全日本学生選手権(インカレ)の2日目。ワセダからはフリースタイル(フリー)の2回戦を勝ち抜いた12人が出場した。前日好調だった選手が次々と敗退する中、70キロ級の多胡島伸佳(スポ2=秋田・明桜)が優勝。また、5回戦敗退となったが吉川航平(社2=秋田商)などが善戦を繰り広げた。
前日から3回戦まで順調に勝ち上がっていた多胡島だったが、4回戦で苦戦する。優勝候補を破り勝ち上がってきた高橋翔平(拓大)をなかなか攻め切ることができない。同点で終えた1ピリオド(P)だったが、2Pでリードを奪われてしまう。しかし、終了間際に相手のスキをついたタックルが見事に決まって逆転勝ち。少ないチャンスをものにしたことで接戦を制した。波に乗った多胡島は、準決勝ではこれまでと異なりグラウンドで攻めていく。タックルでバックポイントを奪うと、そのままローリングに持ち込み得点を重ね、テクニカルフォール勝ちする。決勝では苦手とする左構え(左足を前に出す構え方)の選手と対戦したが、勢いは止まらなかった。相手のタックルをかわして攻め込ませず、グラウンド技で背後に回りテクニカルフォール勝ちを収めた。「夏合宿でずっとやってきたことがかたちになった」と本人も述べたように、練習の成果を出し切ったことでつかんだ勝利。確実にレベルアップしていることを感じさせられる大会だった。
連続でローリングを決める多胡島
順調に勝ち上がっていた61キロ級の吉川も、4回戦で素晴らしい試合をみせた。序盤は相手にリードされる展開だったが、2Pに鮮やかに首投げが決まり逆転、そのままフォール勝ち。練習でつくり上げてきた「ガツガツ前に出る」(太田拓弥コーチ)プレースタイルが見えた試合だった。5回戦敗退となったが、自身のプレースタイルを発揮し勝利したことは、大きな収穫と言えるだろう。
首投げからフォールに持ち込んだ吉川
優勝者は出たものの全体的に勝つことができそうな惜しい試合が多かったために、物足りない結果に終わったフリーの2日間。3日目以降のグレコローマンスタイルでは、勝ち切るという姿勢を全面に出す試合に期待したい。
結果
男子フリースタイル
▽57キロ
青木祐聡(スポ2=岐阜・岐南工) 4回戦敗退
藤川聖士(スポ2=埼玉栄) 4回戦敗退
伊藤奨(スポ1=長崎・島原) 3回戦敗退
矢野富三家(スポ1=島根・隠岐島前)3回戦敗退
▽61キロ
黒澤翔(スポ3=茨城・鹿島学園) 4回戦敗退
吉川航平(社2=秋田商) 5回戦敗退
▽65キロ
桑原諒(スポ4=静岡・飛龍) 4回戦敗退
▽70キロ
多胡島 優勝
▽74キロ
今村聖(スポ3=群馬・太田商) 3回戦敗退
▽86キロ
洞口 3回戦敗退
堀江一馬(社2=富山・高岡商) 3回戦敗退
▽125キロ
前川 3回戦敗退
コメント
山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)
――フリースタイル全体を総括してどうですか
まずは多胡島伸佳(スポ2=秋田・明桜)が決勝に残り、完璧な内容で勝ってくれたことは良かったなと思います。全般と言うと他の選手はちょっと物足りない内容に終わったと感じますね。リーグ戦(東日本学生リーグ戦)以来の課題を克服すると言ってきましたがまだ足りない、取り組んでいるものがあって進歩はしているんですけどまだ結果に結びついていないところもあって正直残念な結果だったなと感じました。
――優勝された多胡島伸佳(スポ2=秋田・明桜)選手の良かった点はどこですか
簡単にポイントを与えないところです。(ポイントを)取られそうになっても簡単に与えないところと自分の得意なパターンを持っているところですね。負けていたとしても逆転できる技があることですね。タックルもそうですしグラウンドになったらアンクルローリングと負けていたとしても逆転できる技があることで自信を持って試合ができたことですね。
――秋以降のシーズンに向けて重要になってくることは何でしょうか
選手、部員本人が足りないところ、修正すべきところをリーグ戦からこのインカレ(全日本学生選手権)でまた感じた選手もいるでしょうし、新たな課題が見つかった選手もいるだろうしそれをもう一度自身の中でどう取り組んでいくか、取り組み方を考えていってほしいと思います。もう一度気持ちを入れ換えて練習に取り組んでほしいと思っています。
太田拓弥コーチ
――きょうを振り返ってどうですか
とりあえず多胡島(伸佳、スポ2=秋田・明桜)が決勝戦は完璧な内容でした。その前は2試合接戦だったのですが、本人の課題であった片足タックルのディフェンスであったり攻めるかたちであったりは全て内容的に良かったと思います。他の者に関しては、1年生はのびのびやってくれたかなと思うのですが、3年生、4年生は結果をみんな欲しがっているとは思いますが結果を残せなかったです。内容的には不満が残る感じでしたね。
