保坂、無念の4位に

レクリング

 天皇杯全日本選手権の3日目。世間からの注目度も高かった大会最終日に、ワセダからは4選手が出場した。階級を変更して初めて全日本に挑んだフリースタイル(フリー)74キロ級・保坂健(スポ4=埼玉栄)は4位。グレコローマンスタイル(グレコローマン)130キロ級から階級を下げた98キロ級・前川勝利(スポ4=茨城・霞ケ浦)は3回戦敗退。強豪選手が集った女子53キロ級では、田中亜里沙(スポ4=埼玉栄)、金子和(社3=群馬・大泉)が共に3回戦で敗退と、表彰台には届かなかった。

 注目の集まったフリー74キロ級に出場した保坂。優勝を目標に挑んだが、準決勝で足元を狙われテークダウンで失点し、6-10で敗れてしまう。メダルをかけて行われた3位決定戦では、リーチのある相手に苦戦。持ち味のタックルを生かせず、4位に終わった。

試合終了後、うなだれる保坂

 前川は国内の大会で初めてとなる、グレコローマン98キロ級に出場。2戦目で明治杯全日本選抜選手権(明治杯)4位の相手と対した。1ピリオド(P)中盤、不利な体勢からローリングを取られるとその後も組み手で押され、3回戦で姿を消すことに。敗れはしたものの、「どんどん前に出て押せていた」と自身の強みが通用する手ごたえもあった。

 吉田沙保里と明治杯ぶりに対戦した田中。「本気で勝ちにいきました」と振り返る通り、前さばきで吉田につめ寄る。だが、吉田には遠く及ばなかった。2P前半、投げ技を許すとそのままフォールの状態に。それでも田中は、「持っているものを出すことができた」と悔いを残すことなくマットを降りた。また、同階級の金子も2戦目で世界選手権55キロ級の優勝者と対戦。同点でピリオドを折り返すものの、2P50秒すぎにタックルを決められ惜敗した。

田中は吉田と今季2度目の対決となった

 保坂、前川と五輪選考を意識して階級を変更し臨んだ今大会。日の丸を背負い世界で戦うためには、「相当な努力が必要」(太田拓弥コーチ)と全日本のカベを改めて痛感させられた。一方で来季に目を向けると、来シーズンも残る部員の中で天皇杯に出場した選手が3名と戦力的に厳しい現状は否めない。チーム全体の底上げを図り、団体三冠へ。立ち止まるわけにはいかない。

(記事、高畑幸 写真、三尾和寛、河野美樹)

結果

男子フリースタイル74キロ級

▽保坂    4位

男子グレコローマンスタイル98キロ級

▽前川 3回戦敗退

女子53キロ級

▽田中 3回戦敗退

▽金子 3回戦敗退

コメント

山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)

――3日間の大会の総括をお願いします

OBも含めたチームワセダとしては優勝者が2人出て良かったかなと思います。ただ、学生に限定すると多胡島(伸佳、スポ2=秋田・明桜)の準優勝、香山(芳美、スポ1=東京・安部学院)の3位と、この大会で入賞するのは立派ですが、出場している選手自体が少ないので、もっと頑張らなくてはいけないことを再確認できた試合だったと思います。

――前川選手は98キロ級に階級を下げて初めての試合となりました。どのように試合を見ていましたか

自分の意志で世界を目指すために階級を下げて、この大会が国内では98キロ級で初めての出場でした。このままの状態では体重を落としただけで、とても世界と戦える状況ではないと感じました。それは本人が一番に感じてくれていると思います。

――保坂選手は試合後、悔しそうな表情を浮かべていました

準決勝で対戦した嶋田選手(大育、国士舘大)も実力のある相手でしたが、その後の決勝しか見ていなかった部分もあったのかなと思いましたね。本人も準決勝の後はショックを受けていたみたいですし。ただ、3位決定戦を見ていると将来はオリンピックを目指してやっていこうとする選手とは言えないような内容だった思います。あのような試合をしているようでは駄目だと感じました。

――女子3選手についてはいかがですか

香山については3位と大学でやってきたことは着実に身についているのかなと思いました。それでも甘いところもありますし、3位で喜んでいるようでは駄目とも思います。もっと頑張ってほしいと思いますね。田中(亜里沙、スポ4=埼玉栄)については学生最後の大会とあって彼女なりに気持ちの準備や練習をしていました。試合としても気持ちが入っていたと思います。ただ、気持ちをコントロールする点がもう少しうまくいけばもう吉田沙保里選手とももう少し良い試合ができたのかなと思いました。金子(和、社3=群馬・大泉)についても(3回戦は)勝たなくてはいけない試合でした。自分のやりたいレスリングは分かっていると思うので、そこからどう勝ちに持っていくのかを突きつめなければいけないと感じました。

