最終回は最高学年としてことしの早大を支えてきた伊藤奨主将(スポ4=長崎・島原)と香山芳美(スポ4=東京・安部学院)。大学最後の天皇杯を前にして2人は何を思うのか。ことしのチーム、自身のプレー、そしてお互いの出会った時の話など4年間を回想しながらの思い出深い対談となった。
※この取材は11月30日に行われたものです。
責任と覚悟
7度目の天皇杯に挑む香山
――ではまず、ことし1年のご自身の残した結果やプレーの内容などを振り返っていかがですか
伊藤奨 結果は、順番で言ったらリーグ戦(東日本学生リーグ戦)があって、初日は全勝して良かったんですけど、チーム負けちゃって。2日目の国士舘戦で僕が勝てば勝てるっていうところだったんですけど、そこで負けちゃって成績としては6戦して5勝1敗かな。けどそこは全勝したかったなっていうのがまずあって。その後に東日本選手権(東日本学生選手権)、去年できた試合があって。その前、教育実習行ってて全然練習してなかったんですけど、どうにか出て内容は最悪でしたけど優勝して、なんとか天皇杯(天皇杯全日本選手権)出れるようになって。その次はインカレ(全日本学生選手権)。インカレもまたことしもベスト8で負けるっていう。毎年お馴染みみたいになってて。あと一歩で表彰台っていうところで勝ち切れなくて。けどちょっと差があったかなと思って、あの試合は。相手優勝したんですけど、日体大の長谷川さん(敏裕)。ちょっと強かったなっていうのはあって。
――ベスト8のカベを破る上で必要なことはなんだと思いますか
伊藤奨 うーん。そうですねえ。4年間それに悩まされて、なんだろうなあ、やっぱりそれなりに個性がないと。僕のレスリングって基本なんですよね、トリッキーな技をせず。
香山 教科書レスリング。
伊藤奨 そうそう。だからみんなにやりやすいって言われるような。基礎はできてるんですけど、その先、発展って言うんですかね、僕の個性みたいなのがあんまり多分なくて。相手に結局合わせちゃうんですよね、そうなると。いろんな事がそれなりにできるっていうあれがあるんで、合わせてやっちゃってそれで相手のペースになって負けちゃうっていう。だから自分なりにもうこれしかやらないとか、これは絶対取れるっていうものがあれば、そこのカベは破れたのかなって思いますね。
――ではインカレが終わってからはいかがでしたか
伊藤奨 インカレ終わって、国体(国民体育大会)はたまたま61(キロ級)で出て、そこでも5位で、ベスト8で勝てそうで勝てなかったというのがあって、まぁその試合は国体っていろんな人が出るんで、ベテランの選手(髙安直人、千葉)とやって、相手の試合運びにやられてしまいました。けどそこは別に一個上の階級で出てたんでのびのび試合できて、楽しく試合できたかなって思って。最後、内閣(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)は去年の秋の東日本で勝ってる相手だったんですけど、最後逆転されちゃって、負けるっていう。そこで勝ってればたぶん3位にはなれたんですけど。やっぱり取り切れないっていうか、課題を未だに克服できずっていう感じで内閣まできちゃったかなっていう感じですね。
――団体戦は全体的に振り返っていかがですか
伊藤奨 リーグ戦(東日本学生リーグ戦)の初日の拓大戦、あの1試合がすごい大きかったなと思って。あそこで勝ってれば決勝リーグいって、まぁその後どうなってたか分かんないんですけど、それなりにみんな自信もついてグレ選(全日本大学グレコローマン選手権)であったり内閣でもインカレとかでもチームとしてもっとこう上がっていったと思うんですけど、そこで勝ち切れなかったというかチームをうまくまとめ切れなかったのが、その後の2試合にもちょっと響いちゃったかなっていうのは思いますね。
――拓大戦は個人としては勝利されましたが悔しい気持ちのほうが大きいですか
伊藤奨 個人的に勝ったっていうのは、そのなんて言うんですかね、僕が最初じゃないですか。だから1試合目終わって、はぁ勝ったっていう安心感はすごいあったんですけど。嬉しいとかじゃなくて。安心して、けどそれは一瞬で、次もう吉村が試合やってるんでそれを応援して、勝ったって思ったらラスト1秒であららららっていう感じで。鮮明に覚えてますね、あの試合は。
――では香山選手、ことし1年の振り返りをお願いします。インカレで優勝されましたが
香山 レスリング以外のことが結構ことしは忙しくて。いつも練習とか試合であってもレスリングに追われてる生活じゃないですけど、なんか、まあ男子ほど試合は多くないですけど、あ、減量そろそろ始めなきゃとか、試合終わったらこの試合の反省を練習でやって、でまた試合があってっていう生活を今までしてきたんですけど。それ以外の就活だったりとか、卒論だったりとかそういう他のことにことしはすごい追われてて、なんかこうレスリングの印象があんまりなくて(笑)。その中でインカレの時だけは、ちょっとことしは最後獲らないといけないなっていうふうには思ってて、1年生の時と3年生の時が1回戦負けなので。ただ2年生の時は獲ってるのでことし最後4年生で、最後のインカレなので絶対に獲らないといけないなっていうふうには思ってたんですね。自分が勝ちたいっていう、まあもちろん勝ちたいんですけど、勝ちたいっていう思いよりもなんか実際4年生になってみて、今までの女子の先輩がいて、今こういう後輩がいて、今高校生が次誰が入ってくるとか、ワセダに入りたいって言ってくれてる子たちの話を聞いて、成績をしっかり残さなきゃいけない義務感じゃないですけど、勝たなきゃいけないんだなっていうふうにずっとインカレ前思ってたので。なんかもう内容ともかく久々に絶対とりあえずとにかく優勝したいって思った試合だったので勝てて良かったですね。
――他に海外遠征なども行かれましたが何か思い出はありますか
香山 海外遠征、2年生の時めちゃくちゃ多分私行ってて、本当に久しぶりの遠征でした。だいたい海外遠征って、私試合もあんまり緊張しないしっていう感じなので、まぁ負けてはしまったんですけど、すごい楽しかったっていう印象が強くて。あと初めての団体戦だったんですね、その試合が、今までレスリングやってきて。勝っても負けても1試合しかなくて、団体戦でっていう空気感を初めて感じて。あとは会場が外で、もうギャラリーがワーって周りにいてなんかもう盛り上がりが日本と違うじゃないですけど、アメリカの街中でワーってやるんでその空気をちょっと体験できたのはすごい良かったかなっていうふうに思います。
――大会前に強い選手とやるという噂になっていましたが
香山 あ、なんだっけ。
伊藤奨 ヘレン(ヘレン・マルーリス、アメリカ)!
