軽量級選手が躍動見せるも、優勝には一歩届かず

レクリング

 5年ぶりの総合優勝へ。チームの後期最大の目標としてきた団体戦・内閣総理大臣杯全日本大学選手権(内閣杯)がこの日開幕を迎えた。5階級が実施された初日、86キロ級の山﨑弥十朗(スポ3=埼玉栄)、97キロ級でエントリーの梅林太朗(スポ2=東京・帝京)、125キロ級の松本直毅(スポ3=神奈川・横浜涼陵総合)は思うように順位を伸ばせなかったが、一方で軽量級選手が躍動。優勝には一歩届かなかったものの、57キロ級の岩澤侃(スポ3=秋田商)が2位、61キロ級の吉村拓海(スポ3=埼玉栄)が3位入賞を果たした。早大は初日の5階級を終えて総合6位。チームとしては総合優勝へ向けて暗雲が立ち込める、厳しい状況となった。

本来の階級を大きく上回る97キロ級で健闘した梅林

 この日早大の初陣を切ったのはエース格の山﨑。予備選をフォール、1回戦をテクニカルフォールと順調に勝ち進み準決勝まで駒を進める。準決勝の相手は学生王者の山田修太郎(山梨学院大)。山﨑は思うようにテクニカルポイントを奪えず、2−1とリードして迎えた試合終盤に場外押し出しにより失点を喫し、ラストポイントによる判定負けで敗者復活戦へと回った。しかし、準決勝で首を痛めた山﨑は大事を取り敗者復活戦を棄権。5位入賞という結果で今大会を終えた。チーム事情により本来の階級を大きく上回る97キロ級でエントリーした梅林。全日本学生選手権(インカレ)優勝の山下拓也(拓大)との対戦となった予備戦、梅林は持ち前のパワーとスピードで相手を翻弄(ほんろう)。テクニカルフォールの完勝を収めた。続く1回戦は1−12で敗れる結果となったが、天皇杯全日本選手権(天皇杯)王者の石黒峻士(日大)を相手に第2ピリオド(P)中盤までリードするなど、下馬評を覆す健闘を見せた。最重量・125キロ級の松本は1回戦、積極的にタックルを仕掛け相手を圧倒し、テクニカルフォールで勝ち進んだ。しかし、2回戦ではスタンドでの崩しに苦戦。互いにパッシブによるポイントを取り合う展開となったが、1−2で惜敗し8位入賞にとどまった。

吉村は完勝でインカレの雪辱を果たした

 この日は早大の軽量級戦士が躍動した。61キロ級の吉村はインカレ決勝で苦杯をなめた田縁真大(日大)と初戦で再激突。第1Pに片足タックルからローリングと自身が得意とするかたちでリードして前半を折り返す。第2Pには相手のタックルをうまく切りながら、迎えた試合終了間際に両足タックルからのテークダウンを奪うなどで突き放し9−0で完勝を収めた。インカレの雪辱を果たした吉村は準決勝では1−3と惜敗したものの、その後の敗者復活戦でテクニカルフォール勝ちを収め、3位に入賞。「今自分が持っている力っていうのは出し切れた」と年末に控える天皇杯へ向け、手応えを感じる今大会となった。57キロ級の岩澤は予備戦、1回戦を10−0で勝ち進み迎えた準々決勝。「1年前に負けていた相手で、リベンジする気持ちもあって。負けたくないっていう意地で(ポイントを)取りに行った」(岩澤)と1点ビハインドで迎えた試合時間残り16秒から4ポイントの投げ技を決め逆転勝利を収めると、続く準決勝も接戦を制し決勝進出を決めた。決勝でも第1Pにニアフォールに持ち込むなど6−0とリードを奪い、試合の大勢は決まったかに見えた。しかしその直後、3連続でローリングを回されるなど立て続けに失点し、第1Pのうちに逆転を許すと、その流れを断ち切れず、第2Pに突き放され万事休す。6−16のテクニカルフォール負けで優勝にはあと一歩届かなかったが、今大会の結果で天皇杯の出場資格を得た岩澤。これにより3年生全員が国内最高峰の舞台への切符をつかむこととなった。

この日早大最高位の2位となった岩澤

 岩澤、吉村の軽量級選手の躍動や、梅林の97キロ級での健闘など収穫も見られた内閣杯1日目。一方で山﨑、吉村の準決勝、松本の準々決勝など、試合終盤の攻防における紙一重の差というチームがかねてからの課題がこの日も散見された。初日を終え6位に沈む早大。5年ぶりの総合優勝へ向けた見通しは暗くなったが、あすはチームの大黒柱・米澤圭(スポ4=秋田商)が満を持して65キロ級で出場。加えて70キロ級の野本州汰(スポ2=群馬・館林)、74キロ級の米澤凌(スポ1=秋田商)の躍進にも期待がかかる。チームとしての集大成となる今季最後の団体戦・内閣杯。1つでも上の順位へ、早大の意地を見せたい。

(記事、写真 林大貴)

※フリースタイルは10点差がつくとテクニカルフォールで試合終了となる

結果

男子フリースタイル
▽57キロ級
岩澤 2位

▽61キロ級
吉村 3位

▽86キロ級
山﨑 5位

▽97キロ級
梅林 1回戦敗退

▽125キロ級
松本 8位

コメント

太田拓弥監督

――1日目、5階級が行われましたが、振り返っていかがですか

紙一重のところでの取りこぼしがあったので、ちょっともったいないところがあるんですけど。吉村がインカレで負けた相手に対して雪辱したり、岩澤も決勝で敗れましたけど、国士館大の強敵相手にも勝ったりして勝負強いところを見せてくれたのでいい点もあったんですけど。やっぱりラスト30秒のところでどう攻めるか、紙一重のところで弥十朗、松本が負けてしまって悔やまれるなというところですね。