――来季に向けて一言お願いします

ことしの4年生が抜けると正直なところ、戦力的には落ちてしまうと思います。新たな入学予定者がいまのところ4名いるのですが、その新入生を引っ張っていけるようにチームとしてまとまっていけるように、キャプテンを中心に持っていってほしいです。学生の目標に合わせて監督、コーチが全力でサポートできたらと思っています。

太田拓弥コーチ

――前川選手の試合を振り返ってみていかがですか

減量している中で、明らかに力不足でした。全て一からやり直さないといけないと思います。特にグレコローマン98キロ級で優勝した斎川選手(哲克、足利工教)は決勝でも圧倒的に勝ちましたから。あのレベルに行き着くためには相当な努力が必要だと思いました。

――保坂選手の試合についてはいかがでしたか

足を触らせすぎですね。足を取られるとテークダウンを取られてしまうので。その前から結構そのような場面はありましたが、準決勝の敗因はそこですね。決勝に進む強い選手は間違いなく足を触らせないので。しっかりとしたかたちづくりをやらないとこのような舞台での優勝はとても難しいと思いました。

――田中選手、金子選手の試合についてはどのように感じましたか

戦った本人たちが一番よく感じていることと思いますが、引きつける力がなかったと思いましたね。良いかたちでタックルに入ったシーンもありましたが、そこからどうしていくのかが問題で、次の攻撃へ仕掛けていくことにつなげられなかったです。単純な差ですが、もうちょっとの踏ん張りが必要だと思います。

保坂健(スポ4=埼玉栄)

――4位という結果についてはいかがですか

準決勝が終わって気持ちが切れて、非常にどうしようもない試合だったので。何も言えないですね。

――2回戦は一緒に練習している北村公平選手(平26教卒=現阪神酒販)との一戦でしたが、特別な意識はありましたか

同じ練習をしていたので負けたくはないという気持ちはありましたし、先輩を越したいというのがあったので、意識しすぎて展開がなくてつまらない試合だったかなと思います。

――準決勝で嶋田大育選手(国士館大)に敗れた原因は何だと考えますか

単純に僕のレスリングが弱かったというのと、体力不足、練習不足ですね。

――74キロ級で初めての全日本の大会でしたが、戦ってみていかがでしたか

いま始まったばかりなので、これから自分でまず体をつくって、74キロ級で勝てるようなレスリングを覚えていきたいと思います。

――ワセダのユニフォームを着て戦う最後の大会でしたが、そのことについて思うことはありましたか

それを思うと最後の試合も気持ちを入れてやれば良かったなと後悔が残ってしまいました。

――今後もレスリング人生は続いていくと思いますが、どのようなレスリング人生にしたいと思いますか

オリンピックに行きたいというのが小学校3年生ぐらいからずっと思っていたことなので、どんなかたちであれそこにしっかり行って、今回ワセダの最後の試合で悔いを残してしまったので、人生でレスリングを辞める時には悔いがないように夢をかなえたいと思います。

前川勝利(スポ4=茨城・霞ケ浦)

――98キロ級で国内での初戦の手応えはありましたか

負けてしまって、斎川(哲克、足利工教)先輩と対戦できるところまではいけるかなと思っていたで、ふがいないなというのが一番ですね。

――斎川選手と対戦できなかったところは残念だったということですね

そうですね。でも山本(雄資、警視庁第六機動隊)先輩も強いので、ずっと全日本レベルで上位にいる選手でいらっしゃいますし、やはり強いですね。

――山本選手との対戦では2ピリオド目、グラウンドでの攻撃権を得ながら立たれてしまった場面がありました

あそこで返しにいこうと思っていたのですが立たれてしまって。立ってくるという予想がなかったので、そこは自分の中で甘いというところですね。

――スタンドでは押して前に出る場面も多くありました

自分としてはどんどん前に出て押せていたというのはあって、相手もばてていて後ろに下がっているというのは感じていました。ただ僕が肩のところに手を掛けて(胸を肘で押すかたち)しまって、手を相手の頭の後ろに入れて自分の方に引き付けていれば注意になりませんでした。そういう細かいところの見直しをしっかりしていなかったところで相手にコーションがつかないという部分がありました。それは西口(茂樹)強化委員長からも言われました。