――その多胡島選手の決勝相手は注目の1年生の木下貴輪選手(山梨学院大)でした
ジュニア(JOCジュニアオリンピック)の時に相手が高校生だったのですが、左構えで片足タックルを取られるというかたちで負けて。(木下選手は)タイプ的には似た選手だったのですが、それでもフェイントかけてタックル取るというのと、(相手に)タックルに入られた時も切るポジションというのができていました。ジュニアで負けたというのが今回に生かされているかなと思いますね。準決勝の相手も、その前の相手も全員左構えだったので、左構え相手にも戦える感じができてきました。
――春季東日本学生新人戦から連続しての優勝で、良い流れですね
そうですね。きょねんは新人戦獲れそうで獲れなかったり、ことしの初めのジュニアも負けてしまったりという苦労が実になってきているかなと感じます。
――2年生で全日本学生選手権(インカレ)優勝というのは予想外ですか、想定していましたか
正直、メンバー的に優勝できるかなとは思っていました。それでも2年生でタイトル獲るというのはなかなか難しいことだと思います。1つ上2つ上がいる中で自分のレスリングで勝てたことは良かったと思いますし、他の2年生、1年生にもいい影響を与えると思いますね。
――その他の選手では吉川航平選手(社2=秋田商)のきれいな首投げでの逆転フォール勝ちがありました
本人に自分の攻めはどんなかたちだと聞いて、とにかく腕を取ってコンタクト取ってガツガツ前に出るというかたちだということで、春の新人戦(東日本学生春季新人戦)が終わったころから(練習を)やってきました。それが全面に出て、最初はポイントを取られていましたが、ガツガツが出て、相手が油断したところを逆転の投げでフォールできて。やってきたことがちょっとずつですが身になってきたのかなと。ただ次の試合も勝てないことはなかったので、あれは課題として残るかなと思います。
――洞口幸雄選手(スポ3=岐阜・岐南工)はその後決勝に進んだ村山貴裕選手(大東大)に惜しい試合でしたが敗れました
そうですね。あれは絶対勝たないといけない試合でしたね。5分間はほぼ完璧なレスリングだったので、5-0になった時点でもう勝てるという、油断していたわけではないと思いますが。あの後バックをとられて(ローリングで)3回返されたわけですが、たらればを言えば、あそこを1回で踏ん張るなどしていれば違った展開になったかもしれません。しかし、6分間戦えるレスリングではないということだと思うのでもう1回ここから反省を受け止めないといけないですね。来季、前川勝利(スポ4=茨城・霞ヶ浦)が抜けたら団体戦の重量級を支えていく一人なので。東日本学生リーグ戦などでは接戦になったらああいうところが必ず出てくると思うので、そういった経験をして接戦に強い選手になってほしいと思います。
――桑原諒選手(スポ4=静岡・飛龍)も惜しかった展開での敗戦でした
惜しかったというかあんなかたちで負ける選手じゃないので、もう少し踏ん張って、もう少し泥臭くいけば楽に勝てる相手のような気がしたのですが。練習では保坂(健、スポ4=埼玉栄)ともいい勝負するくらいなのですが、試合になるとどうしても自分の力を出し切れないところがあります。しかし大学選手権(内閣杯全日本大学選手権)が最後なので、なんとかチームに貢献できるように。それから手首をちょっとケガしていたのですが、グレコ(直近、9月の全日本大学グレコローマン選手権)で最低でも表彰台に上がってほしいです。
多胡島伸佳(スポ2=秋田・明桜)
――優勝して今どんなお気持ちですか
ほっとしている気持ちが強いです。
――決勝戦を振り返っていかがですか
どちらかというと僕からしたら不得意なプレースタイルの相手だったので、自分がどのくらい欠点が直っているかがあらわれる場だと思いました。相手に対する対応とか夏合宿でずっとやってきたので、それがかたちになったかなと思います。
――欠点を克服できたと思われますか
克服まではいかないですけど、確実にステップは登っているかなと思います。
――この大会で見えた課題はありますか
今回5試合こなしましたけど、決勝の前とかすごく疲れていて、それは何故かというと僕のプレースタイルが飛び込んだり、結構体力を使う展開が多いからだと思います。やっぱりそれだけだと一日で何試合もやると体力が持たないので、飛び込むだけじゃなくて組み手という必要性も感じて、その辺をこれからやっていかないといけないと思います。
――秋の大会への抱負や目標などがあれば教えて下さい
そうですね、秋は内閣総理大臣杯(全日本大学選手権)があるので、チーム事情でどの階級に出るかよくわからないですけど、どの階級で出ても勝てるようなオールラウンドな選手になれるように頑張っていきたいです。