1年間チームを引っ張ってきた吉川航平主将(社4=秋田商)と堀江一馬(社4=富山・富岡商)。共通の趣味を持ち、プライベートでも仲が良いという両選手。ワセダのユニホームで挑む最後の大舞台を前に、後輩への思いからオフの過ごし方まで幅広く語っていただいた。
※この取材は11月27日に行われたものです。
「後輩には感謝し切れない」(堀江)
初めて天皇杯出場の資格を手にした堀江
――今シーズンは団体戦、個人戦、それぞれ振り返っていかがでしたか
吉川 団体戦は最近特にリーグ戦(東日本学生リーグ戦)で成績を残せていなくて、非常に苦しい時期でしたが、大型新人の山﨑弥十朗(スポ1=埼玉栄)や吉村拓海(スポ1=埼玉栄)、米澤圭(スポ2=秋田商)など後輩たちの活躍がありました。その分、4年生たちも試合前の雰囲気づくりも良いかたちで仕上がっていたと思います。その結果、3位には終わってしまいましたが、それなりにチームとしては戦えましたし、来年以降につながる試合になりました。全グレ(全日本大学グレコローマン選手権)、内閣杯(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)含め、そのような感じだったと思います。個人戦は、ことしは成績は全然良くなくて、あまり自分の持ち味を出せた試合がなかったと思います。
堀江 吉川が言ったように、本当に後輩のおかげと言ってもいいくらいです。後輩たちの頑張りで、団体戦をすごく楽しく戦えました。試合でリーグ戦は出られていなかったので、そこは心残りで、出たかったなという気持ちもあります。でも、トータルで見るとすごく楽しいリーグ戦の期間で、今後の人生でもあんなにみんなで一丸となって、1つの目標に向かってやっていくというのは、なかなかないことだと思います。本当に良い経験をさせてもらいました。後輩には感謝し切れないです。個人的には勝てませんでしたが、団体としては良い1年だったのかなと思いますね。個人戦は、結局試合に出たのが、インカレ(全日本学生選手権)と全グレだけでした。インカレも運もあって勝った印象があって、まあ、でも、今思えばこんなもんなのかなと。個人戦に関しては良かったんじゃないかな、とそれくらいの感じで捉えていますね。
――それらの試合の中で特に印象に残っている試合はありますか
吉川 全グレの時に、宇井(大和、スポ1=和歌山・新宮)が日体大の下山田培に勝った時は、僕はセコンドに座っていたんですが、飛び跳ねましたね。相手選手と自分も仲良くて、正直宇井じゃ無理だと思っていました(笑)。その前の国士舘大の大平稜也にもちょっときついかなと、前日2人で話していたんですが、大平にまず勝っちゃって。でも、さすがに下山田はと思っていたら、投げ技が決まって。入学してきてから僕が教えてきたことは間違えじゃなかったです(笑)。チームの試合、自分の試合含めて、それが一番印象に残っている試合ですね。うれしかったですし、すごいなと思いました。
堀江 リーグ戦で、米澤が指が外れちゃって、試合中に自分で何度も戻したりしながらも、勝ってくれたというのは、個人的に印象に残っています。本来指が外れたら、まともにできないじゃないですか。その中でも戦ってくれて、勝っちゃうあたりが本物なんだなと思いました。有難いなと思いながら、上から応援していました。
吉川 僕も去年外れたけどね。明大戦の時、僕も小指が90度曲がってしまって、コーチ(太田拓弥コーチ)に棄権するかって言われたんですが、自分ではめて、試合に出ました。高校の『秋商魂』です(笑)。
堀江 秋田商業すごいなと思いました(笑)。
吉川 米澤に僕が教えてきたと。
一同 (笑)。
――コーチも指が外れながら戦ってくれたことに対して頑張ったとおっしゃっていました
吉川 指外れたくらいな試合できません?(笑)。
堀江 僕は外れたことないから。
吉川 肩はさすがに駄目ですけど。でも、やっぱり出身高校ですかね。秋田商業だったらそんなことにへこたれないだと。
――後輩のお話が多いですが、お二人から見て下級生の印象はいかがですか
吉川 風通しがすごく良くて、良いチームになっているんじゃないかなと思います。上からの指示待ちというのはワセダらしくありませんし、後輩からも意見を言ってくれています。練習では、ライバル意識を持って切り替えてできているので、後輩のイメージといいますか、チームとして良いところですね。