――梅林選手を97キロ級で起用しましたが、その意図というのは

チーム的に松本を97キロ級で使うと125キロをケガで本調子じゃない小西(拳、スポ1=岩手・盛岡工)を使うことになるので、だったら松本を1階級上げて。97キロ級に誰を使うかで悩んだ部分もあって、弥十朗を97キロ級、太朗を86キロ級でといろいろ考えたんですけど、太朗だったらパワーもありますし、動きも素早いので。外国人選手だったり、強い選手も何人かいたんですけど、そこには勝てなくてもそれ以外の部分では勝てると思ったので97キロ級でエントリーさせました。負けてしまったんですけど、1回戦(予備戦)では拓大のグレコローマンのチャンピオンにしっかり勝ちましたし、そういった点については今日の収穫の一つかなと思います。

――山﨑選手は敗者復活戦で棄権なさいましたが

試合中に首を痛めていたので、直後にU23の世界選手権があるので、そこへ向けて大事を取らせました。

――山﨑選手は山梨学院大の選手にラストポイントの差で敗れましたが、勝利には何が足りなかったでしょうか

やっぱりポイントを取りきれていなかったので、組手からのタックルという部分ですね。逆に2−1になってから足を引っ掛けられて場外に出されてしまったので。もっと相手を崩してタックルというのを。テークダウンを取らないとやはり勝ち切れないので。ラスト30秒2−1でそのまま終わるっていうことはないので。守りに入ってしまった部分もあるので、そこはやっぱり最後積極的に取りに行って欲しかったですね。

――総合優勝は厳しくなりましたが、あすへ向けて

そうですね、厳しくなりましたね。早大がここから優勝するためには米澤がしっかり優勝して、悪くてもそのほかも2位以上入らないと。ただ去年4位だったので3位を目指してやっていきたいかなと思います。

岩澤侃(スポ3=秋田商)

――2位という結果について率直にどう感じていますか

目標として、入賞をして天皇杯の資格を取るっていうことが最低限だったので。自分を除く同期全員が天皇杯の資格を持っていて、自分一人今回も出られないのかなっていう思いがあったので、それは本当に悔しいので。絶対に入賞して天皇杯の資格を取ろうと思っていたので、最低限それを達成できてよかったです。

――準々決勝では残り数秒のところから逆転に成功しましたが振り返っていかがですか

1年前に負けていた相手で、リベンジする気持ちもあって。最後きついところだったんですけど、負けたくないっていう意地で取りに行って。場外の1ポイントとかではなくて、しっかりテークダウンを取るという意識で技を仕掛けられて、4点取れたっていうのは良かったと思います。

――決勝はテクニカルフォールでの敗戦となりましたが、及ばなかった部分というのは

スタミナと、スピードと、自分のペースに持っていく力っていうのと、ペース配分が劣っていたんじゃないかなと思います。

――第1Pにはニアフォールに持ち込む場面もありました

あそこで決めておけばって思うので、本当に悔しいんですけど。あそこで決め切れないっていうのは技術不足っていうのがあると思うので、そこはまた練習して1つ1つしっかり、ワンチャンスをものにできるように技を磨いていきたいと思います。

――きょうで天皇杯の出場権を得ましたが、そこへ向けてどういった部分を強化していきたいですか

当日軽量になって、徐々に体重調整もうまくできるようになってきた実感が自分の中にあるので。それにプラスアルファでレスリングの技術面をしっかり磨いて行って。決め切る力、ワンチャンスをものにする力っていうのを徹底して技術を磨いていければなと思います。

――同期全員で挑む天皇杯へ向けて一言お願いします

全員で表彰台に上れたらいいなと思います。

吉村拓海(スポ3=埼玉栄)

――3位という結果についてはどう受け止めていますか

結果自体は必要最低限はできたかなっていう思いはあります。

――初戦はインカレで敗れていた選手にリベンジを果たしました

もともと実力的に言ったら自分の方が上だと思っていたので。初戦ということで自分の中で緊張していた部分があったんですけど、それでも最初に自分の得意なタックルからグラウンドの得意技のローリングで2連続で得点を取れたのが大きかったですね。

――準決勝では僅差で敗れるかたちとなりましたが、敗因としてはなにが挙げられますか

フィジカルの差っていうのは僕の方が上だと思ったんですけど、相手は技術で攻めてくるタイプだったので。そこの組手の技術差っていうのが1つも2つも差が出てしまったかなと思います。

――今大会全体を振り返っていかがでしょうか

今自分が持っている力っていうのは出し切れたと思っています。ただその中で階級が1つ下の選手に敗れてしまったというのは悔しいですし、反省材料でもあるので、今後の練習に活かしていきたいポイントだなと思います。

――技術の面が今後の課題でしょうか

今回の出た課題としては組手なんですけど、そこはもともとあまり得意ではないので。そこを突き詰めるよりかは今回収穫だったタックルやフィジカルの面といった長所をもっと強化して突き詰めていければと思います。

――次戦は天皇杯になると思いますが、意気込みをお願いします

五輪の選考が始まる中で自分は非五輪階級なので、レベルの低い階級になるんですけど、その中でしっかり優勝して、しっかり力をつけていければいいかなと思います。1日目か2日目になると思うんですけど、しっかりと優勝して、初陣を切って、早大全体に流れを持っていきたいと思います。