大学で唯一グレコローマンスタイル(グレコローマン)のみが行われる全日本大学グレコローマン選手権は最終日を迎えた。この日は4階級が行われ、優勝を目指した71キロ級・中井堅太(社4=南京都)は3位、59キロ級・吉川航平(社2=秋田商)、98キロ級・洞口幸雄(スポ3=岐阜・岐南工)が共に7位という結果で終幕。早大の総合順位は8位に終わり、前年の2位から大きく成績を落とした。
昨年の今大会で大学初タイトルを手にした中井。今回は本来の66キロ級から71キロ級へ階級を上げ、連覇を懸けて臨んだ。最大のカベは全日本学生選手権(インカレ)準決勝で敗れた屋比久翔平(日体大)。両者は早くも2回戦で顔を合わせた。中井は1ピリオド(P)後半、マット際で投げ技を食らってしまう。チャレンジを仕掛けるも覆らず、5点を追う劣勢に。2Pでも体重差に苦しみ、持ち前の技術力を発揮することができない。そのままポイントを奪えず、0-5で試合終了。インカレと同スコアでの敗北を喫し、リベンジ達成はならなかった。その後の敗者復活戦では相手を圧倒する。3位決定戦では4ポイントの投げ技を2つ決め、開始1分53秒で勝利。格の違いを見せつけた。しかし目標とする優勝には届かず、「全然良い成績ではない」(中井)と悔しさの残る結果に。本階級の66キロ級での巻き返しを誓う。
中井は屈辱を果たすことはできなかった
フリースタイルが専門ながら、健闘した吉川と洞口。吉川は2回戦、5点リードで迎えた2P中盤に4点技を受け、1点差に詰め寄られる。1つの技が勝負を分ける展開で、決めたのは吉川。チャンスをものにし、7-4で勝利を収めた。準々決勝ではグレコローマンが本職の相手に力及ばずテクニカルフォール負け。上位進出とはならなかったが、攻めの姿勢を貫いた。洞口は2回戦途中で頭部を負傷。その中でも効果的に得点を重ね10-3で勝ち上がった。続く準々決勝では頭の包帯が外れ、何度も試合が中断するアクシデントに見舞われる。苦しい状況下で戦い抜いたが、序盤の失点が響き0-4で敗戦。課題は残ったが、次年度グレコローマンを専門とする選手がいなくなる早大にとって両選手の奮闘は収穫となっただろう。
ケガをしながらも健闘を見せた洞口
ここまで苦しい戦いが続いている早大。「自分はこう勝つんだというレスリングができていない」と太田拓弥コーチは厳しいコメントを残している。次の目標は内閣杯全日本大学選手権。今季最後の団体戦に加え、4年生にとっては早大として戦う最後の大会となる。集大成を飾るため、男の意地を見せるため――。さまざまな思いを胸に、団体連覇に挑む。
(記事 谷田部友香、写真 三尾和寛、井上義之)
結果
大学対抗得点 19点 8位
59キロ 吉川 7位
71キロ 中井 3位
80キロ 今村聖(スポ3=群馬・太田商)1回戦敗退
98キロ 洞口 7位
コメント
山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)
――今大会の全体を振り返ってどうでしょうか
今大会を迎える前から厳しい戦いになることは分かっていましたし、そう思って挑みました。しかし、思った以上に内容的に厳しい結果になったと反省しています。
――前川勝利(スポ4=茨城・霞ケ浦)選手、中井堅太(社4=南京都)選手の試合についてはいかがですか
前川については当然優勝しなければいけない立場にいるなかで、負け方が悪かったです。日本というよりも世界、オリンピックを目指している選手であれば当然勝つことが一番ですが、内容も厳しさであったり自分がやろうとしていることを出す試合にしてほしいと思っていました。残念な結果ですね。中井に関しては本来決勝まで残れる実力がある選手ですが、組み合わせの関係で3位となりました。インカレ(全日本学生選手権)で負けた屋比久(翔平、日体大)選手との再戦ということで、本人もリベンジをしようと取り組んできていましたが、もうちょっと勝負してほしいと感じました。結果的に場外際のそり投げ一発の点数で終わったんですけど、あそこでどう勝負するかでまた試合展開が変わってきていたと思います。結果を見るとこちらも残念でしたね。
――7位入賞となった洞口幸雄(スポ3=岐阜・岐南工)選手、吉川航平(社2=秋田商)選手についてはどうですか
洞口については本来の階級とは異なりますが、逆に減量がなくて普段通りのコンディションのまま試合に挑むことができたので、その分もっとアグレッシブにいってほしかったです。洞口に対しては練習中にも言っていますが、惜しい試合、良い試合をしても勝ち切るためにはポイントを取らなければいけない、ポイントを取るためにはどうすればいいのかいまいち行動に移せていないこと、より厳しい練習をしていかないと毎回惜しい試合になっていてもいけないので。そういった部分で残念でした。吉川については、一番思いっきり試合をしてくれたと思います。まだどういったかたちでポイントを取っていくのか突き詰めていかないと勝てないと感じました。
