4年ぶりの総合優勝は非常に厳しい状況となった。2日間にわたって行われる内閣総理大臣杯全日本大学選手権がことしは福井の地で開幕。86キロ級の山﨑弥十朗(スポ2=埼玉栄)、61キロ級の吉村拓海(スポ2=埼玉栄)が3位に食い込んだものの、57キロ級の伊藤奨主将(社4=長崎・島原)、97キロ級の齋藤隼佑(スポ3=群馬・館林)、125キロ級の松本直毅(スポ2=神奈川・横浜清陵総合)がいずれも早々に敗退して得点を重ねられず、初日の5階級を終えて早大は総合7位タイと出遅れることとなった。
「最低3位で、組み合わせも悪くはなかったので決勝にいきたいというのはあった」とチームの上位進出のためにも表彰台を最低ラインとして臨んだ伊藤奨主将だったが、その目標には届かなかった。着実にポイントを重ねて予備予選を突破し、続く1回戦でも相手のパッシブで先制に成功すると、直後にバックを取りさらに2点を加点。順調な戦いぶりに見えたがそこから暗転した。攻撃を仕掛けたが、もつれたところから逆にバックに入られて1点を返され前半を終えると、後半開始早々にバックを取られ同点に。終盤は猛攻を仕掛けたが逃げる相手に技を決められず、そのまま規定によりラストポイントを奪っている相手に軍配が上がった。「もったいない試合だった」と太田拓弥監督が振り返ったように勝機が十分あっただけに、伊藤奨自身にとってもチームとしても痛い一敗となった。齋藤は逆転勝ちで予備予選を制したが、1回戦では体格差がある強敵に対して防戦一方でテクニカルフォール負け。松本も同様に体格のハンデを覆せず1回戦で姿を消した。
準決勝で敗れ、悔しい表情を浮かべる山﨑
山﨑も悔しさの残る大会となった。3試合を順当に勝利し、「ヤマだと思っていた」と語った浅井翼(拓大)との準決勝を迎える。前半から積極的に攻めて相手のパッシブで先制し、「結構自分の中で攻めれているなとは思った」と手応えを感じたが、テクニカルポイントは奪えず。後半、再び相手のパッシブで加点したがその直後にバックを取られ同点に追い付かれると、その後さらにバックを許し2-4で敗戦となった。「自分の中で1つ持ち味だとか、突破口を開ける強い技術が欲しい」とさらに上のステージへ行くための課題を口にした。久しぶりのフリースタイルの大会となった吉村は意地を見せた。予備予選では圧勝したが、1回戦では強敵を相手に力の差を見せつけられてテクニカルフォール負け。しかし、組み合わせに助けられた部分はあったものの、その後の敗者復活戦2試合を危なげなく勝利。続く3位決定戦でも7-0で完勝し、天皇杯全日本選手権の出場資格を満たす3位に入った。
3位に入り、天皇杯出場権を獲得した吉村
首位・日大の総合得点は36点。対して早大は12点と優勝は風前の灯火となったが、あす行われるのは早大が得意とする中量級の3階級。2年連続学生二冠王のかかる米澤圭(スポ3=秋田商)をはじめ全員が決勝に残るだけの力がある。このままでは終われない。エンジの誇りにかけて、太田監督が視野に入れる総合3位以上に向けてあす逆襲を見せたい。
(記事 皆川真仁、写真 杉野利恵)
※10点差がつくと、テクニカルフォールで試合終了となる
結果
フリースタイル
▽57キロ級
伊藤奨 1回戦敗退
▽61キロ級
吉村 3位
▽86キロ級
山﨑 3位
▽97キロ級
齋藤 1回戦敗退
▽125キロ級
松本 1回戦敗退
コメント
太田拓弥監督
――チーム全体を振り返って、きょうの結果はいかがですか
ちょっと厳しい結果になりましたね。山梨学院がメンバーそろってるんで、できればきょうの5階級で少しでも点差を付けてっていうふうに思ってましたけど、吉村拓海(スポ2=埼玉栄)のところと伊藤奨の2試合目がカギになるとは思ってたんで。吉村拓海はちょっと力の差ありましたけど、伊藤奨の試合はちょっともったいないというか本当に勝ち試合だったんで。たらればですけど勝ってれば決勝いってたかもしれないですし、悪くても3位にはなれてたと思うんで、もったいない試合だったかなと思いますね。
――伊藤奨選手(スポ4=長崎・島原)のその敗れた試合の終盤の場面を振り返って、どういったところが良くなかったでしょうか
やっぱり自分から攻撃して、3-0になるところを反攻撃で3-1になって。あれ0点に抑えてれば。ああいったちょっとした隙でポイントになってしまったのが敗因の一つと、ラストの1分30秒良く攻めたんですけど、なかなかやっぱり最後ワンポイントコーション付かないんで。ああいった勝負どころのポイントっていうのをもっともっと大事にしていかないといけないのかなっていうのは改めて感じましたね。これは弥十朗(山﨑、スポ2=埼玉栄)も同じこと言えると思うんですけど。