香山 ヘレン、ヘレン、ヘレン!
伊藤奨 吉田沙保里さんに勝った人じゃなかったっけ。
香山そう。
――何かそれについてありますか
伊藤奨 ヘレン出なかったんでしょ。
香山 そう、次の次のW杯から復帰って言ってた。
伊藤奨 結局やってないんでしょ。
香山 やってない。
――やるかもしれないと耳には入ってきていましたか
香山 はい。入ってきてて、ちょうど社会人(全日本社会人選手権)の時かな。女子の社会人の試合の時に、あんまり私協会のホームページとかを普段見ないんで、周りの人から言われましたね。あ、違うそれが出ないらしいよって話だ。出るっていうのも聞いて、やってみたいなとは思いましたね、もうどれぐらい強いんだろうじゃないですけど。そういうのもあったんで残念ではあったんですけど。やりたかったですね試合は。
――女子部全体を振り返って1年間いかがでしたか
香山 難しいな(笑)。去年全員でメダル取りたいって言ったんですけど、なかなかやっぱり4年生とかも含めてコンスタントに全員がそろう試合っていうのがことしも全然なくて。全員出てる試合なかったので、インカレとかやっぱりどうしてもレベルが高くなってくるので。それができなかったのは、その目標にしてたのが達成できなかったのは残念なんですけど。あんまり私ここの女子の印象として普段の練習で強くなってるのが分からないっていう印象がすごいあって、ここの部活の特徴として。なんか他の、私高校の女子ばっかりいた時とか、あ、この選手から点数取れるようになったとか、差が縮まったっていうのが普段の練習から実感してたんですけど、ここの練習ってあんまりそれが分からなくて。試合で結構他の大学の女子と試合してみて初めて分かるみたいな部分があるなって4年間ずっと思ってて。それはもう階級もみんな女子4人が全員ばらばらで、レベルもまちまちなのでっていうのがあるかなと思うんですけど。その中で個人的に1年生の優月(臼池、社1=茨城・鹿島学園)が結構ボロボロに負けてた相手に社会人の時に勝って。
伊藤奨 へえー、そうなんだ。
香山 なんか結構前回の試合で負けててみたいな。勝って、ああやっぱり強くなったんだなっていうのが見れたので。
伊藤奨 うん、強くなってるよ優月は。
香山 良かったかなじゃないですけど、なんか来年以降も奏音(小林、スポ3=長野・佐久長聖)と優月で頑張ってほしいなって思いました(笑)。
――来年、須﨑優衣選手(JOCエリートアカデミー/安部学院高)など女子部に強い選手も入ってきますが、どういうチームになっていってほしいですか
香山 きょうこれずっと話してたんですよ、たまたま(笑)。やっぱり今全国の大学で、前までは本当に至学館か日大かみたいな、あと他の大学に女子が1人いるかいないかみたいな環境だったのが、ここ数年になっていろんな、日体とか専修とか。
伊藤奨 青学もじゃない。
香山 青学も国士舘もっていうふうに女子の大学が増えてきて、やっぱりその中でも至学館とかはすごい強くて。そういった中でワセダも今まで実力がある人が何人かいながら毎年1人、2人入ってくるか来ないかっていう環境が続いてるので、来年そういう強い優衣ちゃんが入ってくることでその後につながったらいいなっていうのを私はすごい思っていて。やっぱりそれには優衣ちゃん1人が強いだけじゃなくて、それに触発されて、今いる優月と奏音が強くなり、その後から新しい部員がまた入ってっていうのが続いて、最終的には女子が頑張ってるんだから男子ももっと頑張ろうみたいな。そういうのがあるからこそ多分男女がいる、しかも練習も一緒にやってる部活って多分あんまり無いと思うので、そういう存在に女子がなっていければいいなっていうふうに思います。女子のリーグ戦も始まったので。
――太田拓弥監督がチーム内の実力差を課題にあげていましたが、それはこの1年で埋まってきたと思いますか
伊藤奨 うーん。去年からしたら確実に埋まったと思うし、それが結果として出たのはたぶん直毅(松本、スポ2=神奈川・横浜清陵総合)かなぁ。まあ隼佑(齋藤、スポ3=群馬・館林)も決勝までいくレベルになりましたし。あと1年生はまだしょうがないじゃないですけど、入ったばっかりなんで、侃(岩澤、スポ2=秋田商)もケガしてましたし、それを考えたら埋まってきてると思います、練習をしてても。
――野本州汰選手(スポ1=群馬・館林)が一昨日、東日本学生秋季新人選手権(秋季新人戦)で3位に入りましたが野本選手については
