明治杯全日本選抜選手権(明治杯)からわずか3日後に行われた東日本学生春季新人選手権。1日目には男子フリースタイルが行われ、86キロ級に出場した山﨑弥十朗(スポ2=埼玉栄)が全4試合で無失点の試合運びで優勝を果たした。70キロ級では梅林太朗(スポ1=東京・帝京)が準決勝で宇井大和(スポ2=和歌山・新宮)に勝利し決勝に進んだが、3-4で敗れ、惜しくも2位に。一方で大会序盤で負けてしまった選手と勝ち進んだ選手との間に差を感じる試合になった。
ワセダの初陣を切った70キロ級の野本州汰(スポ1=群馬・館林)は1回戦でバックポイントやテークダウンでポイントを重ね、テクニカルフォール勝ちを収める。しかし2回戦では試合終了間際で場外ポイントを許してしまい、2-3で敗北を喫した。同じく70キロ級に出場した宇井、梅林は準決勝で激突。「ノーガードの打ち合いだった」と太田監督が評する激しい試合となった。第1Pで宇井の足を取った梅林がバックポイントを奪い先制点を奪う。その後は宇井が技を決め切るまであと一歩というところで梅林が得点を許さない。第2Pでは梅林が宇井の片足をつかみテークダウンで追加点を重ね、4-0で梅林に軍配が上がった。決勝に進んだ梅林は何度も積極的な攻めを見せるが、技を取り切ることができず相手に逃げられてしまう。結局テークダウンを奪うことはできず3-4で惜しくも敗戦。2位となった。
真剣勝負の中でも試合を楽しんだ梅林(左)と宇井(右)
坂井剛光(スポ1=福岡・小倉商)は57キロ級に出場し初戦をフォールで勝利を収め幸先の良いスタートを切ったが、2回戦ではポイントを奪うことができずここで敗退してしまう。97キロ級の松本直毅(スポ2=神奈川・横浜清陵総合)、57キロ級の小田修一郎(スポ2=大阪・関大付)はテクニカルフォール負けを喫し、2回戦で姿を消した。一方86キロ級に出場した山﨑は初戦から相手選手を寄せ付けない圧倒的な強さを見せつけ、快勝。「ポイントを取らせないことを意識した」(山﨑)という言葉通り、全試合を通じ無失点でテクニカルフォールまたはフォールで試合を決め、同世代では頭1つ抜きんでた力を見せつけた。
圧倒的な強さを見せつけた山﨑
ここ最近『底上げ』をテーマに取り組んできたワセダであるが、もう一度チーム全員が意識すべき課題としてこれが浮き上がった試合であった。あしたはきょう大会序盤で負けてしまった選手の多くが得意とするグレコローマンスタイルなだけに、期待したいところだ。また東日本学生女子選手権も並行して行われる。明治杯で好成績を残した小林奏音(スポ3=長野・佐久長聖)の優勝に期待がかかる。
(記事 杉野利恵、写真 皆川真仁)
※フリースタイルは10点差、グレコローマンスタイルは8点差がつくとテクニカルフォールで試合終了となる
結果
フリースタイル
▽57キロ級
坂井 2回戦敗退
小田 2回戦敗退
▽70キロ級
野本 2回戦敗退
宇井 3位
梅林 2位
▽86キロ級
山﨑 優勝
▽97キロ級
松本 2回戦敗退
コメント
太田拓弥監督
――きょう1日を総括していかがでしたか
弥十朗(山﨑、スポ2=埼玉栄)が1人優勝したんですけど、それ以外はダメで。太朗(梅林、スポ1=東京・帝京)は決勝で負けてしまいましたし。1年生は2回戦で負けてしまって、もう少し上にいけるかなと思って挑んだんですけど、チームで上位3番に入った者と、2回戦で負けてしまった者との差があるのかなというのを正直感じましたね。その差を埋めない限りは優勝できないのかなと思いました。
――山﨑選手は今大会どのような位置付けで臨ませたのでしょうか
全日本選抜(明治杯全日本選抜選手権)終わった直後で、86キロ級で大学選手権(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)に出す予定なのでどれだけできるのかというのを試すような試合だったのかなと思います。本人に出る、出ないは任せていました。
――山﨑選手の決勝はいかがでしたか
やろうとしていることは見えてきているので良かったんじゃないかなと思います。どちらかというと弥十朗はスロースターターなのでもっと早い段階で仕掛けて欲しかったなというのは課題ですね。
――梅林選手はタックルに入った時の処理が課題なのでしょうか
処理のところと、相手も高校時代に実績を残している選手なのでやりづらかったんじゃないかなと思います。ただ積極的に仕掛けていったところなんかはある程度修正すれば楽に勝てる相手だったので、取れるようなところを取り切れなかったというのが課題に出たので、負けたことが彼にとってプラスになると思います。
――太田監督はワセダの選手同士の戦いをどのような気持ちで見ているのでしょうか
