前日までの2日間で優勝者はゼロ。最終日、チームの期待を背負って3選手が出場した。男子フリースタイル(フリー)70キロ級の伊藤駿(スポ3=京都・網野)は昨年まで早大のエースだった多胡島伸佳(平29スポ卒=現・KATSURA-group)に敗れて3位、同じく男子フリー70キロ級の梅林太朗(スポ1=東京・帝京)もベスト8に終わる。女子フリー60キロ級の香山芳美(スポ4=東京・安部学院)はまさかの1回戦負けを喫し、結局優勝者は出なかったが、各々収穫と課題を手にした大会となった。
先月の東日本学生リーグ戦(リーグ戦)で新人ながら個人全勝と活躍した梅林太朗(スポ1=東京・帝京)はこの日も大器の片りんを見せた。初戦の相手はリーグ戦でも対戦した拓大の選手。リーグ戦では勝ちはしたものの攻めあぐねたが、今回は相手の右足を取ってバックを取るかたちで再三ポイントを奪い、10-4と圧勝した。勢いそのままに2回戦では第1シードからバックポイントで先制点を奪う。しかし、その後は地力の差を見せられた。「スタミナは負けていないなと思った」と終盤も攻め続けたが技術と経験の差は埋められず、3-8で敗れベスト8に終わった。女子フリー60キロ級に第2シードで登場した香山は前半終了間際に同点に追い付いたものの、試合を通して計4度のバックポイントを奪われ、4-8でまさかの1回戦敗退に終わった。
格上の相手を場外に押し出し、意地を見せる梅林
伊藤駿は2回戦からの登場で高校の同級生と対戦。「(お互い)手の内が分かってる相手でずっとやりづらかった」と前半をリードされて折り返す。後半に入っても流れをつかめずさらにリードを広げられたが、4分45秒に4点の投げ技が決まり、同点に追い付く。さらに直後にアンクルホールドを5連続で決め、終わってみれば16-6のテクニカルフォール勝ちとなった。準決勝の相手は昨年まで絶対的エースとして早大をけん引してきた多胡島伸佳(平29スポ卒=現・KATSURA-group)。両者は昨年もこの大会で対戦しており、そのときは多胡島に軍配が上がっていた。前半は伊藤駿がパッシブを取られ、多胡島の1点リードで折り返す。しかし後半開始早々、伊藤駿が片足を取ってから両足を取る得意のタックルで多胡島を場外へ押し出し、同点に追い付く。このまま試合が終了すれば規定上、ラストポイントを奪っている伊藤駿の勝利となるところだったが、その後は多胡島の底力が勝った。逆転を許すとさらに連続でアンクルホールドを決められてテクニカルフォール負けを喫し、3位で大会を終えた。
試合後互いに健闘をたたえる伊藤駿(左)と多胡島(右)
優勝者なしと結果的には満足のいくものではなかった今大会。だが、「リーグ戦での負けが今回に生きてる」と太田拓弥監督が語ったようにラスト30秒での粘りというチームとしての課題に改善は見られた。リーグ戦で敗れてからも各自がモチベーションを高く持って練習に取り組んできたことを感じさせる大会だった。東日本学生春季新人選手権、東日本女子選手権と試合は続く。今大会出場できなかったメンバーも結果を残して大舞台への切符をつかみ、チームの底上げを図りたい。
(記事 皆川真仁、写真 佐々木一款、杉野利恵)
※フリースタイルは10点、グレコローマンスタイルは8点差がつくとテクニカルフォールで試合終了となる
結果
男子フリースタイル
▽70キロ級
伊藤駿 3位
梅林 ベスト8
女子フリースタイル
▽60キロ級
香山 1回戦敗退
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コメント
太田拓弥監督
――香山選手(芳美、スポ4=東京・安部学院)が初戦敗退という結果に終わりましたが敗因は
やっぱり本人にも話したんですけど、負けるときはタックルちょっと強引に突っ込んで取れたら勝てるんですけど取れなかったときに大体負けるんですよね。まあやっぱり1つ2つ工夫が足らなかったかなとは思いますね。
