この春、新たな精鋭が早大の門をたたく。昨年度の世界選手権で高校生ながら金メダルを獲得し、世界女王の座を手にした須﨑優衣(スポーツ科学部入学予定=東京・安部学院)だ。エンジの歴史に新たな1ページを刻まんとするレスリング界のニューヒロインにこれまでの競技生活や来たる大学での4年間、そして2年後に迫る東京五輪へ懸ける思いを伺った。
※この取材は3月7日に行われたものです。
「目標は東京五輪に出場して金メダルを取ること」
――早大で練習を始めたのはいつ頃からですか
3月6日が集合日だったのできのうからですね。同期が全員集合して新体制がスタートしました。
――早大で練習をしてみて手応えはありますか
自分は普段女子としか練習していなくて、男子の選手と練習をすると力が強かったり、技とかも上手なので、自分も見習うべき点がたくさんありますし、もっともっと工夫していかないと取りきったりできないので、いい刺激をもらっています。
――高校時代やJOCエリートアカデミー時代と比べて違いを感じる部分はありますか
練習環境が変わって、男子の選手もいるし、女子も強い選手がたくさんいるので、いい練習ができています。自分の目標を達成するという強い意志を持って頑張っていけば、絶対強くなれると思いました。
――早大レスリング部の第一印象は
第一印象としては、すごくみなさん優しくて、いい雰囲気の中で練習しているし、すごくみんな仲がいいという印象です。
――太田拓弥監督の印象はいかがですか
太田監督とは大学の勧誘のときとかもお会いしていて。それと姉(須﨑麻衣、平30年スポ卒=千葉・鎌ヶ谷)がレスリング部に所属していたのでそのときとかもお会いしていました。自分が早大に入る前も試合を見てアドバイスをくださったりして、レスリングの面でも尊敬できますし、いろいろ気にかけてくれているのですごく感謝しています。
――先輩たちと交流したり、お話しする機会はありましたか
先輩たちは技とかも練習中に教えてくれるし、すごくみなさん優しいです。アカデミーの先輩の梅林太朗さん(スポ2=東京・帝京)も気にかけてくださいますし、女子の先輩である小林奏音さん(スポ4=長野・佐久長聖)や臼池優月さん(社2=茨城・鹿島学園)、織部柚貴野さん(スポ2=東京・文化学園大杉並)が親切にレスリング部のことを教えてくださったり、とても優しく話しかけてくださるので、すごく嬉しいですし、本当に感謝しています。
――きのう初顔合わせだったそうですが同期のみなさんの印象はいかがでしたか
みんな本当に優しくて強いし、同期からも刺激をたくさんもらって頑張りたいと思います。
「小さい頃から負けず嫌いだった」
ご家族との縁もあり早大への進学を決めた須﨑
――レスリングを始めたきっかけはなんですか
父が早大のレスリング部出身でレスリングをやっていて、家でよくレスリングの試合のビデオとかを見たりしていて、自分もやってみたいと思って始めました。
――他の大学に進む選択肢もあったと思いますが、早大を選んだのはご家族の影響もあるのですか
自分の目標は2020年の東京五輪に出場して、金メダルを獲得することで。その目標を達成するためにどこの大学が一番いいかと考えたときに、まず関東でやっていくのがいいと自分は思いました。関東にも多くの大学があったんですが、小さいころから身近にあって憧れの早大に行きたいと思って進学を決めました。
――関東でやっていくのがいいとおっしゃいましたが、なにか理由はあるのですか
関西には至学館大という大学があって、関東にも早大であったり日大であったりとたくさんあるんですけど、関東でやったほうが一番の近道であると思ったので関東にしました。
――小学校1年生のときにレスリングを始めて、早くから頭角を現しましたが、当時を振り返ってみていかがですか
当時はまだレスリングを考えてやるのというよりも感覚でやっていて。小さいときから負けず嫌いだったので、勝つことがなにより楽しくて、レスリングの魅力で。小さいときからそれはずっと変わらないですね。
――レスリングを考えてやるようになったのはいつ頃からですか
エリートアカデミーに入ってから考えてレスリングをやるようになりました。
――エリートアカデミーではトップクラスの選手多く在籍していますが、そこから得たことや学んだことはありますか
卓球の平野美宇ちゃん(JOCエリートアカデミー)だったり、張本くん(智和、JOCエリートアカデミー)であったり、トップレベルで活躍している仲間たちもいるので、自分も負けたくないし、負けてられないと思って頑張るし、すごい刺激をもらっていました。
――本当に負けず嫌いなんですね
はい(笑)。
――昨年の世界選手権では初めて金メダルを獲得しました