伊藤奨 州汰も大和(宇井、スポ2=和歌山・新宮)と階級が近いんで、毎日スパーリングやってて強くなってると思いますよね。1年生で3位だったら僕より全然成績残してるんで、すごいと思いますよ。
――個人的にことしプレーの面で何か変えたことなどありますか
伊藤奨 ことしっていうより、大学に入ってから意識的ではないんですけど、まあ勝手に覚えていったっていうか、組み手は高校の時からずっとやってて、それが得意だったんで大学に入ってカウンターをずっとやるようになって。ことしっていうかこの4年間では、カウンターに関してはすごい磨きをかけて、結構色んな選手からその技で点数を取れるようになったんじゃないかなっていうのはありますね。意識して変えたってことはそんなにないですかね。
――香山選手は何かありますか
伊藤奨 ないっしょ(笑)。やっててあんま気付かないもんな。
香山 1、2、3年生の時はやっぱり試合で出た課題をどんどんやっていくだけなんで。
伊藤奨 そう。4年生になって変えてもって思った。
香山 そういう感じなので、でも気持ちの部分ぐらい、変わったとしたら。なんかもう全部試合に関してもワセダのシングレットで出るの最後だし、内閣で一応引退っていうかたちにレスリング部はなるので、あと何カ月みたいな、あと何回みたいな、練習も。そういう感じで、だから頑張ろうみたいなところはありましたね。
――伊藤奨主将は主将としてチームをまとめる上で心がけたことなどありますか
伊藤奨 なんだろうなー。生活面(笑)。まぁみんななんだかんだレスリングは好きなんですよ、多分。ここまでやってきて。ただやっぱりサボりたいときっていうのがみんなあるわけじゃないですか、きょう練習したくないなとか、朝練だるいなとか。そこをどうやってやらせるかじゃないですけど、どうやったらこいつやるかな、なんかせっかくみんなでやってるのに一人が来ないっていうのはやっぱりみんなでやる意味がないじゃないですけど、せっかくチームでやってるんだからみんな朝早くて辛いけどやろうとか。例えば誰かが試合あるとかだったら、遊び行きたいけど応援行くかとかそういうチームのために、誰かのためにっていうのをやってほしいなっていうのはありましたね。あとは行動として自分が練習休まないとか、遅刻しないとか、それはちゃんとやってたと思います。手本になるように。
――香山さんから見て伊藤奨主将はどんな主将でしたか
香山 多分一番真面目ではあると思います。
伊藤奨 それしか取り柄がないんで(笑)。
香山 それぞれなんか特徴みたいなのが多分あると思うんですけど、真面目、うん、とりあえず真面目。
伊藤奨 (笑)。その一言に尽きる。
香山 真面目だし、なんか言うことはしっかり言ってくれるっていうイメージ。
伊藤奨 まあ嫌がられる役は多かったかな。
香山 そうです。嫌われ役になってくれる。
伊藤奨 多分嫌いだと思いますよ、みんな僕のこと。あいつうるせえなって思われてんだろうなって思いながら言ってましたから(笑)。
香山 でもなんかこう、確かに仲は良くても、仲良くはなるんですけどたぶん言わなかったら、後輩と。そういう主将も今までいたし、でもそういうだらだらした感じな雰囲気をなんとかしようと頑張ってくれてるなっていうのはすごいあって。逆に他の4年生3人、私たちはあんまり言わないし、我関せずなところもあり、なんかもうなんでもいんじゃないみたいな3人だったなと思うんで、本当にちょっと今さら申し訳ないけど一人で頑張ってくれたなっていう、ところはありますかね。
一同 (笑)。
伊藤奨 独り相撲みたいな。
――伊藤奨主将から見て、香山選手が4年生になって変わったと思う点は
香山 私1年生の時から多分変わってないよね、何も。
伊藤奨 変わったかな。
香山 ずっとヘラヘラしてるだけだもん。
伊藤奨 あんま変わってないかな。矢野(富三家、スポ4=島根・隠岐島前)は変わった。矢野は4年生になって、まあやっぱ2人しかいないんで同期(の男子)が。例えば後輩が最近だらけてる、こいつがだらけてるみたいになったら、どうするみたいな話をしたり、練習中、号令に対して声を返してくれたり、そういうのは矢野はやってくれるようになって助かりました。
――ことしは監督が代わってコーチも新しく来たりしましたがそういった面では変わったと感じますか
伊藤奨 変わった?
