山梨学院大に勝利!目標の優勝にはわずかに届かず

レクリング

 ついに迎えた最終日、相手はここ3年間東日本学生リーグ戦において負けなしの山梨学院大。1番初めに行われる57キロ級の試合から審判団による審議で何度も試合が中断される、良くない雰囲気のなかで試合は始まった。山梨学院大に有利な判定がくだされ、アウェイな空気のなか早大のメンバーは奮闘。早大は4-3で山梨学院大に勝利を挙げる。内容差で惜しくも3位となったものの、来年への手応えを感じる試合となった。

 57キロ級の吉村拓海(スポ1=埼玉栄)は相手に先制点を許したものの、その後バックポイントを取り返し連続してローリングを決める。ここでポイントは10点の差がつき、吉村のテクニカルフォール勝ちになるはずであった。しかし、審判団の審議により試合は中断。長時間にわたり話し合われた結果、テクニカルフォール勝ちにならないギリギリの得点分しか認められない。試合を通し、チームメイトから「お前は強い、大丈夫だ」と檄が飛ぶ。その後もタックルで取ったはずの点数がカウントされなかったりと不利な状況にあったが、トータルスコア12-9で勝利。力の差を見せつける試合となった。その後61キロ級に出場した伊藤奨(スポ3=長崎・島原)はフォール負けを喫してしまうが、65キロ級では米澤圭が61キロ級の全日本王者、乙黒圭祐(山梨学院大)相手に何度もバックポイントを取り、10-2と勝ち星を挙げた。「今回の試合で1番成長を感じた」(太田拓弥コーチ)。階級は違えどもオリンピック選手、全日本王者に勝利する、今後につながる試合となった。

度重なる審議にも集中力を切らさず、チームに流れを作った吉村

 70キロ級の多胡島伸佳(スポ4=秋田・明桜)は木下貴輪(山梨学院大)と対戦。昨年の全日本学生選手権(インカレ)決勝と同じ組み合わせになった。多胡島は前半から果敢に攻め、バックポイントなどで点数を重ねる。相手からの攻撃に対しても素早く対応し、失点を最小限に抑えていく。試合残りわずかになっても決して逃げる素振りを見せず相手に立ち向かっていった多胡島。5-2と学生王者返り咲きが見える試合になった。74キロ級で伊藤駿(スポ2=京都・網野)の相手は高校時代から何度も対戦している藤波勇飛(山梨学院大)。終始相手のペースに圧倒され、テクニカルフォール負けを喫した。86キロ級に出場した山﨑弥十朗(スポ1=埼玉栄)はバックポイント取り、その後もローリングで加点。前半で試合を決め、同時に早大の勝ちを決定づけた。125キロ級で松本直毅(スポ1=神奈川・横浜清陵総合)は絶対王者ボルチン・オレッグ(山梨学院第)との対戦になったが、相手の力に圧倒されテクニカルフォール負け。今大会を通じ大学トップレベルの選手と対戦したことは、松本にとってもいい経験になっただろう。

1階級上での出場となった山﨑はテクニカルフォール勝ちを収める

 「優勝を目指していたので、ただ悔しい。それに尽きる」と吉川航平主将(社4=秋田商)。しかし最後の山梨学院大戦に勝利するなど、収穫点も数多くある。1年生ながら吉村が出場した全試合で勝利、また米澤も日本トップレベルの選手相手に主導権を握って試合を展開。優勝を本気で目指していただけに3位には満足しきれないが、「みんなよく頑張ったと思う」と多胡島が話すように2年連続の7位から大きなジャンプアップを果たした。レスリング部の戦いは新人戦、インカレとまだまだこれから。真の強さで来年の王座奪還につなげたい。

(記事 杉野利恵、写真 杉野利恵、寺脇知佳)

チーム一丸となって3日間を戦い終えたレスリング部

結果

1~4位順位決定戦



第3試合 ○早大4-3山梨学院大

総合順位



1位 山梨学院大 (13勝8敗)

2位 日体大   (12勝9敗)

3位 早大    (11勝10敗)

