多胡島、『名誉挽回』な優勝果たす

レクリング

 国内最高峰の大舞台である天皇杯全日本選手権(天皇杯)。2日目には女子58キロ級の世界チャンピオン・伊調馨(ALSOK)も出場し、会場は大いに沸く。大歓声のなか、ワセダからは3名が出場。多胡島伸佳(スポ3=秋田・明桜)がフリースタイル(フリー)70キロ級で頂点に立ち、ことし学生無冠に終わった屈辱を晴らした。

 ワセダの先陣を切ったのはフリー70キロ級の伊藤駿(スポ1=京都・網野)。試合1週間前に手の指を骨折するというアクシデントがあったものの、本人の強い希望での出場となった。そのケガを感じさせない積極的な攻めの姿勢を見せ、第1ピリオド(P)開始1分でバックポイントを取って先制点を挙げる。だが、すぐに相手に点数を奪われ同点に追いつかれてしまうと第2Pで逆転を許し、1回戦敗退となった。フリー97キロ級では洞口幸雄主将(スポ4=岐阜・岐南工)が現役最後の試合に挑んだ。第1Pは両者ともに思うように動き出せない展開となる。第2Pでは均衡状態を破ろうと洞口が前に出た。しかし相手に足を取られ、背後に回られてしまう。残り時間に足元を狙うものの、相手の守りに阻まれて1回戦敗退となった。「2ラウンド目はけっこう自分なりに動けた」と振り返った洞口。今季はケガにも悩まされたが、最後の試合で自分の良さを出せたようだ。

晴れ舞台で自分らしくプレーした洞口主将

 第1シードの多胡島は2回戦、準決勝と苦しい試合が続いた。2回戦の第2Pでは連続してバックポイントを取るなど強さを見せつける。しかし、残り30秒で相手にタックルを決められてしまうとスコアは5-3に。相手の反撃が始まるかと思われたがなんとかまぬがれ、準決勝進出を決めた。準決勝では第1P開始1分足らずで多胡島がマットにうずくまる。会場が息をのんで見守る中、ドクターによる処置を受けマットに復帰。それでも隙を見せない戦いぶりを披露し、相手に得点を与えることなく5-0で見事決勝に進出した。優勝が懸かった大一番では相手選手の棄権により、不戦勝での1位が決定。「結果自体は嬉しいが、不完全燃焼なところはある」と振り返った。

頭にテープを巻きながらも猛攻した多胡島

 2日目では多胡島、OBの山口剛(平24スポ卒=現・ブシロード)も優勝を果たした。多胡島の試合に関して、「(今季の調子が)あまり良くなかった中で、勝ち切れたのは良かった」と振り返った太田拓弥コーチ。トップ選手も含めた『底上げ』が確かになされている証拠だろう。最終日には若手成長株の伊藤奨(スポ2=長崎・島原)やOBで昨年の世界選手権代表である保坂健(平26スポ卒=現・自衛隊体育学校)らがどのような戦いぶりを見せるかに注目が集まる。

(記事 杉野利恵、写真 谷田部友香、土谷奈々)

多胡島選手、優勝おめでとうございます!

結果

男子フリースタイル

▽70キロ級

 伊藤駿  1回戦敗退

 多胡島  優勝

▽97キロ級

 洞口   1回戦敗退

コメント

太田拓弥コーチ

――2日目を振り返って

多胡島(伸佳、スポ3=秋田・明桜)とOBの山口(剛、平24スポ卒=現・ブシロード)が優勝して、きのう決勝に進出したのが誰もいなかったんで、結果としては良かったかなと思います。

――多胡島選手は2回戦、準決勝と苦戦していた印象でしたが

今季は結構レフリーの勘違いだったりとか、ラストの30秒というところで負けていたりだとか、いまひとつよくなかった中で、あのままズルズル負けるんじゃなくて勝ち切れたのは良かったですね。

――決勝戦は不戦勝でしたが

結果として優勝できたのはよかったんじゃないかな、と。しっかり勝って優勝したかったでしょうけど、相手も膝が相当悪かったみたいなので、それでもいろいろな運がプラスされたんじゃないかな、と。6月の全日本選抜選手権でも優勝すれば世界選手権も出場できますし、オリンピック階級じゃない階級ですけど、世界を知るということはすごく大事なことだと思うので、まずは代表権をつかめるチャンスがあるところにいくことができたんで、よかったと思いますね。