――少し焦ってた部分はあったと思いますか
まあもう少し相手を崩して入っていくようなパターンを身に付けないといけないのかなと思いますね。
――伊藤駿選手(スポ3=京都・網野)は初戦逆転しましたがいかがでしたか
ちょっと、高校も同じなので手の内もお互い知っている中で攻めづらかったと思うんですけどそれでも後半良く相手をテクニカルフォールまでもっていけたのは良かったかなと思います。
――多胡島選手(伸佳、平29スポ卒=現・KATSURA-group)との試合はいかがでしたか
お互い手の内知ってて攻めづらかったかなとも思いますけど、再三再四言ってたのはタックル入った後のその動作のところで動きが止まってしまうと、まあ膝が柔らかいので変に足首持たれて結局0点に抑えられるからということを話してました。けれど結局2回いいタックル入ったのをポイントにつなげられなかったのでそこがちょっと敗因かなと思いますね。
――一時ラストポイントで勝てる状況になりましたが、そこからの戦いぶりは
やっぱり相手も全日本も取ってる選手なのでなかなかお互い手の内も分かってる中で、まあでもあそこはやっぱりグラウンド返ってしまうともう勝負にならないですね。
――梅林選手(太朗、スポ1=東京・帝京)は好調に見えましたが
ジュニア(JOCジュニアオリンピック杯)のときにああいったふがいない試合しましたけどもリーグ戦(東日本学生リーグ戦)で結果も残すことができて結構大学でもやれるという自信がついたのが1回戦でもリーグ戦で対戦している相手に、リーグ戦では接戦だったんですけど今回は大量得点で勝てたので。あの選手も学生で2番になってる選手なのでそこにも良く勝ちましたし、次の試合はちょっと最初にグラウンドで返し切れなかったので、また逆に返されたのでそこが敗因の1つで、もう少し工夫したようなレスリングをしていかないと、今のところ力ありますけど相手に読まれたときにどう対応するのかというのが課題としては言っていたかなと思います。
――試合ごとに調子を上げている印象がありますが、練習でもそういった様子は見られますか
練習だとやっぱり相手が強いので、多胡島だったり伊藤駿だったり、米澤圭(スポ3=秋田商)とかなかなか勝ち切れないんですよね。普段の練習で勝てないので、自分より強い相手とやるのがやっぱり強くなる秘訣だと思うのでそれが試合にもいけてるんじゃないかなと思います。
――チームとして課題に上げていたラスト30秒は大会通していかがでしたか
そこはやっぱりリーグ戦で、3試合接戦でラスト30秒で勝ち切れなかったところはもう練習中でも練習前後のミーティングでも結構口うるさく言ってきたので、今回初日の芳美、昨日の弥十朗(山﨑、スポ2=埼玉栄)、米澤圭、まあこのあたりなんかは特に勝ってるところでラストしっかり守り切って、でもまだまだもうちょっと余裕がある試合してほしいなと思いますね。でもそのリーグ戦での負けが今回に生きてるなというのはすごく見て取れますね。
――来週は東日本学生春季新人戦と東日本学生女子選手権がありますがそれに向けて
今回出れなかった者も半分ぐらいいるので、新人戦で優勝すれば年末の全日本(天皇杯全日本選手権)に出れるのでこの大会に1人でも多く出せるように、優勝者を出せるように頑張らしたいなと思います。
伊藤駿(スポ3=京都・網野)
――準決勝は多胡島選手(伸佳、平29スポ卒=現・KATSURA-group)との試合でしたが特別な思いはありましたか
ちょうど1年前のこの明治杯(明治杯全日本選抜選手権)で同じ準決勝で当たってて、そのときも逆転負けしちゃったんで今回こそはと思って挑んだんですけど、案の定やっぱり得意技のアンクル(ホールド)に逆転許してしまってちょっと情けないなと思いました。
――1年前と比べて手応えはどうでしたか
