新人戦、2人が優勝を飾る

レクリング

 1、2年生が出場する東日本学生春季新人選手権(新人戦)に、ワセダからはフリースタイル(フリー)に7選手、グレコローマンスタイル(グレコローマン)に8選手が出場した。2日目には女子の大会も合わせて実施され、最終的にフリー70キロ級・多胡島伸佳(スポ2=秋田・明桜)、女子58キロ級・香山芳美(スポ1=東京・安部学院)が優勝を果たした。

 「アンクルで回すということを目標に」と語ったように、多胡島はこのプレースタイルで結果を残した。タックルに入ると背後に回り、グラウンドに持ち込む。足首をつかみローリングで得点を重ね、順調に勝ち進んでいった。今大会で「一番のヤマ」として挙げた決勝では1ピリオド(P)を優位に折り返すが、タックルを許しバックポイントを奪われ接戦の展開に。しかし2Pではローリングがさえ、勝利を収めた。

優位な試合運びをした多胡島

 一方、女子では香山が圧倒的な実力を発揮した。目立ったのはグラウンド技で流れをつくり、短時間で試合を終わらせたことだ。タックルで飛び込むと、背中に回りローリングを連続で決めていく。決勝はフォール勝ちで締め、大学での初となるタイトルにほっとした表情を見せた。

香山はグラウンドで勝負強さを見せた

 その他の入賞はフリー57キロ級・青木祐聡(スポ2=岐阜・岐工南)、女子48キロ級・須崎麻衣(スポ1=千葉・鎌ケ谷)の3位だった。結果には出なかったものの、男子では両スタイルで健闘を見せた選手もいた。大会を勝ち進んでいくためには、自身のプレースタイルを貫く強さが必要となってくる。「決勝戦は準決勝までの感じに比べるとうまく(ローリングが)掛からなかった」(多胡島)、「まだまだ自分の理想としているレスリングができていない」(香山)と振り返るように、おのおのに収穫と改善点が得られたようだ。次の大きな試合は8月の全日本学生選手権となる。浮き彫りとなった反省点を改善し、次戦に向けて照準を合わせていきたい。

(記事 高畑幸、写真 三尾和寛、大河内香澄)

結果

男子

▽フリースタイルAグループ

57キロ  青木                 3位

      伊藤奨(スポ1=長崎・島原)     準々決勝敗退

      藤川聖士(スポ2=埼玉栄)      3回戦敗退

      矢野富三家(スポ1=島根・隠岐島前) 1回戦敗退

61キロ級 丸山大三郎(教2=埼玉・早大本庄)  2回戦敗退

      吉川航平(社2=秋田商)       棄権

70キロ級 多胡島                優勝

86キロ級 堀江一馬(社2=富山・高岡商)    1回戦敗退

▽グレコローマンスタイル

59キロ級 伊藤     3回戦敗退

      藤川     3回戦敗退

      丸山     2回戦敗退

      吉川     1回戦敗退

      青木     1回戦敗退

      矢野     予備選敗退

71キロ級 多胡島    準々決勝敗退

85キロ級 堀江     2回戦敗退

女子

48キロ級 須崎     3位

58キロ級 香山     優勝

コメント

山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)

――3日間の大会を振り返っていかがですか

気持ちの持ち方、試合に対する臨み方ができている者とできていない者の差が両極端に出た試合だったと思います。

――選手個人で差がある印象を受けましたか

練習でやってきたことを出せた選手と試合で出そうとした選手、やろうとしていたのか疑わしい試合もありました。そういう意味で両極端だったのかなという気がします。

――優勝された多胡島伸佳(スポ2=秋田・明桜)選手、香山芳美(スポ1=東京・安部学院)選手についてはどうでしょうか

多胡島はもう優勝しなくてはいけない中での試合でした。日頃やっていること、自分の得意な技を全面に出しての結果、優勝ですね。香山についてはどうしてもタックルに入った後の処理が遅い、飛び込んでしまう悪い点があってそこを練習の中で修正していこうと課題に挙げていました。今回は入った後の処理が速かったです。試合時間が短かったのはその影響でタックルに入って処理してグラウンドで試合の流れを持っていけました。それが結果につながったと思います。結果には出ませんでしたが、伊藤(奨、スポ1=長崎・島原)もフリー、グレコ(グレコローマン)を通じて自分で何をやろうか考えている姿勢が見えた試合でした。女子の須崎(麻衣、スポ1=千葉・鎌ケ谷)も結果にはつながらなかったですが練習でやってきていることを出そうとしていました。まだまだ改善途中ですがやってきていることが少しは出せた試合だったのかなと。一人一人挙げればまだできている選手もいますが、特に印象に残っているのはそんなかんじです。