香山 女子は、女子のコーチができたっていうのが結構大きいかなっていう感じ。
伊藤奨 前は監督とコーチ、今の太田拓弥監督がコーチで、山方監督(隆之、平4人卒=福岡・築上西)がいて。考えが違うわけじゃないんですけど、その、目指すとこは一緒なんですけどそこまでの道のりっていろいろあるわけじゃないですか。だからそれが悪いってことじゃなくて、やっぱりいろんな考え方を取り入れられるっていうのが前のいいところだったと思います。今は太田監督が一人で、コーチも太田監督の教え子っていうか、今現役の選手なんで監督からしたらやりやすいんじゃないかなって思いますよね。選手からして、練習とかに関して変わったっていうことはそんなに感じないですかね。
――香山選手は太田監督になって何か変わったと思う点はありますか
香山 やっぱり若いコーチ陣が増えたので、多分選手がコミュニケーションをコーチ陣ととりやすくなったっていうのと、練習の面でも剛さん(山口、平24スポ卒=現ブシロード)が外国風な練習を入れたりとか、まぁといっても試合がコンスタントに続くんで、あんまり大きくガラッと練習変えるっていうことは現実的に無理だったんですけど、若干幅が広がったかなとは。色んな感じのメニューが増えたっていうのは。
伊藤奨 今までは太田コーチとキャプテンで決めて、その日の練習を。結局2人の考えでやるって感じだったんですけど、今はコーチが2人現役の選手で入ったんで、それと新監督の太田監督とキャプテンと4人で考えるんで、やっぱりそれだけいろんなバリエーションは増えたと思いますね。
――もう代替わりされましたが、現在はどういった生活をされていますか
伊藤奨 とりあえず引退してもう即行地元帰って、免許取りに行ったんですよね。本免試験というか、本籍地で。免許取って帰ってきて、今は卒論に追われてます、ひたすら。もうパソコンが友達みたいな。ずっとパソコン持ち歩いて、カタカタカタってやってるみたいな。だから練習も秋季新人戦もあったんで、顔出してやりたかったんですけど、なかなか来れなくて、ただ練習しなきゃっていう焦りが募ってます、今。
――どういった練習をしていきたいですか。天皇杯に向けて
伊藤奨 うーん。ここにきて新しい技を覚えるっていうのは無理だと思うんで、自分が持ってるものをどう使うかとか、まぁ計量方法が変わるっていうのが一番大きいんで、ちょっときょうも練習したんですけど、すぐバテちゃったんで(笑)。体力を早く戻して、スタミナ勝ちできるように、やっぱり体力をまず戻すのが今の課題ですね。たぶん落ちてると思うんで。
――計量の対策などありますか
伊藤奨 やっぱり今までは前日だったんで、僕7キロぐらい落とすんですけど、10日ぐらいで落としてたんですよ。10日で、前日3キロオーバーで前日動いて2キロちょい落として、あと代謝で次の日の夕方まで我慢っていう感じで。前は夕方だったんで食べれるじゃないですか、朝までずっと。ただ今度は朝になるんで、その3キロ前日に落とすっていうのが無理なんですよ多分。だからもっと、10日だったのを2週間、もうちょいかかりますかね、20日間ぐらいかけて徐々に落として、前日にやっぱりアンダーするっていうか、その57キロを切って、朝起きて食べて試合しないともうヘロヘロだと思うんで。やっぱりやったことないんで、未知の領域なんで、けど計量失格だけはしないようにしたいです。
――香山選手は現在どういった生活をされていますか
香山 私はとりあえず引退して親知らずを抜きに行きました。
一同 (笑)。
――結構前から気になっていたのでしょうか
香山 そうです。気になったんですけど、ちょっと下の歯は1週間ぐらい運動できないって聞いてたんで、とりあえず抜きに行って寝込むっていう(笑)。
伊藤奨 めっちゃ腫れたもん、俺も。練習できなかった2日ぐらい。
香山 そう、そうなの。もう動けなくて、熱も出てみたいな。で、卒論に追われ、でもなんかちょっと動きたいと思うのか、ちょっと走りに行ったりとか。
伊藤奨 そう、動きたくなる。
香山 部活の時みたいにガチでやらないですけど、ちょっとジョグしに行ったりとか、あとはもうなんだろうな。何してる?
伊藤奨 えー、何してる?
香山 あと今まで結構会う時間のなかった人たちに会いに行くじゃないんですけど、親とかもそうですけど、地元の友達だったり、大学の友達だったり。
伊藤奨 新鮮ですね。練習がないのは(笑)。
香山 あと睡眠時間がやたら増えるっていうのは(笑)。もう女子は遠いんで、朝練が早かったんで。
伊藤奨 朝練ないのはでかいね。
香山 寝れますね。
伊藤奨 寝れる。
――今後こういった練習を天皇杯に向けてしていきたいというのはありますか
香山 私も練習っていうより、多分体重の方が不安というか、当日計量になる上に、私多分59(キロ級)で試合出るのは大学2年生の世界ジュニア(世界ジュニア選手権)以来なので。しっかり来れるときは練習に来て、動いて体重を落とし、試合も最後になるかもしれないので、なんかもうバテてバランバランにされて試合終わるみたいなのはちょっと恥ずかしいので、最低限しっかり動けるように。まぁ確かに新しいことやってもしょうがないので、今までやってきたことを出せるように練習していきたいですね。
新たなステージへ
お互いの第一印象を語る2人
――去年、香山選手は推しメンで梅林太朗選手(スポ1=東京・帝京)を挙げられていましたが、ことしの推しメンはいますか
香山 太朗はちょっと置いといて、1回出したし。最近なんか面白いことした人いたかな。じゃあトレーナーで。みんな美男美女。トレーナー。
伊藤奨 ああ、確かに。
香山 聡ちゃん(鈴木聡一郎、スポ4=山梨・都留)、大生くん(浜口、スポ2=愛知・刈谷)、織部柚貴野ちゃん(スポ1=東京・文化学園杉並)。トレーナー3人はみんな美男美女です。
伊藤奨 才色兼備です。
香山 性格はよく分からないところもあるので置いといて、見た目はみんな美男美女です(笑)。
伊藤奨 めっちゃ失礼じゃん(笑)。
香山 柚貴野ちゃんはいい子だよ。あと2人は良く分からないもん。
伊藤奨 女子にとって女子のトレーナーがいるのはすごく大きいかと。テーピングを巻くときに。自分で巻けないわけではないですけど。
香山 肩とか。私、ちょっと(推しメンで)剛光(坂井、社1=福岡・小倉商)言おうかなと思ったんだけど、ネタがなくて。うちは推してるんだけど
伊藤奨 いいね剛光。俺、剛光好きだよ。アキラ100%が良かったもん。
香山 あ、あったじゃん!