いい試合をしてくれと。ノーガードの打ち合いをしてくれ、という感じですね。なので太朗と大和(宇井、スポ2=和歌山・新宮)の試合は褒めました。良い試合だった、と。大和もグレコローマンの選手ですけどそれなりに良い勝負をしてくれましたし、でもそれの疲れがあったから(梅林は)決勝戦で負けちゃったのかもしれませんし(笑)。いつも言っているのは下克上というか下の者が勝ってほしいというのは言っていますね。だいたい下の者が勝つことによって、上の者を押し上げているところもあると思うので。マットに上がれば先輩も後輩もないので。下からあおっていけるようなチームにならないとダメですね。それに対して立ちふさがるチームになればいいなと思いますね。下の者には勝ってほしい、上の者には意地を出してほしいと思って見ています。
――きょうはそういう意味でも梅林選手と宇井選手の戦いは良かったのでしょうか。
スタイルは違いますけど、内容的には本当に良かったかなと。ノーガードの打ち合いだったので良かったかなと思います。
――2回戦で負けてしまった選手は今後どういうことを強化していく必要があるのでしょうか
レスリングのセオリーがないですね。どういうふうにやってどういうタックルを決める、というようなものが、まだまだ力がないので行き当たりばったりのようなレスリングをしているというのが結果がついてこない原因かと思います。インカレ(全日本学生選手権)や秋の大会に向けてどんなことをやっていくのかというのをしっかりと課題として明確にしていきたいと思いますね。
――ミーティング後にお話しされたことは何かありますか。
チーム内で格差があるというのと下の者がもっと上に上がらないといけないというのと、弱くても強い連中よりすごい練習をやるとか秀でたものを出せということは言いましたね。結構強い者って純粋な気持ちを忘れちゃうんですよね。だからなかなか結果の出ない者がひたむきにやる姿勢だったりとかそういったものを勝てない者は見せろと。過去に優勝していた頃は大学から始めた者とか高校時代にあまり実績のない者がすごい一生懸命にレスリングに取り組んでいて、少なからず強い者に影響を与えていたんですよね。結果だけを残すのではなくて、そういったところを見せてその後大学3、4年生のインカレで上位に入ったり新人戦で優勝するとかいうようなときに本当のチームの強さというのが出てきます。今だと強い者も弥十朗とか太朗とか大和もそうですし誰からも尊敬できるくらいレスリングに真摯(しんし)に取り組んでいるんですけど、まだ結果が残せていない者も同じようにやっているんですよ。それと同じようなことをやっているのでは、結果を残しているものを追い越せないので、そういったチーム事情にならなきゃいけないなという話はしましたね。
――あしたのグレコローマンスタイルと女子に向けて一言お願いします。
きょう勝てなかった者はとにかく自分のかたちというものを作って結果を残してほしいなと思いますね。女子に関しても同様に自分のかたちを作って結果を残してほしいと思います。
山﨑弥十朗(スポ2=埼玉栄)
――まず今大会の位置付けはどういったものでしたか
2つあって1つはここで優勝したら韓国遠征があるということで、遠征に行きたいなと思って参加したのと、もう1つは明治杯(明治杯全日本選抜選手権)終わって、明治杯終わった後試合がちょっと1か月弱空くので、気持ちの面でやっぱり目標というのがないと、自分の中でだらけてしまう部分があるので。明治杯は結構大きな大会なので燃え尽きちゃうっていうのが毎回自分の中であって、やっぱりそこで燃え尽きないために、この試合にちゃんと気持ちを持っていけるよう、しっかり熱を冷まさないようにするという位置付けでしたね。
――韓国遠征というのは(8月の)世界ジュニア(世界ジュニア選手権)の前に海外の選手と戦いたいという気持ちがあったのでしょうか
いや(韓国遠征は)その後で、やっぱり1つの海外の経験は大きなものになるので、行っときたいなという気持ちですね。
――明治杯から日は浅いですが疲労などはありませんか
疲労はありましたけど、もう3日経ったのでだいぶ抜けたので、そんなに気になんなかったですね。
――きょうは相手選手とかなり実力差があるようでしたがどんなことに気を付けて試合に臨んでいきましたか
やっぱり失点をしないということですかね。どんなに強くても失点しないって結構難しいことなので、ポイントを取らせないということを意識してやりました。
――世界ジュニアに向けて今後どのような取り組みをしていきたいですか
やっぱり明治杯の課題だった体力面だったり、精神面だったりをこの1か月弱で、鍛え上げていこうかなと思ってます。