――8月の全日本学生選手権に向けて一言お願いします

個人戦で学生の中で一番大きな大会であるのでそれぞれ目標を設定してそれに対してどう向かっていくのかが一番大事だと思います。前半のシーズンは一応区切りが付きますが、まだ改善すべき点や課題はたくさん見つかっているのでそれを日頃の練習で取り入れて改善していくのはもちろんです。強くなりたい、勝ちたいという気持ちをどれだけ強く持てるのかが結果に出てくると思います。

太田拓弥コーチ

――優勝された多胡島伸佳(スポ2=秋田・明桜)選手の試合を振り返ってどうでしょうか

ジュニア(JOC杯ジュニアオリンピック)での試合の改善点が決勝戦で浮き彫りになったと感じました。決勝戦でも同じように勝ってもらいたかったですがフェイント掛けた時のテークダウンを取られていて、ジュニアの時もそういったものがあって今回の試合でまた改めて課題として残ったかなと思いますね。優勝できたことで自信につながったと思いますし、多胡島にとっても一年前のジュニア以来のタイトルでこれまでちょっとつまずいていたりもしていたので、良いかたちで終われたと思います。

――香山芳美(スポ1=東京・安部学院)選手の試合についてはどうでしょうか

少し実力差があり過ぎたので。ジュニア(JOC杯ジュニアオリンピック)の時の課題や全日本(明治杯全日本選抜選手権)での課題が克服できたのか、はっきり分かりません。また今度7月の頭に全日本(全日本社会人選手権)があるのでどういった選手が出場されるかまだ分かりませんが、ジュニアと選抜(明治杯)で見えた課題がどれほどクリアできているのか分かるかなと思います。あまりにも圧倒的に勝ち過ぎたので。こうした試合でどういう部分が(課題として)浮かび上がってくるか分かる方が良かったのですが。結果的に優勝して、東日本の代表として韓国遠征となっていろんな経験ができるので、代表が2人出たことは率直に良かったです。

――伊藤奨(スポ1=長崎・島原)選手が両スタイルで健闘した印象があります

ハーフタイムで戻ってきた時のアドバイスも含めてよく考えてレスリングをしていると思います。相手が嫌がっていることや戦い方をよく本人が理解した上で戦っていると感じられる試合内容でした。決して器用な選手ではないですが考える能力であったり、がむしゃらに取り組む姿勢を実践してくれました。上級生にもあのような泥くささは見習ってほしいです。

――グレコローマンスタイルの試合を振り返っていただいてどうですか

今回の試合でグレコ(グレコローマン)では藤川(聖士、スポ2=埼玉)が良かったと思います。試合を見ていても思いっきり投げをしてポイントを取ったり、結果的に負けた試合でも積極的に技を掛けていったりしていたので。グレコに出場する理由は結局のところ、フリーにどうつなげるかなんです。グレコは上半身の力がないと本当に勝てないスタイルなので、そういう意味も含めて浮上のチャンスをつかんだのが藤川だと思います。タイミング良く投げが何回か決まっていたので相手も(藤川が)タックルをしてくる、投げ技もしてくると警戒して甘い構えをしないように注意していました。今回のグレコで一番収穫があったのは藤川だと思います。あとは丸山大三郎(教2=埼玉・早大本庄)が昨年は投げられて、グラウンドで返されて終わりという試合が頻繁にありましたが、フリーとグレコ合わせて何試合か勝つことができたのでそれも収穫だったと思います。

――8月の全日本学生選手権に向けて一言お願いします

夏の一番大きい大会なのでこれまでのシーズンで見えた課題を克服できるような試合にしてほしいですね。4年生に関しては最後なので、保坂(健主将、スポ4=埼玉栄)、前川(勝利、スポ4=茨城・霞ケ浦)はもちろんもう優勝している選手ですし、桑原(諒、スポ4=静岡・飛龍)はまだタイトルを獲っていないので何とか獲って全員が学生のチャンピオンとして最後送り出してやりたい気持ちです。

多胡島伸佳(スポ2=秋田・明桜)

――フリースタイルで優勝されましたが、感想はいかがですか

本来は昨年のうちに取っておくべき試合で取りこぼした形になって、今回組み合わせを見て勝って当たり前の試合だったので、勝ってうれしいというよりは、安心したという気持ちが大きいですね。