――内閣総理大臣杯全日本大学選手権に向けてお願いします
課題についてはそれぞれ持っています。昨年はこの大会で2位だったところからことしは8位と私的には屈辱だと感じています。部員たちがそれをどう受け止めているのかが一番大事です。そこで意地をどこまで出せるのかですね。内閣杯でも勝負できないとは感じていません。1ケ月半試合に出る選手、出ない選手共にどこまでチームとして追い込んでいけるか悔しい思いを持って練習に挑めるかだと思います。技術に関してはいろいろありますが、やっぱり気持ちが重要なのかなと感じています。
太田拓弥コーチ
――中井堅太(社4=南京都)選手の試合を振り返っていただいてどうでしょうか
2回戦で当たった屋比久選手(翔平、日体大)との試合でがっぷりよつになった時、先に仕掛けてほしかったですね。インカレ(全日本学生選手権)の時に(技を)返されたことがあったと思いますが。相手は逆に場外際をうまく利用してやってきたところが、一発勝負のところだったので。もったいないかなとは思いました。勝負どころを逃してしまって。あそこがワンチャンスでしたね。
――洞口幸雄(スポ3=岐阜・岐南工)選手についてはどうですか
自分でやろうとしていることは分かりますが、まだポイントにつながることがないので。相手に1分30秒過ぎに投げられたことは警戒していたことでしたが、不本意に相手の得意なかたちになってしまったことが敗因かなと思いますね。ポイントにつなげる技がないのでもっとガツガツいくようなスタイルを見つけていかないとだめですね。
――吉川航平(社2=秋田商)選手についてはいかがですか
リスクをおかしてかけていった技ですがやろうとしている部分については伝わっている部分もあります。そう簡単に勝てないのがこのレベルなので、もっと仕上げていきたいかなと思います。
――2日間を総括していただいていかがですか
リーグ戦(東日本学生リーグ戦)の反省が生かされていないですね。自分の攻撃するかたち、ストーリーみたいなものが行き当たりばったり過ぎてもう少し、自分はこう勝つんだというレスリングができていませんでした。逆に拓大が6階級決勝戦に進みましたが、守るところ、攻めるところとメリハリのあるものでした。体つきを見ても決勝までいく、優勝できる体つきをしているので、もう一回そういったところを、体を作って内閣杯(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)に向かっていきたいです。
中井堅太(社4=南京都)
――3位という結果についてはいかがですか
全然良い成績ではないです。実際昨年66キロ級で優勝して、2連覇を懸けて臨んでいて、インカレ(全日本学生選手権)では71キロ級で出場して、自分に足りない力や技術が分かっていたのですが、今回71キロ級にもう1回出ていけるかなと思っていたんですけど、同じ相手に負けてしまって、3位という結果はあまりうれしくないですね。
――インカレで足りなかったところというのはどういった点ですか
単純に力ですね。体重が僕は70キロぐらいしかなくて、普通は減量して出るものなので。僕は普段66キロ級で出させてもらっているのですが、今回チームの試合ということで71キロ級に(階級を)上げて、技術面では自分自身劣っているとは思っていなかったのですが、1ラウンド目が終わってばててしまったりとか、基礎体力面で負けてしまった部分があると思います。
―2回戦での屋比久翔平選手(日体大)との一戦を振り返っていかがですか
負け方としてはインカレと全く同じ試合展開の0-5で、組んでから投げられたというのもインカレと全く一緒の内容で。もうちょっと良い勝負ができると思っていたのですが、その試合だけが悔しいですね。
――2回戦で負けてしまった後、敗者復活戦に向けてどのように気持ちを切り替えていきましたか
1回負けていたので、敗者復活戦はないようなものだと考えて、1回負けて3位だと言われてもそれはうれしくないので、敗者復活戦では負けてもいいかなという気持ちで試合をやっていました。
――敗者復活戦での試合内容はいかがでしたか
負ける前に比べて全然良い動きをしていたと思いますね。(2回戦までは)緊張もあって、一度負けて緊張もほぐれて良い動きになっていたので、その動きが初めからできていれば結果は違ってきたのかなとおもいます。
――次の大会に向けてどのように立て直していきますか
国体は66キロ級で自分の本階級なので、優勝をがっつり狙っていきたいと思っていて、66(キロ級)だと力負けすることもないので、思いっきりやるだけです。
――国体に向けての目標と意気込みをお願いします
国体は学生だけではなくて、ある意味では全日本の大会と変わらないので、とりあえず今回と同じ3位以上を目指して頑張っていきたいと思います。