年に1度開催される東京六大学リーグ戦。他の5大学は二部リーグに所属する大学もあり、一部リーグで上位を狙う早大は負けてはならない大会である。前半の東大、立大、慶大戦では不戦勝を含め全てでフォール勝ちを収めたが、法大、明大戦では苦戦を強いられる場面も。優勝したものの内容的にはもの足りない結果となった。
早大は初戦の東大戦を皮切りに立大、慶大戦を終えた時点で合計18のフォール勝ちを収める。また、立大戦では各大学1人選出される優秀選手賞を獲得した61キロ級・伊藤奨(スポ1=長崎・島原)が練習の成果を発揮した。股裂き(相手の脚を固めて上体を返す技)に成功し開始22秒でフォール勝ち。「あのメンバーの中で一番収穫があった」と太田拓弥コーチから好評価を得た。
果敢に攻めた伊藤
この勢いのまま独走したい早大だったが、法大戦で早くも苦戦を強いられる。1人目の70キロ級・吉川航平(社2=秋田商)は決定打を繰り出せない嫌なムードの中、危うく勝利をつかむ。2人目は大差をつけられて黒星。この悪い流れを断ち切ったのは、74キロ級・多胡島伸佳(スポ2=秋田・明桜)。法大戦で唯一のフォール勝ちを決め、チームを活気付けた。
そして明暗が分かれる最終戦の相手は明大。昨年と同様互いに譲れない攻防戦となる。2勝2敗で迎えた5試合目、挑んだのは多胡島だった。開始直後に右足をすくい背中に回ると、優位に進め最後はまたもフォールで試合を締めくくった。5−3で明大に勝利し、早大は5年連続14度目の優勝を飾った。
法大戦では苦しい戦いとなった吉川
無事5連覇を達成したものの、「全体的にはしとめる技がなかった」(太田コーチ)と納得のいかない内容に終わった。1〜3年生中心のオーダー、5選手が階級を上げて出場するというイレギュラーな部分に戦う上で難しさはあった。しかし、格上の早大はそれをはねのけて勝利すべき大会であるだけに黒星があったのは痛い。約1週間後の全日本大学グレコローマン選手権に向け、選手各々の修正が求められる。
(記事 河野美樹、写真 高畑幸)
結果
早大 優勝(5年連続14度目)
○早大7−0東大
○早大7−0立大
○早大7−1慶大
○早大5−3法大
○早大5−3明大
※各校1人選ばれる優秀選手賞は伊藤奨(スポ1=長崎・島原)が受賞
コメント
太田拓弥コーチ
――優勝されましたが試合内容を振り返っていただいてどうでしょうか
この試合に向けて自分がやっていることを試す機会と掲げていましたが、多胡島(伸佳、スポ2=秋田・明桜)があまりにもダントツに勝っただけで全体的にはしとめる技がなかったですね。自分のこれという技が相手に合わせてしまったりしていてなかったです。あと階級を上げて出ていてやりづらさはあったと思います。黒澤(翔、スポ3=茨城・鹿島学園)、今村(聖、スポ3=群馬・太田商)、多胡島、洞口(幸雄、スポ3=岐阜・岐南工)、吉川(航平、社2=秋田商)この5名については階級を上げて勝負させたので。正直、このレベルの大会だと階級を上げて出場していても勝たないと上のレベルでは勝てないので、ちょっとそこらへんはもの足りなさが残りました。
――得点し切れない場面も目立ちましたが、その点についてはどうですか
タックルに入ってもつぶされてしまう、頭を取られた状態でも肘を取られて動きを制限されていたり、単純にポイントを取りにいくのが怖いとかいろいろな要素があってポイントにつながらなかったと思いますが、普段から攻撃的なレスリングができていないからこういった場面でも取り切れないんじゃないかと思いますね。
――優秀選手賞に選ばれた伊藤奨(スポ1=長崎・島原)選手についてはどうでしょうか
あのメンバーの中で一番収穫があったのが彼だったので監督、コーチの相談でそうしました。練習でも自分でやろうとしていることが明確に分かっていたり、頭で理解できて行動に伴ったりもしているので、ここ1、2ケ月ですごく伸びているなと感じられたので彼を選出したという経緯です。
伊藤奨(スポ1=長崎・島原)
――出場された立大戦と明大戦を振り返ってどうですか
立大戦は自分の課題と股裂きの流れが練習した通り出て、思い通りといいますかすぐにフォールにできました。明大戦は相手の足を取るところまでは練習通りできたのですが、そこに入ってから何回か返されたりしたのでそこが課題かなと思います。ですが、先輩たちもよく攻められていたのでそれは良かったですし自分でも良いことだと思うので、入ってからの処理をこれから練習していきたいなと感じました。
――優秀選手賞を受賞されましたが、ご自身ではどの部分が良かったと思いますか
2試合しか出ていないのでないと思っていたのですが、たぶん攻める姿勢やあとコーチに僕はもうグラウンドにいったら股裂きというのをずっと練習していたので、それが上手く出せたことが好評価してもらえたのかなと思います。うれしいです。
――5連覇という結果についてはいかがですか
きょねんは今の4年生が出ていたと思うので、もっと大差で勝っていたと思うのですが、ことしは僕も含めて接戦が多かったので、優勝したのは当たり前と言ったら失礼ですがこのレベルで優勝できないと、というのはたぶん先輩たちもみんな思っていると思うのでそこは優勝できて良かったのですが、内容はあまり良くなかったのであしたからまた、今度グレコローマン選手権(全日本大学グレコローマン選手権)と内閣(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)があるのでそこに向けてみんなで頑張って僕も頑張りたいと思います。