――山﨑選手は昨年と同じ3位となりましたが、いかがでしたか
ちょっと足を触らせすぎだと思いますし、今度U23の世界選手権も行くんですけど、左構えをどう攻めるのかとか、ディフェンスの仕方とかちょっと改善しないといけないところを改善していかないといけないのかなとは思いますね。
――齋藤隼佑選手(スポ3=群馬・館林)と松本直毅選手(スポ2=神奈川・横浜清陵総合)に関しては
負けた試合に関しては、もう全日本のトップの選手なんで仕方ない部分はあったんですけど、その選手が決勝いってくれるもんだと思ってたんで。ちょっとこの大会っていうのは一日で全部試合終わってしまうんで、どういった展開になるか分からないのが醍醐味の一つだと思うんですけど。まあちょっと本来自分の体重でない階級のところだったんで、隼佑なんかは良く初戦勝ったと思いますけど、やっぱり全日本チャンピオンクラスなんで、まだ体重も力の差もあったところなんですけどもっと何か一つやってほしかったかなというのは印象ですね。
――吉村選手は敗れた試合以外はいかがでしたか
徐々にエンジンかかってきて、最後の試合も、まあテクろうと思えば、テクニカルできたと思いますし。まあちょっとスロースターターなんですよね。弥十朗もそうですけど。どっちかというと。もっともっと先制点を取りにいくようなかたちでいけばもっともっとこう自分のかたちっていうのができてくると思うんですけど。負けた2試合目なんかでも、相手に先ポイント取られてから、やっぱり歯車が狂っちゃてたんで。そこらへんを改善していけばいいかなと思いますね。
――あしたの残る3階級に向けて
優勝は本当に相当厳しくはなったと思うんですけど、とにかく総合3位以上、メダルを取れるように、一人でも多く、表彰台だと難しいと思うんで、全員が決勝に上がれて、一人でも多く優勝すればおのずと総合の3位というのは見えてくるんじゃないかなと思いますね。
伊藤奨主将(スポ4=長崎・島原)
――きょうはどんな目標を持って挑まれましたか
きょうは最低3位で、組み合わせも悪くはなかったので決勝にいきたいというのはあったんですけど、うまくいきませんでした
――専大の選手との試合でしたが、前半は良かったのでしょうか
1回去年の秋の東日本学生選手権でやっていて、そのときはコーションのつけ合いみたいな感じで2ー1で勝っていて、ロースコアの展開になるなとは予想していました。それで自分の作戦通りアクションタイムも取れて1ポイントも取れて、思いの外きれいに2点取れたので、取れたというところで安心しちゃってもつれて1点取られたのかなと思います。最終的にあの1点がなければ勝っていたので、そこが勝負の分かれ目だったのかなという部分はありますね。最後もそうなんですけど、前半は悪くなかったと思います。
――最後のラスト30秒攻められていましたが、必死な気持ちでしたか
ルール的に、本当は逃げたらコーションが上がるんですけど、日本の場合だと逃げても上がらないことも多いので、やっぱりあそこの場面だとコーションで反則で2点を取りにいくのではなくて、自分からアクションをかけてタックルだったりで取りにいくべきだったかなとは思います。そこが反省ですね。
――きょうチームメイトの試合などを見ていて、どのように、感じられましたか
やっぱり僕のところで最低でも3位に入って点数を取れなかったというのと、最初の計算だと吉村(拓海、スポ2=埼玉栄)が勝って決勝にいってくれていれば最低9点取れるし、弥十朗(山﨑、スポ2=埼玉栄)も惜しいというところで負けちゃって。松本(直毅、スポ2=神奈川・横浜清陵総合)と齋藤(隼佑、スポ3=群馬・館林)は相手が強くてしょうがない部分もあると思うんですけど、その相手が負けちゃうというのは予想していなかったので、結構予想外の展開で。松本と齋藤に関しては1階級上で出ているので、しょうがないと言えばしょうがないですよね。その分、僕だったり吉村がもっと点数稼がなきゃなぁというのがありますね。弥十朗も1階級上でまた出てくれて、点数を取ってくれて頼もしいですよね。
――団体戦となるとインカレ(全日本学生選手権)などの個人戦と比べて難しさを感じる部分はありますか
インカレは勝ってようが負けてようが全部自分の責任というか、チームに対してはそこまで影響はないですけども、今回僕の場合は侃(岩澤、スポ2=秋田商)と部内戦までやって選考をやっているので、大学の代表としても出ていて、団体戦なので(チームに)貢献しなくてはならないというのであったり、個人戦よりはプレッシャーがあると思いますね。
――チームとしてあしたに向けての意気込みをお願いします