コメント

太田拓弥コーチ

――1~4位順位決定戦を振り返っていかがでしたか

厳しい戦いになることはよく分かっていたのですが、メンバーはそろっていたので、やはり日体大の試合が悔やまれますよね。ここは僕の判断ミスというか普段の練習でも言っていることが徹底できませんでした。多胡島(伸佳、スポ4=秋田・明桜)が負けた理由は相手のペースになってしまったことですね。相手はグレコ(グレコローマン)のチャンピオン(2015年天皇杯全日本選手権優勝者)で上半身で勝負してしまったんです。もう少し練習をしていたら良かったのですが、多胡島の場合はあまりグレコの練習をしたがらないところがあって、僕もけっこうグレコが大事だということは常々言っていますが、それがやれていなかったのが敗戦の理由の1つですね。油断していたわけではありませんが、吉村拓海(スポ1=埼玉栄)が良い流れでもってきて、米澤圭(スポ2=秋田商)も順調にオリンピック選手に勝って、70キロ級も伊藤駿(スポ2=京都・網野)がテクニカルフォールで勝ったので流れは完璧こっちに来ていたんですよね。弥十朗(山﨑、スポ1=埼玉栄)も力はありますけれど、やはり1つ階級が上で1年生でよくやってくれましたけどあそこに勝敗をゆだねるのは違うかなと。4年生の吉川(航平主将、社4=秋田商)と多胡島がブレーキになっていましたね。吉川は1つ前の試合でやられていたので。4年生が中心になっていくようなチームでないと優勝できないので、2人を勝たすことができなかったのが優勝できなかった理由の1つかなと思います。それでも最後の山梨学院大戦は今回で(山梨学院大)は4連覇なのですが(今回の早大の試合を除いて)1回も負けたことが無いので、そのなかで勝ったというのはあとあと財産になると思います。来年への手応えを感じたのでそのまえにインカレ(全日本学生対校選手権)や新人戦や内閣杯全日本大学選手権(内閣杯)などでできる土台はしっかりとできたので、なんとか全グレ(全国グレコローマン選手権)と内閣杯で優勝したいと思います。

――吉川主将は膝にテーピングを巻いて試合に出られる場面も見られましたが

もともと膝が悪いからです。本来の自分のスタイルのレスリングができていなかったので、4年生でキャプテンで使いたいという思いもあったのですが、試合内容も悪かったので伊藤奨(スポ3=長崎・島原)を出すことにしました。

――米澤選手はオリンピック選手に勝たれたり、階級は違えども全日本チャンピオンに勝たれていたりいい試合をしていますたが、その点についてはいかがですか

きょうの試合に関しては試合前に2つ言ったんですよね。まず泥試合で絶対に相手が後半にばててくるから、とにかくタイムをかけようと。チャレンジできるような状況になってしまうと休憩時間になってしまうので、ばてさせようと言うことを指示したんですよね。チャレンジしたがると必ず向こうのペースになってしまうのでやっぱりそのような試合展開をしようと。米澤圭は試合中に指が変な方向に行って、外れたように見えたので、タイムアウトを取ろうとしたら、いいですとのことで。僕の言ったことをしっかりと遂行してそれ以上のことをやってくれて、JOCジュニアオリンピックカップでは藤波勇飛(山梨学院大)にやられてしまったのですが、すごく今回の試合で一番成長を感じましたね。

――吉村選手も1年生ながらスターターとして全勝されましたが、吉村選手についていかがですか

JOCジュニアオリンピックカップで勝っている相手だったので普通に勝てるかなと思いましたが、本当チームにいい雰囲気を作ってくれて、きつい減量のなかでも絶対に弱音を吐かないし、試合にしっかり勝って雰囲気を持っていますよね。それがすごくチームにとって良かったです。

――山﨑選手はいつ上の階級での勝負となりましたが、振り返ってみていかがですか

彼はちょっとレスリングスタイルを変えるわけではありませんが、レスリングの理論がまだできていなくて本能でレスリングをしている感じなので、本能の良さも保ちつつセオリーをしっかりと作ったうえでやりたいレスリングをやらせたいなと思いましたね。1つ階級が上でも勝てることは分かりましたが、高校からずっと勝っている選手なので1つ階級は上と言えども負けたことで気づくこともあるので、良かったと思います。

――明治杯全日本選抜選手権に向けて、意気込みをお願いします

 OBを含めて(早大から)オリンピックに出られなかったので、オリンピック階級でもそうでなくてもに1人でも多く優勝者を出し、リオオリンピックが終わってからの天皇杯全日本選手権につなげたいですね。

吉川航平主将(社4=秋田商)

――東日本学生リーグ戦3日間を振り返って、感想をお願いします

優勝を目指していたので、ただ悔しいですね。それに尽きます。

――主将として心掛けたことはありますか

自分が勝とうが負けようが出ようが出まいが、団体戦なのでチームのことを第一に考えることを心掛けていました。

――足にテーピングをされていましたが、調子はいかがでしたか

減量もその後のリカバリーも上手くいったし体の調子は良かったんですけど、実力不足でしたね。ケガは関係ないです。

――1年生の印象は

吉村(拓海、スポ1=埼玉栄)は先陣切って自分の役割を良く分かってやってくれましたし、弥十朗(山﨑、スポ1=埼玉栄)も持っているもの以上のものを出してチームを盛り上げたり決定打を出してくれました。松本直毅(スポ1=神奈川・横浜清陵総合)も来年、再来年につながる試合になりましたね。今回の1年生の試合はすごい面白いというか、来年が楽しみな試合でしたね。