堀江 本当に風通しは良いですね。良すぎるくらいです。僕は寮の部屋が1年生と同じ部屋なんですが、毎日のように1年生が部屋に遊びに来ます。
吉川 僕なら絶対無理だわ(笑)。
堀江 僕が1年生の時に4年生の部屋に行けたかと思うと、無理です(笑)。こないだは松本(直毅、スポ1=神奈川・横浜清陵総合)が部屋に来て、「ハリーポッター録画していいですか」って(笑)。小生意気なやつらですが、それなりに僕も楽しませてもらっているので、彼らのおかげで寮生活や練習もできているのかなと思いますね。
――雰囲気の良いチームをつくるために、心掛けていたころはありますか
吉川 怒る時はたまに怒りますが、そうじゃない時は…。僕からにじみ出る人の良さがチームに伝わっているんじゃないですかね(笑)。でも、代々ワセダは先輩後輩がギシギシしていることがないので、風通しが良いのはワセダの色なんだと思います。
――特に仲の良い後輩はいらっしゃいますか
堀江 松本ですかね(笑)。松本に関してはペットみたいです。(後輩たちとは)分け隔てなく仲良くやっていると思いますね。
部を離れて
同じ学部の2人。同じ趣味を持つなど共通点も多い。
――お二人とも社会科学部ですが、プライベートも一緒にいられることが多いんですか
吉川 1年生の頃はありましたが、今はそんなに。僕の研究したい分野が彼とは違うので(笑)。僕が教職をとっているので、それで違う方向になったっていうのはあるよね?むしろ主務の丸山(大三郎、教4=埼玉・早大本庄)が教育学部で、本キャン生がこの三人なんですが、丸山とは一緒にご飯を食べに行ったりしますが…。堀江は今期学校に来ているか分からないです(笑)。
堀江 ちょっと忙しくてね。いろいろあるんです。
――吉川選手は多胡島伸佳選手(スポ4=秋田・明桜)と10年以上の付き合いとお聞きしました
吉川 大学の同期の中でも、一生の付き合いになると思います。小さい頃から道場が一緒でした。今も飲みに行った入りしますが、階級もスタイルも違うので。彼とフリースタイルやったら全然かなわない…いやでも、どうなんだろうね?
堀江 五分じゃない?!
吉川 五分ってことにしてください(笑)。
――吉川選手はグレコローマンスタイル(グレコローマン)とフリースタイル(フリー)どちらが良いんでしょう
吉川 僕はグレコローマンしか基本的に練習していないんですよ。フリースタイルはたまに息抜きとして手出していたんです。でも、グレコローマン何なんですかね。全く成績残せない。
堀江 (笑)。
――天皇杯(天皇杯全日本選手権)もフリースタイルですよね
吉川 グレコローマンは資格がないので。出たかったんですけど、何なんですかね…。
――現在部からは離れられて、どのように過ごされていますか
堀江 僕はもう忙しいですね。車を運転したり、バイトしたり、卒論をやったり。あとはもうごろごろしています。
吉川 僕は内閣杯までは練習して、そこから1、2週間くらい一切練習せずに、休みたいと思っていました。最近は個人的にみんなが見えないところで、トレーニングを再開しています。結構体もでき上がってきています(笑)。授業の合間に道場で練習したりしています。あとは、寮でごろごろするというよりは、外でアクティブに過ごそうかなと思っています。
――乃木坂46のファン活動の方はいかがですか
吉川 ファン活動の方は良好ですね。
堀江 (笑)。
――推しメンは変わらず
吉川 若月佑美さんですね。断言しているので。
――握手会も行かれるんですか
吉川 行きますね。それこそ彼もなんですよ。
堀江 名古屋の握手会に行くために、頑張って免許取っています(笑)。
吉川 ライブも行きますしね。(予定が詰まっているので、)だから早めに体を絞りにいってるんです。
堀江 僕も早めに仕上げないとな。
――堀江選手の推しメンは
吉川 ここ重要よ?どっちいくか。
堀江 そうですね…、山崎怜奈かな。もう一人は殿堂入りしていて、推しメンとかの領域じゃないので。何の話やねん(笑)。
――去年は乃木坂のTシャツを着られていましたが
堀江 ことしも着てくるのかなと思ってたけど。
吉川 これ着てるじゃん!きょうは『闘魂』を着ています。これも一応乃木坂に関連したTシャツなんです。これ言うの?(笑)。
堀江 写真撮る時恥ずかしい。
吉川 昔、乃木坂の某番組で体力測定企画をやった時に、若月佑美さんが着ていたTシャツに『闘魂』って書いてあったんです。以上です(笑)。
――他に趣味はありますか