伊藤奨 夏合宿でいろんな大学が来て、中日にバーベキューをやるんですけど、そのときに大学ごとに一発芸大会をやります、みたいな。やっぱり関西の大学とかみんな面白いんですよ、関西人で。コントとかやってくるし。
香山 毎年最下位になるんですよ。
伊藤奨 毎年1年生がやって、だいたい最下位になるんですけど、ことしは良かったです。
香山 初めて優勝して。うちわでアキラ100%をやってね。
伊藤奨 完璧に見えない。
香山 完璧に見えなくて、ちゃんと1周回ったもん。
伊藤奨 もう大爆笑。最高。監督(太田拓弥監督)、大喜びしていました。試合で勝ったみたいに喜んでた。
香山 試合より喜んでいたよね。
――伊藤奨さんは部員の中で推しメンはいますか
伊藤奨 剛光面白いけどな。
香山 剛光、州汰(野本、スポ1=群馬・館林)のコンビは、私好きよ。1年生みんないい人たちですね。
伊藤奨 直毅(松本、スポ2=神奈川・横浜清陵総合)かな。熊さんみたいな感じ。
香山 鬼ごっこの直毅が好き。
伊藤奨 練習のアップで鬼ごっこやるんですけど、やっぱり重量級って動き遅いじゃないですか。1分で区切って最後鬼だったやつが罰ゲームをやるんですよ。みんな時間なくなってきたと思うと直毅とかを狙い出すんですよ。で、なんか必死に逃げるんですけど、捕まるみたいな。
香山 女子を狙うのはちょっとダサいみたいなところがあって。
伊藤奨 で、なんか直毅狙って、直毅があぁみたいな。罰ゲームはだいたい倒立なんですけど。もうあいつ多分倒立を3分ぐらいできるようになりましたよ。めっちゃ倒立強くなるみたいな。罰ゲームのおかげで。真面目に練習もしているというのもありますし。1番真面目に練習やっているんじゃないかって思うくらい。食事とかもちゃんと気にしてるし、意識が高い。僕も見習うところがあるなと思って。推しメンにしておきます。
――今、部でのブームなどがあれば教えてください
伊藤奨 去年はね、乃木坂46とか流行っていたけどね。ことしはそんなじゃない。
香山 私、ことし部員との関わりが薄い気がする。
伊藤奨 やめろよ(笑)。なんか流行ってるかな。
香山 食べるの好きな人、多くない?私はその中に多分入ってないけど、みんなで、かっぱ寿司食べ放題に行ったりとか、そういうのしているイメージ。インスタ(インスタグラム)に食べ物を上げる人が多い。
一同 (笑)。
伊藤奨 普通に男子でも料理くらいは、できる人は多分それなりにできると思いますよ。男子、部屋は汚いですけど。
――男子の選手はみなさん寮に住まれていますが、この人の部屋はきれい、とかあったりしますか
香山 みんな汚いでしょ。
伊藤奨 きれいな部屋って言ったら、直毅、剛光の部屋はきれいかな。物が少ない。あと大和と隼佑の部屋も物が少ないかな。
香山 私、優月の部屋だけ入ったことない。
伊藤奨 俺ら部屋とかドア開けっぱで、通ったらのぞける、みたいな。
香山 もう廊下が汚いじゃん。
伊藤奨 廊下は荷物が置けなくなったからきれいになった。
香山 そうなんだ。
伊藤奨 こいつやべぇというほど汚いというのはあまりいないかも。
香山 拓海(吉村、スポ2=埼玉栄)は?たまにラインに上がる部屋の写真が嫌だ。
伊藤奨 1番汚いのが、太朗と拓海の部屋ですね。引き出しが、シャツが出ているまま閉じられているんですよ。僕はそれがちょっと汚いと思いますね。
香山 私も無理。
――香山選手はきれい好きなのでしょうか
香山 私はきれい好きというか物が無いですね。断捨離大好きなので。定期的にすごい量の物を捨てます。
伊藤奨 めっちゃ物多いわ俺。