――課題点や収穫点を教えてください

下馬評だとワセダなんて、というふうに思われてたんですけど、実際に戦ってみたら戦えると思うし、次の試合に向けても修正点や課題を克服すれば優勝できるチームになれるかな、と思います。

――具体的にはどのような点でしょうか

個人個人で違うとは思うんですけど、なかなか点数取れそうなところで取れなかったり、逆に取られたりしてしまいました。普段の練習からもっと各自でライバル意識を持ってより試合に近い練習を行って、取れるところは取ったり、取られないようにもしていきたいですね。

――次の団体戦に向けて意気込みなどをお願いします

優勝、だけですね。

多胡島伸佳(スポ4=秋田・明桜)

――東日本学生リーグ戦(リーグ戦)3日間を振り返って、感想をお願いします

やっぱり3年間1回も全勝してなくて、去年もいろいろ悔しい思いもしたので正直この試合に関してあまりいい思い出がないのですが、それを自分の中でどういうふうに払拭できるかというテーマを持って取り組みました。結果的に全勝はできませんでしたが4年間で1番いいリーグ戦だったかな、と思います。

――それはどういった理由ですか

リーグ戦は自分の階級でやれるわけではないので、自分が一喜一憂するよりもチームのことを考え、チームの結果に対して一喜一憂したほうが有意義だなって考えられるようになりました。3年間を通して学んだそのことをようやく4年生で実行できたからですね。

――では今回のチームの3位という結果をどう受け止めていますか

いろんな言い方をする人もいると思いますけど、僕はみんなすごく頑張ったなと思っていて。2年間7位とつらい思いした中で3位まで持ってこれたので、あとは後輩に託すという感じですね。いまは僕らができる現状のパフォーマンスができたかな、と僕は思っています。

――きのうの日体大戦を振り返って

正直あそこは勝たなければいけなかったところなんですけど、相手がグレゴローマンスタイルの選手だからとか言い訳を挙げればキリがないんですけど、チームには申し訳ないんですが僕個人としては負けを通してすごくいろいろなものを学べたかなというか。やっぱり普段のワセダが足りないものがあるから試合でやられると思うんで、貴重な経験ができたかなというふうに思いますね。

――きょうの山梨学院大との試合を振り返って

相手が去年のインカレ(全日本学生選手権)の決勝で負けた選手(木下貴輪、山梨学院大)だったので、もう負けられないなということで戦ったんですけど、まあ正直良いかたちで肩の力を抜けたというか。きのうまではどうしても自分の勝ち負け、チーム全体の勝ち負けという両方のプレッシャーがあったんですけど、きょうはどちらかというとチームの結果よりまず自分の試合をやろうと考えられたので、それがああいった試合展開になったのかなと思いますね。

――次の団体戦に向けて、チームとして個人として、どのようなかたちに持っていきたいですか

継続ですね。別にいま何が悪いとかじゃなくてこれまでリーグ戦に向けてやってきたことを、3位になったからと言って気を緩めることなく危機感持っていままでやってきたことをそのまま継続していけば、結果もついてくるのかなと思います。

吉村拓海(スポ1=埼玉栄)

――この東日本大学リーグ戦(リーグ戦)にはどのような意気込みで臨みましたか

1年生で出させてもらってるということで、思いっきりやろうと思っていました。

――出た試合には全勝しました

初日の試合は自分の出た階級にはそんなに強い選手はいなかったのですが、2日目の日体大戦の相手には1回も勝ったことがなくて、高校のインターハイ決勝でも負けてる相手だったので、勝ててうれしかったです。

――高校のレスリングと大学のレスリングはやはり違いますか

はい。大学に入って組み手を重点的に練習してますね。試合でも組み手勝ちがあまりできなかったので、これからも練習で組み手を重要視してやっていきたいです。

――リーグ戦の雰囲気はいかがですか

個人戦は負けたら自分の責任になりますが、団体戦はそれだとチームに迷惑をかけるので、緊張感が異なりましたね。

――先輩やコーチからは何か声をかけられましたか

先鋒だったので流れを作っていけ、と言われました。

――次の試合に向けて意気込みをお願いします

次はアジアジュニア選手権になるので、あまりボコボコにされないようにいい経験を積めたらなと思っています。