1年前のときは最初始まってからまぐれというか勢いで4点リードしてあと逃げ切ってたって感じだったんですけど今回はタックルも足は触れてたし、タックルで場外だったんですけどポイントも取れたし、まあ成長してるかなとは思いました。
――一時同点に追い付いて、ラストポイントで勝てる状況になりましたが、そこから攻めと守りだとどちらに比重を置きましたか
自分守りできないので、攻めてタックル入って足触ってそこで時間稼ごうかなと思ってたんですけど、やっぱり最後カウンターでバックに入られてそのままグラウンドで決められて、まあ読まれてたのかなと思いました。
――初戦はリードを許す状況でしたがどのような気持ちでいましたか
あれも一応リーグ戦のときに1回戦ってて、高校も同期で(お互い)手の内が分かってる相手でずっとやりづらかったんですけど、最後4点差のときに得意技の片足からの両足タックル決まって、流れでアンクル(ホールド)決まったんでそれは良かったと思います。
――今後に向けての目標や見えた課題などは
最近のリーグ戦も今回の試合も右足ちょっと触らせすぎだったんでちょっとそこを次インカレ(全日本学生選手権)なので修正して試合挑んでいきたいなと思います。
梅林太朗(スポ1=東京・帝京)
――きょうの調子はいかがでしたか
良いわけでもなかったんですけど、悪いわけでもなかったのでいつも通り体は動いていました。
――1回戦の相手は東日本学生リーグ戦で戦った相手だと思いますが、その時より余裕があるように見えました。振り返っていかがでしたか
同じ展開になってしまった場合、1つ取られたら負けてしまう。でもここがゴールではないのでいろいろと試してみてそれがうまく引っ掛かった部分と、それをやりにいって取られてしまった部分がどっちもあったので、取れる部分を増やしていって、取られる部分は減らしていければいいかなと思います。
――2回戦の第1シードの選手相手にも先制点は取りましたが、振り返ってみていかがですか
強かったですね。構えも崩れなくて、いつもはだいたい自分が先制点を取ってそこから自分のペースで試合運びをするんですけど、先制点はとったんですけどうまく自分のペースをつかみきれない部分がありました。倒されただけなら良かったんですけど、倒された後、1回返されてしまったのでそこで相手にリズムをつかませてしまった部分と今回先輩方2人と一緒に表彰台に立ちたいという気持ちはあったんですけどこれが自分の実力なんだなと把握できたので、オリンピックの予選までがあとちょうど2年なのでその2年越しで勝てるように、課題も出たので取り組んでいきたいなと思います。
――課題というのはどういった部分なのでしょうか
スタミナは負けていないなと思ったんですけど、パワーであったり技であったり試合運びであったりまだまだ経験不足な部分もあって、僕はまだ19歳なんですけど相手は25歳ぐらいで全然経験の差があると思うので、それも実力だと思うので今は負けてもいいと思っているので、全部出すだけ出していろいろ経験して2年後は勝てるようになりたいなと思います。
――練習では多胡島選手(伸佳、平29スポ卒=現・KATSURA-group)や伊藤駿選手(スポ3=京都・網野)と練習されていると思いますが
あと1つ下の階級の米澤さん(圭、スポ3=秋田商)や上の階級の山﨑さん(弥十朗、スポ2=埼玉栄)だったりと毎日いい練習ができていて、たぶん伸びしろが1番あるのは自分だと思っているんで、日頃の練習から課題を持って先輩達に教えてもらいながらまたあしたから頑張ろうと思います。
――次の試合は新人戦(東日本学生春季新人戦)でしょうか
疲れていますし体重もあるのですが、一応出る方針でいます。新人戦の次が8月のインカレ(全日本学生選手権)と期間が空いているので出れるものなら出ておきたいので、出ます。
――新人戦での目標は優勝でしょうか
そうなんですけど、ケガしないのを前提にどっちも優勝できたらいいんですけど、いろいろと試していきたいなと思っています。