天皇杯全日本選手権(天皇杯)出場を懸けた最後の戦いともいえる東日本学生秋季新人選手権(新人戦)。早大は少ない出場人数ながらも、フリースタイル(フリー)、グレコローマンスタイル(グレコローマン)共に確かな成績を残した。中でも両スタイルで決勝まで勝ち進み、グレコローマンスタイルでは優勝を決めた齋藤隼佑(スポ2=群馬・館林)は敢闘賞を獲得する活躍を見せた。
初日と2日目に行われたフリースタイル。57キロ級に出場した橋本星良(人2=茨城・土浦日大)、小田修一郎(スポ1=大阪・関大高)は共に初戦敗退を喫してしまう。また65キロ級の宇井大和(スポ1=和歌山・新宮)は課題が残る2回戦敗退となった。97キロ級にした松本直毅(スポ1=神奈川・横浜清陵総合)は準々決勝でテクニカルフォール勝ちを収めると、準決勝は終始積極的に攻め2-1と接戦を制する。迎えた決勝ではアクティブタイムにより先制点を獲得するも、場外に押し出され同点に。その後にバックポイントを許してしまい2位となった。また74キロ級に出場した齋藤は準々決勝、準決勝を続けてテクニカルフォール勝ち。決勝では相手と競り合う内容になったが、あと一歩及ばず惜しくも2位となった。
春から大きな飛躍を遂げている松本
2日目に行われたグレコローマンでは、3名の選手が表彰台に上る活躍を見せた。98キロ級での出場となった松本は、なかなか技を決め切ることができないながらも積極的に攻め続けパッシブの数で勝利。準決勝まで進んだものの、技を掛けることができずに3位となった。「得点能力が足りていない。投げ技を頑張りたい」(松本)とらいねんの4月に行われるJOCジュニアオリンピックカップに向けて武器を作りたいところだ。全日本大学グレコローマン選手権で優勝した宇井は決勝ではあまり得意ではないタイプの選手との対戦に。「自分の実力不足です」と素直に負けを認めた宇井。研究される立場となり、弱さが出た結果となった。今回は減量せずに74キロ級に臨んだ齋藤は、決勝ではパッシブの数で勝利。思いっ切りの良さが良い意味でも悪い意味でも評価されていた齋藤だが、上手くコントロールすることで勝ち進めることができたようだ。
齋藤は準決勝で逆転勝ちを収めた
東日本学生春季新人選手権に比べて大きく勝利数を挙げた松本や、今大会優勝により齋藤が天皇杯の出場権を獲得するなど収穫の大きい試合となった。一方では、レスリングスタイルの確立などの点で課題を残した部分もある。これらの反省や収穫を生かし、らいねんどれだけ成長しているのか。その姿が楽しみだ。
(記事・写真 杉野利恵)
敢闘賞を獲得した齋藤
結果
▽男子フリースタイル
▽57キロ級
橋本 1回戦敗退
小田 2回戦敗退
▽65キロ級
宇井 2回戦敗退
▽74キロ級
齋藤 2位
▽97キロ級
松本 2位
▽男子グレコローマンスタイル
▽59キロ級
橋本 1回戦敗退
小田 1回戦敗退
▽66キロ級
宇井 2位
▽75キロ級
齋藤 優勝
▽98キロ級
松本 3位
▽敢闘賞
グレコローマンスタイル 齋藤
コメント
山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)
――この2日間を振り返っていかがでしたか
出る人数は天皇杯全日本選手権(天皇杯)が近かった関係で少なかったんですけど、フリースタイル(フリー)も2人決勝、グレコローマンスタイル(グレコローマン)も2人決勝ということで、練習でやってきていることは少しづつ出せるようになってきているのかなと思います。齋藤(隼佑、スポ2=群馬・館林)自身もグレコローマンを中心でやっているのでグレコローマンでという気持ちがあって、フリーでも勝てる内容だったのかなとも思いますが負けて、その分グレコローマンでしっかり優勝してくれて良かったと思います。改めて練習でやっていることの出すことの難しさをみんな感じているんじゃないかなと思うので、練習のやり方や中身をもっと濃いものにしていかなければいけないなと思いました。
――特に松本選手(直毅、スポ1=神奈川・横浜清陵総合)のときに練習でやっていることを出すようにというような声が上がっていたように感じました