――組み手の部分に反省点があったということですね

そうですね。

――来シーズンに向けていかがでしょうか

まずは98キロ級に落としてというのは今回が初で、自分の位置はよく分かりました。これから体をつくり直して、6月の大会では絶対に決勝までいって斎川先輩を倒して、プレーオフでも斎川先輩に勝って世界選手権代表をつかみ取りたいと思います。

田中亜里沙(スポ4=埼玉栄)

――きょうの試合を振り返っていかがでしたか

6月の明治杯全日本選抜選手権で初めて吉田さん(沙保里)と対戦させて頂いて、そのときにもっと勝負できるなという手ごたえを感じた上で臨んだ一戦でした。前回はチャレンジャーという気持ちでしたが、3回戦で吉田選手と対戦という良い抽選を引いて、今回は本気で勝ちにいきました。結果として0-10という何も通用しなかった、実力の差を突きつけられた試合になってしまいましたが、自分の中では持っているものを出すことができたと思っていますし、あれがいまの私の精いっぱいだったので、悔いはありません。今回、引退試合だったのですが、よくよく考えたら最後に吉田さんと試合をさせて頂けたことが本当に有り難いことであって、入賞することはできませんでしたが、非常にすっきりした気持ちでマットを降りることができました。

――試合終了後に吉田選手と深々と握手している場面が印象的でした

練習や合宿でもお会いしていまして、合宿では可愛がってもらってもいましたし、試合させて頂いたことに感謝しています。ライバル視とかというのは本当に恐れ多いのですが、最後に握手も深々として頂きましたし、ちょっとでも吉田選手の目に残るような選手であれたらと思います。試合後にも「きょうはありがとね」と声をかけて下さったので、本当にうれしかったです。今後は違う舞台に行きますが、この経験を生かして頑張りたいと思います。

――次の目標は何ですか

まずは教員を目指していますので、しっかりと新しい世界で一から基礎から勉強していきたいと思います。

金子和(社3=群馬・大泉)

――圧勝だった初戦の試合を振り返っていかがですか

初戦の相手がクイーンズ(ジュニアクイーンズカップ)の決勝で少し競ってしまった相手で、初戦の動きは自分の中でもしっかりとタックルも取れていたので、良かったかなと思っています。

――3回戦の浜田千穂(日体大)選手との対戦はいかがでしたか

55(キロ級)から落としてきている選手で、一度も私もやったことがなかったのですけれども、周りの方から「もう少しだったね」みたいなことも言われました。それでもやっていた私としてはまだ差があったかなという感じがして、まだまだ改善点がいろいろと見つかった試合だったなと思います。

――その改善点とは何ですか

組み手では結構勝てていた部分があったのですけれども、やはり崩せてもそこから点数につながらなかったので、しっかりと崩した後に自分が何をするかなど、そういうところをしっかりと考えていきたいなと思いました。

――1ピリオド(P)は同点で折り返しましたが、2Pに臨む時に何か意識されたことはありますか

試合の時はそんなに考えてはいなかったのですけれども、自分からやはり思い切りいきたかったなというのがあって、それを相手に先にやられてしまったので、そこが悪い点で、直していきたいなと思います。

――大会全体を振り返って、昨年と比較していかがですか

昨年と比べるとことしは割と調子も良くて、自分の動きができた中で負けたので、結構やりきった試合をできたかなと思います。昨年と比べたらですけれども。そしてまた次につなげていきたいと思います。

――目標で「自分に勝つレスリングを」とおっしゃっていましたが、達成できましたか

そうですね(笑)。まあ、結構今回は自分に勝てたかなと思っています。自分のやりたいかたちにも持っていけたので、そういう点では勝てたのではないかなと思います。

――チームとして振り返ってみていかがですか

今回学生は少なかったのですけれども、OBの方とか結構多い人数でこの試合に臨んでいて、早大の雰囲気としても良かったと思います。決勝で早大のOB同士の対戦も見られて、学生たちも刺激を受けたのではないかなと思っているので、これを来シーズンにつなげてチームとしても良い流れでいきたいと思います。

――最後に今後に向けて一言お願いします

私は早生まれでジュニアの大会に出ていたのですけれども、次は出られないので、たぶん一番近い大会で明治杯(明治杯全日本選抜選手権)があると思うので、そこに向けて改善点を修正したり、良かった点はこれからものばしていきたいと思います。