世界一になるということが自分の目標であったので、世界選手権の代表に決まってからは、本当に世界選手権で金メダルを取ることだけを考えて誰よりも練習してきたし、絶対金メダルを取るという強い執念を持って練習してきたので、金メダルを取った瞬間は本当に嬉しかったし、周りの方もたくさん支えてくださったので、本当に感謝の気持ちがあふれました。
――昨年の天皇杯は準決勝で敗退してしまいましたが、やはり悔しさが残るものでしたか
はい、本当にそうですね。本当に悔しくて、今もすごく悔しいんですけど、自分が弱かったから負けてしまったわけで。これから東京五輪に出場して金メダルを取るという目標を達成するためには、今以上に頑張らなければいけないなと気が引き締まりました。
――敗戦の原因はどこにあると思いますか
試合に向けての準備不足というか、自分の中で過信もあったので、そこが全部裏目に出て情けない結果になってしまいました。本当にあの負けをただ終わらせるのでは今以上に後悔すると思うので、絶対にあの負けを生かして。あの負けから得た課題もいっぱいあったので、その課題を克服して、必ずリベンジして、日本一に返り咲きたいと思います。
――先日のクリッパン女子選手権では見事優勝を果たしましたが、振り返っていかがですか
東京五輪に出て金メダルを取るという目標に向かって再スタートを切るために、クリッパンで優勝して最高のスタートを切りたいと思っていたので。決勝戦は五輪で銀メダルを獲得した強い選手だったんですけれども、強い気持ちを持って最後まで戦ったので優勝することができました。
――国内の大会と海外の大会で違いを感じる部分はありますか
外国の選手は力が強かったり、粗いレスリングだったりするんですけど、どんな相手でも、日本人だろうが外国人だろうが、勝っていかなければならないので、しっかり練習してどんな相手にでも勝てるようにしていきたいと思います。
――階級の変更がありました
女子の48キロ級がなくなって50キロ級になったんですけど、減量とかが多かったので、自分としてはプラスに捉えていて。2キロの差ってすごく大きいんですけれど、自分にとってはすごくプラスだと思っています。
――今までのレスリング人生で最も印象に残っている試合はなんですか
そうですね。やっぱり世界選手権で優勝した時が今までの人生の中でも一番嬉しかったですね。とてもいい経験になりました。
――試合前に行なっているルーティンなどはありますか
試合前はレスリング日誌に試合に挑む気持ちや試合でやることを書いて、しっかり頭と心の整理をして、試合前に読み返して「よし!」と気合を入れて。あとは音楽を聞いたり、R1を飲んだり、レッドブルを飲んだりしています。
――どんな音楽を聞いていますか
アヴィーチーのウェイク・ミー・アップっていう曲が自分の勝ち曲です。
――自分のレスリングのスタイルや強みはどこにあると思いますか
自分のレスリングのスタイルはやっぱり攻めるレスリングで、強みはタックルだと思います。
――逆に課題であったり、伸ばしていきたい部分は
今後伸ばしていきたい部分は、崩しがまだできていなくて。それもあって天皇杯でも負けてしまったので、崩してからタックルに入ることと、タックル以外のがぶりやグラウンドとかでもポイントがしっかり取れるようにしていきたいと思います。
――現在は寮生活ですか
エリートアカデミー時代も寮生活で、大学でも自分はナショナルトレーニングセンターに住まわせていただくことになったので、寮生活になりますね。
――寮生活で大変だと感じるときはありますか
初めは全て自分でやらなければならなかったので、練習についていくのも最初は大変だったのに、洗濯とかも自分でやらなければいけなくて。本当に母への感謝の気持ちがわいてきました。
――JOCエリートアカデミー時代に比べて大学になると自由な時間も増えると思いますが、そこに対する不安や、逆にやりやすいと思う点はありますか
エリートアカデミー時代も朝練を含めて3回練習だったんですけど、自分はナショナルトレーニングセンターに住まわせていただくことになったので、基本的にはアカデミーの方で練習して、週に何回か早大に来させていただくことになって。早大の練習もすごく濃い練習ができているので、自分のしっかりした強い意志を持っていればどんな環境でも強くなれると思うので、自分を信じて頑張っていきたいと思っています。
――大学生活で楽しみにしていることはありますか
自分がレスリングで強くなるために、栄養学とか、トレーニング方法とかを学んでみたいなと思っています。
――レスリングの面以外で大学で目標にしていることはありますか
これから世界で活躍していくためにも英語は必要だと思うので、大学4年間でしっかり英語も学んで、ペラペラになれるようになりたいです。