春の新人戦に比べれば内容的にもすごく良くなっているんですけど、まだやはり自分の形というものがはっきりとできていませんね。器用な選手ではないので練習では差してプレッシャーをかけていくという練習をやっていくなかでまだ出し切れてないところがあったので、もっと練習でやっていることを出してほしかったなと思います。
――グレコローマンで2位となった宇井選手(大和、スポ1=和歌山・新宮)についてはいかがですか
全日本大学グレコローマン選手権で優勝して別におごったりだとかは全くなかったんですけど、変なプレッシャーというのはもしかしたらあったのかなと思いました。ただ決勝の試合も負けはしたんですけど実力的に差があるとかという内容ではなくて、少し相手の形にはまってしまってという所での点差になっているので、そんなに落ち込むような内容ではないのかなと感じています。とはいえやっぱりまだまだこれだったらポイントが取れるというものがない、また優勝しているので研究されているというなかで勝つことの難しさも感じていると思うので、まだまだやることがいっぱい見つかった試合だったかなと思います。
――あしたの東日本学生選手権に向けて意気込みをお願いします
2人しかいないなかで、2人とも試合間隔が六大学リーグ戦以降空いているというのもあるしオープンなので天皇杯に続く試合ではないんですけど、練習でやっていることを試す場が試合だと思うので、やっていることをしっかり出して切って、勝ってほしいなと思います。
太田拓弥コーチ
――この2日間を振り返っていかがでしたか
大和(宇井、スポ1=和歌山・新宮)はフリースタイル(フリー)に課題が残りましたし、グレコローマンスタイル(グレコローマン)の決勝でもちょっと組んでくれない選手に対してのコントロールができていなかったので課題が残ったとは思います。(グレコローマンで)優勝した隼佑(齋藤、スポ2=群馬・館林)に関してはフリーでも決勝までいきましたし優勝してもおかしくないような内容だったので、グレコローマンでも優勝して結果を残したので本当に良かったなと思いますね。ただ星良(橋本、人2=茨城・土浦日大)と修一郎(スポ1=大阪・関大高)に関してはまだまだ戦う武器がなかっただとか、課題とかをしっかりと修正して次につなげたいなと思いますね。松本(直毅、スポ1=神奈川・横浜清陵総合)に関しては、全日本学生選手権まではちょっと何をどんな風にしてポイントを取るのかというのが全然なかったのが、少しずつこんな風にしてこうすれば勝てると言うのが手応えとしてつかめているんじゃないかなと思います。10月の全日本大学グレコローマン選手権のあたりから見えてきた部分があったので、今回グレコローマン2位、フリー3位というかたちで表彰台に立てたので、次は優勝できるくらいのレベルにまで持っていけるのではないかなと思いますね。
――齋藤選手はどういう点が良かったのでしょうか
隼佑の良いところは思いっ切りのいいところなので、今まで負けていた試合は強引にいったのが(相手に)乗られて負けたりだとか、勝っていても自分で力を入れすぎて疲れて果てて負けたりだとか、試合のなかでのコントロールがいまいちだったのが、今回に関しては手堅く勝って決勝でも強引に技を掛けることもなくスタンドの状態でプレッシャーを掛けられるような戦いをしていたので、そういった点が成長した部分かなと思いますね。
――宇井選手は全日本大学グレコローマン選手権で優勝してから研究されるようになったりもしたと思いますが
優勝したときから、胸を合わせてくれる選手はいなくなるぞという話をしているなかで、なかなかスタンドから相手を崩してポイントを取るというところがまだまだ足りない部分が決勝で出てしまったかなと思いますね。決勝でも右手を取ろうとすると、相手もすごく嫌がっていたので、研究された弱さが出たかなと思いますね。自分の武器が1つなくなったら違う武器を1つ用意しなくてはいけないところなのですが、今のところ武器がなくなってしまっているところなので、新たに作り上げていかないとなと思いますね。でも大和は負けた方が伸びていくタイプなので、これで逆にプラスになることが多いと思いますね。
――あしたの東日本学生選手権に向けて意気込みをお願いします
今週末の早慶戦で世代交代になるので、この3年生2人が新チームのキャプテン副キャプテンになるので、しっかりチームを引っ張っていってもらいたいと思いますし、その位置づけの大会だと思うので57キロ級、61キロ級で2人で優勝して来年度につなげていくような試合にしてほしいと思いますね。