吉川 僕は掃除が好きです。最近模様替えしたんです。週1くらいで掃除機を掛けてやっています。片付けると気持ち良くて、やっています。
――こだわりはありますか
吉川 今の部屋のこだわりは、部屋を広く見せたいというのがあって、床に物を置かないようにしています。生活感を消し去りたくて、床に物を置かないようにしたら、かなり広くなりました。
堀江 びっくりしたよ。
吉川 小さい子たちがぎりぎりレスリングできるくらいじゃないですかね(笑)。
――同部屋の人の物も片付けることは
吉川 丸山はもともとそんなに汚いわけじゃないので。僕が同部屋を選ぶ時に、4年生の権限を使うんですけど、いびきかかないやつと部屋がきれいなやつというのが大前提なんです。そうすると、堀江とか松本は除外なんです。残ったのが丸山です。なのに、最近あいついびきかくようになったんです(笑)。
堀江 アラームで起きないしね。
吉川 スヌーズにして何回もかけるから迷惑なんです(笑)。
堀江 部屋の外まで聞こえてくる音量なのにピクリともしない。逆にすごいよね(笑)。
吉川 一日18時間寝てるから。休みの日はずっと寝てます。来年から大丈夫なんですかね(笑)。
――堀江選手の趣味は
堀江 続く趣味があんまりなくて。今はお絵かきロジックですかね。小さい頃にやっていて、こういうしょうもないのを今はやっています。多分、一週間くらいで飽きますね。全然続かないので、その都度趣味は更新していきます(笑)。
――部屋の掃除はされるんですか
吉川 しないです。彼はしないです。
堀江 いや、しないわけじゃないよ。
吉川 僕はこの部の寮生に言いたい。掃除と片付けの定義を間違えている。まず、物を寄せているだけなんですよね。たたみます、それを置きました、っていうのは掃除じゃなくないですか。掃除っていうのは、掃除機をかけて、雑巾がけをしてというのが、掃除だと思っています。他の部屋で掃除しろって言っても、これは掃除じゃないぞ。これは部屋を片付けただけだから、と思うんです。どうなんですか。
堀江 その通りだと思う(笑)。
――最近漫画は読まれていますか
吉川 最近読んでいるのは、『東京喰種トーキョーグール』(石田スイ作、集英社)です。僕の推しメンの若月さんが読んでいるっていうのを聞いてから、読み始めるようになりました。あれは面白いですね。でも、最近は恋愛漫画よりも小説の方が多いです。僕がおすすめするのは『僕は明日、昨日の君とデートする』(七月隆文作、宝島社)って知ってますか?映画になる前から僕はちゃんと読んでいたんです。あれはぜひ読んでほしいです。泣きかけましたもん!渋谷のパンケーキ屋にいましたけど。
一同 (笑)。
堀江 ちょいちょいおしゃれなワード入れてくるな(笑)。
――堀江選手は読まれますか
堀江 ぼちぼちですね。少女漫画だったら、『思い、思われ、ふり、ふらで』(咲坂伊緒作、集英社)っていう『ストロボ・エッジ』(咲坂伊緒作、集英社)の作者のやつとか…
吉川 え、少女漫画読んでるの?(笑)。
堀江 それだけだよ!
吉川 正直に言いなよ。
堀江 いや、本当に!(笑)。『背筋をピン!と~鹿島高校競技ダンス部へようこそ~』(横田卓馬、集英社)っていう少年ジャンプの漫画が面白いですね。あれはまっているくらいです。
「天皇杯はずっと憧れてきた舞台」(吉川)
『闘魂』Tシャツを着て、天皇杯への思いを語る吉川
エトキ
――新体制となりましたが、今の3年生に何かアドバイスはありますか
吉川 来年のチームは難しいですよ、絶対(笑)。でも練習も私生活もメリハリをつけて、オンとオフの切り替えをしっかりすれば、ぎちぎちしているのが嫌なやつも、真面目なやつも楽しめると思います。その切り替えをしっかりできれば良いチームになるんじゃないかなと。
堀江 自分の立ち位置がわかれば楽だと思います。キャプテンとかそういう役職じゃなくて、部の中で自分がどういうポジションなのか、どういう立ち居振る舞いをすればチームがうまく回っていくのか、ということを早く分かってしまえば、自分としてもチームとしてもやりやすくなると思います。僕個人としては、自分たちの代になってキャプテンでも副キャプテンでもない平部員の中でできればナンバー3くらいの立ち居振る舞いをするのがベストじゃないかなと思っていたので。今の3年生は人数少ないので一概に言えないですけど、自分なりのポジションを見つけたら良いんじゃないかなと思います。他人に与えられたポジションだとどうしても窮屈になって反発しちゃう部分があると思うので。何か一つ自分で見つけられたら楽しくやれるんじゃないですかね。
