
始めて見たときに皆さん色々な大学があって、それぞれがすごい盛り上がっていたので楽しそうだなと思いました。
――拓大戦では直前でチームの敗北が決まった後の試合でしたが、どのような意気込みで臨まれましたか
生意気かもしれないんですけど。きょうは負けちゃったということでしたが、あしたもう1試合あるのでみんなの士気が落ちないようにしっかりやろうと思っていました。自分がちょっと痛んだ場面もあって、棄権しようかと思う場面もあったんですけど、明日ももう1試合あるなと思って。ここで棄権したら暗い雰囲気のまま終わっちゃうなと思ったので、なんとか勝とうと思って頑張りました。負けてたけど自分が1勝して、あしたにちょっとでも良い雰囲気でつなげようと思って臨みました。
――『攻めのレスリングを』というお話でしたが、きょうの試合はいかがでしたか
けがした時に気持ちがちょっと切れていて、さばこうさばこうとしてしまって逃げていた部分もあったんですけど。後半はガンガン攻めて、点数を重ねていって自分の気持ちも上がっていったので、攻めのレスリングはできたなと思います
――ご自身より体重が上の選手との対戦でしたが、何か対策などは立てられていましたかか
色々と考えてたんですけど結局何もできなくて。自分が攻めて攻めてという感じでした。1つ考えていたこととしては、自分より重い相手に真っ直ぐいっても潰されちゃうというのがあるので、横から崩していこうというかたちで3回くらい成功したので、それは良かったかなと思います。
――反則なども多く、途切れ途切れの試合展開でしたがその点はいかがでしたか
集中が途切れたりはなかったですね。相手の反則で途切れ途切れになっている展開だったので、それに関しては、「勝ってるぞ」という感じで嬉しい感じだったので。それはモチベーションになりましたね。
――体力面に関してはいかがでしたか
体力的にはそんなにバテたというかたちではなかったです。体力に関しては負けてしまったJOC(ジュニアオリンピックカップ)の時よりかは戻ってきたかなという感じです。