――山口選手の結果については

ちょっと慎重になりすぎて、1回戦と決勝戦は手堅く勝ったというような内容だったんですけど、アジア予選とか世界予選なんかは手堅く勝つような試合展開をすると間違いなく後半勝負になってきて勝ち切れるとは限らないんで。ああいった戦いをするとオリンピックの予選も勝ち切れないと思うんで、自分の持ってるものすべて出し切って、試合終わったあと立てないくらいの状況をつくらないと、普段からそのくらいの練習をしないと、オリンピックの代表権は獲れないかな、と思いますね。

――1回戦敗退となってしまった2選手については

伊藤駿については、試合の1週間前に指を骨折していたんですよ。正直出ないという選択肢もあって。しかもオリンピック階級じゃないですし。でも本人がどうしても出たいっていうことだったんで。でも指痛がってた割には良い試合内容だったと思うので、自信にはなったんじゃないかな、と思いますね。負けた相手が次に多胡島とあれだけの試合をやった杉本京介(東鷹高等学校教員)だったので。指が万全じゃないにも関わらずあれくらいの試合をできたというのは良かったんじゃないですかね。洞口については、キャプテンとしてこの一年間やってきた『チームの底上げ』という点に関してはこの大会に多くの選手を輩出することができましたし、よくやってくれましたね。ただ、一試合でも勝たせてやりたかった、っていうのは正直な気持ちですね。

――2日間を終えてみての収穫点はいかがですか

3年生以下には来季に向けて、こういうことをやっていけばこういう結果が見えてくるんじゃないか、というのが探り入れられたかな、と思いますね。こういうことをずっとやっていけばもっともっと自分たちのレベルが上がっていくんじゃないか、というようなことがボヤッとでもわかったんじゃないかな、と思います。

――最終日に出場する選手に向けて

普段練習していることをすべて出し切る、ということをしっかり頭に入れて、やっぱり楽して勝つというよりもしっかりと戦って、守らないで勝つというレスリングをしてほしいな、と思いますね。

洞口幸雄(スポ4=岐阜・岐南工)

――きょうの試合を振り返って

格上の選手だったので思い切ってやろうと思ってたんですけど、上手くいかなかったですね。

――試合にかける特別な思いはありましたか

現役ラストの試合だったので、一勝したいなとは思っていましたが・・・。

――前半は上手く攻撃を仕掛けられない展開があったと思いますが、その点については

相手も強い選手だったので、仕掛けてきたところを相手が嫌がるように攻めていこうかなと思ったんですけど、前半は動き出しがちょっと遅くてなかなか。2ラウンド目はけっこう自分なりには動けたので、よかったです。

――逆に後半からは積極的に仕掛ける場面も多く見られましたが、その点については

セコンドに帰ったときにコーチ(太田拓弥)にもっといやらしく攻めていけ、と言われたので、自分の力を出し切ろうと思って前に出たんですけど、そこで足を取られちゃって。

――学生最後の試合となりましたが満足のいくものになりましたか

悔しかったですけど、自分なりのレスリングが全部出せたと思うので、よかったです。

多胡島伸佳(スポ3=秋田・明桜)

――きょうの結果の率直な感想は

結果自体は嬉しいんですけど、試合内容も、決勝もやってないので不完全燃焼かなってところはあると思います。

――試合を振り返っていかがですか

1回戦の動きがあまり良くなかったので、自分でも自覚してたというか想定はできていたので、その上でどういうふうに決勝に向けて組み立てるかってことをやった結果、準決勝は若干いい動きになったので、良かったかなと思います。

――準決勝でのケガについては

ケガしたばっかりでアクシデントといえばアクシデントなんですけど、その中でちゃんと無失点で勝ち切れたのが技術面じゃなくて、精神的な面ですごく良かったなと思います。

――『名誉挽回』な試合となりましたか

ここからがまた大事なので、気を引き締めてやっていきたいと思います。

――来季への意気込みをお願いします

学生最後の年になるので、やっぱり学生タイトルを獲ることを一番に重要視して、その上でシニアの大会も獲っていければなと思います。

伊藤駿(スポ1=京都・綱野)

――きょうの試合を振り返って

正直実力出がせなかったんで、そこは反省しています。

――結果についてはどのように受け止めていますか

全然ダメでしたね。

――大きな舞台でしたが、緊張などはありましたか

緊張とかはなかったんですけど、やっぱり雰囲気とかが全然違くて、いい経験できたなと思います。

――「実力を出せなかった」理由というのは

指を骨折してたので。

――先制点を取りましたが、積極的に攻撃はできましたか

そうですね。けど、最後のほうは守っちゃったんで。そこらへんを反省してます。

――主な敗因は

実力不足です。

――今後に向けての課題点は

課題はやっぱり、相手に攻められてからの処理が悪いので、今後そこを直していきたいと思います。

――来季への意気込みと目標をお願いします

来季こそ1回でも勝って、自分でも満足できる結果で終わりたいです。