香山 なので、奏音や麻衣ちゃん(須崎、スポ4=千葉・鎌ヶ谷)に「この部屋に住めるんですか」と言われます。物が無さ過ぎて。麻衣ちゃんとか奏音は物が多いかもしれないです。私と違って、ちゃんとおしゃれだからだろうなと思います(笑)。服とかも買ったら捨てる癖があるので。入らなくて、とかが嫌なんですよ。クローゼットとかも掛けるところが小さいので、掛かるだけの服がいいし、タンスもいっぱいで閉まらないとか開けるのがきついのは絶対に嫌で、スルンと空いて、スルンと閉まらないと嫌なんですよ。靴とかも置くところがないので、入るだけがいいし。だからちょっと物が増えてきたなと思ったら、捨てようみたいな。物がないだけです。
――代替わりされて自由な時間が増えたと思いますが、個人的なブームなどはありますか
香山 結構出掛けている気がする。来年から仕事で、できるか分からないんですけど観光開発とかをしたいと思って会社を選んだので、いろんなところに遊びに行っているかもしれないですね。1人でも行くし、来年からの会社の同期とかとも行きますし、あとは検定の勉強とかしてます最近。個人的ブームは検定の勉強ですね。
伊藤奨 部屋探しですね(笑)。1人暮らしをするので、どこ住もうかなみたいな。
香山 いいなー私も早くしたい。
伊藤奨 家賃いくらで、みたいな。あとは卒業旅行どこ行くかというので、いろんなサイトを見て調べてます。
――卒業旅行で海外とか行きたい場所はありますか
香山 私国内がいい。
伊藤奨 俺は海外がいい(笑)。海外の海がきれいなところに行きたいです。常夏の島、みたいな。地元が、海が見えるところだったので、海が見えないと落ち着かないんですよ。落ち着かないというか、(地元に)帰って海を見たら、帰ってきたなみたいな。すごく海に行きたいな、泳ぎたいな、と。
香山 決まっているのだと、金沢、九州、ディズニーランド。
伊藤奨 めっちゃ決まってんじゃん。一個も決まってない。
香山 海外も行きたいんですけど、私遠征以外で海外に行ったことがないんですよ。なので、飛行機に乗ると試合とか遠征っていう気持ちになりそうなんで。しかも私来年から関西に行くので、今のうちにいろんな関東のところに出掛けときたいなというのはあるので国内で。安上がりだし(笑)。
伊藤奨 変わんねえよ絶対。海外でも安いのにすれば。韓国はめっちゃ安い。
――卒論のテーマはどういうものなのでしょうか
伊藤奨 題名は決まっていないんですけど、研究して実験してて、レスリングに関することをやりたいと思っていて。イメージ能力っていうか難しいんですよね、説明するのが。イメージをどれだけ鮮明にできるかというのを測るテストがあるんですよ。それと競技成績だったり、競技種目、レスリングとウエイトリフティングをとって比較したり、これまでにどんなスポーツを経験してきたか、競技数を比較して、そこに関連があるのかなということをやっています。大変ですね。今めっちゃ忙しいです。ただ僕この後に大学院の入試もあるんですよ。それの計画というか出願がかぶっていて、忙しいです。2つ同時並行で。
香山 就活しなかったツケが今回ってきている(笑)。
伊藤奨 そのツケが今きています。
香山 私はトップアスリートのセカンドキャリアについてで、それの一応海外比較みたいなのをやっていて。私のゼミはだいたい入って半年ぐらいしたら、もう卒論のテーマを決めて、途中で変わる人もいるんですけど、それについてずっとやっていくというかたちなので、ちょうどその大学2年の時に大学卒業してレスリングを続けるか続けないか考え始めた時期で、それが面白そうだと。海外の友達とかは結構働いている子も多くて、なんで違うんだろと思ってそのテーマにしました。結構試合じゃなくて遠征でスウェーデンに行ったときとかに、いろんな国の人にインタビューしてデータを取ったりして、今書いてるんですけど。なんせ先行研究が少なくて、苦労しています。国内だったら全日本合宿とかでアンケート用紙をつくって答えてもらったりとか、海外の選手は、英語が通じる国の人たちだけなんですけどインタビューを頑張りましたね。
――お互い初めて会ったときの第一印象は覚えていますか
香山 これ覚えてる!