――これまでも海外での試合は多く経験していらっしゃいますが、英語の方はいかがですか
英語はアカデミーの方でも週1回授業があったので、少しだけ話せます。
――ご自身の性格をどう分析しますか
先ほども言ったんですが、小さい頃からずっと負けず嫌いで。友達からは明るいって言われます。
――その性格はレスリングの面にどう影響していると思いますか
負けず嫌いなところは練習のときとかでも勝つまでやりますし、勝つ執念とかも誰よりも強く持っていると思うので。そういうところでは、試合で負けていても、最後には絶対自分が勝つという気持ちを持ち続けていることで、最後逆転して勝つことができる要因だと思います。明るい面はどんなにうまくいかないことがあっても、落ち込むことはあるんですけど、しっかりそこから前向きに考えられることが生きているかなと思います。
――須﨑選手はレスリング一家で育ちましたが、ご家族からレスリングのアドバイスをもらうことはありますか
父は毎日自分の試合を見て研究してくれているので、試合ごとにアドバイスをくれたりします。姉はいろいろな、レスリング以外のことも相談しているので本当に助けられています。
「誰よりもレスリングに懸ける思いを強く持って」
その目は2年後の東京五輪を見据えていた
――先ほどもお話に上がりましたが、大学3年時に東京五輪を迎えます
大学に進学しての一番の目標は東京五輪に出場して金メダルを取ることなので早大のレスリング部の方から長く(金メダリストが)出ていないので、自分が早大から絶対に東京五輪に出場して金メダルを取って、早大の方々恩返しをしたいなと思います。
――五輪で金メダルを取るということを明確に意識し始めたのはいつ頃ですか
小学校5年生のときですね。
――なにかきっかけはありましたか
小学生のときのエリート合宿で初めてナショナルトレーニングセンターに行ったときに、本当にすごい施設で吉田沙保里選手(至学館大副学長)や伊調馨選手(ALSOK)も来てくださってその時に本当に私は五輪で金メダルを取りたいと思いました。
――五輪に向けて具体的にはどのように取り組んで生きたいと考えていますか
本当に五輪の出場まであと2年で決まってしまうので、もう時間がない、あっという間に五輪は来てしまいます。なので、毎日毎日を大切にレスリングと真面目に、真剣に向き合って誰よりもレスリングに懸ける思いを強く持って絶対に東京五輪に出場して金メダルを取りたいと思います。
――目標にしている選手はいらっしゃいますか
やっぱり吉田沙保里選手は目標にしています。自分の理想であるタックルで攻めるレスリングをして勝っていますし、どんなに苦しい場面でも最後は勝つレスリングをしていたり、練習のときでも率先してチームを盛り上げているので、選手としても人間性の部分でも尊敬しています。でも、最終的には超えたいという思いがあります。
――4月に早大の選手として初の試合となるジュニアクイーンズカップが控えていますが、どのようなものにしていきたいですか
世界ジュニア選手権大会の代表の切符がある大会なので絶対に優勝して、世界ジュニア選手権大会の切符を勝ち取ることと、早大の学生として初の試合なので絶対に優勝して、最高のスタートを切りたいと思います。
――ことし、ルーキーイヤーでの目標はありますか
ことしは五輪に向けて勝負の1年になると思うので、まずはクイーンズカップで優勝して、6月の明治杯でも絶対に優勝して世界選手権の代表になって世界チャンピオンになって。出場する大会一つ一つでしっかり優勝して少しでも早大に貢献できるように頑張ります。
――大学4年間での目標は
やっぱり、東京五輪に出場して金メダルを取ることが一番の目標になります。大学生活でもしっかりと単位を取って、英語も学んで、栄養学やトレーニング方法も学んでレスリングが強くなるために、貪欲に、感謝の気持ちを持って頑張っていきたいと思います。
――最後に、須﨑選手はどのようなレスラーになっていきたいですか
攻めるレスリングで、攻めて勝つことと、気持ちも強く人間としても人に優しく、強い人間になれるように頑張ります。
――ありがとうございました!
(取材・編集 林大貴)
※記事中の学年は新年度のものです。
目標である「東京五輪で金メダル」。迷いなく書き上げてくださいました!
◆須﨑優衣(すさき・ゆい)
女子フリースタイル50キロ級。東京・安部学院高出身。スポーツ科学部入学予定。堂々とした受け答えからは、レスリングに対する誰よりも強い思いを感じました。オフの日には原宿などに出かけ、美味しいものを食べてリフレッシュしているそうです。「東京五輪で金メダル」という目標へ向けて連日激しい練習に打ち込む須﨑選手ですが、女の子らしい一面も垣間見えました!