――勝って当たり前という中でもヤマとなった試合はどこですか

内容的に言うと決勝戦が一番競って、反省点が一番出てきたのも決勝戦だったので、決勝戦が一番のヤマでした。

――ローリングがよく決まっていたように見受けられましたが、その点についてはいかがですか

試合を迎えるにあたってアンクルで回すということを目標にしていて、それが準決勝まで達成できたということは評価しています。でも決勝戦は準決勝までの感じに比べるとうまく掛からなかったのでそこが反省点だったかなと思います。

――グレコローマンスタイルは準々決勝敗退でしたが、その結果についてはいかがですか

元々本職ではないので、そんなに勝たなきゃという気持ちではやっていなかったんですけど、今回グレコ(グレコローマン)に出たのもフリーのことを考えてだったので、そういう意味では、ぶつかり合いで下がらないことや、差されてからの対処などフリーに通じるものはいくつか感じられたので、そこは評価していいというふうに思っています。

――専門ではないスタイルで戦って、やりにくさは感じましたか

もちろんやりにくさはすごくあったんですけど、やりにくいなりにやることが自分のレスリングの幅を広げることになると思ったので、やって無駄ではなかったかなと思います。

――この大会を通して見えた収穫や課題は何ですか

今回は3日間ずっと試合をやって、もちろん疲労感は感じているのですが、グラウンドをやることで試合時間が全体的に短く終わっているので、そのおかげでいまそんなに体もしんどくないです。インカレ(全日本学生選手権)になると1日6試合とかこなさなければ行けないので1試合1試合をどのように戦うか見るのも大事なんですけど、決勝まで見て1試合1試合どう戦うかも大事だと思うので、そういう意味で勝つべきところは早く終わらせるということの重要性が感じられたので、そこは収穫かなと思います。

――次の大きな大会は全日本学生選手権(インカレ)ですが、そこに向けてどのような準備をしていきますか

いままで感じてきた基本的な反省点を修正することと、一番僕が意識していることは、インカレまでの間にどれだけ練習を積んで、試合の時にあれだけ練習したのだから意地でも負けたくないと思えるようにするか、という精神的なところでのタフさをこの2カ月間で鍛えていきたいと思います。

――インカレに向けての目標と意気込みをお願いします

インカレは優勝が目標です。身近にインカレ上位の選手がいるので、準決勝や決勝でワセダの選手と当たって、そこで最終的に先輩と当たって勝ってというふうになれたらいいなと思っています。

香山芳美(スポ1=東京・安部学院)

――大学初タイトルですね

今まで入学してからタイトルがなかったので、東日本で大きな大会ではないのですが少しほっとしました。ただここで満足しないでインカレ(全日本学生選手権)だったり全日本(天皇杯全日本選手権)だったり大きな大会でタイトル獲れるように頑張りたいです。

――これまでの大会と変えた点はありますか

やってきたことというのは大学に入ってから変わらないですが、高校の時との違いでコーチから言われた組み手などでレスリングを変えてきた部分が少しずつできるようになってきたかなと感じました。

――早大の練習はどうですか

高校の時は女子だけの練習で時間が長かったのですが、大学に入ってからは短い時間で集中してやるというのと、男子と練習する機会が増えてそれはそれで違った良いところがたくさんあると思います。

――チームには溶け込めていますか

そうですね。先輩たちもみんな優しいですし、同期も仲が良いです。

――全日本学生選手権(インカレ)へ向けて意気込みをお願いします

インカレは東日本よりもレベルが高くなるので、まだまだ自分の理想としているレスリングができていないのでそれに近づけるように練習しっかりしていって、優勝したいです。

青木祐聡(スポ2=岐阜・岐南工)

――フリースタイルで3位という結果についてはいかがですか

課題がいっぱい見つかった試合でした。

――その課題とは具体的に何ですか

グラウンドで攻めて取るというのができれば、もっと楽に勝てた試合があったと思います。グラウンドで全然点が取れなかったことと、差しが得意なのですが、差してからの展開がイマイチつくれていなかったということです。

――良かった点はありましたか

特にないです。

――グレコローマンスタイルの方はいかがでしたか

体重が全然足りていないので体をつくることが足りなかったです。

――次戦に向けての意気込みをお願いします

もっと筋肉をいっぱい付けて大きくなって、少しでも上に勝ち進んでいけるように頑張っていきたいです。