伊藤奨 後から言われて、めっちゃ腹立った(笑)。
香山 私麻衣ちゃんとは小学校の時から知り合いなので、お互いワセダに決まったときに、よろしくね、みたいになっていました。矢野も論文指導が入学前にあるんですけど、それで何回か来た時に会っていて。
伊藤奨 俺だけ蚊帳の外なんですよ。
香山 (矢野とは)受けるんだみたいな感じで話していたので知っていて。で、全員が集合する日に麻衣ちゃんと2人で道場に入っていって、伊藤奨ってあの子だよみたいな。
伊藤奨 知名度低かったから(笑)。
香山 私たちもちょっと性格が悪いのかもしれないんですけど(笑)。
伊藤奨 めっちゃ悪口言うんですよ初対面で。じゃがいもみたいって。
香山 違う、おにぎり。しかもそのとき坊主で、おにぎりみたいだね、って(笑)。
伊藤奨 失礼ですよね、初対面の人に向かって。
香山 具は何かなとか言っていて(笑)。
伊藤奨 マジ最悪。
香山 そういうイメージというか(笑)。おにぎりっぽいなって思いました。やばい本当に、性格の悪さが出るよこれ(笑)。
――伊藤奨選手は香山選手の初対面のイメージは覚えていますか
伊藤奨 初対面かは分かんないんですけど、初めてスパーリングをしたときに、女子の選手とスパーリングをすることは高校までほとんどなかったので、ゆうて女子だから余裕だろと思ってやったら、もうめちゃくちゃ力強くて。
香山 めっちゃ言われるみんなに。
伊藤奨 こいつ本当に女かと思いましたね(笑)。
香山 それも失礼。
伊藤奨 その力の強さ、今でも思います。男子でもやっぱタックル入られて、クラッチを男子相手でも普通に切れるんですよ。芳美相手だと切れないんですよ。もう意味が分かんないと思いましたよね。
香山 そう、クラッチだけは切られない。
伊藤奨 もう意味が分かんないと思いましたよね、最初やったとき。え、え、力つよ、みたいな。こいつ本気でやんなきゃちょっと殺されそうだわ、と思って(笑)。それは冗談ですけど、めっちゃ強いなと思いました。強いのは知ってたんですけど、予想以上に。女子で強い人ってこんな強いんだ、みたいな。そういうイメージは覚えていますね。あの衝撃。
――握力がすごいあるんですか
香山 握力はめちゃくちゃないんですよ私。体力テストのやつじゃそんなにないし。
伊藤奨 機械じゃ測れないですよ、芳美の握力は。
香山 いや、本当に。他の女子レスラーも言ってた。沙保里さんとか左手の握力は一般と変わらないみたいなのやってたよ。多分、逆に握力でレスリングしちゃうと疲れるんで、他のところをうまいこと使うように頑張っているって言いたい(笑)。
伊藤奨 いや、やばいですよ。指をにぎられたとき。スパーリングやってて、痛いと思いますもん。
――大学に入ってこの4年間で自分が一番成長したなと思う部分はどこでしょうか
香山 私は、卒論のテーマとも関わってくるんですけど、競技だけ、レスリング強ければいいっていうのは駄目だなというのをすごい思うようになったかもしれないですね。そもそも早稲田大学を選んだのも、レスリングバカと言われるのが嫌だなっていうのも1つあったんですけど。大学入ってなおさら、ただ強ければいいじゃないですけど、レスリング強ければいいやみたいな、これだけやっていればいいやと思ってたら、多分他の大学に私は行っていたと思います。ワセダに入って文武両道してる人もいればそうでない人ももちろんいて、そういうのを見てきて、あと就職活動とかを通じてスポーツを全くやってこなかった人たちとか、バイト先とかもそうなんですけど。そういうので全然今まで自分がいた世界にはいなかった人たちと関わるようになって、本当にスポーツバカじゃいけないなというのを、4年間でより強く思って。1つのことを極めるのもすごいと思うんですけど、それだけじゃやっぱり駄目だなと。視野が広がりました。レスリングとったら何もないみたいな、良くないし、そういう人達って損しているなと思うようになったかもしれないです。でも何か一個すごい秀でている人って、他のことやっても多分そこそこいけると思うので、それだけやってるのってすごくもったいないのかなというふうに思いました。考えが変わりましたね。レスリングをやっていたから分かったこと。
伊藤奨 視野が広がったというのはやっぱりあって、(地元が)長崎の島原の田舎、西の端じゃないですか。高校の生徒も限られていて、レスリングの環境も限られていて、自分より強い人がいないというか、結局自分がその中では1番強かったんで。こっちに出てきたらなんでもできる人であったり、1つのことに秀でている人だったりいろんな人がいて、自分ってちっぽけじゃないですけどもっとすごい人というか、世の中にはいろんな人がいるんだなと思って、視野が広がった。もう1つは芳美が言っているのと逆にはなるんですけど、1つのことを極めるというのはすごい難しいんだなと思って。(僕は)なんでもそれなり。
香山 オールマイティーになんでもできる。
伊藤奨 僕は自分でちょっとコンプレックスなんですよね。レスリングでもそうなんですけど、秀でてるものがないけどそれなりにいろんなことができて、それなりの成績は残しているみたいな。そこで勝っていく人っていうのはもう1つ何かあるし、それは勉強でも一緒だし。人に好かれる人っていうのもいるじゃないですか、それもその人が持っているものじゃないですか。何か1つを極めるというのはすごい難しいんだなと思いましたね。今はなんでもできればいいっていう時代じゃないのかな、みたいな。やっぱり専門性というのが大事な時代になってくるんじゃないかなというのは4年間で思いました。
悔いのないように
主将として1年間チームを支えてきた伊藤奨
――来年のチームにアドバイスがあるとすればどんなアドバイスでしょうか