――お互いのレスリングの印象は
吉川 堀江は練習も試合も、波が結構あって。良いときは味が出ていてすごく良いんです。悪いときは試合前の感じですぐ分かるんですよ。良いときに乗ればすごく強いんですけど。なんなの、それは?(笑)。
堀江 自分でもよく分からないんですけど、きょうは何やってもダメだなというときは、開き直ってやるしかないなと思っています。はたから見てもきっと調子の良し悪しは分かりやすいと思います。
吉川 天皇杯でも調子が良かったら結構良いところまでいけるんじゃないですかね。
堀江 吉川はずっと(コーチなどから)「ガツガツ行け」と言われ続けてきたと思うんですけど、細かい部分が憎たらしいほどうまいいんですよね。腕をとる技とか、タックルに入られてからの自分のポジションとか体勢の取り方とかがめちゃくちゃうまいです。そこはすごいなと思います。だから正直ガツガツするよりも、そういうレスリングをやった方が良かったのかなと思います(笑)。自分がコーチだったらそうさせてますね。
――ご自身で思う強みは何でしょうか
吉川 フリーで成績を出せたときに思ったんですけど、グレコローマンを練習したことでフリーの選手からしたら想定外の動きができるようになったのかなと。それが良いときも悪いときもあるんですけど、フリーで勝てていたのはそれが上手くはまったときだったのかなと思います。そこに関してはグレコローマンをやっていて良かったなと思いますし、自分の中で良い点として挙げるならそこかな。
堀江 何だろうな…。タックルのスピードくらいかな。
吉川 自分で言いましたねー!(笑)。さぞかし速いんだろうなあ(笑)。
堀江 (笑)。調子良いときはね!(笑)。あとは腕の力くらいかな。力負けはしないと思います。
――天皇杯でライバルとなりそうな選手はいらっしゃいますか
吉川 僕の階級に銀メダリストの樋口黎選手(日体大)が出てくるんですよね…。うーん…しいてライバルを挙げるとすれば、去年天皇杯の3位決定戦で戦った高校の先輩である菊池憲(秋田県レスリング協会)さんですかね。一度仕事の関係で現役を退いていたんですけど、復帰するということなので。菊池先輩には負けたくないですね。そろそろ勝って引退していただこうかなと思っています(笑)。
堀江 誰だろうな…。まあ強い人いっぱいいますからね。うまいこと波が来て、良い組み合わせを引き寄せて、1つでも勝てれば良いかなと。まずそこが目標ですね。
――天皇杯に特別な思い入れはありますか
堀江 ないといったらあれですけど…ほとんどないですね(笑)。
吉川 小さい頃からレスリングをやっている選手は誰もがそうだと思うんですけど、天皇杯はずっと憧れてきた舞台ですね。マットが一段上にあるだけで特別ですし、憧れていた思いはすごく強いですね。なので、その舞台に恥じない戦いをしないといけないと思いますし、そういう思いでやるつもりです。
――それでは天皇杯に向けての意気込みと目標を教えてください
堀江 まずはケガをしないように。そして一つでも勝てれば良いかなと。最後の公式戦なので何よりも楽しみたいですね。今までは大学の名前を背負ったりだとかプレッシャーが結構大きかったんですけど、個人的に楽しくやれればいいかなと思っています。
吉川 やるからには勝ちたいという思いがあります。技術的な面よりも、根性だとか負けん気とか内面的な部分を押し出してやっていきたいですね。それが来年以降のチームに少しでも影響してくれればなと思いますし。背中で語る試合にしたいと思います!
――ありがとうございました!
(取材・編集 太田萌枝、後藤あやめ、杉野利恵)
乃木坂46の曲名に合わせて色紙を書いていただきました!
◆吉川航平(よしかわ・こうへい)(※写真左)
フリースタイル61キロ級。秋田商高出身。社会科学部4年。マイブームから、天皇杯に懸ける熱い思いまでざっくばらんに語ってくださった吉川選手。天皇杯でのライバルは高校時代の先輩だと教えてくださいました!先輩に勝利し、下剋上となるか。注目です!
◆堀江一馬(ほりえ・かずま)(※写真右)
グレコローマンスタイル80キロ級。富山・富岡商高出身。社会科学部4年。終始穏やかに笑顔で答えてくださった堀江選手。今月は吉川選手と乃木坂46のライブに行く予定もあるそうです!天皇杯はとにかく楽しみたいとおっしゃっていました!