齋藤隼佑(スポ2=群馬・館林)
――きょうはどのような目標を持って試合に挑まれましたか
最近グレコローマンスタイル(グレコローマン)を始めたので、優勝を狙ってやっていました。
――今回のグレコローマン優勝、という結果についてはいかがですか
正直あまり優勝できると思っていなかったので、良かったなぁという感じです。
――今回はいつも出ている71キロ級ではなく75キロ級での出場となりました
いつも減量をするとあまり調子が出ないので、今回は減量無しで出ようかなあと思いました。
――フリースタイル(フリー)でも決勝まで行かれましたね
なんかとんとん、と行けちゃいました。
――ご自身の中でどのようなところが良かったと思われますか
グレコローマンを始めてから上での組合いなども強くなってきたなと思うので、そういうところがフリーにも生きたかなと思います。
――きょうは1日にフリー、グレコローマンの2つをやるタフな日程となりましたね
人生で1番試合が多かったですね。決勝はけっこうきつかったです。
――太田拓弥コーチは齋藤選手について、思いっ切りの良いところが良いところだと言われていましたが、それについてはどう思われますか
今までは思いっ切りが良すぎてミスして負けていた部分があったので、今回はそういう部分も抑えつつやるところはやってやれました。
――今回の優勝で天皇杯全日本選手権(天皇杯)への出場権を獲得されましたが、天皇杯への意気込みをお願いします
天皇杯に初めて出るので、1回戦勝てればいいかなというかたちで頑張ります。
宇井大和(スポ1=和歌山・新宮)
――きょうはこの試合にどのような目標を持って臨まれましたか
きのうは(フリースタイルで)負けてしまったので、最低でも決勝にはいかないとまずいなと思っていました。前の大会(全日本大学グレコローマン選手権)で優勝していたので、優勝しないといけないといプレッシャーも少しあったんですけど、あまり気負わずに臨めました。
――フリースタイル(フリー)の試合を振り返っていかがですか
フリーでは本当に何もできなくて、フリーできないのに変にフリーをやろうとして結局何もできなかったので、どうせならグレコローマンスタイル(グレコローマン)っぽいフリーをやっていった方がいいのかなと思いました。
――グレコローマンの決勝ではあまり体を合わせてくれないタイプの選手との対戦となりました。
相手が強かったです。自分の実力不足の結果だと思います。
――次の試合に向けて意気込みをお願いします
次が天皇杯全日本選手権(天皇杯)なのでそこで結果を残せるように頑張りたいと思います。春の明治杯全日本選抜選手権が1回戦敗退だったので、とりあえず1回は勝ってベスト8以内に入りたいと思います。
松本直毅(スポ1=神奈川・横浜清陵総合)
――きょうの試合はどのような目標を持って臨まれましたか
新人戦ということもあって、できるだけ多く勝てるように頑張りました。
――今回のフリースタイル2位、グレコローマンスタイル3位という結果についてはいかがですか
力不足ですね。相手が下の階級から上げてきた選手だったので、できれば勝ちたかったですね。実力不足なんだなと思いました。
――どういう部分が自分のなかで足りないなと思っていますか
得点能力が足りてないと思います。
――今は武器となる技を磨いているような状況でしょうか
投げ技を頑張りたいなと思っています。
――試合後にコーチや監督から何かアドバイスを受けたりしましたか
今言ったように得点能力がないよな、ということを言われました。4月のJOCジュニアオリンピックカップまでには直していきたいなと思います。
――春の新人戦に比べて勝利数を伸ばされましたが、そういう点についてはいかがですか
普段OBの方々とも練習していて、そのおかげもあってこのような結果になったんだなと思うんですけど、まだまだ実力が足りないなと思っているのでもっと頑張りたいです。
――ルーキーイヤーを振り返っていかがでしたか
最初は勝てなかったんですけど、練習すれば勝てるんだなというのが分かって、最初の方よりもレスリングやるのが楽しいなと思えるようになりました。良かったです。
――らいねんの目標を教えてください
らいねんは全日本の大会の出場権を取りたいなと思っています。