あしたはうちの中量級は強いので、山梨学院大にどれだけ対抗できるか。今回はきょうを見ていると山梨学院大もあまり点数は伸びていないので、接戦接戦で山梨学院大、日大、拓大、国士舘大が競っていると思います。あしたの中量級になるとうちも決勝に行く力はあるし、まだみんな3年生以下なので来年があるので、そこまで気負わず、自分の出せる力をしっかり出せば大丈夫だと思います。
山﨑弥十朗(スポ2=埼玉栄)
――きょうはどのような目標を持って挑まれましたか
目標はトーナメントを見て準決勝がヤマだと思っていたので、準決勝を踏み台にして決勝にモチベーションをあげようと思ったんですけど、やっぱり相手が4年生で団体戦というのもあって本気で来ましたし、思っていたよりもルールが厳しくて最後に1点のところを2点にされてしまったのが大きな敗因かなと思いますね。
――準々決勝の中大の選手ととても楽しそうに試合をされていました。
自分の1個下の後輩で中学からずっと一緒にやっていたので。なのでお互いに楽しくやろうねという感じだけれども本気でやったという感じで。
――ヤマ場と言われていた準決勝ですが、大体の試合の準決勝でいつも拓大の浅井翼選手と当たっているかと思います
いつも団体戦とかでは負けて個人戦では勝つので、すごく自己中だなと自分の中では思っていて(笑)。自分の大事な試合では勝つというのは、そろそろ団体戦でも勝たなきゃダメだなとは思い始めています。
――前半はリードを奪っていましたが、後半では入られる場面が多かったように思います。
前半は攻めて相手にアクティビティタイムをパッシブで取れて、結構自分の中で攻めれているなとは思ったんですけど、決定打が取れなくて。それは多分ことしに入ってスタイルとかを見直してみたら、今のところあまり型にはまっていなくて、自分のスタイルがまだ確立できていなくてちょっと模索中なんですよ。それもブレているのかなと思いますね。ことしあんまり結果が出ていないのはそういう感じなのかなとは思います。
――3位決定戦でも終盤に技を許してしまう場面がありましたが、そのとき焦ったりはしましたか
焦ったりはしていなかったんですけど、守ってくる相手にどう戦うのかというのがまだ分かっていなくて、突破口が開けないので、そうなると準決勝とか3位決定戦のようになると点差も開かず、難しい展開になって、下手したら負けてしまうというかたちになってしまうので、自分の中で1つ持ち味だとか、突破口を開ける強い技術が欲しいかなとは思っています。
――次に出場されるU23世界選手権で何か突破口を見つけたいという気持ちなどはありますか
久しぶりの74キロ級で、やっと自分のメインの階級に出られるので、やはりそこで得るものも得て、結果を残していきたいなとは思っています。
――U23世界選手権での順位など具体的な目標はありますか
メダルは取りたいなというのが大きな目標ではあります。
吉村拓海(スポ2=埼玉栄)
――まず、3位で天皇杯(天皇杯全日本選手権)出場が決まりましたが、きょうの試合を振り返っていかがですか
フリースタイルの試合は半年ぶりっていう感じで、少しずつですけど練習で以前の動きに近づけてこれたと思ってたんですけど、それが全然出せなくて、今回の試合で。本当組み合わせが良くて、本当にそれだけで3番に入れたんで結果的には、悔しいですけどとりあえずほっとはしてます。
――敗れた試合はテクニカルフォール負けとなりましたが、及ばなかった点はどういったところでしょうか
体が小さい、この階級だと体が圧倒的に小さいっていうのと、最初のもつれっていうのはいつも練習してるんですけど、そこで相手に上に乗られてしまって失点したのが大きな敗因ではないかなと思います。
――その後の敗者復活戦はいいところもだいぶ見せられたと思いますが、いかがでしたか
いやでも本当にそこは組み合わせが良くて、格下の選手ばかりだったので、落ち着いて少しでも練習したことを出せればいいかなと思ってました。
――これで天皇杯出場も決まりましたが、今後へ向けて強化していきたいポイントなどは
計量システムが変わって日々の食生活っていうのが本当今まで以上に大切になると思うんで、まずレスリングの前にそういう食生活っていうのを気を付けて、またレスリング以外の朝練のウエイトとかランニングでも今まで以上に気合を入れてやっていかないといけないと思うので、そういうレスリングのマット以外でも常に練習だっていうことを忘れないで、勝つために生活していければいいかなと思います。
――天皇杯での目標は
とりあえず1勝して明治乳業杯(明治杯全日本選抜選手権)、次の全日本選手権の出場権を取るっていうのを目標に頑張りたいと思います。