伊藤奨 いっぱいあるな(笑)。俺らのやっていたやり方とか雰囲気とはガラッと変わるとは思うんですよね。新4年生がやりやすいんじゃないかなと思いますね。下も素直ですし。自分の反省を言うとしたら、もっと自己主張して良かったのかなと。別に、これを言ったらこうなるから、とかじゃなくて、キャプテンとか4年生がこうだって決めたんだったら、それをとりあえずやらせるというか。それが合ってなかったら、後から間違ってたって言って変えればいいので。それをやらずに平和に流していっても結局変わらないと思うので。自己主張を激しめに、自分が思ったことはやっぱり口にした方が良かったのかなと思いましたね。変に大人にならずに。どんどんけんかしてもめて、監督ともめてもいいし、後輩ともめてもいいし。
香山 女子のことでいうと、4年間いて女子の成績が良かった時、私が1年生の時が1番良かったのかな。亜里沙さん(田中、平27スポ卒=現京都八幡高教員)と和さん(金子、平28社卒=群馬・大泉)がいて、そのときの先輩の話を聞いたりとか、自分の実感としては、男子に負けないぞっていう気持ちを持ってやっていた時が1番強かったのかな。私すごく印象に残っているのが、男子が誰か優勝して女子が全員1回戦とかで負けたとしても、優勝者出た、良かったねで終わるんですよ。で、私2年生でインカレ優勝した時に、男子が誰も優勝しなくて、その時自分優勝しているのに周りがすごい暗かったんですよ。それってある意味女子に期待されていないという裏返しなんだろうなってずっと思っていて。女子が優勝しても盛り上がれるチームになれるようにというか、男子に負けないっていう気持ちを、せっかく来年強い子達も入ってくるので、男子より女子、ってなるぐらいの勢いで。そういう気持ちを、多分今はほぼ0に近いと思うので、ちょっとでもいいから持っていてほしいなと後輩たちには思います。
――香山選手は7回目の天皇杯になると思いますが、最後だと思うといつもと違う部分はありますか
香山 天皇杯とか明治杯(明治杯全日本選抜選手権)って資格がないと出れないじゃないですか。で、私どの試合も成績がいいときと1回戦でコロッと負けるときの大体どっちかなんですよ。なんで負けたのみたいな感じのときと、おーすごいみたいなときのどっちかなので、毎回負けたときは、資格取れなかったらどうしようと思っていて、高校1年生という若い時から出させてもらっているのに、大学生になって出れなくなっちゃうんだって思っていて。逆に成績良かった時は、1年後までの資格取れたっていうほっとした気持ちで、ベスト4入ると決まるので毎回準決勝上がったときに思っていたのが、今回は来年のこととか1年後のことを何も考えなくてもいい大会というか、それが1番違うかな。今までと違うところはそこと、とりあえず大学生としての試合は最後なので、楽しみたい。勝っても負けても楽しみたいっていう気持ちですね。見てもらうのも最後だからというのはあんまり何もないかも。みんな最後だから感謝の気持ちをこめてどうこうとかなるんだろうけど、ここで駄目だったら、またやりたかったら試合に出ればいいやみたいな気持ちがどっかにある。気持ちは1番今まででの国内の試合にしてみたら楽かもしれないです。いつも国内戦はガチガチなので。気持ちはめちゃくちゃ楽な試合ですね。
――伊藤奨選手はいつもインタビューで天皇杯に出たいと言われている印象が強いです
香山 そんな出たい?
伊藤奨 楽しいじゃん。
香山 楽しくないよ(笑)。
伊藤奨 楽しいんですよ。天皇杯は。
香山 リーグ戦とかのが楽しそうじゃん。
伊藤奨 いやリーグ戦はもう緊張して死にそうになる。
香山 ないものねだりだよね。私リーグ戦ずっと出てみたかったもん。
伊藤奨 高校の時に大学での目標で考えていたのが、学生の大会で表彰台に上るというのと、天皇杯に出たいというのがあって、2年の時に出れたんですけど、結局勝ててないんで。一段高い所で、強い選手がいっぱい出ている中で、自分がどこまでやれるかっていう、ワクワク感があるので。明治杯(明治杯全日本選手権)も含めて、全然緊張はしなかった。一回に関しては兄貴だし。笑ったよね。
香山 どっちがどっちか分からなくなる。レスリングスタイルも一緒だもんね。
伊藤奨 審判もワセダのOBで、みんな知り合いみたいな(笑)。だから全然悪いイメージはないですね。ただ勝ちたいっていう。
――天皇杯でお兄さんと対戦したいという思いはありますか
伊藤奨 今回、出ていないので、ことし試合に出てなくて資格がないみたいで。出たらやりたかったけど(笑)。兄貴出ろよ、みたいな(笑)。
――最後に天皇杯の目標をお願いします
香山 本当に最後かもしれないし、勝っても負けても十何年やっているレスリング生活悔いなし、楽しかった、最高だった、で終われればいいなと思います。
伊藤奨 内閣杯ですごく悔しかったというか、やっちゃったという試合をしてしまったので、ワセダのシングレットを着てやるのも学生としては最後なので、やっぱり1回は勝ちたいです。あの舞台で。
――ありがとうございました!
(取材・編集 皆川真仁、杉野利恵)
大学最後の天皇杯。悔いのないよう頑張ってください!
◆伊藤奨(いとう・しょう)(※写真左)
男子フリースタイル57キロ級。長崎・島原高出身。スポーツ科学部4年。チームのために身を粉にしてきた伊藤奨選手。その真面目にレスリングと向き合う姿勢は後輩たちの胸に焼き付いたことでしょう。色紙にはご自身の名前とかけて「笑」と書いてくださいました!念願の勝利を挙げ、笑顔が見られるのを楽しみにしています!
◆香山芳美(かやま・よしみ)(※写真右)
女子フリースタイル59キロ級。東京・安部学院高出身。スポーツ科学部4年。高校1年生から7年連続の天皇杯出場となる香山選手。実は中学生の時に相撲で全国優勝を成し遂げたそうです。対談では女子部の未来についても熱く語っていただきました。毎年楽しいお話をしていただきありがとうございました!全力プレーで有終の美を飾ってください!